【窪木稔弁護士へのインタビュー】裁判官の経験を活かした弁護士に

弁護士を志したきっかけを教えてください

『家事、医療など、裁判官としての経験を活かす』

-窪木先生が弁護士になった経緯を教えてください。

2020年1月、第一東京弁護士会に登録し、弁護士法人浅野総合法律事務所において弁護士としての仕事を始めました。

2019年10月までの30数年間、裁判官として全国の地方裁判所、家庭裁判所、高等裁判所において仕事をしてきました。最後は仙台家庭裁判所の所長を務めていました。

裁判官を定年まで勤めましたが、裁判官としての経験を活かし、今後も世のため、人のために仕事をしたいと考え、弁護士としての道を歩む決断をいたしました。

-窪木先生は、裁判官としてはどのような事件を担当されていたのでしょうか?

裁判官に任官後、民事、刑事、家事、少年とあらゆる分野の仕事を担当しました。その中でも、民事事件を担当した期間が最も長く、それに次いで家事事件を担当した期間が長いです。

民事裁判において、判断が難しい事件は「合議事件」と言って3名の裁判官で協力をして担当します。

私は、合計10年の間、那覇、水戸、さいたま、沼津の裁判所において、合議事件の裁判長を務めてまいりました。

合議事件の裁判長としては、主に医療事故、学校事故などの損害賠償訴訟、労働災害、住民訴訟、税金などの行政訴訟、環境訴訟,消費者訴訟、国家賠償訴訟を担当しました。

また、裁判官1名で担当する民事単独事件も、18年間ほど担当いたしました。

判例データベースなどで検索して頂くと、著名事件において私が言い渡した判決を見て頂くことができます。陪席裁判官として関与した事件を含め計130件ほど掲載されています。

-豊富なご経験の中でも、医療集中部でのご経験や、家事部でのご経験が特徴的ですね。他の裁判官でもなかなか経験できないようなキャリアを積まれたのではないでしょうか。

さいたま地裁の医療集中部の部総括裁判官を務め、医療訴訟を専門的に担当するという貴重な経験をしました。

医療集中部の部総括裁判官として、長期化した医療訴訟を、判決と和解をうまく使い分け適切に解決することができたと自負しています。

家事事件に関しては、離婚の裁判を担当したほか、家事調停(離婚、面会交流、遺産分割、遺留分減殺など)、家事審判(成年後見、保佐、補助、氏の変更、相続放棄の申述受理、特別縁故者に対する財産分与など)を担当しました。

また、家庭裁判所の所長として精神医療審査会、精神保健福祉審査会の委員を務め、精神医療の専門家と一緒に定期的にお会いし仕事をするという得難い経験もしました。

元裁判官としての豊富な経験知

『数多くの著名事件の審理を行った実績』

-窪木先生が、裁判官をしていた頃、仕事で心掛けていたことはどのようなことでしたか?

裁判官は、数多くの担当事件を抱えて日々仕事をしています。

その中には、世間的にはまったく注目されていない事件であるものの、当事者の方にとっては自分の人生を決めかねない事件であり必死になっている事件もたくさんあります。

ともすれば、ニュースになるような大きな事件に目が行きがちですが、私はそのような当事者にとって重要な事件こそ、見逃してはならないものと考えていました。

私は裁判官として、そのような世間的にはまったく注目されていない事件でも、1件1件丁寧に、真摯に取り組んできました。

-まさに、窪木先生のお人柄があらわれる新年ですね。

-地方裁判所、家庭裁判所以外に、東京高等裁判所に勤務したとうかがいましたが、どのような事件を担当したのですか。

2回にわたって東京高等裁判所に勤務し、東京高等裁判所管轄の裁判所を第一審とする関東、甲信越地方の多くの裁判所の事件を、控訴審裁判官として審理し判決を言い渡したり、和解を担当したりしました。

仕事自体は決して楽ではありませんでしたが、大変勉強になりました。

そのような多くの事件の中で、社会的に注目される著名事件や判例集に登載されるような大事件の主任裁判官を務めました。

-実際に窪木先生がご担当された事件について、詳しく教えて頂けますか?

例えば、東京高裁平成19年6月28日判決(シェル事件・判例時報1981号101頁、賃金において女性であることを理由とする差別的な取扱いを肯定し原判決を変更し一部認容)、東京高裁平成19年6月28日判決(判例時報1985号23頁、匿名組合契約に基づくオランダ法人に対する利益分配金について日本に課税権がないとされた事例)、東京高裁平成20年1月31日判決(兼松事件・判例時報2005号92頁、判タ1280号163頁、男女のコース別人事制度について不法行為の成立を肯定し原判決を取消し一部認容した事例)、東京高裁平成20年3月27日判決(判例時報2000号133頁、FAに対する配転命令について配転命令権限を濫用したと評価すべき特段の事情の存在を認め無効として一審判決を取り消した事例)、東京高裁平成20年6月26日判決(判例秘書登載、無断欠勤をした区職員に給与を支払ったのは違法であるとして、給与の一部を中野区長らに返還させるよう求めた住民訴訟について、原判決を取消し、請求を認容した事例)などです。

これらの判決の中には、法律書において取り上げられ、ロースクールにおける授業・ゼミなどで引用されるものもあるようです。

そういう形で私が裁判官として行った仕事が残っているということは、内心嬉しく感じています。
 
-裁判官として、最も印象に残った案件がありますか?

たくさんの事件を担当しましたので、1つに絞るのは正直なかなか難しいですが、1つに絞るならば、水戸地方裁判所において言い渡した医療事件の判決、水戸地裁平成23年1月27日判決です。

2005年に、当時32歳の女性が産婦人科医院で出産した際、子宮から大量の出血があり4日後に死亡した事件でした。

私が裁判長である合議体は、医師に適切な処置を怠った過失があったとして約7000万円の損害賠償金の支払を命じました。具体的な裁判の経過をお話しすることはできませんが、審理にも多くの苦労を致しました。

医師側が水戸地方裁判所の判決に不服で控訴しましたが、東京高等裁判所は原判決を是認し控訴を棄却し、水戸地方裁判所の判決は確定しました。

それに基づき、原告ら(亡くなった女性の夫とお子様)に対し約7000万円の損害賠償金とそれに付帯する遅延損害金が支払われました。

弁護士としての心構え

『裁判官の立場から、事案や証拠の見方を理解する』

-裁判官として働かれた経験は、弁護士の仕事にどのように生かされていますか?

長い裁判官の経験から、裁判官の立場から見た事案や証拠の見方がわかります。

そのような裁判官の見方を常に意識しながら、提出する証拠を取捨選択し、充実した訴状、準備書面を作成、提出することは、他の弁護士より秀でていると考えます。

そのような積み重ねにより、依頼者の利益を最大限守ることができます。

さらに、裁判所は裁判官だけではなく裁判所書記官、家庭裁判所調査官などの補助職の方々が大切な役割を果たしています。

裁判官としての経験からそのような補助職の方々との連携やそれらの方々への働きかけを大事にしています。

-窪木先生は現在、弁護士として、どのような案件を取り扱っていますか?

離婚事件などの家事事件、民事事件、行政事件、労働事件(労働審判事件を含む)などを担当しています。

離婚事件の依頼者の方は、男性、女性の両方の方がいらっしゃいます。お子様との面会交流を強く希望する男性の当事者の案件も少なくなく、子供の健全な成長のため重要な面会交流の実現のため力を尽くしています。

また、離婚ということをまったく考えていなかった男性が妻から突然離婚と言われ困惑し復縁を強く希望することも少なくありません。その中には、任意交渉などの結果、離婚ではなく復縁することで解決できた案件もあります。

民事事件は、一般的な民事事件のほか、裁判官時代の経験を生かしながら医療裁判を担当しています。

さらに、労働災害に関する行政庁の判断の取消しを求める行政事件などを担当しています。過労死、パワハラなどの問題を含む案件もあります。

民事、家事を問わず、全般的に裁判所における裁判、調停などに限らず、任意な交渉で解決することが可能な案件はまず任意な交渉による解決を試みるようにしています。

-弁護士として、日々どのようなことに気をつけて仕事をしていますか?

裁判官は中立公平が要請され、一方の当事者と裁判の場以外に関係を持つことは禁止されています。これに対し、弁護士は依頼者の方の意思に基づきその依頼者の利益を最大限実現していくことが役割として求められています。

そのため、弁護士としては、依頼者の方のご希望、お考えをじっくりうかがったうえ、どのようにしたら依頼者の方の利益、希望を最大限実現できるかということを常に考えるようにしています。

事案の特色や落ち着きの良さなども考えながら、法的な紛争の最終的な解決方法、そこに至るまでのプロセスを検討するように心がけています。

-話は変わりますが、窪木先生の趣味は何ですか?

裁判官時代から、自分が選んだ裁判官という仕事が好きで、ずっと仕事に対し全力投球をしてきました。弁護士になっても、そのことは余り変わりません。

しかし、余暇の時間には、散歩をして花などの植物を眺め、MLBなどの野球、陸上競技などを観戦することなどで過ごすことが多いです。

弁護士としての強み

『依頼者に寄り添う弁護士を目指す』

-裁判官としての豊富な経験があることをうかがいましたが、他の弁護士と比べて、窪木先生の強みはどのような点にありますか?

裁判官として長年勤務してきた経歴を生かして、裁判官の心証形成の過程を経験的に理解していることが私の強みです。

裁判官がどのような証拠を重視するかということは、裁判を行っていくうえで非常に重要なことです。なぜならば、事実の認定は証拠に基づき行うというのが裁判の大原則だからです。

また、合議事件の裁判長として医療事故、学校事故などの損害賠償訴訟、労働災害、住民訴訟、税務訴訟などの行政訴訟、環境訴訟、消費者訴訟、国家賠償訴訟などを数多く担当してきたという経験の積み重ねがあるので、そのような複雑困難と考えられえている裁判に対応できるという点は自分の強みだと考えています。

家事調停は多くの場面において2人の調停委員が手続を進めて行きますが、私は裁判官として調停委員と具体的な調停事件を一緒に担当し、また勉強会、研修会などで緊密な関係を持ってきました。そのため、調停委員の特性や思考形態を良く理解できている点にも強みがあります。

-今後も弁護士としてご活躍されていくことと思いますが、窪木先生は、どのような弁護士を目指していますか?

1つ1つの事件を通じて、弁護士として行うべきことを誠実に行い、どのような事件でも対応できるようなゼネラリストを目指して精進しています。

その中で、裁判官としての多くの経験を活かし、これまで裁判官として経験してきたような医療、家事といった分野に、特に専門性を備えた弁護士を目指していきたいです。

さらに、中立公平が要請され、当事者と裁判の場以外に関係を持つことが禁止されている裁判官とは異なり、弁護士になった以上、依頼者の方に寄り添い、そのご希望、お考えをじっくりうかがったうえ、どのようにしたら依頼者の方の利益を最大限実現できるかということを常に考え、依頼者の方から頼りになる、信頼される弁護士になりたいと考えています。

お客様へのメッセージ

ー最後に、弁護士の相談するかどうか、お悩みの方に向けてメッセージをお願いします。

私は、元裁判官という過去の経歴はありながら、弁護士法人浅野総合事務所において、若手の弁護士と同様に、皆様から依頼を受けた仕事を日々実際に担当しています。

過去の経歴はありますが、私は第一線で弁護士の仕事をしていく道を選びました。年齢をそれなりに重ねてはいるものの、心も体も若々しく、日々新たなことを吸収しながら弁護士の仕事を行っています。

裁判官を長くやっていたという自分の強みを生かしながら、依頼者の方に寄り添い、そのご希望、お考えをじっくりうかがい、依頼者の方の利益を最大限実現してまいります。ぜひ、お気軽に当事務所へご相談ください。

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