離婚解決までの流れ
現在、日本の離婚率は30%を超え、約3組に1組が離婚すると言われています。そうした離婚経験者の多くが十分納得のできる形で離婚することができたのでしょうか。
離婚問題は、そもそも離婚することだけの問題ではなく、離婚後の子どもの養育や婚姻中に形成した財産の清算、離婚後の生活などさまざまな法律の問題を含んでいます。
ここでは、離婚問題をできる限り納得できる形でスムーズに解決するためのポイントについて、法律の観点から解説していきます。
スムーズに離婚するためには
そもそも離婚は簡単には成立しない
そもそも離婚は簡単にできるものではありません。結婚と同じように夫婦の一方の意志だけでできるものではありませんし、子どもがいる場合には子どものことを最優先に考える必要があります。
詳細は後述していますが、夫婦の一方が頑なに離婚を拒否すれば離婚をするための残された手段は、裁判離婚のみとなります。
しかし、裁判離婚でも、離婚事由と呼ばれる民法で定められた理由がない限り認められないのです。
離婚を成立させるには準備が大事
離婚の決意
離婚準備の第一歩は、離婚を決意することです。離婚問題の解決は精神的負担を伴います。最後まで、その精神的負担に負けないためには、最初にしっかりと離婚の決意を明確にしておくべきでしょう。
もちろん、容易なものではありません。 しかし、結婚と同じように離婚は、「する」か「しない」かのどちらかしかない問題ですからどこかで腹を括る必要があるのです。
離婚条件に関する希望と優先順位の明確化
離婚を決意した後は、離婚条件に関する自分の希望と優先順位を明確にしましょう。たとえば、とにかく離婚することを最優先にするならば、慰謝料や財産分与については、譲歩することもあるでしょう。
逆に、慰謝料をもらわない限りは離婚しないというのであれば、離婚を急ぐよりも慰謝料請求に関する証拠の収集に専念するのが良いでしょう。
離婚の協議などを始める前に、優先順位を明確にすることで、その後の交渉をスムーズに進めることができます。
ただし、子どもは離婚問題に関して罪はありません。子どもの問題は夫婦間の問題とは区別して考えなければなりません。
たとえば、離婚後の生活の目途が立たないのに、養育費を放棄して離婚を求めるようなことです。実際の調停などの場では、このような主張は排斥されます。
証拠の取集
離婚のために訴訟を起こす場合だけでなく、協議や調停をスムーズに進めるためには、事前の証拠の収集が大切です。
離婚協議では、証拠によって認定された事実が存在することが前提となります。また裁判でも判決の前提となるからです。
また、自分に有利になる事実でも、証拠がなければ事実に基づく判断がされないため、結果的に泣き寝入りになってしまうのです。
離婚前の別居
離婚前の別居の必要性はケースバイケースです。たとえば、DVによる身の危険を感じる場合は別居すべきでしょう。
他方、証拠の収集のため、別居すべきでない場合もあります。なお、一般的に親権を得るためには、子どもを連れて別居するのが良いと言われています。
親権者を決める際には、養育に問題がない限り子どもの環境変化への悪影響を考慮して現状維持の判断をくだすことが多いからです。
ただし、当然のことながら、親権を得たいがために、すでに相手方の配偶者が子どもを養育しているところから子どもを無理に連れ去るような行為は、親権者として不適格の事情になります。絶対にやめましょう。
離婚の種類
夫婦のどちらか一方あるいは双方が離婚を決意をすると、具体的に離婚に向けて行動を起こしていくことになります。
離婚の方法には「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類があります。
協議・調停離婚は家庭裁判所が関与せず、夫婦の話し合いでの離婚です。一方で、審判・裁判離婚は裁判所の判断による離婚です。
協議離婚
離婚するための基本的な手順としてまずは、夫婦間の話し合いをすることになります。
話し合いによる離婚は「協議離婚」と言い、離婚のうち約9割がこの協議離婚です。話し合いで、双方が離婚に合意して離婚届を役所に提出すると離婚が成立します。
離婚の意思について合意した後は、慰謝料・財産分与などのお金の問題、また子どもが居る場合には親権問題についても話し合いましょう。
財産分与は離婚後2年以内、離婚慰謝料は離婚後3年以内であれば請求できますし、養育費や面会交流については後でも決めることはできます。
しかし、離婚後の協議は、関係解消後の協議になりますから相手方が対応してくれないケースが多いので要注意です。
調停離婚
協議離婚で夫婦間での話し合いがまとまらない場合は、話し合いの場を家庭裁判所に移します。家庭裁判所での話し合いの末、離婚について合意に至れば離婚成立となります。これが調停離婚です。
調停離婚をするにはまず調停の申立を行います。相手方の住所地の管轄する家庭裁判所に離婚調停の申立書を提出します。
その際、1,200円分の収入印紙(申立手数料)、書類の郵送などに必要な切手、戸籍謄本や自分の収入に関する資料などを一緒に提出します。
調停の期日では、2名(通常は男女1名ずつ)の調停員を交えて夫婦が交互に部屋に呼ばれ、離婚に関する意向などを聴取されます。
調停員は夫婦それぞれに離婚に関する意向を聴取し、合意へと導きます。どちらか一方が離婚に合意しなければ、調停は不成立で終了となります。
審判離婚
調停で話し合いがまとまらず、離婚不成立となった場合でも家庭裁判所が離婚に相当すると判断した場合は特別に離婚の審判を下す場合があります。これが「審判離婚」です。
しかし、審判が出された日から2週間以内に当事者から異議の申し立てれがあれば審判は無効になります。一般的に、審判離婚が利用されるのは、双方が離婚に合意しているが、離婚条件に合意ができない場合などです。
このように審判離婚は限定的な場合に認められるものです。したがって審判離婚が行われるケースは非常に少なくなっています。
裁判離婚(離婚訴訟)
協議・調停で離婚が成立せず、審判離婚が認められない場合は最後の手段として裁判での離婚に移ります。これが「裁判離婚」です。
離婚の争点の整理・証拠の有無の確認・事実の認定などが行われ、最終的に離婚事由の存否を判断して、裁判所は原告の離婚請求を認めるか棄却するか判決を下します。
決定に不満があれば、高等裁判所、さらに最高裁判所へ控訴することができます。
裁判離婚に至るまで
裁判離婚を起こす前には、必ず調停を起こす必要があります。協議離婚が成立しない場合、原則としてすぐに裁判離婚を提起することはできません。
これは、法律のルールで調停前置主義と言われています。
調停前置主義が採用されている理由は、「国家は家庭に入らず」の原則の制度化と言われています。
家庭の問題は国が積極的に干渉するべきものではなく、できる限り家庭内において解決されるべきであるということです。
たとえ家庭内での解決が困難な場合でも、まずは裁判所の関与の下、夫婦間での話し合いによる解決を目指してほしいということです。
裁判離婚のためには離婚事由の存在が必要
裁判離婚は、簡単には認められません。裁判離婚を認めてもらうには、法律に規定された離婚事由の存在が必要となります。
法定離婚事由には、
があげられます。
単なる性格の不一致では離婚できないとよく言われるのは、相性が合わないという主観的事情では、婚姻を継続し難い重大な事由には当たらないと判断されるためです。
離婚事由の存在は証拠により認定
例えば、不貞行為は離婚事由にはなりますが、不貞行為の証拠を提出しなければ、裁判所は不貞行為と認めてくれません。配偶者が間違いなく不貞行為をしているという主張をしても証拠がない限り裁判では通らないのです。
有責配偶者の離婚請求は原則として認められない
客観的に離婚事由が存在しており夫婦関係が完全に破綻している場合でも、裁判所は離婚原因の主たる責任のある配偶者(有責配偶者)からの離婚請求を原則として認めていません(最高裁昭和62年9月2日判決)。
ただし、どんな場合でも有責配偶者からの離婚請求を認めないわけではありません。
最高裁は、別居の期間や未成年の子の有無、相手方配偶者の離婚後の状況などを考慮して例外的に有責配偶者からの離婚請求を許容しています。
離婚に伴うさまざまな問題
子どもの問題
離婚問題は「離婚さえできればよい」というものではありません。特に子どもがいる場合は、子どものことを考える必要があります。
未成年の子どもがいる場合、どのような方法で離婚する場合であっても親権者を決めなければ離婚できません。
また、離婚するための必須事項ではありませんが、養育費や親権者にならない親と子の面会交流の問題など離婚後の子どもに関する問題についても考える必要があります。
お金の問題
離婚にともなう問題として、ほかに夫婦間の金銭の問題があります。
夫婦関係の解消に伴い、実質的に夫婦の共有の財産と認められるものを公平に清算しなければなりません。これが財産分与の問題です。
一方、配偶者の不貞行為により離婚に至った場合などは、離婚に至ったことの精神的苦痛を慰謝するための慰謝料請求の問題が生じます。
離婚問題は弁護士に相談を
離婚問題は、離婚自体に加え、親権、養育費、面会交流などの子どもの問題、財産分与、慰謝料といった離婚に伴う金銭給付の問題などを含んでいます。
こうした離婚問題を解決する方法には、協議、調停、審判、裁判の4種類があります。
離婚問題の解決の手順としては、離婚の決意、離婚条件の希望と優先順位の明確化、証拠の収集などの準備段階を経て実際の協議、調停、訴訟という具体的な行動を起こすことになります。
もちろん、離婚に向けた一連の行動は、本人だけでも対応は可能です。しかし、離婚には多くの法律の問題が絡んできますので、弁護士に相談して適宜依頼について検討するのが有益でしょう。
特に、訴訟手続は、法律上の厳格なルールに従い進められます。そのため、専門家である弁護士に依頼する必要性は高いでしょう。
早めに弁護士に依頼することで離婚問題を迅速かつ適切に解決できる可能性が高まりますので、離婚を考えたならば、まずは一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
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