母子家庭への未払い率8割!養育費が不払いになったときの対処法とは?
離婚後のひとり親家庭にとって、子どもの生活費ともいうべき「養育費」は欠かせません。離婚後、元配偶者が養育費を支払ってくれないという状況は非常に困りますよね。
以下では、養育費を回収する方法を説明します。
- 目次
養育費受給の実情
厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果」によると、現在も養育費を受給している母子世帯の母が28.1%、父子世帯の父が8.7%とされています。
このように、母子世帯の約2割しか継続して養育費を受給しておらず、母子世帯にとって実情は厳しいものといえます。
参考:厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188147_00013.html)」※1
内容証明郵便、履行勧告・命令
元配偶者と連絡を取る
元配偶者から養育費が支払われない場合、まずは電話やメールで連絡を取り、養育費を支払うように求めましょう。これが最も簡便な方法です。
これは元配偶者の任意の支払を促すものです。あまり喧嘩腰にならず、冷静に支払いをお願いしましょう。
内容証明郵便
電話やメールで養育費の支払いをお願いしても、元配偶者が任意に支払ってくれない場合もあります。またDVで離婚をしたケースなど、元配偶者と連絡を取りたくないという場合もあるでしょう。
このような場合、弁護士に依頼し、内容証明郵便を送ってもらう方法があります。内容証明郵便は、郵便局が、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかを証明する制度です。
内容証明郵便は誰でも送ることができます。
しかし、弁護士から送られる内容証明は、元配偶者に裁判を想起させ、プレッシャーを与えられるケースも多いため、これだけでも養育費の支払いが期待できます。
履行勧告・履行命令
履行勧告・履行命令は、家庭裁判所から元配偶者に対し、養育費の支払いを促してもらう制度です。
家庭裁判所から履行を促されることになるので、養育費を支払わない元配偶者に対し、かなりのプレッシャーを与えることができます。
ただし、これらの制度を利用できるのは、元配偶者の養育費支払義務が、調停、審判、離婚の裁判などで定められている場合に限られます。
履行勧告とは
履行勧告の申出をすると、家庭裁判所が養育費を支払わない元配偶者と連絡を取ります。
そして、書面や電話、面会によって、養育費支払義務が履行されていない状況と理由、今後の履行の見通しなどを調査します。
そのうえで、家庭裁判所が必要な助言や調整を行い、義務を履行するよう促します。
履行勧告の申出は、書面に限らず、口頭や電話によることも可能で、手数料の納付も必要がなく、簡便な制度といえます。
もっとも、 履行勧告には法的効果はなく、事実上の効果にすぎません。そのため、家庭裁判所の勧告によっても不履行状態が解消されない場合、履行勧告は終了することになります。
履行命令とは
履行命令の申立てをすると、家庭裁判所が相当と認める場合に、養育費を支払わない元配偶者に対し、相当の期限を定めてその義務の履行をすべきことを命ずる審判をおこないます。
もし、履行命令を受けた者が正当な理由なく命令に従わないときは10万円以下の過料に処せられます。ただし、10万円以下の過料に処されても養育費を支払わないということもあります。
履行勧告・命令でも養育費を支払わない場合は強制執行
間接強制の申立て
家庭裁判所が履行勧告や履行命令をしても元配偶者が養育費の支払いに応じない場合はどうすればいいのでしょうか。
まず、家庭裁判所に対し、間接強制を申し立てる方法により強制執行をする方法があります。
間接強制とは、家庭裁判所が、養育費を支払わない元配偶者に対し一定の金銭の支払いを命じた場合、心理的圧迫により支払の履行を促すことができる制度です。
ただし、間接強制には判決書や調停証書、和解調書などの書類が必要です。
したがって、この制度を利用できるのは、元配偶者の養育費支払義務が、調停、審判、判決などで決められている場合に限られます。
また、間接強制で一定の金銭の支払いを命じられてもなお、養育費を支払わないということもあります。
直接強制(財産の差押え)
養育費を回収する方法として、元配偶者の財産を差し押さえる方法があります。ただし、財産を差し押さえるためには、「債務名義」が必要となります。債務名義は、たとえば、
が必要になります。債務名義がある場合には、どの財産を差し押さえるべきでしょうか。以下に2つのケースを説明します。
不動産や預金債権を差し押さえ
元配偶者の名義の不動産や預金債権を差し押さえることが考えられます。これによって、未払いの養育費を回収することができます。
ただし、将来発生する養育費については、養育費が発生したときに再度差押えが必要になります。
給与債権を差し押え
元配偶者が会社員などの給与所得者であれば、その給与債権を差し押えることが考えられます。
この場合、給料の2分の1まで、あるいは給料が66万円を超える場合には33万円を超える部分の全額を差し押さえることが可能です。
給与債権の差押えについては、未払い養育費と併せて、将来分の養育費についても一括して申立てをすることができます。
これにより、毎月給与債権が発生する度に差押えの申立てをすることを要することなく、毎月養育費が発生するたびに給料を取り立て続けることができるようになります。
ただし、元配偶者が、給与債権を差し押さえられた後に会社を退職した場合、差押えの効力はなくなります。
専門家に相談
元配偶者から養育費を支払ってもらえなくなった際は、弁護士に相談してください。事情によって、どの解策が最も有効か、アドバイスを受けることができます。
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基礎知識2018.06.13
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不払いにならないよう事前に対策を
離婚の際、毎月の養育費の支払額を取り決めることができたとしても継続して支払われるとは限りません。
離婚の際は、将来の養育費の不払いに備え、公正証書によって養育費の取り決めをしましょう。
さらに「これを履行しない場合は直ちに強制執行に服する」との陳述(強制執行認諾文言)を入れておくなどの対策をとっておくのがよいでしょう。
※1 厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
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