離婚を取り消すことはできる?条件と手続き方法、申請期限

基礎知識
離婚を取り消すことはできる?条件と手続き方法、申請期限

日本で離婚した夫婦の約9割が協議離婚で離婚しています。

基本的に夫婦が合意しなければ協議離婚は成立しません。

しかし、一方から嘘の理由で離婚を請求され、それを信じて離婚に合意したものの、本当は不倫をされていたケースや、脅されて離婚届に署名してしまったケースもあります。

また、離婚の話し合いの最中にもかかわらず、勝手に配偶者に離婚届を出されてしまったケースもあるようです。

離婚したことに納得できない場合、離婚を取り消したい、無効にしたいと思うかもしれません。

この記事では、一度提出した離婚届を取り消したり、無効にしたりすることはできるのかについて解説します。

目次
  1. 離婚の取り消しができる場合
    1. 離婚の取消し手続きの期限
  2. 離婚を無効にできる場合
  3. 離婚を取り消す手続き
    1. 離婚取り消しの調停
    2. 離婚取り消し訴訟
    3. 戸籍訂正の申請を行う
  4. 離婚の無効手続き
  5. 相手が再婚していた場合は婚姻取り消し調停を申し立てる
  6. 離婚を取り消せない場合は再婚も視野に入れる
  7. 離婚後の戸籍はどうなるのか
    1. 離婚を取り消したケース
    2. 離婚の無効が認められたケース
    3. 同じ相手と再婚したケース
  8. 夫婦に戻っても同居は強制できない
  9. 勝手に離婚届を出されないようにする方法
  10. まとめ

離婚の取り消しができる場合

前提として、取消とは取消権者の意思表示により、行為の当時に遡り、その行為がなかった状態にすることを言います。

離婚においては、脅迫や詐欺により離婚届を提出したケースが該当します。

脅迫によって離婚届を提出したケースの代表的な例には、相手方が暴力をふるったり、怒鳴りつけたりすることで無理やり離婚を迫ったため、仕方なく離婚届に署名した、といったものがあります。

詐欺により離婚届を提出したケースの代表的な例には、相手方が不倫や借金の事実がばれることを恐れ、ほかの理由をでっちあげ、その理由を信用して離婚届に署名した、といったものがあります。

民法第96条1項には、「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる」と書かれています。

夫婦の一方が離婚届を書くよう他方を脅したり、騙したりして離婚届に署名させて提出した場合、離婚届を取り消すことが可能です。

第96条(詐欺又は強迫)
1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

離婚の取消し手続きの期限

離婚の取り消し手続きには期限があり、状況によって異なります。

  • 詐欺など騙されて離婚した場合・・・騙されたことを知ってから3か月
  • 脅迫されて離婚した場合・・・脅迫されている状況が終了してから3か月以内

上記の期限を過ぎると、離婚を取り消すことができるケースに該当した場合であっても、離婚を取り消すことができなくなります(民法第764条、745条)

離婚を無効にできる場合

無効とは、当事者が意思表示した法律効果が生じないことを指します。離婚においては、夫婦のどちらか一方が勝手に離婚届を提出したケースが該当します。

この場合、他方に離婚の意思が認められなければ離婚届は無効になります。

離婚届の提出には当事者双方に離婚の意思があることが必要です。どちらか一方が離婚するつもりがない場合、離婚届を提出しても無効になります。

また、離婚の意思は離婚届提出時に存在していることも必要です。

過去に離婚の話し合いをして、離婚届に署名したものの、離婚届提出時には離婚の意思がなかった場合は離婚を無効にできる可能性があります。

離婚を取り消す手続き

離婚を取り消す手続き

脅迫や騙されて離婚した場合の離婚取り消し手続は以下のとおりです。

  1. 離婚取り消しの調停
  2. 離婚取り消し訴訟
  3. 戸籍訂正の申請を行う

それぞれ順を追って説明します。

離婚取り消しの調停

まず配偶者を相手方として家庭裁判所に協議離婚取消し調停の申立てを行います。

申立てを行う家庭裁判所は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者双方が合意して決めた家庭裁判所になります。

離婚取り消しの調停を申し立てる際は以下の書類を添付します。

  • 申立書およびその写し(相手方の人数分)
  • 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 離婚届の記載事項証明書
  • 利害関係人からの申し立ての場合は、利害関係を証明する資料 ※親族の場合は戸籍謄本(全部事項証明書)など

なお、調停を申し立てる際は以下の費用がかかります。

  • 収入印紙1,200円
  • 連絡用の郵便切手 ※裁判所によって異なります。

調停は調停委員を介して合意を図る方法です。当事者双方の合意が得られたら合意内容に相当する審判がくだされます。

審判がくだされたら1か月以内に戸籍訂正の申請を行います。

参考:裁判所「協議離婚無効確認調停の申立書(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_36/index.html)」※1

離婚取り消し訴訟

離婚取り消し訴訟

調停で合意できない場合は裁判所に離婚取り消し訴訟を提起します。提起する家庭裁判所は当事者の住所地を管轄する家庭裁判所になります。

訴訟では離婚の取り消しを主張する側が、自分の主張を立証する証拠を提出し、裁判所に自分の主張を認めてもらうことになります。

戸籍訂正の申請を行う

調停や訴訟で離婚の取り消しが認められれば、戸籍の訂正を行う必要があります。

戸籍訂正の申請は、審判または判決がくだされてから一か月以内に当事者の本籍地あるいは申立人の住所を管轄する市区町村役所・役場にて行います。

戸籍訂正を申請する際は以下の種類が必要です。

  • 戸籍訂正の申請書
  • 判決書謄本、確定証明書 ※判決の場合
  • 和解調書謄本 ※和解した場合

離婚の無効手続き

こちらの意思に反して配偶者が勝手に離婚届を提出した場合の離婚の離婚届の無効手続きは下記となります。

  1. 協議離婚無効確認の調停
  2. 協議離婚無効確認の訴え
  3. 戸籍訂正の申請を行う

離婚届を無効の手続きはまず協議離婚無効確認調停を申し立てます。

離婚の無効確認調停も離婚取り消し手続きと同様、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当時者双方が合意で決めた家庭裁判所になります。

申立に必要な書類や費用は離婚取り消し調停と同じです。協議離婚無効確認調停が不成立の場合は当事者の住所地を管轄する家庭裁判所に離婚無効確認訴訟を提起します。

離婚取り消しと同様、調停や訴訟で離婚の無効が認められれば、1か月以内に戸籍の訂正を行う必要があります。

相手が再婚していた場合は婚姻取り消し調停を申し立てる

配偶者が離婚届を書くよう脅したり、勝手に提出したりするケースでは、ほかの異性と再婚することが目的の場合があります。

そのため、手続きを行う時点で相手方が別の異性と再婚していることもあります。

離婚の取り消しや無効が認められたとしても、戸籍の記載が回復されるだけであって、配偶者の再婚の事実がなくなるわけではありません。

そのため、配偶者が別の異性と再婚している場合、協議離婚取り消しの調停や協議離婚無効確認調停と併せて、相手の重婚に対して婚姻取り消し調停を申し立てる必要があります。

離婚を取り消せない場合は再婚も視野に入れる

離婚を取り消せない場合は再婚も視野に入れる

離婚の取り消しや無効が認められるためには条件があります。そのため、離婚の取り消しや無効ができないことあります。

このような場合、同じ相手と再婚するという選択肢もあります。

女性には離婚後100日間の再婚禁止期間がありますが、これは離婚後に生まれた子供の父親を推定することを目的としています。

そのため、同じ相手と再婚するのであれば、生まれた子供の父親を確認する必要がないため、期間を空けずに再婚できます。

離婚後の戸籍はどうなるのか

一度離婚した場合、戸籍はどうなるのでしょうか。ケース別に見ていきます。

離婚を取り消したケース

離婚の取り消しが認められた場合、戸籍の訂正を行うまでは離婚している状態ですので、その間は夫婦の戸籍が別になります。

戸籍の訂正を行い、離婚の事実が抹消されれば、元の婚姻状態の戸籍に戻ります。

離婚の無効が認められたケース

離婚の無効が認められた場合も、離婚の取り消しと同様、一時的に戸籍が別になりますが、戸籍を訂正することで元の婚姻状態に戻ります。

同じ相手と再婚したケース

同じ相手と再婚した場合も一時的に離婚状態になり、再婚することで同じ戸籍に入ります。離婚した事実が消えるわけではないため、注意しましょう。

なお、子供がいる場合、離婚届を提出するだけであれば子供の戸籍に変化はありません。そのため、離婚後に同じ人と再婚した場合、子供の戸籍は元の婚姻状態のままとなります。

ただし、すでに子供の戸籍を異動するために「子の氏の変更許可」を申立てて入籍届を提出している場合、子供は同じ戸籍に入りません。

この場合、再度子供の入籍届を提出する必要があります。

夫婦に戻っても同居は強制できない

夫婦に戻っても同居は強制できない

離婚の取り消しや無効が認められ、戸籍の訂正を行っても戸籍の記載が夫婦に戻るだけです。同居を強制することはできません。

ただし、夫婦に戻れば、相互扶助義務が生じます。そのため、状況によって相手方に婚姻費用を請求できる可能性があります。

相手方が婚姻費用の請求に応じない場合は婚姻費用分担請求調停を申し立てることもできます。

勝手に離婚届を出されないようにする方法

相手方が勝手に離婚届を提出しそうだと思ったら、事前に本籍地の市区町村役所・役場に離婚届の不受理申出をしておきましょう。

離婚届不受理申出が受理されれば申出人の意思確認がない限り、離婚届が受理されることはありません。

離婚協議で揉めている、別居中である、相手方が離婚を求めているが応じたくないという場合は検討してみると良いでしょう。

まとめ

一度受理された離婚届を取り消したり、無効を認めてもらったりするためには条件があります。

相手方が勝手に離婚届を提出しそうだと思ったら、事前に離婚届不受理申出を提出するなどの対策を取りましょう。

もし、すでに離婚届が受理されてしまった場合は離婚の取り消しや無効ができるかを弁護士に確認し、アドバイスをもらうと良いでしょう。

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※1 裁判所「協議離婚無効確認調停の申立書

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