離婚後に遺族年金を受け取れる?元配偶者が死亡したらすべきこと

基礎知識
離婚後に遺族年金を受け取れる?元配偶者が死亡したらすべきこと

離婚すれば夫婦は戸籍上他人になります。

では、元配偶者から養育費を受け取っていた場合、元配偶者が亡くなったらどうすれば良いのでしょうか。

また、元配偶者が再婚していない場合、元配偶者が亡くなったときの遺族年金は誰が受け取るのか気になる方もいるかもしれません。

この記事では離婚後に元配偶者が亡くなったら遺族年金を受け取れるのかについて解説します。

目次
  1. 遺族年金とは
  2. 遺族年金を受け取ることができる人
    1. 事実婚の場合
    2. 遺族年金受と児童扶養手当は同時に受け取れない
  3. 遺族年金の種類
    1. 遺族基礎年金
    2. 遺族厚生年金
  4. 遺族年金の受給条件
    1. 遺族基礎年金
    2. 遺族厚生年金
  5. 遺族年金を子供が受け取れる可能性がある
  6. 死後離婚の場合は遺族年金を受け取れる
  7. 離婚でもらえるお金
    1. 財産分与
    2. 慰謝料
    3. 養育費
    4. 年金分割
    5. 婚姻費用
  8. まとめ

遺族年金とは

人がいつ亡くなるかは誰にもわかりません。もし、一家の大黒柱が不慮の事故や病気で亡くなった場合、残された家族はどうすれば良いのでしょうか。

日本では、年金加入者が死亡した際、故人と生計を共にしていた遺族に支給されるお金を用意しています。このお金を遺族年金と言います。

遺族年金を受け取ることができる人

遺族年金は残された家族が困窮しないためのセーフティネットです。そのため、遺族年金を受け取ることができる人の範囲は下記のとおりとなります。

  1. 生計維持関係にある
  2. 受け取る人の前年の収入や所得が基準値以下

1の「生計維持関係にある」というのは以下のようなケースが該当します。

  • 住民票上で同じ世帯に属している
  • 同一住所に住んでいる など

2の「前年の収入や所得が基準値以下」というのは以下のケースのいずれかに該当するケースです。

  • 前年の収入が850万円未満
  • 前年の所得が655万5千円以下

事実婚の場合

遺族年金は夫婦として生活している実態があれば受給可能とされています。ただし、同居していればOKというわけではありません。

例えば、同居している男女であっても、ルームシェアなど互いに「婚姻しているつもりはない」という場合は夫婦として認められない可能性もあります。

事実婚の夫婦が遺族年金を受け取れる可能性があるのは以下のケースです。

  • 当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意がある
  • 当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在する
  • 生計維持関係にある

生計維持関係にあるとは前述の収入要件と生計同一要件の2つを満たす必要があります。

事実婚を証明するためには「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」を年金事務所に提出します。

遺族年金を受け取ることができるかどうかは個別に判断されます。ただし、すでに再婚している場合は遺族年金を受け取ることはできません。

参考:日本年金機構「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書( https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/kyotsu/20140425.files/G.pdf)※1」

遺族年金受と児童扶養手当は同時に受け取れない

元配偶者の遺族年金を元妻(元夫)が受け取ることはできないのが原則です。

しかし、戸籍上は離婚したものの、何等かの事情で元配偶者が死亡する時点まで事実上の婚姻関係(内縁)関係を継続していたと認められた場合は遺族年金を受け取れる可能性があります。

ただし、離婚後に児童扶養手当を受給していた場合、事実上の婚姻関係(内縁関係)を否定することになります。

そのため、遺族年金と児童扶養手当を同時に受給することはできません。

なお、遺族年金の受給額より児童扶養手当の金額のほうが高い場合、差額分の児童扶養手当を受け取れます。

遺族年金の種類

年金の種類

遺族年金は次の2つの種類にわけられます。

  • 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金

故人が加入していた年金制度によって受け取ることができる遺族年金は違います。 それぞれについて下記で詳しく解説します。

遺族基礎年金

国民年金に加入していた被保険者が亡くなった場合、故人と受給者それぞれが後述する受給条件を満たすことで受け取ることができる年金です。

故人が自営業者であるなど国民年金のみに加入していた場合は遺族基礎年金のみを受給できます。

遺族厚生年金

遺族厚生年金はサラリーマンなど厚生年金に加入した被保険者の遺族に給付されます。

この場合も後述する遺族厚生年金の受給条件を満たすことで受け取ることができます。

厚生年金は基礎年金に厚生年金部分を上乗せして納めているため、遺族は遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類が給付されます。

遺族年金の受給条件

遺族基礎年金と遺族厚生年金、それぞれの受給条件について解説します。

遺族基礎年金

遺族基礎年金を受給するためには、故人が以下の条件を満たしている必要があります。

国民年金の加入期間が25年以上ある 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある 遺族基礎年金の受給対象者は下記です。

  • 被保険者によって生計を維持されていた子のある配偶者
  • 被保険者によって生計を維持されていた子

子のある配偶者とは離婚前の配偶者は含みません。そのため、元配偶者の遺族年金を受給することはできません。

なお、ここでいう「子」とは以下のいずれかに該当するケースを指します。

  • 18歳になる年度末の3月31日を経過していない
  • 20歳未満で障害等級が1級もしくは2級

故人と子の親子関係は離婚後も変わりません。そのため、上記の条件を満たす場合、子供は遺族年金を受け取れる可能性があります。

遺族厚生年金

遺族厚生年金を受給するためには被保険者(故人)が以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。

  • 厚生年金保険の被保険者期間中の病気あるいはケガが要因となり、初診日から5年以内に亡くなった場合(ただし、保険料免除期間を含んだ納付済期間が加入期間の3分の2以上とする)
  • 1級または2級の障害厚生年金を受け取っていた場合 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある場合

遺族厚生年金の受給対象者は、厚生年金の被保険者であった故人によって生計を維持されていた遺族のうち、下記のとなります。

  • 妻(30歳未満で子がいない場合は、5年間の限定給付)
  • 子・孫(前述の遺族基礎年金と同じ条件)
  • 55歳以上の夫・父母・祖父母

上記のとおり、遺族厚生年金の受給条件は妻と夫で異なります。また、子供がいない30歳未満の妻は受給期間が5年という制限があります。

遺族厚生年金は受給権者の範囲が遺族基礎年金より広いです。しかし、範囲内の人全員が遺族年金を受給できるわけではありません。
遺族厚生年金を受給できる優先順位は以下となり、優先度の高い人が受け取ることができます。

  1. 配偶者と子供
  2. 父母
  3. 祖父母

例えば、子供と配偶者が受給条件を満たしている場合、父母、孫、祖父母が遺族厚生年金を受給することはできません。

なお、2024年8月現在、政府は子供がいない場合の遺族年金受給条件について年齢や男女差をなくし、一律で5年の制限を設ける方針と報道されています。

遺族年金を子供が受け取れる可能性がある

遺族年金を子供が受け取れる可能性がある

ここまで説明したとおり、離婚後に元配偶者の遺族年金を受け取ることはできないのが原則です。

しかし、以下のケースでは子供が遺族年金を受給できる可能性があります。

  • 子供の年齢が18歳になる年度末の3月31日を経過していない
  • 子供の年齢が20歳未満で障害等級が1級もしくは2級
  • 子供が「元配偶者によって生計を維持されていた」ことを証明可能

「生計維持関係があった」とみなされる要件は厚生年金保険法第59条4項に定められており、一般的には以下のような事情が必要です。

  • 亡くなった元配偶者と子供が同居していた
  • 亡くなった元配偶者と子供は別居していたが仕送りを受けていた
  • 子供は亡くなった元配偶者が加入する健康保険の扶養家族だった

例えば、元配偶者から養育費を定期的に受け取っており、通帳などにその記録が残っている場合は「元配偶者と子供に生計維持関係があった証拠」として認められる可能性があります。

一方、離婚後に元配偶者から養育費を一切受け取らずに子供を育てていた場合や子供が成人を迎えている場合、子供は遺族年金を受け取ることはできません。

また、以下のような場合、子供の受給権がなくなります。

  • 子供が結婚した
  • 子供が死亡した
  • 子供が親族以外の者の養子になった

非常に稀なケースにはなりますが、子供に850万円以上の年収がある場合も受給が停止されます。

なお、子供連れで再婚している場合や再婚相手から養育費を受け取っている場合は子供も遺族年金を受け取ることができません。

また、子供に生計を同じくする親がいる場合、子供が受け取れるのは遺族厚生年金のみです。遺族基礎年金は支給されません。

死後離婚の場合は遺族年金を受け取れる

死後離婚とは亡くなった配偶者の血族との姻族関係を終了させることです。

婚姻届を提出すると配偶者の血族との間に姻族関係が生じます。しかし、配偶者の血族との姻族関係は、配偶者が死亡しても変わりません。

亡くなった配偶者の血族との姻族関係を終わらせたい場合、姻族関係終了届などの必要書類を提出する必要があります。

死後離婚が亡くなった配偶者との関係に影響を与えることはありません。そのため、死後離婚後であっても、条件を満たせば遺族年金を受給できます。

離婚でもらえるお金

離婚でもらえるお金

ここまで説明したとおり、元配偶者の遺族年金を受け取ることはできないのが原則です。

遺族年金を受け取れるかどうかを確認することも重要ですが、離婚時にもらえるお金を適切に請求することも非常に重要です。

離婚でもらえるお金には以下のようなものがあります。

  • 財産分与
  • 慰謝料
  • 養育費
  • 年金分割
  • 婚姻費用

それぞれについて下記でご紹介します。

財産分与

婚姻中に築いた共有財産について、離婚時に公平にわけることになります。これを財産分与と言います。

財産分与の割合は2分の1ずつが原則で、一方が専業主婦(夫)など、夫婦の収入に差があっても変わりません。

なお、共有財産の構築に対する貢献度に大きな差がある場合や離婚して一方の生活が苦しくなることがわかっている場合は財産分与を増額請求できる可能性があります。

慰謝料

不貞行為やDVなど、夫婦のどちらか一方が離婚原因を作ったという場合、離婚原因を作った側に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。

認められる慰謝料の金額は有責行為(不倫やDVなど)の度合いや婚姻期間、子供の有無などによって異なります。

養育費

離婚しても親子関係は変わりません。そのため、未成熟な子供がいる場合、子供と離れて暮らす側の親に対して養育費を請求できます。

養育費の金額は当事者同士の話し合いで決めることもできますが、裁判所の養育費・婚姻費用算定表を基準とすることが多いです。

また、調停や裁判に進んだ場合は前述の算定表を用いて算出することになります。

算定表の養育費の金額は子供の年齢と人数、夫婦双方の職業と年収によって変わります。

年金分割

年金分割は婚姻中に収めた厚生年金部分の納付実績を夫婦で分割することを言います。分割割合の決め方には合意分割と3号分割に2種類があります。

どちらを申請したほうが良いかについては個々のケースによって変わります。

婚姻費用

婚姻費用とは婚姻中の生活費のことを言い、配偶者との関係が悪化し、別居したケースなどで請求できます。

婚姻費用は相手からの支払いが途絶えた時点から請求できます。相手からの合意がない限り、遡って請求することはできません。

まとめ

遺族年金について解説しました。 基本的には元配偶者の遺族年金を元妻(元夫)が受け取ることはできません。

しかし、元配偶者との間に子供がいる場合、条件を満たせば子供が受給できる可能性があります。

まずはお住まいの自治体や年金事務所に問い合わせることをおすすめします。

なお、元配偶者の遺族年金を子供が受給するためには、市区町村役所や年金事務所で手続きを行う必要があります。自動で振り込まれるわけではありません。

遺族年金のことを確認することも大切ですが、離婚後に困窮しないためにも、離婚前に養育費や財産分与などのお金をしっかりと取り決めておきましょう。

離婚後のお金のことでお悩みの際や話し合いが難しい場合は弁護士にご相談ください。

※1 日本年金機構「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書

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