戸籍から離婚歴を消す方法|注意点と離婚歴がどう表記されるかを解説
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離婚歴がある人のことを「バツあり」「バツ〇(〇は離婚回数)」などと呼ぶことがあります。
これは、改正前の縦書きの戸籍謄本で離婚後にの氏名欄にバツ印がついたことに由来していると言われています。
離婚後に再婚を考えている人のなかには、「再婚相手に離婚歴がバレないようにしたい」と考えている方もいるかもしれません。
結論から言うと、戸籍謄本から離婚歴を消すことは可能です。
この記事を最後まで読むことで以下のことがわかります。
・離婚後の戸籍謄本はどのような表記になるのか
・戸籍から離婚歴を消す方法
・戸籍から離婚歴を消す際の注意点
- 目次
離婚すると戸籍謄本にはどのような表記になるのか
平成6年の戸籍法改正後、離婚で戸籍から抜けた側(多くの場合は妻)については「除籍」と表記されるようになりました。具体的な表記について以下で解説します。
離婚後に婚姻時の戸籍に残る側の戸籍謄本
離婚後に婚姻時の戸籍に残る側(多くの場合は夫)の戸籍謄本の身分事項は以下のように表記されます。
このとき、戸籍から抜けた側(多くの場合は妻)の表記に「除籍」と表記されます。
離婚後に婚姻時の戸籍から抜けた側の戸籍謄本
離婚により婚姻時の戸籍から抜け、元の戸籍に入り直した人の戸籍謄本の身分事項は以下のように離婚の追記がなされます。
婚姻時の姓を継続使用する場合は【氏変更日】【氏変更の事由】も追記されます。
このように、何もしなければ、婚姻時の戸籍に残る側も抜ける側も戸籍謄本には離婚歴が表記されてしまいます。
なお、従前戸籍とは前に入っていた戸籍のことです。離婚の場合、婚姻中の戸籍を指します。
戸籍から離婚歴を消す方法
戸籍から離婚歴を消す方法について解説します。
ここでは、妻である女性が親の戸籍を抜け、夫である男性(戸籍筆頭者)の戸籍に入るという夫婦の例を基に解説します。
実は婚姻時の戸籍の筆頭者と戸籍から抜ける側とで離婚歴を消す方法の選択肢が異なります。
前述の夫婦の場合、女性(夫婦の戸籍から抜ける側)が戸籍から離婚歴を消す方法としては以下の3つがあります。
- 新たな戸籍を作る
- 転籍する
- 分籍する
それぞれについて以下で解説します。
新たな戸籍を作る
前述の例では女性は離婚時に元の戸籍に戻るか、自分を筆頭とした戸籍を作るかを選択できます。
前述のとおり、元の戸籍に戻っただけであれば、戸籍謄本に離婚の事実が表記されます。
一方、自分を筆頭とした新たな戸籍を作れば、出生以外の事項は記載されないため、離婚の事実は記載されません。
ただし、新たな戸籍を作ることは稀なため、新しい戸籍を作ったことに対して、「離婚したことを隠しているのではないか」と不審がられる可能性があります。
なお、以下のケースでは新しい戸籍を作る必要があります。
- 両親が他界している、または両親の戸籍から除籍されている
- 婚姻前の戸籍に戻し、子供も自分と同じ戸籍に入れる
- 離婚後も婚姻時の姓を名乗る
3の離婚後も婚姻中の氏を名乗る場合、親と苗字が異なるため、結果的に離婚の事実がバレてしまいます。
転籍する
転籍とは本籍地を移転することを言います。婚姻中の戸籍から抜ける側であれば、離婚後に一旦親の戸籍に戻り、その後本籍地を移動することになります。
転籍をすると、直近の戸籍謄本には前の戸籍から転籍したことだけが記載されるため、離婚の事実は記載されません。
転籍の手続きについては裁判所の許可は必要ありません。また、転籍後に元の本籍地に戻りたいと思ったら、元の本籍地に転籍することができます。
引越しのたびに転籍をする人もいるため、それほど珍しいことでもありません。
ただし、前回と同じ市区町村を本籍地としてしまうと離婚の記載がなされてしまいます。離婚歴を消すことが目的であれば本籍地は前回と別の市区町村にしましょう。
なお、転籍は戸籍の筆頭者または配偶者しか手続きできません。また、転籍は自分だけでなく戸籍に入っている人全員が移動することになります。
そのため、今回の例であれば、元夫(戸籍の筆頭者)側のほうが手続きが取りやすいと言えるかもしれません。
分籍する
分籍とは、戸籍の筆頭者とその配偶者以外で成年に達している人が、在籍する戸籍から抜けて自己単独の戸籍を作ることを言います。
今回の例であれば、女性が離婚して元の戸籍に戻ったあと、自分単独の戸籍を別の市区町村を本籍地にして分籍するケースになります。
こうすることで、新たな戸籍には離婚の事実は記載されなくなります。
分籍の手続きも転籍と同様、裁判所の許可を得る必要はありません。
しかし、「新たな戸籍を作る」と同様、分籍は頻繁に行われるものではありません。そのため、「離婚歴を隠しているのではないか」と思われる可能性があります。
なお、分籍ができるのは「戸籍筆頭者とその配偶者以外」ですので、婚姻時の戸籍筆頭者は分籍ができません。
また、転籍と異なり、一旦分籍すると元の戸籍に戻ることはできません。
戸籍筆頭者が離婚歴を消す方法
前述のとおり、離婚後、婚姻時の戸籍筆頭者の戸籍に「除籍」「離婚」の文字が記載されます。
前述の3つの離婚歴の消し方のうち、戸籍筆頭者が選択できるのは転籍のみとなります。
分籍は戸籍筆頭者とその配偶者は行うことができないため、分籍ができません。また、「離婚した」というだけで新たな戸籍を作ることもできません。
そのため、婚姻時の戸籍筆頭者が離婚歴を消したい場合は転籍のみが選択肢となります。
住民票から離婚歴を消す方法
実は住民票からも離婚歴がバレることがあります。
離婚して姓が変わると、その前の氏名に修正が加えられます。その結果、離婚歴がバレる可能性があるのです。
住民票から離婚歴を消す方法としては、以下の2つがあります。
- 住民票の改製
- 他の市区町村への引越し
1の住民票の改製とは、住民票の修正を繰り返したことで余白がなくなり、新しい情報だけを記載した住民票を作り直すことです。
しかし、住民票の改製には「何度も引越しを繰り返す」など住民票をいっぱいにする必要があります。
また、転居を繰り返すことで「離婚歴を隠そうとしているのではないか」と疑われる可能性もあります。
2については、他の市区町村への引っ越すことで住民票が移動となるため、旧姓や元配偶者の記載がなくなる方法になります。
一見すると離婚歴がわかりませんが、以前の住所が記載されているため、調べようと思えば調べられてしまいます。
特に住民票は当事者以外の人でも取得できるため、再婚相手が旧住所の住民票を取得すれば離婚の事実がバレてしまいます。
戸籍から離婚歴を消す際の注意点
ここまで離婚歴を消す方法について解説しました。 戸籍から離婚歴を消す際は以下の点に注意しましょう。
- 過去の戸籍を遡れば離婚歴がバレる恐れがある
- 元の戸籍に戻った後に転籍すると家族全員の本籍も移転する
- 子供の父母欄には元配偶者の名前が記載される
- 婚姻取り消しや再婚相手の信頼を失う恐れがある
- 再婚前の知人を紹介しづらくなる
それぞれについて以下で解説します。
過去の戸籍を遡れば離婚歴がバレる恐れがある
転籍や分籍を行うことで、戸籍から離婚歴を消すことは可能です。
しかし、これはあくまで「最新の戸籍に離婚の事実が表記されない」というだけです。過去の戸籍(除籍謄本)を遡れば、離婚の事実はバレてしまいます。
元の戸籍に戻った後に転籍すると家族全員の本籍も移転する
前述のとおり、転籍は戸籍の筆頭者または配偶者しか手続きできません。そのため、婚姻中の戸籍の筆頭者側のほうが手続きをしやすい方法と言えます。
また、転籍では自分だけでなく戸籍に載っている人全員分の本籍地が変わることになります。
そのため、転籍をする際は戸籍に入っている人全員と話し合い、許可を得る必要があります。
子供の父母欄には元配偶者の名前が記載される
子供がいる場合、離婚後の戸籍には「子どもの父母」欄に元配偶者の名前が記載されます。
こうなると、離婚歴が消えても、結果的に離婚の事実がわかってしまします。
ここでご紹介した戸籍や住民票から離婚歴を消す方法は子供がいない場合にのみ行う意味があると言えます。
再婚前の知人を紹介しづらくなる
離婚歴を隠して再婚する場合、あなたの離婚の事実を知っている人を再婚相手に紹介しづらくなります。
また、離婚歴がバレなかったとしても、「いつかバレるのではないか」「誰かに離婚のことを聞いているのではないか」などと疑心暗鬼になってしまう恐れがあります。
婚姻取り消しや再婚相手の信頼を失う恐れがある
ここでご紹介した離婚歴を消す方法は、あくまで戸籍上の表記を消すだけにすぎず、婚姻歴・離婚歴がなくなるわけではありません。
そのため、再婚時に「婚姻歴はない」と相手に伝えて結婚すると、トラブルに発展する恐れがあります。
もっとも、法的には離婚歴を再婚相手に明示する義務はありません。
しかし、相手が初婚であることを重視している場合、離婚歴を隠して結婚するとトラブルに発展する恐れがあります。
特に元配偶者との間に子供がいる場合は養育費の負担などの問題が生じる可能性があります。そのため、詐欺による婚姻の取消が認められる可能性があります。
直ちに婚姻取り消しとならなかった場合でも、再婚相手からの信頼を失うことで夫婦関係に亀裂が生じる恐れもあります。
離婚後に再婚を考えているのであれば、再婚相手に離婚歴のことを伝えておくほうが良いでしょう。
離婚歴を消す必要があるのかよく考える
前述のとおり、ここでご紹介した方法は「戸籍や住民票から離婚の記載をなくす」という表面的なものです。そのため、再婚相手が調べようとすれば離婚歴がバレてしまいます。
最近は離婚も再婚も珍しいことではなくなり、離婚歴があることを気にする人も少なくなりました。
「離婚歴がある」ということは過去の失敗を次の結婚生活で活かせる可能性があるということでもあります。
また、再婚者同士の結婚であれば、初婚と比べて結婚生活に過度な期待をしないため、安定した関係を築けるかもしれません。
まとめ
戸籍謄本から離婚歴を消す方法は以下のいずれかとなります。
- 新たな戸籍を作る
- 転籍する
- 分籍する
ここで紹介した方法は離婚歴自体が消えるのではなく、あくまで表面的に離婚歴を見えなくするものです。
離婚した事実が消えるわけではないため、過去の戸籍を調べれば離婚歴はバレてしまいます。
最近は離婚歴があることに抵抗を示す人も少なくなりつつあります。
離婚歴を隠し続けると、疑心暗鬼になったり、再婚相手にバレて信頼を失ったりする可能性があります。
離婚歴を消す手間やリスクを考慮すれば、最初から離婚歴があることを伝えておいたほうが精神的にもトラブル回避の意味でも良いでしょう。
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