海外赴任中の離婚は珍しくない!回避策と損しないための全知識

海外駐在員と聞けば、エリート、給料が高い、セレブ生活というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、慣れない仕事や異国での生活に疲弊したり、すれ違いが続いたりすることで夫婦関係がうまくいかずお悩みの方も少なくないのです。
海外赴任中の配偶者と離婚する場合、手続き上、通常の離婚と異なる点が多くあります。
この記事では海外赴任中の配偶者との離婚の手続きや海外赴任中の配偶者との離婚を回避する方法を解説します。
- 目次
海外赴任がきっかけの離婚理由
海外赴任がきっかけで離婚する理由には大きく次の2つがあります。
- 海外での生活や慣れない仕事によるストレス
- 不倫
それぞれについて下記で解説します。
海外での生活や慣れない仕事のストレス
異国の地での仕事や生活は想像以上にハードです。また、外国人は日本人とは働き方や仕事への価値観が異なることも多いです。
そのため、現地従業員とのコミュニケーションがうまく行かなかったり、仕事の進め方で悩んだりして、ストレスを感じる機会が増えます。
日本と比べて海外ではメンタルサポートを受けにくいため、悩みを解消しづらく、ストレスを溜め込むこともあります。
一方、配偶者が海外赴任することは、夫(妻)にとってもストレスを抱えるきっかけになります。
赴任した配偶者についていけば、異国の地での生活にストレスや不安を感じることが増えます。
また、日本で仕事をしていた場合、仕事を辞めて配偶者についていくことになります。
そうすると、「キャリアを失った」「こんなはずではなかった」などの負の感情が生まれ、落ち込んでしまうこともあります。
赴任先に子供を連れて行く場合は学校選びやメンタルケアも必要になるため、さらに負担が増えます。
夫婦双方が溜め込んだストレスを相手にぶつけてしまい、衝突が起き、夫婦関係に歪みが生じることがあるのです。
不倫
駐在員は激務なため、夫婦のすれ違いが起きやすくなります。
海外赴任について行かない場合はもちろん、夫婦が一緒に海外に来ていても、海外赴任についてきた側が定期的に日本に帰ることもあります。
夫婦の間に物理的な距離が生まれると、心にも距離が生まれてしまうことがあります。
一方、欧米など、日本人より愛情表現が豊かで、異性に優しく、奔放な人が多い国もあります。
また、海外には友人や親戚など頼れる人がいないため、寂しさが募ることもあります。
夫婦のすれ違いが続くなかで自分に寄り添ってくれる異性がいれば、つい寂しさを埋めたくなるのかもしれません。
夫婦双方が海外に住んでいる場合の離婚
ここからは、配偶者が海外赴任中の離婚の手続きについてご紹介します。
まず、夫婦双方が海外に住んでいる場合について解説します。
協議離婚なら夫婦の本籍地で離婚届を提出する
通常の離婚の場合、はじめに夫婦が離婚や離婚条件について話し合い、合意を図ります。
合意ができたら、夫婦いずれかの本籍地または住所地を管轄する役所に離婚届を提出し、受理されれば協議離婚が成立します。
夫婦双方が海外に住んでいる場合、日本の居住地がないため、夫婦の本籍地を管轄する役所に離婚届を提出します。
離婚届はウェブサイトからダウンロードできますし、届出は郵送でも可能です。そのため、日本に帰国することなく、離婚を成立させることができます。
調停離婚:夫婦が合意して決めた裁判所に申し立てる
話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
通常は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。
夫婦双方が海外在住である場合、双方が日本国籍を持っていれば、夫婦で合意して決めた裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
なお、調停は裁判所を利用した手続きですが、あくまで当事者同士の話し合いにより合意を図る手続きです。
調停期日に当事者双方が帰国して出席しなければ調停が不成立となる恐れがあります。
帰国や出席が難しい場合は弁護士に代理人としての出席を依頼しましょう。
裁判離婚:東京家庭裁判所に訴訟を提起する
調停でも話がまとまらない場合は訴訟を提起し、裁判所に離婚について判断してもらうことになります。
夫婦双方が海外に居住している場合、離婚訴訟を管轄する裁判所は東京家庭裁判所に定められています(人事訴訟法第4条第2項、人事訴訟規則第2条)。
なお、訴訟期日については弁護士を代理人としておけば手続きを任せることができます。
しかし、離婚裁判はある程度手続きが進むと離婚に関する経緯などを聞くための当事者尋問を行うのが通常です。
当事者尋問の期日は当事者本人が帰国し、裁判に出席する必要があります。
ここでの回答や対応は裁判官に与える印象を大きく左右します。当事者として実際に出席し、自分の主張を適切に伝えることが重要です。
海外の裁判所で離婚が成立する場合がある
海外在住歴が長い夫婦の場合、現地の裁判所で離婚が成立するケースもあります。
ただし、海外の裁判所で離婚が成立した場合は成立した日から3か月以内に下記のいずれかに離婚届を提出する必要があります。
- 現地の日本大使館・領事館
- 本籍地または届出人の住所地を管轄する市区町村役場・役所
夫婦のどちらか一方が海外に赴任中の場合の離婚
次に夫婦のどちらか一方のみが海外に赴任している場合の離婚の手続きについて解説します。
協議離婚:日本に住んでいる側の住所地または本籍地で離婚届を提出
協議離婚の場合、日本に住んでいる側の住所地または夫婦の本籍地を管轄する役所・役場に離婚届を提出します。
離婚届は必ずしも本人が提出しなければならないわけではありません。
そのため、日本に在住している側が海外赴任中の配偶者の代理人となり、離婚届を提出することができます。
協議離婚をする場合は離婚協議書を作成し、取り決めた内容を書面の形で残しておきましょう。
また、取り決めた内容が履行されなかった場合に備え、速やかに強制執行ができるように公正証書を作成しておくことをおすすめします。
なお、公正証書は夫婦が揃って公証役場に出向く必要があります。
弁護士に依頼すれば、代理人として公証役場に出頭してもらい、作成をお願いすることもできます。
調停離婚:夫婦が合意して決めた裁判所に申し立てる
調停離婚の場合、申立先の裁判所を夫婦の合意で定めることができます。
ただし、前述のとおり、調停期日には当事者双方が出席する必要があります。
海外に赴任中で出席が困難な場合は弁護士に依頼し、代理人として出席してもらうことができます。
離婚調停が成立すれば、調停成立と同時に離婚も成立しますが、役所への離婚届の提出も必要になります。
調停離婚の場合、日本に在住する側のみで離婚届の提出が可能です。
裁判離婚:日本に居住している側の住所地の裁判所に訴訟を提起する
離婚裁判の場合、日本に居住している側の住所地を管轄する裁判所に訴訟を提起します。
前述のとおり、訴訟期日は弁護士に依頼すれば任せることができますが、当事者尋問の期日は海外居住者も帰国して出席しなければなりません。
海外赴任者の離婚手続きでの住民票の扱いについて
夫婦双方が海外に居住している場合は住民票がありません。
そもそも、協議離婚や調停離婚の場合、離婚届提出の際に住民票の提出は求められることはありません。
しかし、裁判離婚の場合は住民票に準ずる書類を居住地の役所から発行してもらう必要があります。
帰国せずに離婚を成立させることはできるのか
離婚届はウェブサイトから入手できますし、提出も郵送が可能です。そのため、協議離婚なら日本に帰国することなく、離婚を成立させることができます。
しかし、裁判離婚の場合、当事者尋問の期日には必ず当事者が出席しなければなりません。
そのため、弁護士と密に連携し、代理人として出席してもらったうえで当事者期日に合わせて帰国できるように調整することが重要です。
調停離婚も、本人が出席したほうが有利に進む可能性が高くなります。
この場合、弁護士に代理人として出席してもらい、成立見込みの期日に合わせて帰国するなどの調整が重要です。
できるだけ話し合いで合意できるよう、協議離婚の段階で弁護士に相談し、交渉を依頼することも重要です。
なお、弁護士に依頼すれば財産分与のための不動産の売却手続きなどの各種手続きも代行してもらうことも可能です。
海外赴任中の配偶者との離婚を回避する方法
ここからは海外赴任中の配偶者との離婚を回避する方法をご紹介します。
他愛もない日常の出来事をこまめに伝える
配偶者と離れて暮らしていても、他愛もない日常の出来事をこまめに伝えることが重要です。
例えば、「子供がピーマンを食べられるようになった」などのメッセージと一緒に子供がピーマンを頬張る写真を送るのも良いでしょう。
また、「逆上がりができるようになった」というメッセージと一緒に子供が逆上がりをする動画を送るのも良いでしょう。
日常のちょっとした出来事を夫婦で共有することで家族の存在や絆を感じることができます。
同居中に当たり前にしていたことを遠隔でも行う
離れて暮らす場合も、家族とスケジュールを共有し、一緒に楽しむことが重要です。
スケジュールの共有はGoogleカレンダーを使えば簡単です。
子供の参観日や運動会があるとわかれば、たとえ参加はできなくても「今頃試合で頑張っているのかな」などと家族に思いを馳せ、絆を感じることができます。
また、インターネット通話やテレビ電話を使えば、遠隔で行事に参加したり、食事を一緒に楽しんだりすることもできます。
互いの生活やペースを大切にしながらコミュニケーションをとる
離れて暮らしている場合は、相手の生活やペースを尊重することも大切です。
こまめに連絡したり、直接会う機会を作ったりすることは重要です。しかし、海外での生活や仕事は慣れるまでに時間がかかります。
また、海外での仕事も日本とは勝手が違いますし、時差もあります。
それにも関わらず「帰国回数を増やして」「こまめに連絡して」などと、気持ちを押し付けては窮屈に感じてしまうでしょう。
互いに居心地の良い関係を築きつつ、コミュニケーションをとることが重要です。
感謝の気持ちを伝える
離れて暮らすことで、本当に自分が大切にされているのか、感謝されているのかがわかるようになります。
「いなくてラッキー」と思っていると、それとなく相手に伝わるものです。
そのため、離れて暮らす配偶者に対して常に感謝の気持ちを持つことを心がけましょう。
また、何気ない会話のなかでも「いつもありがとう」「異国での生活や仕事は大変でしょう?」などど、感謝や労りの気持ちを示しましょう。
これは夫婦が一緒に暮らしている場合も同様です。
海外で暮らすことでどちらもストレスを抱えているかもしれません。
しかし、配偶者が仕事をしているからこそ、家族が安心して生活を送ることができているのです。
家で食事や会話をするなどの何気ない場面で「いつもありがとう」「お疲れ様」といった感謝と労いの気持ちを示しましょう。
まとめ
海外に赴任している配偶者との離婚は通常の離婚と手続きや進め方などが異なります。
少しでも有利かつスムーズに進めるためにも専門の弁護士に依頼し、密に連携したうえで進めることをおすすめします。
弁護士に依頼することで、日本国内での手続きを代行してもらったり、調停・裁判の出席についても代理人として任せたりすることができます。
当サイトは離婚や男女問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。海外赴任中の配偶者との離婚でお悩みの方はぜひお役立てください。
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