婚前契約(プレナップ)の全て|メリット・デメリット・有効な書き方

基礎知識
婚前契約(プレナップ)の全て|メリット・デメリット・有効な書き方

婚前契約と聞いてどのようなイメージを持ちますか?

人によっては「離婚を意識しているようで縁起が悪い」と感じるかもしれません。

婚前契約はプレナップとも呼ばれ、愛する2人が将来の価値観を共有し、お互いの人生と財産を守り、安心して結婚生活を送るために締結するものです。

この記事では、婚前契約の基本から、婚前契約書を作成するメリット・デメリット、作成時の注意点まで解説します。

目次
  1. 婚前契約(プレナップ)とは?
  2. 婚前契約を結ぶ目的
    1. 結婚生活を円滑に進める
    2. 将来のトラブルを未然に防ぐ
    3. お互いの価値観を明確に把握し、安心感を得る
  3. 夫婦財産契約との違い
  4. 婚前契約が注目されるようになった背景
    1. 離婚が珍しいことではなくなった
    2. 共働き夫婦の増加
    3. ライフスタイルや結婚への価値観の多様化
  5. 婚前契約書を作成するメリット
    1. お互いの価値観を事前に認識できる
    2. 結婚後のトラブルを減らし、スムーズに対応できる
    3. 結婚後の財産を守ることができる
    4. 婚前の気持ちをいつでも確認できる
    5. 離婚にいたった際も揉めにくい
  6. 婚前契約書を作成するデメリット
    1. 結婚前から離婚のことを意識せざるを得なくなる
    2. 結婚を拒否される可能性がある
    3. 信用されていないと受け取られる可能性がある
    4. 結婚前に相手の本性がわかり、トラブルに発展する恐れがある
  7. 婚前契約書で取り決めておくべき事項
    1. 家事や育児の分担について
    2. 夫婦双方の財産の確認
    3. 生活費の負担割合
    4. 不貞行為やDVがあった場合の取り決め
    5. 働き方について
    6. 親族や友人との付き合い方
    7. セックスや子作りに関する取り決め
    8. お互いの愛を確認する内容
  8. 婚前契約書の作成をおすすめする人
    1. 個人名義の多額の資産がある人
    2. 会社経営者
  9. 婚前契約書を作成する際の注意点
    1. 盛り込んでも効力が発揮されない内容がある
    2. 確実に財産を守るなら夫婦財産契約の登記が必要
    3. 変更・取消しには相手の合意が必要
    4. 婚前契約書の判例は少ない
    5. 相続については婚前契約ではなく遺言で残す
    6. 公正証書の作成は難しい
  10. 婚前契約を弁護士に依頼するメリット
    1. 法的有効性・実効性の高い契約書を作成できる
    2. 将来のトラブルを想定した条項を提案できる
    3. 弁護士が間に入ることで冷静な話し合いができる
  11. まとめ

婚前契約(プレナップ)とは?

婚前契約とは、夫婦となる2人が、結婚生活や離婚時の取り決めやルールを結婚前に書面で約束することを指します。

英語ではPrenuptial Agreement(プレナプシャル・アグリーメント)といい、略称を用いてPrenup(プレナップ)と呼ぶこともあります。

婚前契約書は欧米では一般的な契約書です。 日本では、財産に関する取り決めは夫婦財産契約、その他の生活上のルールは合意書として扱われます。

日本ではこれらを総称して「婚前契約」と呼ぶのが一般的です。

なお、夫婦の財産契約は結婚前に締結する必要があります。(民法第755条) これについては「夫婦財産契約との違い」にて後述します。

婚前契約を結ぶ目的

婚前契約を結ぶ目的は主に次の3つがあります。

  • 結婚生活を円滑に進める
  • 将来のトラブルを未然に防ぐ
  • お互いの価値観を明確に把握し、安心感を得る

それぞれについて下記で解説します。

結婚生活を円滑に進める

婚前契約の目的のひとつは結婚生活を円滑に進めることです。 結婚後は住まいだけでなく、生計も同一になります。

また、恋人同士の同棲とは違い、夫婦になると様々な義務を負います。

そのため、家事や育児の分担、親族との付き合い方、家計の管理など、事前に明確なルールを設けることで、感情的な対立を避け、円滑に結婚生活を送れるようにします。

将来のトラブルを未然に防ぐ

「相手方が借金を負っていた」

「隠れて散財していた」

「異性との付き合い方に不満がある」

このように、結婚後は思わぬトラブルが起きるものです。結婚後のトラブルの対応について事前に取り決めておけば、無駄な労力を抑えることができます。

また、離婚では親権や養育費、財産分与など様々な取り決めが必要です。

婚前契約書を作成しておけば、婚姻後のトラブルから離婚に至った際も、感情的な紛争を未然に防ぎ、離婚手続きに係る時間と労力を減らすことができます。

離婚の取り決めのなかでも、財産分与は特に揉めやすい項目のひとつです。

財産分与とは婚姻中に築いた共有財産を離婚時に公平にわけるものです。

財産のなかに相続財産が含まれていたり、自社株を所有していたりすると、解決が難しくなります。

婚前契約で財産についても明確に取り決めておくことで、自分の財産を守ることができます。

お互いの価値観を明確に把握し、安心感を得る

婚前契約をきっかけに互いの価値観を明確に把握することで安心して結婚生活を送ることができます。

趣味や金銭感覚、家族計画、キャリアへの価値観について意図的に話し合う機会を設けることで、結婚生活の基盤を築き、安心感が得られます。

夫婦財産契約との違い

夫婦財産契約との違い

婚前契約のなかでも、特に財産に関する取り決めは夫婦財産契約として、民法で定められています。

通常、夫婦の財産については法定財産制として、民法で定められています。

民法第760条(婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

民法第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

民法第762条(夫婦間における財産の帰属)
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

夫婦財産契約とは上記の定めとは別の内容で夫婦の財産について取り決めることをいいます。

民法第755条(夫婦の財産関係)
夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

民法第756条(夫婦財産契約の対抗要件)
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

夫婦財産契約は上記民法756条の「夫婦財産制異なる契約」に該当します。夫婦財産契約は財産を守りたい人にとっては非常に重要です。

より確実に財産を守りたいなら婚姻届提出前に登記の有無を検討することになります。

登記をすることで、夫婦の債権者など第三者に対しても、契約内容(財産の帰属)を主張できます。

婚前契約と夫婦財産契約の違いを簡単にまとめると以下のとおりです。

  婚前契約 夫婦財産契約
主な契約対象 生活ルール全般、離婚時の取り決め、財産管理 結婚後の夫婦財産の管理、帰属、分担
法的性質 私的な合意(一部例外あり) 民法第755条に基づく財産に関する契約
第三者への効力 なし(当事者間のみ) 登記(入籍前)で第三者に対抗可能
変更の難易度 夫婦の合意があれば可能 婚姻後は原則変更不可(家裁の許可が必要)

婚前契約が注目されるようになった背景

婚前契約が注目されるようになった背景

近年、婚前契約が注目されるようになった背景には、以下のような社会環境の変化があります。

  • 離婚が珍しいことではなくなった
  • 共働き夫婦の増加
  • ライフスタイルや結婚への価値観の多様化

それぞれについて下記で解説します。

離婚が珍しいことではなくなった

近年は日本でも離婚が珍しいことではなくなりました。

結婚とは違い、離婚には財産分与や養育費の不払いなど深刻なトラブルが生じやすい傾向があります。

そのため、離婚についても事前に備えておきたいというニーズが高まるようになりました。

共働き夫婦の増加

近年は共働き家庭増加しています。

厚生労働省の調査によると、2022年の共働き世帯数は1300万世帯中1,262万世帯と、9割以上が共働き世帯であるという結果でした。

従前のように、「結婚後は夫に養ってもらう」という構図が崩壊し、夫婦双方が稼ぎ、別々に資産を蓄えるケースも増えています。

これにより、個人の資産(特有財産)を明確にし、結婚後も自分の資産を守りたいという意識が生まれるようになりました。

参考≫≫
厚生労働省「令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会-(本文)図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移 (https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/22/backdata/02-01-01-03.html)」※1

ライフスタイルや結婚への価値観の多様化

近年、働き方やライフスタイルの多様化が進んでいますが、国際結婚や再婚、連れ子、事実婚、パートナーシップなど、結婚制度への価値観や結婚生活も多様化しています。

これにより、将来の不安が軽減するための手段として様々な取り決めを明確にしておきたいと考え、婚前契約を結ぶという選択を考える人が増えるようになりました。

日本で婚前契約を締結している夫婦の割合については諸説ありますが、まだまだ少ないのが現状です。

一例としてABEMAがオリジナル結婚決断リアリティーショーの放送に先立ち、20代から50代の男女を対象に実施した、結婚に関するアンケート調査をご紹介します。

同調査によると、既婚者のうち、「婚前契約」を締結した人の割合は8.6%と、一割にも満たない結果でした。

日本では婚前契約の需要は高まりつつありますが、まだまだ一般的ではないことがわかります。

参考≫≫
PRTIMES「令和の最新結婚事情を調査!『事実婚・婚前契約』など新たな結婚の形への印象も明らかに!『事実婚』を望む未婚者は9%、『苗字を変えたくない・手続きが面倒』の声(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001365.000064643.html)」※2

婚前契約書を作成するメリット

婚前契約書を作成するメリット

婚前契約書を作成することは、結婚生活と将来にわたり以下のようなメリットがあります。

  • お互いの価値観を事前に認識できる
  • 結婚後のトラブルを減らすことができる
  • 結婚後の財産を守ることができる
  • 婚前の気持ちをいつでも確認できる
  • 離婚にいたった際も揉めにくい

それぞれについて下記で解説します。

お互いの価値観を事前に認識できる

結婚する前に互いの価値観を事前に認識しておくことは非常に重要です。

特に金銭感覚や仕事へのスタンス、親族との付き合い方などは結婚後に揉めやすい問題です。

婚前契約書を作成しておけば、事前に互いの価値観を認識しやすくなり、「一緒に住むまでこんな人だと思わなかった」といった事態に陥ることを防ぐことができます。

また、相手の考えや自分とは価値観が違うことを予め知ったうえで結婚するため、納得感も得られ、トラブルを回避しやすくなります。

結婚後のトラブルを減らし、スムーズに対応できる

婚前契約書で育児や家事の分担、生活費の負担割合など結婚生活のルールを取り決めておけば、トラブルを未然に防ぐことができます。

また、トラブルが起きた際も、ルールを再確認することで対応がスムーズに進みやすくなります。

例えば、不貞行為があった場合の慰謝料やペナルティを婚前契約書に明記しておけば、不貞行為の強い抑止力になります。

婚前契約書を作成すると、口約束とは違い、書面の形で約束した内容を証拠として残すことができるというのもメリットです。

結婚後の財産を守ることができる

従来、婚前契約は資産家が自身の財産を守るために締結する傾向がありました。

一般の方においても、婚前契約書の作成は自分の財産を守ることにつながります。

前述のとおり、結婚後は家計が一つになるため、結婚後に得た財産は共有財産とみなされる可能性が高くなります。

特有財産(個人的な財産)を明確にし、離婚時の分与対象外とすることで、財産保全につながります。

婚前の気持ちをいつでも確認できる

婚前契約書は、婚前の取り決めたルールや内容を書面で残します。

記載された内容や「お互いを大切にする誓いの言葉」などを読み返し、初心を思い出すことができます。

これにより、「相手を大切にしよう」「契約を守ろう」という意欲が働き、円満な結婚生活につながります。

離婚にいたった際も揉めにくい

婚前契約書は円満な結婚生活につながる一方、離婚にいたった際も揉めにくくなります。

離婚では財産分与や親権、養育費など様々な取り決めをしなければなりません。これらの事項は揉めやすく、離婚成立まで長期化する恐れもあります。

離婚で争点になりやすい事項を婚前契約書に盛り込んでおけば、離婚にいたった際も円満かつスムーズに離婚手続きが進む可能性が高まります。

婚前契約書を作成するデメリット

婚前契約書を作成するデメリット

婚前契約書を作成する際は、その性質上、留意すべき点もあります。

  • 結婚前から離婚のことを意識せざるを得なくなる
  • 結婚を拒否される可能性がある
  • 信用されていないと受け取られる可能性がある
  • 結婚前に相手の本性がわかり、トラブルに発展する恐れがある

それぞれについて下記で解説します。

結婚前から離婚のことを意識せざるを得なくなる

婚前契約書には離婚時の取り決めについても盛り込むのが一般的です。

つまり、婚約期間中のお祝いムードのなか、離婚や結婚後のトラブルを想定した話し合いをすることになります。

結婚前にネガティブな気持ちになることをデメリットだと受け取る人もいるでしょう。

結婚を拒否される可能性がある

婚前契約には一定程度否定的な意見があります。

否定的な意見としては「契約なんてしなくても互いに話し合っていけばいい」「結婚前から離婚のことを考えるなんて不自然だ」というものです。

相手が婚前契約に否定的な場合、「互いの愛情を信じられないのか」「所詮結婚は契約なのか」と感じる人もいます。

場合によっては喧嘩になり、「そこまでするなら結婚なんてしない」「こんなことを提案する人とは結婚できない」と婚約破棄に至るリスクがあります。

信用されていないと受け取られる可能性がある

前述のとおり、婚前契約に対して否定的な立場の人は少なくありません。

婚前契約の提案の仕方によっては、「信用されていない」と受け取られ、相手の自尊心を傷つけてしまい、2人の関係に亀裂が入る恐れがあります。

提案する際は婚前契約書を作成するメリットを伝え、「お互いに安心して結婚生活をおくるため」という前向きな姿勢を伝えることが大切です。

結婚前に相手の本性がわかり、トラブルに発展する恐れがある

婚前契約を締結する際は互いに価値観をすり合わせることになります。これにより、相手の本性がわかり、トラブルに発展する可能性もあります。

例えば、一方が自分ひとりでは生活が苦しいため、共働きを望み、2人くらい子供を育てていきたいと思っていたとします。

話し合いのなかで、他方が「実は子供を望んでいない」「結婚したら仕事を辞めたい」「金銭感覚が極端である」といったことが露呈すれば、結婚への意欲が失われるかもしれません。

考え方によっては「結婚前に相手の本性がわかったからよかったのではないか」とも受け取れますが、デメリットだと受け取る人もいるかもしれません。

婚前契約書で取り決めておくべき事項

婚前契約書で取り決めておくべき事項

原則として婚前契約書に記載する内容は自由です。

もっとも、将来の紛争防止や法的効力を持たせたいといった場合に取り決めておきたい内容には以下のようなものがあります。

  • 家事や育児の分担について
  • 夫婦双方の財産の確認
  • 生活費の負担割合
  • 不貞行為やDVがあった場合の取り決め
  • 働き方について
  • 親族や友人との付き合い方
  • セックスや子作りに関する取り決め
  • お互いの愛を確認する内容

それぞれについて下記で解説します。

家事や育児の分担について

婚前契約書に家事や育児の分担を盛り込むケースは非常に多いです。

特に共働きの場合、家事や育児の負担がどちらか一方に偏ることが多いため、事前に取り決めておくことでトラブル回避につながります。

このとき、分担する範囲や時間だけでなく、外部サービスの利用可否などについても取り決めておくと良いでしょう。

夫婦双方の財産の確認

夫婦双方の財産を確認し、どの財産がどちらのものかを決めておくことも大切です。

前述のとおり、離婚の際は財産分与を行い、共有財産を夫婦でわけることになります。

基本的に婚前の個人の財産や、婚姻後であっても相続など個人の名前で取得した財産はその人の特有財産となり、財産分与の対象外です。

しかし、実際には婚姻前の銀行口座に婚姻生活の関係費が入出金されることが多く、特有財産かどうかがわかりにくくなっていることが多いです。

結婚前の財産(不動産、預貯金、株式など)をリスト化し、どちらの所有物かを明確に定めておきましょう。

リスト化したら、下記のように婚姻前後の財産について誰の所有とするのかを定めます。

  • 婚姻前のそれぞれの財産
  • 婚姻中の個人名義の財産
  • 婚姻中の名義不明の財産

なお、経営者が自身の保有する自社株を守るためには、財産分与の対象から自分の保有する自社株式を除外することを明記しておきましょう。

また、婚姻前に保有していた財産を原資として起業した場合も、その会社の持ち分や株式を共有財産に含めないことも明記しておきましょう。

生活費の負担割合

婚姻中の生活費の負担割合も決めておくことが多いです。共働き夫婦の場合、家事育児に加え、生活費も分担するケースが多いでしょう。

一方、専業主婦(夫)の場合は他方が生活費全般を負担することが多いでしょう。

そのため、生活費の負担についても下記のように定めておくと良いでしょう。

  • 婚姻費用(家賃、食費、公共料金など)をどちらがどの程度負担するか(収入に応じた割合、折半など)
  • 管理の仕方をどうするか(給与の一部を共通の口座に入れる、小遣い制にするなど)

なお、子供が生まれたときや妊娠中、育休中、病気、単身赴任のときなどは仕事や家事育児の負担が通常時と変わることが多いです。

状況が変わったときはどのように分担するのかについても定めておくと良いでしょう。

不貞行為やDVがあった場合の取り決め

不貞行為やDVがあった場合の取り決め

近年は婚前から浮気やDVの心配をするカップルもいます。

配偶者からのDV(暴力)や浮気に対するペナルティを設け、婚前契約書に盛り込むことで、一定程度の抑止力につながります。

具体的には、浮気やDVをしないこと、もしそのような行為があった場合は慰謝料〇〇円を支払うといったことを定めます。

浮気については、具体的にどのような行為までを含めるかまで明確に定めましょう。

配偶者以外の者と性行為があれば民法に定める離婚事由に該当するため、婚前契約書に盛り込まなくても離婚は認められる可能性が高くなります。

婚前契約で大切なのは、どのような言動を浮気とみなすかということ、そして慰謝料の金額です。

例えば、配偶者以外の異性と手をつなぐ、キャバクラに行くといったことは不貞行為とはみなされない可能性があるため、法的には慰謝料は発生しません。

そのため、これらの言動については「違約金〇〇円」という形が良いでしょう。

一方、「不貞行為をしても慰謝料は請求しない」という浮気を容認する契約については無効となる可能性が高いです。

これは、夫婦は互いに貞操義務を負うとする民法の価値観に反しており、公序良俗違反と判断される可能性があるためです。

働き方について

結婚後の働き方についてもトラブルになりやすいため、取り決めておくケースがあります。例えば、以下のような例があります。

  • 妊娠・出産後も働き続けるか
  • 転職についてどう対応するか
  • 転勤についてどう対応するか など

また、経営者など休みも関係なく働き続ける方もいます。

双方が納得していれば良いのですが、家族との時間が十分に取れず、関係性が悪化するケースもあります。

そのため、仕事と家庭のバランスを婚前契に盛り込むことで、トラブルを回避できる可能性があります。

親族や友人との付き合い方

親族や友人との付き合い方について取り決めるカップルもいます。親族との付き合い方については以下のような内容があります。

  • 実家への帰省頻度
  • 親の介護が起きたときの対応
  • 親を扶養に入れるかどうか など

友人については以下のような内容があります。

  • 異性の友人とは家族同士で仲良くする
  • 旧来の友人とは月一回であれば会っても良い など

セックスや子作りに関する取り決め

セックスや子作りについて取り決めておくことは重要です。性欲は人によって違いますし、子作りは人生に大きく影響する問題です。

特に女性は妊娠できる年齢が限られていますので、年齢も含めて決めておくことが大切です。

具体的には子供の有無、子供を持つ時期、避妊、セックスの頻度などに関する意向を共有します。

また、子供のしつけや教育方針についても取り決めるケースもあります。

なお、子供を作らないと取り決めること自体は可能です。

しかし、「子作りをしない」という約束を破ったら金銭を請求するという内容は公序良俗に違反すると判断される可能性があります。

お互いの愛を確認する内容

婚前契約書にお互いへの愛や愛情表現について記載するカップルもいます。

例えば、以下のような例があります。

  • 他の異性と2人だけで会わない
  • 毎月一回は2人でデートをする
  • 結婚記念日は2人でお祝いする など

これは、婚前契約書を愛の誓約書として機能させる目的があります。

婚前契約書の作成をおすすめする人

婚前契約書の作成をおすすめする人

婚前契約書の作成が特に推奨されるのは以下のようなケースです。

  • 個人名義の多額の資産がある人
  • 会社経営者

それぞれについて下記で解説します。

個人名義の多額の資産がある人

婚姻前に相続をした人、不動産オーナーやトレーダーなど、多額の個人名義の資産を持つ人は婚前契約書の作成をおすすめします。

また、個人資産や事業資産、投資資産の帰属を明確にしたい場合もおすすめします。

婚前契約書を作成することで、個人資産を明確に区別できるため、離婚に至った際に相手方に財産の半分を渡すことを避けることができます。

会社経営者

会社経営者は婚前契約を強くおすすめします。

前述のとおり、婚姻中に築いた財産は夫婦の共有財産と判断される可能性があります。

会社の株式や事業用資産を、離婚時の財産分与の対象とみなされることを防ぎたい場合は婚前契約書に盛り込んでおきましょう。

なお、米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏は20年以上の間連れ添ったメリンダ・ゲイツ氏と2021年5月に離婚をしました。

このとき注目されたのが、ビル・ゲイツ氏の推定1300億ドル(日本円にして約14兆円)にもおよぶ資産の行方でした。

アメリカでは婚前契約を結ぶことは珍しくありませんが、ビル・ゲイツ夫妻は締結していなかったとの報道があるようです。

2人は離婚合意書を作成し、18億ドル相当の株式をメリンダ氏に譲渡したといわれています。

ビル・ゲイツのケースでは無事に合意できましたが、合意できなかった場合は相手方に資産の半分が渡っていた可能性もあります。

離婚が自社の経営に影響を及ぼすことのないよう、経営者は婚前契約を締結しておくことをおすすめします。

参考≫≫
ForbesJAPAN「ビル・ゲイツと離婚のメリンダ、財産分与で資産2000億円の富豪に (https://forbesjapan.com/articles/detail/41198)」※3

婚前契約書を作成する際の注意点

婚前契約書を作成する際の注意点

婚前契約書を作成する際には注意点があります。

  • 盛り込んでも効力が発揮されない内容がある
  • 変更・取消しには相手の合意が必要
  • 確実に財産を守るなら夫婦財産契約の登記が必要
  • 婚前契約書の判例は少ない
  • 相続については婚前契約ではなく遺言で残す
  • 公正証書の作成は難しい

それぞれについて下記で解説します。

盛り込んでも効力が発揮されない内容がある

婚前契約書には記載があっても効力が発揮されない内容があります。

例えば、公序良俗に反する内容は無効となります。

民法第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

また、離婚時の子供の親権や養育費について記載しても、意味をなさない可能性があります。

例えば、「離婚時の親権は父親が持つ」という内容を記載したとします。

一方、離婚時の子供の親権は子供の福祉を最優先に考慮して決めるものです。

父親が親権者として不適格であった場合、父親が親権者となることが子供の利益に反することになります。

また、不貞行為のペナルティとして「全財産を払う」「慰謝料1億円」など法外な額を設定した場合も効力が発揮されない可能性があります。

このほか、以下のような内容も無効となる可能性があります。

  • 「絶対に離婚しない」といった婚姻の自由を制限するもの 同居扶助義務を否定するもの
  • 夫婦以外の第三者の権利を侵害するもの

婚前契約書の内容は、社会的な常識や公平性を保つ必要があります。

確実に財産を守るなら夫婦財産契約の登記が必要

婚前契約書に財産について盛り込むことで双方の財産を守ることができます。

より確実に財産を守りたいのであれば、法務局にて夫婦財産契約の登記が必要です。

これにより、夫婦の承継人や第三者(夫婦の債権者など)に対抗することができます。

簡単にいうと、「第三者に対して『こういう決まりになっている』と主張できる」ということです。

ただし、登記をすると夫婦財産契約の内容や個人情報が他人に開示されることには注意が必要です。

変更・取消しには相手の合意が必要

婚前契約の内容を変更したり、取り消したりする際は相手方の同意が必要です。

婚前契約書を作成する際は十分に話し合い、内容を共有し、互いに納得したうえで締結しましょう。

また、婚前契約書の内容を勝手に決め、相手方に無理強いすることもNGです。

このような場合、契約内容が無効となる可能性があります。

一方、夫婦財産契約として登記された内容については原則として変更できません(民法第758条1項)。

民法第758条(夫婦の財産関係の変更の制限等)
夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。

婚前契約書の判例は少ない

婚前契約書の判例は少ない

婚前契約書を作成する際、内容が有効かどうかを判断するために判例や法律が参照されます。

しかし、日本での婚前契約の歴史は短く、契約書を締結する人も少ないため、判例が少ない状態です。

そのため、どのような内容が有効で、どこまで認められるかの判断は難しいのが現状です。

相続については婚前契約ではなく遺言で残す

夫婦の一方が相続によって取得した財産は特有財産となるため、財産分与の対象外となります。

一方、自分たちの財産の相続についても結婚前に取り決めておきたいと考えるケースもあります。

例えば、前配偶者との間の子供への相続について懸念があり、婚前契約書に盛り込みたいと考えることがあります。

しかし、これらの内容は婚前契約書ではなく、民法の定める方式で作成した遺言書で残すことになります。

婚前契約書に盛り込んだとしても無効となります。

公正証書の作成は難しい

婚前契約書に法的効力を持たせるために、公正証書にすることを考える人もいるかもしれません。

公正証書とは公証人が作成する公文書のことです。証明力が高く、約束した内容を反故にされた際に速やかに強制執行ができるといったメリットがあります。

しかし、実際には婚前契約書を公正証書にする公証人はほとんどいません。

法的には公正証書にできないというわけではありません。

しかし、婚前契約は「法的拘束力は認められないが取り決めておくこと自体に意義がある」という内容が多く、判例も少ない状態です。

そのため、婚前契約書を公正証書にしたいと依頼しても断られることがほとんどです。

婚前契約を弁護士に依頼するメリット

婚前契約を弁護士に依頼するメリット

婚前契約に法的な有効性と実効性を確保するためにも弁護士に依頼することをおすすめします。

婚前契約を弁護士に依頼するメリットには以下のようなものがあります。

  • 法的有効性・実効性の高い契約書を作成できる
  • 将来のトラブルを想定した条項を提案できる
  • 弁護士が間に入ることで冷静な話し合いができる

それぞれについて下記で解説します。

法的有効性・実効性の高い契約書を作成できる

婚前契約書はどのような内容であっても効力を発揮できるわけではありません。

弁護士なら、将来トラブルが起きたときに備え、法的な効力を発揮しやすく、実効性の高い内容の契約書を作成できます。

将来のトラブルを想定した条項を提案できる

婚前契約書は相手方の同意がなければ、あとから内容を変更したり、解除したりすることはできません。

そのため、将来起こりうる生活の変化を踏まえて作成する必要があります。

弁護士なら、個別のケースに合わせ、数十年先のことまで見据えた適切な内容の契約内容を提案できるため、将来のトラブル予防につながります。

弁護士が間に入ることで冷静な話し合いができる

婚前契約書を作成するケースは少ないため、状況によっては話し合いを進めるなかで、2人の関係性に歪みが入る恐れがあります。

このようなとき、弁護士が間に入ることで話し合いを冷静に行いやすくなり、合意形成まで円滑に進みやすくなります。

また、契約には夫婦生活から財産までデリケートな内容を含むことがあります。

弁護士なら、当事者が言いにくいことも冷静に伝えるため、齟齬が起きにくく、適切な話し合いがしやすくなります。

まとめ

婚前契約は互いの財産や婚姻中のルールについて事前に取り決める契約です。

愛する相手と互いの価値観を共有し、将来のリスクに対する負担を下げる手段といえます。

しかし、日本ではまだまだ婚前契約を締結している夫婦は少なく、婚前契約を結ぶことに抵抗を示す人も少なくなりません。

また、合意した内容すべてが法的効力を持つとは限りません。法的効力と安心感を高めるにも弁護士に相談してから作成することをおすすめします。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚や夫婦の財産問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。

「婚前契約書の作成の仕方を知りたい」「自分たちのケースで取り決めが必要か知りたい」とお悩みの際はぜひお問い合わせください。

※1厚生労働省「令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会-(本文)図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移
※2 PRTIMES「令和の最新結婚事情を調査!『事実婚・婚前契約』など新たな結婚の形への印象も明らかに!『事実婚』を望む未婚者は9%、『苗字を変えたくない・手続きが面倒』の声
※3 ForbesJAPAN「ビル・ゲイツと離婚のメリンダ、財産分与で資産2000億円の富豪に

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