同性愛・LGBTを理由に離婚したい
同性愛・LGBTであることを隠したまま結婚した、あるいは同意のうえで結婚したものの、「自分を偽っているようで辛い」「同性と恋愛をしたい」など、婚姻関係を継続するのが難しくなることもあるでしょう。
では、同性愛・LGBTを理由に離婚することはできるのでしょうか。
この記事では、同性愛・LGBTを理由に離婚できるのかについて解説します。
同性愛・LGBTであることを隠して異性と結婚された方、同意したうえで結婚したが婚姻関係を続けることに不安があるという方は最後までお読みください。
- 目次
LGBTとは
LGBTとは、Lesbian(レズビアン=女性同性愛者)、Gay(ゲイ=男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル=両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー=性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)のそれぞれの頭文字を取ったもので、性的マイノリティを表す言葉の1つです。
LGBTにQueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング=自らの性の在り方について特定の枠に属さない、またはわからない人)を追記し、LGBTQと用いられることもあります。
多様性が叫ばれる昨今、LGBTへの理解やLGBT理解増進法成立の是非が社会問題となっています。
同性愛者・LGBTを理由に離婚が認められるのか
まず、どのような理由であっても、夫婦が話し合いで合意すれば離婚は認められます。
話し合いや調停(裁判所で離婚の合意を図る手続き)で離婚が成立しない場合は訴訟を提起し、離婚裁判を行います。
裁判で離婚が認められるかどうかについては民法で定める法定離婚事由が必要です。これについては「離婚裁判におけるポイント」で後述します。
離婚裁判におけるポイント
話し合い・調停で合意できない場合、離婚裁判に移ります。離婚裁判を成立させるためのポイントについて解説します。
裁判所が離婚の判決をくだすためには法定離婚事由が必要
裁判所に離婚を認めてもらうためには民法が定める法定離婚事由が必要になります。
民法第770条【裁判上の離婚】
①夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
なお、法定離婚事由が認められる場合であっても、自らが離婚原因を作った場合は離婚請求が認められないというのが一般的です。
「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうか
同性愛・LGBTであることは法定離婚事由ではないため、同性愛・LGBTであることを理由に離婚を認めてもらうためには「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが争点となります。
例えば、下記のようなケースです。
- 同性愛・LGBTであることによって長年セックスレスになっている
- 同性愛・LGBTであることを隠して結婚し、それが発覚してショックを受け、夫婦関係が破綻した など
同性愛者との関係は不貞行為に該当するのか
法定離婚事由の1つに不貞行為があります。
従来、不貞行為は「配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」を指すものであり、同性間での肉体関係はあり得ないと考えられていました。
ただし、令和3年2月16日、同性同士が肉体関係を持つことを不貞行為とみなす判決が東京地裁で言い渡されました。
近年、同性愛・LGBTといった性的マイノリティについて認知されつつあります。そのため、今後は不貞行為の概念が広がる可能性があります。
同性との不倫でも慰謝料の支払い義務はあるのか
不貞行為があったと認められれば、不貞行為をした2人は慰謝料の支払い義務を負います。
従来、同性との肉体関係はあり得ないと考えられていました。
しかし、前述のとおり、同性間であっても肉体関係があったことが事実であれば、不貞行為とみなし、慰謝料の支払い義務を負う可能性が高くなります。
LGBTの権利と法律保護
2019年の経済協力開発機構(OECD)の調査によると、LGBTの権利を守る法整備の日本の進捗状況は35カ国中34位という結果でした。
同性婚・パートナーシップ法がない国はG8のなかで日本とロシアのみ、日本にはLGBTを保護するための差別禁止法もありません。また、日本はG7で唯一、同性婚を認めていません。
岸田首相は令和5年2月28日の衆院予算委員会で、同性婚を認めないことは「国による不当な差別ではない」と発言していますが、複数の団体から岸田首相の発言と行動には矛盾があると指摘されています。
これまで、一部の同性カップルが「同性婚が認められていないことは憲法に違反する」として提訴してきましたが、その判決にはばらつきがあります。
令和5年5月20日、G7サミットは「ジェンダー平等に向け努力する」と首脳宣言に掲げ、LGBTなど性的少数者の「人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く非難する」ことで一致しました。
ジェンダー平等については、議長国である日本の遅れについて国内外から指摘されています。
なお、同性婚が制度上認められていないことが憲法違反か争われた裁判にて、令和5年5月30日付で名古屋地方裁判所は「『同性カップルに対し、その関係を国の制度として公に証明することなく、保護するための枠組みすら与えられていない』として憲法24条2項に違反する」と判断しました。
まとめ
LGBT・同性愛を理由に離婚できるかについて解説しました。
現状、LGBTや同性愛だけを理由に裁判で離婚請求しても認められません。しかし、LGBTや同性愛が原因でセックスレスや婚姻関係の破綻が認められれば離婚が認められる可能性があります。
ただし、同性愛やLGBTの問題や法的解釈については今後変わっていく可能性があります。同性愛やLGBTを理由に離婚を考えたら弁護士にご相談ください。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
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