親害とは?親から離婚を強要されても応じてはいけない理由と対処法
親にとって、子供はいくつになっても子供です。
しかし、子供のことが心配なあまり、結婚後も子供夫婦の問題に口を出したり、相手方を悪く言ったりして、離婚を強要する「親害」が起きるケースがあります。
この記事を最後まで読むことで以下のことがわかります。
・親害とは何か
・親害の典型例
・親害を理由に離婚できるのか
・親の勧めで離婚するとどうなるか
・親害への対処法
- 目次
親害とは
親害とは、親が勝手に子供の離婚を決めたり、離婚を強要したりすることを言います。
離婚は夫婦の問題であって、親が決めるものではありません。しかし、子供に対して強い支配欲を持ち、自分の思いのままに動かそうとする親がいるのも事実です。
もちろん、いくつになっても親にとって子供は子供です。子供のことが気になったり、心配したりするのは自然なことではあります。
しかし、子供の生活に過度に口出ししたり、自分の価値観を押し付けたりするのは支配欲が強いだけに過ぎず、親心とは言えません。
なかには「心配だから言っている」などと自分の立場を正当化したり、「子は親の意見に従うべき」と信じ込んでいる親もいます。
一概には言えませんが、このタイプの親に多く見られるのがいわゆる「毒親」です。
毒親とは子供を自分の所有物として捉え、虐待したり、自分の思い通りに支配したりする親を言います。
しかし、親だからという理由で何を言っても良いわけではありません。「夫婦のことは夫婦で決める」が基本だということを頭に入れておきましょう。
親害の典型例
親害の典型的な例は以下の2つです。
- 子供が夫婦問題に悩んでいる際に親が間に入って拗らせてしまう
- 良好な夫婦関係を築いていたのに親の過干渉により離婚に発展
それぞれについて以下で解説します。
子供が夫婦問題に悩んでいる際に親が間に入って拗らせてしまう
代表的なケースとして、離れて暮らす子供から夫婦問題について相談を受け、親が心配して口を出し、拗らせてしまうケースがあります。
典型的な相談例には以下のようなものがあります。
- 夫婦喧嘩が絶えず、結婚生活を続けられない
- 夫(妻)が浮気をしているかもしれない 夫(妻)の浪費がひどい など
子供から悩みを相談されれば、肩入れしてしまうのが親というもの。
本当に子供のことを思うなら「夫婦の問題は夫婦で解決しなさい」など、中立な立場でいるべきですが、感情が暴走してしまうことがあります。
本来なら夫婦で話し合えば解決したかもしれない問題に対し、「そんな相手とは別れなさい」などと言って離婚を迫ったり、無断で弁護士に相談したりするケースがあるのです。
良好な夫婦関係を築いていたのに親の過干渉により離婚に発展
夫婦間に大きな問題もなく、良好な関係を築いていたにも関わらず、親の過干渉により離婚問題に発展するケースもあります。
具体的には子供の結婚相手のことが気に入らないため、悪口を子供に吹き込み、離婚を迫るというものです。
例えば以下のようなものがあります。
- 最近痩せたんじゃない?〇〇さん、ちゃんと生活費渡してくれてる?
- △△(孫)、背が伸びないのね。〇〇さん、ちゃんと食事を与えていないんじゃない?
子供自身がマザコンであったり、親に依存している場合、配偶者に対して悪い印象を抱いていないにも関わらず、親の言うことが正しいと思い込み、離婚を考えてしまうのです。
親害を理由に離婚できるのか
どのような理由であっても夫婦が合意すれば離婚できます。そのため、夫婦が親害を理由に離婚することに合意していれば離婚ができるということです。
ただし、親害を理由に離婚する場合、夫婦のうち一方には離婚の意思がないケースが多いです。そのため、話し合いで合意することは困難と言えます。
話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停は裁判所の手続きですが、あくまで話し合いによって合意を図る手続きです。調停で離婚に合意できれば調停離婚が成立します。
しかし、不成立となった場合は訴訟を提起し、裁判所の判断で離婚を認めてもらうことになります。
裁判で離婚を認めてもらうのは難しい
裁判で離婚を認めてもらうには民法で定める以下の法定離婚事由が必要です。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 回復の見込みがない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
なお、2024年5月に民法改正が成立し、法定離婚事由から4号の「回復の見込みがない強度の精神病」が削除されました。
この改正は2024年5月24日に公布されているため、公布から2年以内には施行されることになります。
親害の場合、法定離婚事由は「夫婦間で何が起こったか」を重視することになります。
「親が離婚を強要したから」という理由では裁判で離婚が認められる可能性は低いと言えます。
もちろん、相手方に不倫やDV、モラハラ家にお金を入れないなどの離婚理由があればそれを理由に離婚が認められる可能性はあります。
一方、親の介入で離婚する場合、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが問題になります。
義両親との関係で離婚にいたった場合、それに対して配偶者がどのような行動をとり、夫婦間で何が起こったかということが重視されます。
例えば、以下のようなケースにおいて、夫婦の信頼関係が崩れ、関係修復が困難になった場合は「婚姻関係が破綻した」とい判断される可能性もあります。
- 義両親との関係性に悩んでいたのに配偶者は協力して解決しようとしなかった
- 義両親と揉めたときも一切味方になってくれなかった
- 配偶者は親に絶対服従の姿勢だった
ただし、「親の口出しがひどかった」というケースであっても、配偶者が関係改善に注力してくれた場合や、味方になって守ってくれたという場合は離婚が認められない可能性があります。
親害で慰謝料請求が認められやすいケース
結論から言うと、親害が理由で離婚する場合、慰謝料請求が認められる可能性は低いでしょう。
しかし、親害の内容によっては不法行為に該当する可能性があります。例えば以下のようなケースがあります。
- 義両親の暴力や暴言に配偶者が加担していた
- 舅(姑)からセクハラを受けたのに配偶者は見て見ぬふりをした
- 親害をきっかけに配偶者から暴言や暴力を受けた
- 義両親や配偶者から私物を捨てられた など
不法行為があったと判断されれば、慰謝料請求が認められる可能性があります。
親に勧められて離婚するとどうなるのか
もし、親から勧められて離婚するとどうなるのでしょうか。
離婚後に後悔する可能性がある
自分の意志ではなく、親が主導で離婚した場合、離婚後に大きく後悔する可能性があります。具体例をご紹介します。
- 自分の時間が取れたのは配偶者が子供を見てくれていたからだと気づいた
- 信頼していた配偶者と別れ、心から頼れるものがなくなった
- 本当は配偶者を愛していた
- 子育てと仕事の両立が困難で困窮した など
離婚は夫婦の問題です。誰かに勧められたからという理由で離婚してはいけません。
また、子供や離婚後の生活のことまで考え、慎重に判断しなければなりません。
再婚が難しくなる
子供に離婚を迫る親がいる場合、再婚の際にも口を出します。
そもそも、再婚は初婚より結婚のハードルが上がるものですが、親としても「同じ失敗をさせたくない」という気持ちが強くなり、神経質になりがちです。
子供としても、「再婚しても同じことを繰り返すかもしれない」と考えてしまい、再婚に踏み切れないこともあります。
また、再婚予定の相手が「この親と関係性を築くのは難しい」と考え、関係構築が困難になることもあります。
ひょっとして親害?と思ったときのチェックポイント
子供夫婦のことを心配したり、口を出したりするものの、最終的には子供夫婦の意思を尊重してくれるという場合は親害とまでは言えません。
親害かどうかのチェックポイントをご紹介します。
- 結婚前の進学先や就職先も親が決めていた
- 夫婦の問題を親が勝手に決めてしまう
- 子供夫婦の意見を聞こうとしない
- 完全同居・二世帯住宅などを強要する など
上記はあくまで一例です。
当てはまったからと言って直ちに親害だと判断するものではありません。
「親害かもしれない」「親害で苦しい」と思ったら専門家に相談することをおすすめします。これについては「第三者に相談する」で後述します。
親害への対処法
「ひょっとして親害かも」と思ったときの対処法には以下のようなものがあります。
- まず相手の気持ちを理解する
- 距離を置き、自立する
- 「自分たちで解決するから口出ししないでほしい」と伝える
- 第三者に相談する
それぞれ以下で解説します。
まず相手の気持ちを理解する
まずは親の気持ちを理解することから始めましょう。
親害を起こす親に悪気はなく子供のことを心配するあまり、口を出してしまうというケースがほとんどです。
また、親には親の価値観があり、「夫婦とはこうあるべき」という固定概念があることも少なくありません。
子供への愛情と固定概念が合わさり、子供に口を出してしまうのです。
特に子供が結婚して家を出ていったケースでは、寂しい気持ちや心配する気持ちが強くなってしまうことがあるのです。
距離を置き、自立する
親害はいきなり始まるわけではなく、これまでの親子関係によって引き起こされることが多いです。
具体的には、結婚前から親が過干渉であり、それを子供が受け入れてきたというケースです。 親
の気持ちを理解したら、距離を置いて自立することが重要になります。親との距離を置く方法としては以下のようなものがあります。
- 別居する
- 連絡頻度を減らす
最初は親も戸惑うかもしれませんが、自分がいなくても子供夫婦が幸せに暮らしていけることに気づけば、納得し、親害も改善する可能性があります。
夫婦の問題以外に、趣味を持つなどして楽しく暮らしていることがわかれば、より安心してもらえるでしょう。
「自分たちで解決するから口出ししないでほしい」と伝える
「夫婦のことは自分たちで解決するから口出ししないでほしい」と伝え、強い意志を持つことも大切です。
もちろん、本当に困ったときは親を頼っても良いでしょう。しかし、親害を防ぎたいなら些細な愚痴や文句は言わないほうが賢明です。
愚痴や文句を誰かに聞いてもらいたいなら、信頼できる友達やカウンセラーなどを頼るのも良いでしょう。
第三者に相談する
親害に悩んだときは弁護士やカウンセラーなどの専門家への相談をおすすめします。
夫婦カウンセラー
「夫婦間に親が出てきて困っている」
「離婚すべきかどうか悩んでいる」
「夫婦関係修復も含めて相談したい」
上記のようなお悩みは夫婦カウンセラーに相談すると良いでしょう。
カウンセラーは客観的な立場で相談者の話を聞いてもらえるため、気持ちを整理することができます。
親に頼らずに気持ちを整理し、夫婦関係が改善できれば、親害防止につながります。
弁護士
ある程度離婚の意思が固まったら弁護士へ相談することをおすすめします。
離婚には財産分与や慰謝料、親権、養育費など多くのことを決めなければなりません。
また、相手が離婚を拒む場合は離婚が成立するかどうかも問題です。
特に親が間に入ってくるケースでは親権や養育費などの離婚条件に親が口を出したり、夫婦の話し合いに親が入ってきたりすることがあります。
弁護士ならそもそも離婚が認められるか、法的にどのような問題があるか、離婚すべきかどうか、どう動くべきかなどについてアドバイスしてもらえます。
まとめ
親害について解説しました。 親が子供に離婚を強要することはできません。しかし、子供夫婦の問題に親が口を出し、離婚問題に発展するケースは少なくありません。
離婚を望んでいないのであれば、親と距離を置き、「自分たちで解決するから大丈夫」と強い姿勢を示すことが大切です。
離婚を望む場合も親に相談することは絶対にやめましょう。
「親に離婚を強要されて離婚問題に発展した」
「離婚が認められるのか」
「相手方に離婚を拒まれている」
「離婚に親が入ってきて困っている」
このようなお悩みの方は弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士なら、離婚後の生活も見据えたうえで、離婚が認められるのか、離婚条件をどう決めるべきかなどについて適切にアドバイスします。
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