食い尽くし系夫との離婚。法的手段と円満解決の可能性

「せっかく準備したのに、いつも夫が家族の分まで食事を平らげてしまう」
「夫がいると人数分以上に食事の手間がかかる」
「数日分作ったつもりが、夫が食べきってしまう」
夫が食事を食い尽くしてしまうことで毎日疲弊していませんか?
「たかが食事でしょ」「円満な家庭の証拠じゃないか」などと周りは言うかもしれません。
しかし、あなたにとっては日常生活を脅かすほどの深刻な問題かもしれません。
食事のたびに夫の顔色をうかがったり、子供や自分の分を確保するために工夫しなければならなかったり…
そんな生活に疲れ果て、離婚を考えている方もいるかもしれません。
この記事では、そんな夫の食い尽くしに悩むあなたに向けて、離婚を考える前に知っておくべきこと、そして円満解決の可能性についてお話しします。
- 目次
食い尽くし系とは
食い尽くし系とは、周りのことを考えずに、目の前の食べ物をすべて食べてしまう人のことです。
よくあるケースに以下のようなものがあります。
- 家族で食べるはずのおかずを夫がひとりで完食してしまった
- あなたや家族のために用意したデザートを夫が勝手に食べてしまった など
これだけ聞くと「ただ食いしん坊なだけじゃない?」「食事を美味しく食べるなんて良いことじゃないか」と思う人もいるかもしれません。
しかし、食い尽くしは単なる大食いではありません。
あなたの気持ちや家族の生活を顧みない自分勝手な行動であり、積み重なることで夫婦関係に歪みが生まれてしまうのです。
食い尽くしは離婚理由になるのか?
では、食い尽くしは離婚理由になるのでしょうか。
結論から言うと、夫婦の話し合いで合意できればどのような理由であっても離婚は可能です。
夫婦が話し合い、合意することで成立する離婚を協議離婚といいます。
そのため、協議離婚であれば、食い尽くしが理由であっても離婚が成立します。
しかし、話し合いがまとまらず、裁判で離婚が場合は離婚が認められるためには以下の5つの法定離婚事由が必要です。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みがない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
なお、2024年5月に民法改正が成立し、法定離婚事由から4号の「回復の見込みがない強度の精神病」が削除されました。
この改正は2024年5月24日に公布されているため、公布から2年以内には施行されることになります。
食い尽くしは上記の離婚事由のうち、1~4には当てはまりません。
該当する可能性があるとすれば、5の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」になります。
ただし、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまるためには、食い尽くしが原因で夫婦関係が修復不可能なほど破綻していることを客観的に立証する必要があります。
例えば、以下のようなケースです。
- 食い尽くし以外に配偶者が外で働くのを許さない、生活費を渡さない、生活費を使い込むなどの問題がある
- 食い尽くしがきっかけで暴力を振るったり、暴言を吐かれたりして精神的に追い詰められている
- 食い尽くしが原因で夫婦仲が悪くなり別居している など
このように、食い尽くしを巡る言動により精神的苦痛を受け、長期間別居しているケースや、食い尽くし以外に生活費を使い込むなどの別の問題が存在する場合は離婚が認められる可能性があります。
離婚を視野に入れたらまずやるべきこと
もしあなたが「もう関係修復は無理だ」と感じているなら、離婚を切り出す前にやるべきことがあります。
具体的な行動としては次のようなものがあります。
- 記録を取る・証拠を集める
- 離婚条件を整理する
- 離婚後の収入源や住居を確保する
- 別居も選択肢に入れる
- 弁護士に相談する
それぞれについて以下で解説します。
記録を取る・証拠を集める
まずは、夫の食い尽くしの記録や食い尽くしに伴う問題行動の証拠を集めましょう。
- いつ、何を、どれくらい食べ尽くしたか
- 夫の食べ尽くしによりどのような被害が生じたか(家計や家庭生活への影響など)
- 食い尽くしが原因で暴力や暴言があった場合はその日時と内容
- 食い尽くしが原因で暴力や暴言があった場合はその様子の動画や写真 など
これらの記録や証拠は交渉や裁判での証拠に使える可能性があります。
また、弁護士に相談する際や自分の頭のなかを整理することにも役立ちます。
離婚条件を整理する
離婚の話し合いの際は以下のような離婚条件について取り決めることになります。
- 財産分与
- 慰謝料(相手方が不倫やDV、モラハラなどの離婚原因を作った場合)
- 親権(子供がいる場合)
- 養育費(子供がいる場合)
離婚条件について、何をどこまで希望するのか、何をどこまでなら妥協できるのかを細かく決めておきましょう。
こうすることで、離婚の話し合いがスムーズに進みやすくなりますし、弁護士との相談の際も便利です。
なお、財産分与は夫婦の共有財産を正確に把握しておくことが重要になります。
離婚を切り出す前に共有財産に何がいくらあるのか調べておきましょう。
また、慰謝料請求が認められるためには、離婚原因があったことを立証できる証拠が必要です。
2024年5月に成立した改正民法では離婚後の共同親権が導入されることが決まっています。
しかし、改正民法施行前に離婚が成立する場合は現状の単独親権が原則となります。
養育費は双方の収入や子供の人数・年齢によって相場があります。詳しくは裁判所のウェブサイトを参考にしてください。
参考:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について( https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)」※1
離婚後の収入源や住居を確保する
離婚しても生活が成り立つのかを現実的に考えておくことも重要です。
- 今の仕事で離婚後の生計を立てられるか(すでに働いている場合)
- 転職や新しい仕事を探す必要があるか
- 子育てと仕事の両立は可能か(子供を連れて離婚する場合)
- 離婚後に住む場所をどうするか(実家に戻る、賃貸物件を借りるなど)
離婚後の生活の目処が立てば、それだけでも不安は軽減され、気持ちが楽になります。
別居も選択肢に入れる
いきなり離婚するのではなく、一度別居することも有効な手段です。
別居することで、夫婦双方が冷静になり、お互いの関係を見つめ直す時間を持つことができます。
また、離婚する場合も、別居期間が長ければ長いほど、「夫婦関係が破綻している」ことを客観的に証明する材料にもなります。
ただし、別居の仕方によっては離婚の際に不利になる恐れがあります。
別居する前に弁護士に相談し、アドバイスを受けながら行動することをおすすめします。
弁護士に相談する
食い尽くしが原因で離婚を考えている場合、弁護士に相談することを強くお勧めします。
ここまで説明したとおり、食い尽くしだけでは法的に離婚が認められる可能性は低いといえます。
しかし、現在の状況や他の原因の存在によっては離婚が認められる可能性はあります。
弁護士はあなたの現状を聞いたうえで、法的な観点で離婚成立の可能性や進め方をアドバイスしてくれます。
離婚前に別居する際も、後々不利にならないようなアドバイスをもらうこともできます。
また、弁護士に離婚手続きを依頼することで、代理人として相手方と交渉してくれるため、交渉がスムーズに進みやすくなるだけでなく、精神的な負担も減らすことができます。
離婚する前に試すべき解決策
離婚はあくまで最終手段です。その前にまずは夫との関係修復を試みることも大切です。
具体的な解決策としては次のようなものがあります。
- 食い尽くしで離婚する例があることをほのめかす
- 食い尽くしが家計を圧迫していることを示す
- まとめ買いをしない
- 料理は小皿・小出し
- 食い尽くしで苦しんでいることを話し合う
- 夫婦カウンセリング
それぞれについて下記で解説します。
食い尽くしで離婚する例があることをほのめかす
ひょっとすると、夫は自分の食い尽くしで妻が苦しんでいるなんて想像もしていないかもしれません。
夫の食い尽くしに悩んでいることを伝える前に、それとなく、食い尽くしで離婚する例があることを伝えてみましょう。
例えば、「タレントの〇〇さん、夫の食い尽くしが理由で離婚したらしい」などと伝えます。
それでもなお、夫は食い尽くしで離婚すること自体が理解できないかもしれません。
このような場合、「家族の分も夫が食べてしまうため、食事の準備が大変になる」「夫の食事の準備が妻を追い詰めている」など、食い尽くしが離婚原因になる経緯を話しましょう。
夫側に「妻とうまくやっていきたい」という意思があれば「俺がやっているのは食い尽くしかもしれない」と振り返り、「君を追い詰めていたのか?」「無理しているなら言ってくれ」などの反応を示すでしょう。
なお、伝えるタイミングとしては、夫が食い尽くしを行っている最中に話すほうが良いでしょう。
時間を空けてから伝えても「そんなに食べてない」「大袈裟だ」などとあしらわれる可能性があります。
食い尽くしが家計を圧迫していることを示す
夫は「食事くらいで大袈裟さだ」「誰にも迷惑をかけていない」などと思っているかもしれません。
このような場合夫の食い尽くしが家計にどう影響しているかを具体的に示してみましょう。
- エンゲル係数(家計に占める食費の割合)が増えている
- 食費が圧迫して貯金ができていない
このとき、夫の食事の準備に妻がどれだけ時間をかけているかも併せて伝えると良いでしょう。
事実を冷静に伝えることで、夫も事の重大さに気づくかもしれません。
まとめ買いをしない
夫が一度にたくさんの食べ物を見て興奮したり、思わず手が出てしまったりするようであれば、ストック買いやまとめ買いをやめてみましょう。
食材は足りなくなってから少しずつ買うようにします。家の中に余計な食べ物がなくなれば、食い尽くしも起きにくくなるでしょう。
料理は小皿・小出し
大皿に盛り付けると、夫は無意識のうちに他人の分まで食べてしまう可能性があります。
そのため、以下のように盛り付けを工夫するのも良いでしょう。
夫の分と家族の分を最初から小皿に分けて盛り付ける
作り置きのおかずはタッパーに小分けにし、テーブルに出さない
物理的にわけることで、無意識に食べ尽くされるのを防ぐ効果が高まります。
食い尽くしで苦しんでいることを話し合う
夫の食い尽くしであなたが苦しんでいることを話し合うことは非常に重要です。しかし、感情的になってはいけません。
「食事をするなということか」「何が悪い」などと反発される可能性があります。
「あなたが全部食べてしまうから私は食事を楽しめない」「あなたが家族の分も食べてしまうから私は食事の準備に追われて毎日が苦しい」など、あなたの素直な気持ちを冷静に伝えてみましょう。
事実を伝え、それに対してあなたがどう感じているのかを「I」メッセージで淡々と話すことが大切です。
夫婦カウンセリング
夫婦だけではどうにもならないと感じたら、夫婦カウンセリングを受けることも選択肢のひとつです。
中立的な立場のカウンセラーが間に入ることで、今までにはなかった解決策が見えてくるかもしれません。
まとめ
食い尽くしを理由とした離婚について解説しました。
食い尽くしを行う夫はまさか自分の行動があなたを苦しめているとは想像もしていないかもしれません。
まずはここで紹介した解決策を参考にし、対策を講じましょう。
離婚という道を選ぶにしても、円満に解決するにしても、ひとりで悩まずに行動を起こすことが現状を変える第一歩です。
様々な対処法を試したものの解決せず、婚姻生活を続けるのが苦しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚や男女問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。お気軽にお問い合わせください。
参考:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」※1
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