子供の親権を勝ち取るために離婚前にすべきこと|親権の相談は離婚弁護士へ
子供を持つ夫婦が離婚する場合、「離婚後も子供と暮らしたい」と思う人も多いでしょう。
ただし、法律では離婚の際に夫婦のどちらが親権者となるのかを決めなければいけないことになっています(民法818条)。つまり親権者を決めなければ離婚できないのです。
では、そもそも親権とはどういうものなのでしょうか。この記事では、未成年の子供を持つ夫婦が離婚する際に親権獲得に有利になるポイントや親権を勝ち取るための方法について説明します。
親権とは?親権者の義務や責任は?
親権とは未成年の子供を持つ親が負う義務や権利のことです。親権は財産管理権と身上監護権(監護権)の2つに大きく分かれます。
財産管理権
財産管理権とは、子供の財産を管理し、その財産に関わる法律行為を代行する権利・義務です。財産管理権は民法824条で定められています。
第824条
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
身上監護権(監護権)
身上監護権とは、子供を監督しながら保護・養育する権利・義務です。身上監護権には以下のような権利が含まれます。
- 懲戒権:子供に対して必要な範囲で叱ったり、しつけをする権利
- 居住指定権:子供の住む場所を親が指定する権利
- 職業許可権:子供が職業に就く際に親がそれを許可する権利
- 身分上の行為の代理権:子供が法律行為を行う際に親が同意したり代行する権利
親権と監護権の違いは?
前述のとおり、監護権は親権に含まれるものです。したがって、親権を持つ者が監護権も行使できることになります。
子供の福祉の面においても、親権者と監護権者が同じほうが良いと考えられています。
ただし、仕事の都合などで親権者が子供を監護することができない場合は親権者と監護権者を別にすることもあります。
親権者にある義務や責任は?
親権を持つということは、子供が健康で安全に暮らせるように守り、しつけ、代行する必要があります。
そのため、親権者は子供のために使う時間やお金を負担しなければなりません。このことをしっかりと肝に銘じておきましょう。
親権者を決める方法
原則は離婚前の夫婦間協議
離婚はまず夫婦で話し合いを行い、それでも話がまとまらなければ離婚調停、離婚裁判へと進みます。
離婚時に役所に提出する離婚届けには子供の親権者を記入する欄があります。したがって、離婚の話し合いの際には夫婦どちらが親権を持つのかを決めなければなりません。
あとから親権者の変更もできますが、手続きが複雑ですし、相手と折り合いがつかないこともあります。また、子供の福祉の面からも親権者が頻繁に変わらないほうが良いとされています。
したがって、親権者の指定は離婚の際に慎重に決める必要があります。
協議がまとまらない場合は調停
夫婦の話し合いでは親権が決まらない場合、離婚調停へと進みます。離婚調停は家庭裁判所で行いますが、あくまで当事者同士で合意するまで話し合う方法です。
離婚調停でも親権に対して夫婦が合意しない場合は訴訟を起こし、離婚裁判を行います。
家庭裁判所の調査官による面談も
離婚調停で親権を争う際、裁判所の調査官が子供と面談したり、学校や家庭訪問を行い、夫婦のどちらが親権者として適切なのかを調査します。具体的な調査項目は以下の7つです。
- 子供との面談
- 家庭訪問での生活環境調査
- 子供の学校訪問
- 現在までの子供の養育環境
- 今後の養育方針
- 適切な親権者であることを裏付ける調査
- 親権者として不適切であることを裏付けられる調査
調停が成立しない場合は裁判所の審判
離婚調停で親権が決まらない場合は親権者を指定するための審判手続きに移ることがあります。これを親権者指定の審判手続きと呼びます。
審判とは、離婚自体には夫婦の合意が得られているが、わずかな条件面で折り合いがつかない場合に行うものです。
審判は調停とは異なり、家庭裁判所が認定する事実に基づき、裁判官の職権で判断する方法です。
裁判所が出した判断に不服がある場合は、審判が出されてから2週間以内に異議申し立てを行うことができます。異議申し立てを行うと審判は無効になります。
最終手段は離婚訴訟
審判は異議申し立てによって効力がなくなってしまいます。そのため、一般的にはあまり行われていません。
したがって、離婚調停で親権が決まらない場合、最終手段として訴訟を起こし、離婚裁判によって親権を決めるのが一般的です。
離婚裁判は法律に則って裁判所が親権者を決める方法です。ただし、訴訟を起こすとなると時間もお金もかかります。
親権者として認められやすいポイント
離婚は夫婦が合意すればどのような条件であっても成立します。これを協議離婚といいます。つまり、親権についても夫婦間で合意ができればどちらが親権者になっても良いのです。
ただし、話し合いでは成立せず、調停や審判、訴訟に進むと、どちらが親権者として適切かを裁判所から判断されることになります。
夫婦のいずれかに離婚原因がある場合、「婚姻関係が破綻したのは相手のせいだ!親権まで渡すなんて絶対いや!」と思うかもしれません。
もちろん、離婚原因によっては子供の福祉に影響をおよぼすこともあるため、考慮されることもあります。しかし、親権者の指定と親の離婚原因には関係がないというのが基本です。
親権者として適切かどうか裁判所が判断するポイントを以下で説明していきます。
子供への愛情
親権者として適切か判断する際、まずどちらが子供へ多く愛情を注いでいるかがポイントになります。しかし、どちらが多く愛情を注いでいるかなんてわからないですよね。
基本的には、どちらの親が子供と長く過ごしたかという時間で判断しています。現時点で子供と同居していることも有利になります。
親権者の経済状況や収入が安定している
子供を育てるということはそれだけお金がかかるということです。
離婚しても子供を安全かつ健康に養育するために十分な収入があるかなど、経済状況が安定していることも判断されます。
もちろん、収入が少ないからといって親権者になれないというわけではありません。もし収入が少なくても収入が多いほうの配偶者から養育費などをもらうことになるからです。
とはいえ、経済力のあるほうが親権者に選ばれやすいのは確かです。
親権者が肉体的・精神的に健康である
子供を養育するには体力も精神力も必要です。したがって、親権者が肉体的にも精神的にも健康であることが重要になります。
生活環境の変化による子供の生活への影響
どちらが親権者になるかによって、子供の住環境が変わる可能性もあります。そのため、以下の項目を考慮し、より子供への影響が少ない親権者を指定する傾向があります。
- 現在の環境(交友関係、学校や地域)への子供の適応状況
- 環境変化に対する子供の適応能力
子供への監護状況
これまで、どのように子供の養育・監護に携わってきたかも親権者指定の際に判断されます。「現在の監護状況に問題がないのなら、そのまま継続させるほうが良い」と判断するためです。
また、離婚後に子供を養育・監護する時間を確保できるかどうかも判断されます。離婚が成立すればどうしても片親が監護・養育することになります。
そのため、子供の養育に親族(祖父母など)の協力が得られるかどうかも考慮します。
以上のことから、親権獲得の際は母親が有利になりがちだと言われています。
しかし、父親であっても子供優先のライフスタイルに変えられるのであれば、親権獲得へのアピールポイントになります。
兄弟姉妹が離れ離れにならないか
兄弟(姉妹)がいる場合、一緒に育つほうが子供の成長にとって良いとされています。そのため、子供たち全員の親権を1人の親権者が持つことが多いです。
離婚後の面会交流への姿勢
基本的に子供は両親から愛情を注がれることが好ましいと考えられています。そのため、離婚後に親権を持たない親と子供が面会交流することも子供の成長に必要なこととされています。
離婚したら元配偶者とは関わりたくないという気持ちはわかります。子供にだって会わせたくないでしょう。
しかし、面会交流は子供のための権利でもあります。面会交流という子供の成長に必要な権利に対して、どれだけ協力的かということも親権者指定の際に考慮されます。
子供の年齢や性別
一般的には乳幼児であるなど、子供が幼い場合は母親が親権を持つほうが好ましいとされています。また、子供の性別についても考慮されることがあります。
子供の意思
協議で親権が決まらず、調停や審判、訴訟に進んだ場合は家庭裁判所の調査官が子供と面談を行い、子供の意思を確認します。
子供が幼い場合は判断能力が乏しいため、それほど重要視されません。
しかし、子供の年齢が15歳以上の場合、家庭裁判所は必ず子供の意思を聞くことになっているため(人事訴訟法32条4項)、子供の意思が尊重されます。
親権争いを有利に進めるコツ
離婚では親権者がなかなか決まらず、争いに発展することは多いです。どうすれば親権獲得に有利になるのでしょうか。
配偶者を批判しない
離婚は夫婦だけの問題です。あなたが離婚したいと思っている相手は子供にとっては大切な親に代わりはありません。
親権者指定は子供の福祉の側面があります。親権を得たいためとはいえ、親同士が争っている姿を子供に見せるのは子供の福祉に反します。
つまり、相手を非難してばかりいると親権者指定の際に不利になってしまうのです。
親権を獲得するためにも、相手を非難したりせず、自分のほうが親権者として適切であるというプラスの面をアピールしましょう。
子供を味方につけない
子供は本来なら両親に離婚なんてしてほしくないはずです。家族みんなで仲良く暮らすことを願っていることが多いです。
そんな子供にプレゼントやお金を与えて関心を引くことや、「パパとママ、どっちと暮らしたい?」など子供にどちらの親と暮らしたいかを選ばせるのは子供にとって残酷です。
子供の福祉にも反します。
親権者としてふさわしいことをアピールする
親権者指定には、子供と長く過ごしたことや養育監護に強く携わっていることが考慮されます。
そのため、どれだけ長く子供と過ごしていたか、子供の養育監護にどのように携わっていたかをアピールしましょう。
また、転職やフレックスを利用するなど、離婚後に子供を優先した生活に変更することなどをアピールするのも重要です。
子どもの手続き代理人制度を利用
「子どもの手続き代理人制度」とは、弁護士が子供の代理人となり、子供の本心を探り、裁判官や親に対して意思表示や意見を述べる際のサポートを行う制度です。
子供が状況を正確に理解するために相談に乗ることもできます。
この制度はあくまで子供の本心を正確に伝えるための制度です。したがって、親権争いをしている当事者のうち、どちらかにとってはあまりうれしくない内容のこともあります。
たとえこのような場合であっても、子供のためを思った態度・行動をとり、裁判官に対して子供への愛が深いことをアピールしましょう。
親権が得られなかった場合は面会交流権の主張を
どんなに努力しても親権が獲得できないこともあります。このような場合は面会交流権を主張することができます。
面会交流権とは
面会交流権は離婚後に親権を持たない親が子供と面会できる権利で、民法によって定められています。
面会交流権を求める手続き
面会交流権を求める場合も、まずは夫婦間での話し合いで決めていきます。
話し合いで解決しない場合は家庭裁判所にて調停を申し立て、面会交流について決めていくことになります。これを面会交流調停といいます。
面会交流調停では以下のようなことを決める必要があります。
- 面会頻度
- 面会する時間
- 面会する場所
- 送り迎えの有無
- 親同士の連絡方法
なお、面会交流については離婚したあとでも決めることができます。
しかし、離婚後に夫婦で面会交流について話し合う機会が持てないこともあります。必ず離婚する前に話し合いや調停などで面会交流について決めておきましょう。
まとめ
離婚する際の親権の決め方や親権を獲得する方法について説明しました。
親権者指定は離婚前の子供との関係性や、離婚後に養育監護ができるかどうかが大きく影響します。
離婚に強い弁護士に相談することで、どのようなことをアピールすれば親権獲得に有利かアドバイスができ、親権を獲得しやすくなります。
また、調停や裁判の際も、依頼者が有利になるポイントを伝えてくれます。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は親権問題に強い弁護士を多く掲載しています。ぜひご活用ください。
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