離婚後に親権を獲得するには!獲得するためにすべきことをまとめました。
今回は、離婚をするにあたって避けては通れない話題である「親権」の獲得について解説しています。
多くの人が離婚後の親権を望みますが、どのようにすれば獲得できるのでしょうか。
親権獲得までの流れと、「親権を決める基準」「どちらが有利なのか」といった疑問解決しながら、親権を獲得するための必要事項を見ていきましょう。
- 目次
親権を争う場合の離婚調停の流れについて
まずは、親権を争う場合の調停の流れについて紹介します。
通常、離婚をする際の子供の親権は、夫婦間で話し合いをして決めます。夫婦の間で親権などの離婚条件が決まる離婚を「協議離婚」と呼び、離婚のなかでも9割を占めます。
しかしながら、夫婦間で話し合いがうまくいかない場合は、家庭裁判所に仲介に入ってもらい離婚条件を決める「調停離婚」となります。
それでも決まらない場合は、「裁判離婚」での判決により離婚条件を決めなければなりません。
親権を争う場合は、家庭裁判所への申告が必要となるため、必要な準備物や申告方法から申告後の家庭裁判所の動きについて見ていきましょう。
必要な書類を準備しよう
話し合いで親権が決まらなければ、家庭裁判所へ離婚調停の申告を行います。第3者が入ることでお互いに冷静になって話し合うことができ、客観的な意見も聞くことができます。
離婚調停を申し立てる際は以下の書類を用意しましょう。
- 申立人の印鑑
- 夫婦の戸籍謄本(子供の記載も省略せず)
- 夫婦関係調整調停申立書
夫婦関係調整調停申立書は、家庭裁判所でもらうか、裁判所のホームページからダウンロードすることで入手できます。
用意する際は、「提出用の原本」「相手に送付用の写し」「申立人用の写し」の3通が必要となります。そのため、原本製作後に2枚コピーを取っておくようにしましょう。
家庭裁判所でもらう申立書では、複写式になっているものがあり、この際はコピー必要ありません。
相手方にも送付されます。現住所や連絡先等、相手方に知られたくない情報について、秘匿が可能なケースもあります。秘匿を希望される場合は、一度裁判所にご確認下さい。
夫婦関係調整調停申立書には、個人情報などに加えて下記の記載も必要となります。
- 親権者
- 面会交流
- 養育費
- 財産分与
- 同居
- 別居の時期
- 申し立ての動機 etc.
基本的に、行われる調停の内容は夫婦関係調整調停申立書に基づくため、この申立書に記載した以上の有利な解決は難しくなります。
最低限の条件ではなく、しっかりと希望する離婚条件を記載することが大切です。申し立ての動機などは、事実に基づき全ての要因を記載しましょう。
申立書に記載がないということは、その事項に関して強い主張がないと捉えられる可能性があります。
「家庭内暴力があった」「不貞行為があった」など、主張したい内容について、具体的な事実・行動をしっかりと記載することが大切です。
家庭裁判所へ調停を申し立てよう
書類の用意ができたら、相手方の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
申し立てを行い受理された後は、約1カ月で期日通知書が送付され、下記のような流れで離婚の調停がなされていきます。
- 申し立ての受理
- 調停期日の決定
- 第1回の調停
- それ以降の調停
- 調停の終了 etc.
調停期日の決定
調停は月に1回裁判所に出頭し、調停委員の質問に答えながら希望を主張します。そのため、調停が成立し離婚にいたるまでは、一般的に4か月~6か月かかることになります。
第1回目の調停・それ以降の調停
第1回目の離婚調停には、「期日通知書」「印鑑」「身分証明書」を持参しましょう。
期日通知書には、離婚調停に関する注意事項が記載されているため、丁寧に確認しておきましょう。
調停は、裁判官または調停官1人に加え、実際に離婚の経緯や条件などについて話し合う調停委員の計2人を交えて行われます。
当日は、夫婦が同時間に裁判所に出頭しますが、顔を合わせなくて良いように配慮されており、別の待合室で待機できます。
質疑に関しては申立人から行われ、調停委員の以下のような質問に答えていくことなります。
- 離婚したい理由
- 婚姻生活中の動向や現状
- 復縁について
- 離婚条件について
- 離婚後の生活について etc.
いずれについてもしっかりと返答・自分の主張を発信できることが大切です。申立人の質疑が終わった後に、相手方の質疑が行われます。
質疑の時間は、申立人も相手方も同様に30分程度となります。相手方の質疑が終われば、再び申立人が呼ばれ、相手方の主張を知らされます。
この相手方の主張に対する説明・質疑も30分程度行われ、その後は再度相手方も呼ばれ、2度目の申立人の質疑に対する説明や質問が30分程度なされます。
このように、調停1回につき2度の話し合いの場がそれぞれ30分ずつ設けられているのです。
家庭裁判所調査官による調査
調停は夫婦からの聞き取り以外に、心理学・教育学・社会学などの専門家である「家庭裁判所調査官」による調査が行われる場合があります。
調査官による調査を行うかは、調停委員会の担当裁判官が決定いたします。
この調査は、下記のような内容を確認するために実施されます。
- 現在までの子供の養育
- 監護は夫婦どちらが主体であったか
- 子供に対する愛情など、父母のどちらが親権を持つのがふさわしいかの裏付け
- 今後の養育・監護方針について
そして、調査官から提出される情報は、調停における親権者の決定に大きな影響をおよぼすことに注意が必要です。
家庭裁判所の調査官は以下のような方法で調査を行っていきます。
子供との面談
子供から学校や友達の話を聞き、普段の生活のなかに父親・母親がどのように関わっているのかを調べます。またそれに対する子供の気持ちについても把握していきます。
小さな子供の場合は「どちらが好きか」「どちらと住みたいか」などという、質問はどちらにも好意を持っている子供の気持ちを傷つけてしまいます。
そのため、調査官は、フリートークや心理テストを使って、子供の気持ちを間接的に確認します。
学校訪問
幼稚園・保育園・学校・児童相談所などへ訪問し、子供の生活環境・成績・学校へ行くときの身なりになどについて調査します。
家庭訪問
実際に家庭に赴き、生活環境や親子関係について調査します。
- 家の中が片付いているか
- 清潔に保たれているか
- ケガの有無 etc.
以上のようなポイントから、子供がどのような環境で生活しているのかを判断します。そのため、調査官への協力や社会的な常識のある態度が必要となります。
その他にも、母子手帳の記載や健康診断の結果など事実に基づく判断も行われます。
また、調停では、家族それぞれの生活に関するタイムテーブルの提出が求められます。このタイムテーブルは、適切な養育がなされているかを確認するためのものです。
学校の送迎や食事の用意・一緒に遊んだりする時間など、子供と親との関わりをきちんと報告することが大切です。
仕事や時間の都合上、子供との関わりが薄くなることもありますが、この事実によって親権獲得に対して、不利になることもあるため注意が必要です。
父親・母親との面談
父親・母親それぞれとも個別に面談したり、場合によっては子供の祖父母とも面談を行うケースもあります。
調停の終了
離婚調停で決着がつかなければ、
- 離婚調停を不成立として、離婚訴訟を提起する方法
- 離婚について審判(24条審判)による方法
- 離婚手続きと親権者指定の手続きを分離する方法
という方法があり、いずれかの方法で、親権の問題に決着をつけることとなります。
しかし、審判での決定に異議がある場合、2週間以内であれば「即事抗告」が可能で、申し立てた場合は高等裁判所での審理となります。
高等裁判所による審判にも不服であれば最高裁判所での審理することも可能ですが、あまり一般的ではありません。
離婚後に親権を獲得するための基準とは
審判や裁判で親権を獲得するためには、裁判官からの親権者の指定を目指すこととなります。ここからは、親権者の指定に繋がる具体的な基準について解説していきます。
- 子供に対する愛情
- 子供を養育していくための時間を作れるか
- 経済力があるか
- 養育を補助できる人の有無
- 親の精神的
- 肉体的な健康状態
- 学校や自宅などの生活環境
- 子供に関する事情
- 現在までの監護状況
- 将来の監護状況
以上のような「親としての適正」と「子供の事情」が主な親権者指定の判断基準となっています。有利な事実はしっかりと、具体的に説明できるようにしておきましょう。
子供の幸せを考え、「どのような教育やしつけをはじめ、子供との時間の過ごし方などをして来たのか」についてしっかりと伝えることが大切です。
親としての適正は客観的事実を基準に判断される
先述した親権者指定の判断基準となる「親としての適正」は「父親・母親に関する客観的事実」から判断されます。
子供は環境の変化に対して敏感に反応してしまいます。そのため、親権者の指定では子供の心の負担が少なく、より幸せだと判断される選択がなされます。
親権を得るためには「子供を幸せに育てていくことができるのか」がポイントとなります。
子供に対する愛情
子供に対する愛情は、親権の獲得には当然と思われるでしょうが、その判断は「客観性」が、重要となります。
愛情は目に見えない判断基準であるため、客観的事実からしか判断できないためです。一般的に子供と過ごした時間が長い方が、愛情が大きいと判断されます。
子供を養育していくための時間を作れるか・経済力があるか
育児に充てる時間を作れるのか・経済力があるのかについては、物理的に子供の養育が可能であるかの判断基準となります。
養育に充てる時間が長い方・より経済力がある方が、親権者には有利となります。
しかし、経済力に関しては、親権者とならなくても扶養義務があることから養育費が支払されるため、決定的な基準とは言えません。
養育を補助できる人の有無
一人親の養育を補助できる人(監護補助者)として、子供の祖父母などの存在も考慮されます。
親の精神的・肉体的な健康
親権者は、長期入院が必要であったり、精神状態が不安定でなく、精神的にも肉体的にも健康であることで、養育・監護能力あると判断されます。
夫婦双方に大きな問題がなければ、決定的な基準とはならないケースが多いです。
学校や自宅などの生活環境
学校や自宅などの生活環境は、主に先述した家庭裁判所の調査官の調査報告により判断され、特に重要視される基準です。
現在までの監護状況・将来の監護状況
現在までの監護状況・結びつきの他に、将来的な監護状況についても指定の基準となります。
親権者の離婚後の生活スタイルが、子供の生活に寄り添ったものであれば、適切な養育・監護が期待できる親と判断されます。
子供側の事情や判断基準について
父母の状態・状況に関する基準に加えて、子供に関する事情も、親権者の指定では重要な判断基準となります。
子供の年齢
子供が0~10歳までの間は特に、子供の成長には母親が必要だと判断されやすくなっています。
兄弟・姉妹がいる場合も人格形成の面から、幼い時期に引き離さないよう配慮もなされます。
子供の意思
15歳以上の子供であれば、しっかりと自分の意思を持つようになっているため、子供の意思を尊重する判断がくだされます。
そのため、裁判所で子供自身が父親・母親どちらについていくか聞く機会が設ける規定があります。
ある程度子供の年齢が上がれば、子供自身の考えや意思が親権者の決定に大きく影響してくることとなるのです。
子供と父親・母親それぞれとの結びつき
父親・母親とどちらとの結びつきが強いのかについても、親権者指定の基準となります。
現在までの教育や養育に対する関わりや貢献度が高く、より子供と接してきた方が、親権を得られる可能性が高くなります。
子供の生活環境の維持
子供にとって大きな環境の変化が同時に起こることは、健全な成長に影響をおよぼし、心に大きな負担がかかります。
そのため、従来の環境の適応状況や新しい環境への適応性についても判断の基準となります。このことから、現在の生活環境の維持が可能であるかも、重要なポイントです。
離婚後親権を獲得しようとした場合、どちらが有利なのか
親権の獲得には、前項で紹介したような基準に従って総合的に判断されます。
しかしながら、親権者の指定は「子供の幸せ」を考慮した結果であり、子供が健やかに成長するために必要な要素を備えていることが重要となります。
このことから、実は親権に関しては、約8割が母親に付与されているのです。当項では、なぜ母親が親権獲得に有利であるか、父親が親権を獲得しにくい理由について解説します。
基本的には母親側が有利
子育て、特に子供が幼い間は、母親が子供にとって重要な存在であるため、大きな問題がない場合は、母親が親権獲得には有利とされています。
基本的に親権の獲得に母親が有利となる理由は「親権獲得のための基準」と「子供の人格形成」に関係があります。
「親権獲得のための基準」との関係
現代の日本では、女性の社会進出が進んだとは言っても、まだまだ家事や育児の多くは女性が担っています。
そして、子育ての主体や子供と接する時間が長いのも、母親であるケースがほとんどです。
そのため、客観的事実から父親よりも母親との結びつきの方が優っている判断される傾向にあります。これは親権獲得の基準となる「現在までの監護状況」という客観的な事実が重視されるからです。
また、男性は、育児の経験が乏しかったり、親権獲得後に育児に十分な時間が取れない可能性も高くなります。
そのため、幼い子供の場合は、将来的な養育・監護が難しいと判断されてしまうこともあります。
「子供の人格形成」との関係
親権の決定においては、「幼い子供の成長には母親の愛情が大切」という考えが少なからず存在します。
そのため、子供の成長・人格形成には母親が必要だと判断されるケースも多く、子供が父親・母親どちらと暮らしたいか自分の意思をしっかりと持ち出す前の10歳未満の場合は、母親が親権獲得に有利となるケースが散見されます。
子供自身の人格がすでに形成されている年齢の場合には、子供の意思の聞き取りから、子供の意見も反映されます。
離婚後に親権を獲得しようとした際にすべきこと
離婚後も子供と生活するためには、親権者と監護者をそれぞれ別に指定するケースを除いて、多くの場合で親権の獲得が必要となります。
母親が親権を得るケースが多く、親権の獲得には母親が有利であることは事実です。
しかし、以下のようなケースでは母親が親権を獲得できず、父親が親権を獲得する場合もあります。
- 母親が育児放棄をしていた
- 母親が不貞行為などで子供に強い悪影響を与えた
- 現在まで父親が子供との養育・監護をしており、子供と父親の結びつきが強い
- 現在、父親の両親と同居し養育・監護している
- 子供と父親が別居している原因が、母親が子供を連れ去ったことにある
- 現在の生活環境の維持が可能
ここからは、父親・母親に関係なくより有利に親権を獲得するために、押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。
共通するポイントは、先述した「親の適正を父親・母親に関する客観的事実から判断する」という、親権獲得のための基準にあります。
相手より優位に立てるようアピールできるかで、親権者となれる可能性が変わってくるのです。
離婚調停委員をなるべく味方にしよう
離婚の調停は、家庭裁判所の裁判官(又は調停官)と調停委員からなる調停委員会で行われます。
実際に質疑を行い、相手方の主張を伝える役割は離婚調停委員であるため、離婚調停委員に好印象を持たれている方が、話し合いが有利に働く可能性があります。
裁判官・離婚調停委員は「子供の幸せ」を一番に考えた結論を望みます。
親同士が強く批判しあったり、悪口を言い続けることになると、教育や福祉的観点から考えて、離婚調停委員への印象が悪くなります。
また、自分に対する質疑や基準が厳しくなることも考えられます。
家庭裁判所の調査官による調査に備える
家庭裁判所調査官の報告は親権獲得に大きな影響を与えるため、調査官からの印象や報告な内容には特に配慮が必要です。
家庭裁判所調査官は、学校訪問や申立人以外とも面談を行い、具体的事実を調査していきます。そのため、調査員による調査に対しては有利に働くよう介入はできません。
一方、家庭訪問や自分に対する面談に関しては事前に備えることができます。礼儀正しい対応であったり、家の片付け・掃除・家事などは済ませておきましょう。
社会的なマナーやルールを守り、子供に対してもそれらを教えていくことができる親であることをアピールしなければなりません。
相手より自分がふさわしいということを主張する
自分にプラスになる事柄に関しては、しっかりと裁判官・離婚調停委員に主張していきましょう。
これまで自分が子供に対してどのように子育てをして、どれだけ将来を見据えた行動してきたのかを具体的に説明できるようにしておきます。
また、将来的な生活設計や教育方針について、しっかりとまとめ、子供との生活について現実的な計画を立てていることも大切になってきます。
相手のマイナスを指摘する場合は、感情的にならず事実のみ指摘するようにしましょう。
子供を不幸にさせる行動や言動をしたのか、もしくは育児に関わってこなかった事実など具体的に説明していきます。
子供を味方につける
子供が15歳以下であれば家庭裁判所調査官の報告が、15歳以上であれば本人の意思が、親権者の指定に大きな影響を与えます。
一般的に子供は、普段から遊んだり、よく世話をしてくれる親の方が、一緒にいたいという気持ちが強くなります。そのため、親権の獲得には子供の意思が味方となる場合もあるのです。
しかし、無理やり子供を味方に付ける行為は、健やかな成長の妨げとなり、裁判官への印象も悪くします。
子供の気持ちはナイーブで、傷つきやすいものです。親権を得るために気持ちを否定したり、無視したりする行為はやめましょう。
夫婦のどちらかが、味方につけようとプレゼントを渡したり、父母どちらかを嫌っているよう主張させることも控えたほうが良いでしょう。
まとめ
今回は、離婚時の親権を「調停」で決めることについて、申し立て方法から親権獲得のポイントや判断基準を合わせて紹介しました。
子供の親権は、子供の負担をいかに減らし、幸せになれるかが争点となります。判断基準は客観的事実であるため、将来的な養育・監護が重要視はされます。
しかし、普段から子供と接する時間が長いという実績や育児能力がある方が、親権獲得には有利となります。
離婚調停で親権を得たい場合には、現在までの育児への関わり方から、自分に有利に働くポイントをまとめることから始めてみましょう。
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