離婚が成立しやすい別居期間は何年?別居に必要な準備や生活費を知ろう

「離婚したいけどなかなか配偶者が応じてくれない」「別居して離婚成立につなげたい」という人もいるでしょう。しかし、ただ別居すれば離婚理由として認めてもらえるわけではありません。
この記事では、離婚理由として認めてもらうためにはどのくらい別居すれば良いのか、また別居後に困らないために別居前にしておくべき準備について説明します。
- 目次
別居の定義とは
別居とは文字どおり別々に暮らすことをいいます。しかし、一方が単身赴任をしている夫婦の場合、別々に暮らしていても別居には該当しません。
別居というのは「夫婦としての共同生活をしていない」ということです。単身赴任であっても、妻の待つ家を拠点として生活していれば別居とはありません。
別居のメリット
別居のメリットには大きく2つあります。
- 離婚原因を作ることになる
- 離婚する意思が強いことが相手に伝わる
別居のデメリット
別居のデメリットには以下があります。
- 夫婦関係を修復しにくくなる
- 離婚原因を作ったことを理由に離婚請求されることがある
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基礎知識2018.11.20
離婚したいけれど、とりあえず一旦別居して考えようという人もいるでしょう。しかし、別居もやり方を間違えると…
なぜ別居すると離婚が成立しやすくなる?
一般的に「別居をすると離婚しやすくなる」と言われています。では、なぜ別居によって離婚しやすくなるのでしょうか。
別居で離婚が成立しやすくなる理由を説明する前に、裁判で離婚が認められる理由を説明していきます。
裁判上の離婚が認められる原因と理由
話し合いや離婚調停でも離婚が成立しない場合、訴訟を起こし、裁判で離婚を認めてもらう必要があります。
裁判で離婚を認めてもらうためには民法で定められた離婚理由が必要です。これを法定離婚事由といいます。法定離婚事由には以下の5つがあります。
- 第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 -
- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
配偶者に不貞な行為があったとき
既婚者が配偶者以外の異性と性的関係を持つことを不貞行為といいます。配偶者に不貞行為が認められた場合は離婚理由として法的に認められます。
配偶者から悪意で遺棄されたとき
悪意の遺棄とは、正当な理由なく別居をしたり相手方の生活を脅かす場合を言います。
具体的には、さまざまな事情を総合して判断されますが、悪意の遺棄に該当すると判断された場合、離婚理由として認められます。
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
配偶者が消息を絶ってから3年以上生死不明な場合は離婚理由として認められます。
「生存していることがわかっているが行方不明である」という場合は離婚理由として認められません。
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
配偶者が精神病で夫婦生活に必要な協力・扶助が果たせない状態で回復の見込みがない場合、配偶者の将来の生活などにある程度の見通しが立つ状態になっていれば離婚理由が認められることがあります。
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
上記のいずれの理由にも該当しないが、夫婦関係を継続できないと判断された場合は離婚理由として認められます。例えばDVや長期間の別居などが該当します。
夫婦関係が破綻しているかどうかの基準になる
前述の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とみなされるかどうかは、婚姻関係が破綻しているかどうかで判断します。
裁判所が婚姻関係が破綻しているかの判断を行う際、「別居しているかどうか」を考慮します。つまり、別居していれば婚姻関係が破綻していると判断されやすくなるのです。
離婚成立に必要な別居期間は何年?
別居していれば婚姻関係が破綻していると判断されやすくなると説明しました。では、どのくらい別居すれば夫婦関係が破綻していると判断されるのでしょうか。
通常であれば5~10年はかかる
過去の判例では、別居期間が5年以上になると夫婦関係が破綻しているとみなされる傾向があるようです。
ただし、別居期間が長いか短いかの判断は婚姻期間との相対関係で判断されるため、ケースバイケースになります。
有責配偶者からの離婚請求が認められるには
DVや不倫など夫婦のいずれかが離婚原因を作っている場合、その配偶者を有責配偶者といいます。
基本的に有責配偶者からの離婚請求は認められないというのが原則です。
ただし、別居期間が長く、未成熟子がおらず、相手方が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれるなど著しく正義に反すると言えるような特段の事情がない場合は有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があります。
前述のとおり、別居期間が長いか短いかは同居期間に対する年数で判断します。
有責配偶者からの離婚請求の場合、別居期間にくわえ、未成熟子がいないことや離婚後の相手方の状況などを加味したうえで総合的に判断することになります。
別居する前に準備すること
別居すると決めたからといって、何の準備もせずに家を出ると別居後の生活が困難になることがあります。別居する前に準備しておくことを以下で詳しく解説します。
新しい住居を確保する
別居を考えるなら、別居中の住まいを確保しなければなりません。子供を連れて別居する際は子供の通学先も考慮して探す必要があります。
自分の実家を頼る
別居中の住まいとして、真っ先に思いつくのが自分の実家ではないでしょうか。きちんと事情を話せば受け入れてくれることも多いです。
もちろん、離婚前提で別居しているため、肩身が狭いというデメリットはあります。しかし、子供の世話や家賃など総合的に考えるとメリットのほうが大きいでしょう。
自分の実家の近くに家を借りる
通勤や子供の通学にも問題がないようであれば自分の実家近くで家を借りるのも良いでしょう。
実家の近くであれば経済的な支援や子供の面倒を見てもらえるといったことも期待できます。
DVなどが原因なら支援センターに一時保護を求める
配偶者からのDVや暴力が原因で別居するなら実家は避けましょう。配偶者に自分の居場所がわかるような場所は選ぶべきではありません。
支援センターなどに相談し、シェルターで保護してもらえるように依頼するのが良いでしょう。
一時的な別居ならウィークリー(またはマンスリー)
マンションも有効 離婚を前提としておらず、あくまで結婚生活を継続するための冷却期間として別居を考えるならウィークリー(またはマンスリー)マンションの利用も良いでしょう。
ウィークリーマンションの多くは敷金・礼金が不要で、家電など生活に必要なものが揃っているため、引っ越しの手間も省けます。
ウィークリーマンションは手軽に借りることができる一方、入居時の審査が甘いともいえます。そのため、どのような人が周りに住んでいるかわからないというデメリットがあります。
子供の養育環境を確保する
別居をする際は子供の養育環境を確保しなければなりません。特に子供が学校や幼稚園に通っている場合は住む場所を慎重に選ぶ必要があります。
もしDVなどの問題がなく、実家が近くにある場合は、実家や実家近くに家を借りることで、子供がこれまで通っていた学校や幼稚園にそのまま通うことができます。
しかし、やむを得ずこれまで住んでいた場所から遠く離れる必要がある場合は、子供に転校を強いることになります。
この場合、子供の様子や意思を尊重し、どうしても転校したくないようであれば住民票を移さずに別居先や実家から通わせることも検討しましょう。
離婚に有利な証拠をとっておく
離婚を前提に別居するなら、別居する前にDVや不倫などの離婚原因にいたった証拠を集めておくと良いでしょう。
別居後は配偶者が証拠を廃棄してしまう可能性もあり、証拠を集めることが難しくなります。
DVやモラハラが原因で離婚を考えている場合
DVやモラハラが原因で離婚を考えるなら、別居前に以下のものを集めておくと良いでしょう。
- DVやモラハラで受診した際の診断書
- 警察や配偶者暴力相談支援センターへ相談した記録
- 暴言の録音 など
浮気や不倫で離婚を考えている場合
配偶者の浮気や不倫で離婚を考えているなら、以下のものを別居前に集めておきましょう。
- 不倫相手と2人で宿泊したと推測できる通話記録やSNSの通信記録
- 不倫相手と2人でラブホテルに出入りする写真
- 一人暮らしの不倫相手の家に出入りする写真
- ラブホテルの領収書
- 配偶者や不倫相手が不倫を認めた発言を録音したものや書面 など
相手の収入や共有財産を把握する
離婚して慰謝料請求する場合、有責配偶者の収入によっては慰謝料を増額できる可能性があります。また、子供の養育費も配偶者の収入が多いほど高額になります。
さらに、離婚する際は夫婦の共有財産を公平にわけることになりますが、配偶者の収入や財産を正確に把握しておかなければ、損をする可能性もあります。
収入や財産を把握するためには、配偶者の源泉徴収票や預金通帳、不動産などを確認する必要があります。
しかし、別居してしまうと配偶者が自分の財産を隠すこともあります。必ず別居する前に配偶者の財産や収入の証拠となるものを持ち出しておきましょう。
別居中の生活費はどうする?
専業主婦など、生活費のほとんどを配偶者が負担していた場合、ほかの方法で別居後の生活費を確保しなければなりません。どのように確保すれば良いのでしょうか。
婚姻費用をの分担を求める
夫婦になると婚姻費用分担義務が発生します。婚姻費用とは婚姻中の夫婦と未成熟子の生活費のことです。婚姻費用は別居中であっても分担する義務があります。
たとえば、以下のようなものが婚姻費用として認められます。
- 居住費
- 日常の生活費
- 子供の学費や生活費 など
婚姻費用の請求方法
婚姻費用は夫婦の話し合いで決まるのであれば自由に決めることができます。しかし、実際にはなかなか払ってもらえないケースもあります。
このような場合は、裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てます。婚姻費用分担請求調停では以下の「養育費・婚姻費用算定表」を参考にすることが多いです。
また、話し合いで婚姻費用を決める際もこの算定表を参考にすることがあります。
参考:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
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補助金や助成金を利用する
専業主婦など収入がない場合、別居が長期化すると生活が苦しくなることもあります。特に子供を連れて別居している場合は大変です。
このような場合、以下のような制度を検討してみると良いでしょう。
児童手当
児童手当とは、0歳から15歳に達した年度の年度末まで(中学卒業まで)の子供の養育者に対し、行政が支給する手当のことです。
児童手当は、別居中で子供と同居している親にも支給されます。ただし、実際に手続きする際は離婚協議中であることや子供の世話をしているという証明が必要になります。
支給される児童手当の金額(月額)は以下となります。
- 0歳〜3歳未満:15,000円(一律)
- 3歳〜小学校卒業まで:10,000円(第1子、第2子)※第3子~15,000円
- 中学生:10,000円(一律)
児童手当の支給を受けるためには市区町村に申請が必要です。また、児童手当には所得制限があります。必ず居住地の市区町村役場・役所で確認しましょう。
児童扶養手当
児童扶養手当は、ひとり親家庭で育つ児童を対象に国が支給する手当です。児童扶養手当の申請は各自治体の窓口となります。
支給対象は0歳〜18歳に達した年度の年度末までの子供がいるひとり親家庭です。
児童扶養手当も所得制限があり、前年の所得に応じて全額の手当が支給される「全額支給」、一部のみが支給される「一部支給」、「不支給」に分かれます。
別居中であっても、配偶者から1年以上生活費が支払われていない場合やDVによる保護命令を受けている場合は支給対象になります。
平成30年4月から平成31年3月の児童扶養手当金額(月額)は以下となっています。
- 第1子 全部支給42,500円、一部支給42,490円~10,030円
- 第2子 全部支給10,040円、一部支給10,030円~5,020円
- 第3子 全部支給6,020円、一部支給6,010円~3,010円
上記の数字は子供1人あたりの金額ではありません。なお、児童扶養手当は物価スライド制が導入されており、全国消費者物価指数によって支給金額が見直されます。詳しい金額は居住地の役所へ問い合わせましょう。
必要であれば生活保護を受ける
生活保護制度とは、世帯全員の能力や資産を駆使してもなお生活に困窮する人が、健康で文化的な最低限度の生活を送るための制度です。
日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
別居中であっても配偶者が婚姻費用を負担しないといった場合は生活保護の申請が可能です。生活保護の申請や相談は居住地を所轄する福祉事務所となっています。
離婚を考えるなら弁護士へ相談
離婚を視野に入れて別居するなら、別居前に弁護士に相談すると良いでしょう。
別居前は離婚に有利となる証拠を集めておく必要がありますが、どのような証拠が有効かわからないこともあります。
弁護士に相談すれば、どのような証拠をどう集めるべきかアドバイスしれます。
また、別居する際、やり方を間違えるとあなたが離婚請求されることもあります。どのように別居すれば有利な離婚成立へつなげられるのか、弁護士と相談して進めると良いでしょう。
まとめ
離婚を成立させるために必要な別居期間や別居前にしておく準備について説明しました。
離婚を自分に有利に進めるためにも別居前に弁護士に相談しておくことが重要です。最近は無料相談を実施している弁護士や法律事務所も増えていますので、活用することをおすすめします。
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