離婚したら子供の戸籍、親権はどうなる?戸籍を変更する手続きは必要?
子供を持つ夫婦が離婚すると、夫婦のどちらか一方を親権者に決めなければなりません。
離婚すると夫の戸籍から妻が抜けるケースが多いですが、戸籍を抜けた妻が親権を獲得した場合、離婚後の子供の戸籍や姓はどうなるのでしょうか。
また、離婚後は実家の戸籍に戻るのが良いのか、新しく戸籍を作るのが良いのかなど悩むこともあるでしょう。
この記事では夫の戸籍から抜けた妻が親権を獲得した場合を例に、離婚の際の戸籍について必要な手続きや子供の戸籍の扱いについて説明します。
- 目次
戸籍とは
戸籍とは個人の身分を公的に証明する文書です。原則として、1組の夫婦と同じ姓の未婚の子供を編成単位として管理しています(戸籍法6条)。
届出をしていない人を除き、日本国民は原則として全員戸籍に入ります。
戸籍簿には、日本国民の国籍と、届出に基づき出生、婚姻、離婚、死亡などが記されます。戸籍簿とは「その人が生まれてから亡くなるまでのルーツの記録」と考えると良いでしょう。
戸籍制度は、日本国民について家族単位で把握し、戸籍簿で管理する世界でも珍しいシステムです。
結婚
結婚すると、婚姻届の提出により戸籍が新たに作られます。
初婚の場合、親の戸籍に入っていた男女2人がそれぞれ抜けて新しい戸籍を作ることになります。
一般的には戸籍の筆頭者(これから名乗る姓の側の人)を夫とし、妻が夫の姓を名乗るケースが多いようです。
例)1つの戸籍に夫(筆頭者)と妻
出生
子供が生まれたら出生届の提出によって戸籍に子供が記載されます。夫(子供の父)が戸籍の筆頭者の場合、子供はその戸籍に入って父と同じ姓を名乗ります。
例)1つの戸籍に夫(筆頭者)、妻、子供
離婚した夫婦の戸籍はどうなるのか
戸籍の筆頭者が夫の場合、離婚後の戸籍は以下のようになります。
- 夫→変更なし
- 妻→戸籍から抜ける(除籍される)
なお、戸籍から抜けた妻の離婚後の戸籍は以下のどちらかとなります。
- 婚姻前の戸籍に戻る(復籍)
- 自分で新しい戸籍を作る
それぞれ、以下で詳しく解説します。
婚姻前の籍に戻る(復籍)
結婚などで他の戸籍に入った人が、離婚などで前の戸籍に戻ることを復籍と言います(戸籍法第19条)。
ただし、以下のようなケースでは復籍できない場合があります。
- 旧姓ではなく、婚姻時の氏を続けて名乗りたい場合(戸籍内は同一の氏で統一)
- 子供を自分の戸籍に入れる場合(同一の戸籍には二世代まで。親、子、孫の三世代は入れない)
- 復籍しようとした戸籍が除籍になっている場合(戸籍にいた全員が死亡で除籍、など)
なお、結婚前に親の戸籍に入っていた人の場合、親の戸籍へ戻って旧姓を名乗ることになります。これを復氏と言います。復氏については「婚氏続称制度とは」にて後述します。
新しい戸籍を作成する
新しく自分の戸籍を編製する場合、旧姓と婚姻時の姓のどちらかを選べます。また、戸籍の本籍地も自由に決めることができます。
新しく住む家を本籍地にしておけば役所へのアクセスが良く、戸籍謄本や住民票などが必要になったときに大変便利です。
【新しい戸籍を作るケース】
- 旧姓に戻るものの、婚姻前の戸籍には戻らず、自分の戸籍を作りたい場合
- 婚姻時の氏を名乗りたい場合 ※婚氏続称の届け出が必要
- 子供を自分の戸籍に入れたい場合
- 婚姻前の戸籍が除籍になっており、復籍できない場合
- 両親がすでに他界していて戻る戸籍がない場合
なお、新しい戸籍を作ったら婚姻前の戸籍に戻ることはできません。離婚後の戸籍をどうするかについては慎重に判断しましょう。
婚氏続称制度とは
何も手続きをしなければ、結婚時に改姓した人は離婚すると旧姓に戻ります。これを復氏と言います(民法第767条第1項)。
長い間夫の姓で結婚生活を送っていると、旧姓に戻ることで子供の学校や友人関係、自分の勤務先などに離婚したことを知られたり、パスポートなどの名義変更が必要になったりするため、煩わしさが増えます。
また、子供への影響を考えて離婚後も子供と一緒に婚姻中の姓を名乗りたいと考えることもあるでしょう。
このような場合、婚氏続称制度を利用することで婚姻中の姓を離婚後も使用することができます(民法第767条第2項)。
婚氏続称を行うためには、離婚の日から3か月以内に本籍地のある市区町村役場・役所に必要書類を提出し、手続きを行う必要があります。
離婚の日とは協議離婚の場合は離婚届の受理日、裁判離婚の場合は裁判の確定日などとなります。
婚氏続称の手続きで必要なものは下記となります。
- 離婚の際に称していた氏を称する届
- 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
- 届出人の印鑑
「離婚の際に称していた氏を称する届」は各市区町村役場・役所の窓口、またはホームページからダウンロードして入手できます。
なお、婚氏続称の手続きは親族や元配偶者から許可を得る必要はなく、自分だけで手続きを行うことができます。
離婚後の姓は自分だけでなく子供にも影響をおよぼします。婚氏続称を選択するかどうかについては、子供の生活や将来のことも考えて慎重に判断しましょう。
離婚した日から3か月を過ぎてしまった場合は居住地を管轄する家庭裁判所に「氏の変更許可の申立て」を行わなければなりません。
「氏の変更許可の申立て」が認められるのは、家庭裁判所が「やむを得ない事由」と判断した場合です。
判例では比較的柔軟に「氏の変更許可の申立て」を認められたケースもあるため、期限を過ぎてしまったからといってあきらめる必要はありません。詳しくは弁護士にご相談ください。
離婚後の子供の戸籍はどうなる?
母親が親権者になった場合も子供は父親の戸籍に入ったまま
筆頭者である夫、妻、子供で構成された戸籍から、離婚して妻(母親)が抜けたとしても子供の戸籍は元夫(父親)の戸籍に入ったままになります。
つまり、両親が離婚しただけでは子供の戸籍は変わらないということです。
親権者が母親になったとしても、自動的に子供が母親の戸籍に入るという仕組みはありません。
そのため、子供を自分の戸籍に入れたいのであれば、別途入籍の手続きが必要です。
復籍した場合、子供は同じ戸籍には入れない
戸籍は夫婦(親)と子の単位で構成されるため、在籍できるのは二世代までとなります。三世代目にあたる孫は在籍できません。
つまり、離婚後、親の戸籍へ妻が復籍した場合、自分と同じ戸籍に子供を入れることはできないということです。
自分と子供を同じ戸籍にするのであれば、復籍ではなく自分を筆頭者とした戸籍を新しく作り、子供を入籍させる手続きが必要です。
母親が婚氏続称しても子供の戸籍は別のまま
婚氏続称制度を利用し、婚姻時の姓で妻(母親)が自分を筆頭者とした新しい戸籍を作ったとします。
この場合、見かけ上は母親と子供は同じ姓になりますが、子供は元夫(父親)の戸籍に入ったままです。
母親の戸籍に子供を入れるためには別途入籍手続きを取らなければなりません。
離婚後子供と母親の戸籍が違うことでどのような影響があるのか
それでは、母親と子供が別々の戸籍の状態で起こる影響には、どんなものがあるでしょうか。
戸籍謄本取得
母親と子供の戸籍が別々だと、子供のパスポート申請や結婚、相続など子供に関して戸籍謄本や戸籍抄本が必要になった際、元夫の本籍地の役所に戸籍謄本や抄本取得の申請を行わなくてはなりません。
遠方だと郵送での申請になるため時間がかかりますし、離婚理由によっては元夫に頼むことを避けたい人もいるでしょう。
また、戸籍には附票というものがあり、戸籍に在籍する人の住所の履歴が記録されています。
つまり、元夫は戸籍に在籍している子供の現住所を調べられるため、母親と子供が引っ越したとしても居所を知ることができるのです。
DVなど、離婚理由によっては今住んでいる場所を元配偶者に知られることでトラブルにつながる可能性があります。十分に注意しましょう。
母親と子供の姓が別の場合
旧姓に戻った母親と、父親の戸籍に残った子供は戸籍も姓も別々になります。
この状態を子供がどう思うかということもありますし、学校などで保護者の名前を記載した書類を提出する際、親子で異なる姓を記載することになります。
母親と子供の姓が違っても日常的にはさほど問題がないかもしれません。しかし、場合によって、周囲に親子だとわかってもらうために煩わしさを感じることがあるかもしれません。
子供の入籍手続きをする方法
ここからは母親が新しく作った戸籍へ子供を入れる場合の手続きについて説明します。
手続きの際は発行手数料や申立の手数料などが必要となるため、家庭裁判所や役所・役場に問い合わせたうえで準備をしましょう。
①離婚後の戸籍謄本の取得
まず父、母、子、全員の戸籍謄本(全部事項証明書)を取得する必要があります。
戸籍謄本の取得は、戸籍の本籍地のある市区町村の役所・役場の窓口やサービスカウンターでの請求のほか、郵送での取り寄せ、自治体によってはコンビニ交付などに対応しているところもあります。
詳しくは自分の本籍地を管轄する市区町村の役所・役場に問い合わせてみましょう。
②子供の氏の変更許可申立
母親と子供の氏を同じくするため、子供の住所を管轄する家庭裁判所へ子供の氏の変更許可の申立を行います。
下記に必要なものを挙げましたが、場合により追加書類が必要になることがあります。
事前に申立を行う家庭裁判所へ確認するようにしてください。
子の氏の変更許可申立書(裁判所のウェブサイトからダウンロードできます)
- 父、母、申立人(子)の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 収入印紙800円(子供1人につき)
- 連絡用の郵便切手(家庭裁判所へ要確認)
参考:裁判所「子の氏の変更許可」
③市区町村の役所・役場で入籍の届け出を行う
家庭裁判所から子供の氏の変更許可がおりたら審判書の謄本をもらいます。
入籍届など必要書類を準備して、届出人(子供または子供が15歳未満の場合は親権者)の所在地もしくは本籍地の市区町村役所・役場の戸籍課で手続きをします。
入籍に必要な書類は以下となります。
- 家庭裁判所が発行した氏の変更許可の審判書謄本
- 入籍届(市区町村役所・役場の戸籍課で用紙をもらう。サイトからダウンロードできる自治体もある)
- 戸籍謄本(全部事項証明書)
届出を行う市区町村が本籍地と同じかどうかなどによって必要書類の有無が異なります。
入籍手続きについては入籍届の用紙を入手する際など、事前に役所・役場へお問い合わせください。
まとめ
離婚は考えることが多く、手続きなどに追われるため、戸籍のことまでゆっくり考えられないかもしれません。
しかし、戸籍や姓は自分だけでなく、子供の現在、将来につながる大切な問題です。子供の気持ちを汲み取り、弁護士のアドバイスを受けながら進めましょう。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚後の子供のことなど離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
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