婚姻費用とは?相場と支払い期間について

基礎知識
弁護士監修
婚姻費用とは?相場と支払い期間について

夫婦関係が悪化したものの離婚するのは躊躇われるため、ひとまず別居するという方もいます。

別居を考えた際に気になることして「別居中の生活費」があるかと思います。別居中の生活費は婚姻費用として配偶者に請求できる可能性があります。

この記事では婚姻費用とは何か、相場や支払期間、支払われなかった場合の対処法を解説します。

夫婦関係悪化に悩んでいる方、別居したいが別居中の生活が心配という方は最後までお読みください。

目次
  1. 婚姻費用とは?
  2. 婚姻費用の金額
    1. 婚姻費用の相場
  3. 婚姻費用の請求が認められないケース
    1. 自ら別居をした場合
    2. 自分が別居する原因を作った場合
    3. 相手側に支払い能力がない場合
  4. 婚姻費用の支払い期間
    1. 支払い期間
    2. 婚姻費用が支払われない場合
  5. まとめ

婚姻費用とは?

婚姻費用とは、婚姻中の夫婦の生活を維持するために必要な費用のことを言います。

民法第752条に「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定されており、夫婦には婚姻費用を分担する義務があります。

別居中であっても、婚姻中であれば夫婦の義務は変わりません。そのため、離婚するまでの間、収入が多い側が少ない側に対して婚姻費用を支払うことになります。

婚姻費用の金額

婚姻費用の金額

婚姻費用には光熱費や食費、住居費など衣食住に関する費用、子供の教育費や医療費、養育費などが含まれます。

離婚後の養育費には配偶者の生活費は含まれません。そのため婚姻費用の金額は養育費よりも高額になります。

話し合いで合意できれば婚姻費用はいくらでもかまいません。しかし、話し合いで婚姻費用が決まらない場合は調停や審判で決めることになります。

調停や審判では、裁判所が公開する算定表を基準として婚姻費用が算出されます。

参考:裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について(https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)」※1

婚姻費用の相場

令和3年の司法統計によると、夫が支払い義務者(妻が権利者)の場合、婚姻費用の月額は6万円~15万円が半数以上を占めました。

婚姻費用の相場

参考:裁判所「令和3年司法統計年報3家事編(https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/597/012597.pdf)」※2

なお、この数値は裁判所を介して婚姻費用を取り決めた場合の結果になります。

婚姻費用の金額は夫婦双方の収入や職業、子供の年齢、人数を基準に算出します。

つまり、婚姻費用の相場は夫婦双方の具体的な収入や家族構成などを考慮して考える必要があります。

婚姻費用の請求が認められないケース

婚姻費用の請求が認められないケース

婚姻費用は請求すれば必ず認められるとは限りません。 以下、婚姻費用分担請求が認められないケースをご紹介いたします。

自ら別居をした場合

正当な理由がなく、自ら家を出た場合は婚姻費用を請求しても認められない可能性があります。 前述のとおり、夫婦には同居義務があります(民法第752条)。

勝手に家を出て夫婦の義務に違反したにも関わらず、「婚姻費用を分担しろ」などと夫婦の権利を主張しても道理が通りません。

そのため、正当な理由もないのに勝手に別居をしたケースでは婚姻費用を支払ってもらえない可能性があります。

自分が別居する原因を作った場合

DVやモラハラなどの別居する理由があったとしても、その原因を作ったのが自分であった場合は婚姻費用を請求しても認められない可能性があります。

自ら夫婦関係を破綻させる原因を作っておきながら婚姻費用を請求するのは、身勝手で合理性がないとみなされます。

仮に婚姻費用分担請求が認められた場合であっても、金額は相場より低くなる可能性があります。

なお、別居や夫婦関係が破綻した理由によって配偶者の生活費の請求が認められない場合であっても、子供の養育費の分については請求が認められます。詳しくは弁護士にご相談ください。

相手側に支払い能力がない場合

病気やケガで長期入院・治療が必要になり、以前と同様には働けず収入が減ったなどの理由で相手方に婚姻費用の支払い能力がないという場合も、婚姻費用の請求が認められない可能性があります。

ただし、支払い義務者に収入はないものの、働こうと思えば働ける能力(潜在的稼働能力)がある場合は賃金センサス(賃金構造基本統計調査に基づき平均年収をまとめたもの)を用いて婚姻費用を算出し、支払いが認められる場合もあります。

婚姻費用の支払い期間

婚姻費用の支払い期間

婚姻費用はいつからいつまで支払う必要があるのでしょうか。下記で解説します。

支払い期間

婚姻費用の支払い期間は婚姻費用を請求した時点から離婚が成立するまでとなります。

また、夫婦関係が修復し、双方同一水準での同居生活が開始した場合も婚姻費用の支払い義務がなくなります。

一方、同居した場合であっても生計が別であり、生活水準が同等でない場合は婚姻費用の支払い義務が続くことになります。

婚姻費用が支払われない場合

婚姻費用を請求したにも関わらず、相手方が支払わないという場合は以下の手順で対処しましょう。

内容証明郵便を送付する

話し合いで婚姻費用を請求しても支払いを拒まれてしまう場合、内容証明郵便を送付し、婚姻費用を請求しましょう。

内容証明郵便を送付することで、いつ・誰から誰に・どんな内容の文書を送付したかということを郵便局に証明してもらえます。

普通郵便と比べて公的な印象が強いため、受け取る側に心理的なプレッシャーを与える効果も期待できます。

なお、電話などで請求しても「婚姻費用を請求した」ということを立証する有効な証拠とはなりません。

内容証明郵便を送付すれば、婚姻費用を請求したことを立証する証拠として有用になります。

婚姻費用分担請求調停を申し立てる

内容証明郵便を送付しても婚姻費用が支払われない場合、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てます。調停とは調停委員を介して夫婦が話し合いで合意を図る手続きです。

なお、調停は平日昼間に行われるため、仕事などの都合をつけて出頭する必要があります。

また、婚姻費用の請求が認められるべき理由を書類にまとめたり、調停委員に対して論理的に伝えたりする必要があります。

婚姻費用分担請求調停が不成立となった場合は自動的に審判手続きに進みます。審判に進むと、双方の言い分や事情を総合的に考慮し、裁判所が判断をくだします。

強制執行を申し立てる

婚姻費用分担請求調停や審判で支払いが決まったにも関わらず、婚姻費用が支払われない場合は地方裁判所に強制執行を申し立てます。

強制執行によって相手方の預貯金や給料などの財産を差し押さえ、婚姻費用の回収を図ることができます。

婚姻費用の強制執行を行う際は相手方の給与を差し押さえることが有効です。

預貯金の場合、口座にある金額のみが差し押さえの対象となりますが、給料であれば原則として手取りの2分の1まで将来にわたって差し押さえができます。

婚姻費用の支払いが遅れた場合は遅延損害金を加算して請求することもできます。詳しくは弁護士にご相談ください。

まとめ

婚姻費用について解説しました。

婚姻費用は請求した時点から支払われるため、早い段階で請求することが重要です。婚姻費用の支払いが拒まれてしまうと、別居中の生活に大きな影響をおよぼします。

婚姻費用分担請求は法的な要素が含まれるため、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚や別居中のトラブルに強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

※1 裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
※2 裁判所「令和3年司法統計年報3家事編

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