別居中に荷物を取りに行くと不法侵入?荷物を引き取る方法と注意点

基礎知識
別居中に荷物を取りに行くと不法侵入?荷物を引き取る方法と注意点

万全の準備をして別居していれば良いですが、配偶者の暴力や暴言から逃げるように家を出たというケースも少なくありません。

また、別居したものの、自宅に大切な荷物を置いてきてしまい、取りに行きたいとお悩みの方もいるでしょう。

元々自分も住んでいた家ですから、荷物を取りに行くだけなら勝手に立ち入っても問題ないと考えがちです。

しかし、別居中の荷物の引き取りは難しい問題をはらんでいるため、慎重に判断する必要があります。

この記事では、別居後に荷物を取りに無断で自宅に立ち入るとどうなるのか、また別居後に荷物を引き取るにはどうすれば良いのかについて解説します。

目次
  1. 別居中に荷物を取りに勝手に自宅に戻るとどうなるのか
  2. 別居中に荷物を引き取る方法
    1. 自宅に立ち入る許可を得る
    2. 弁護士に依頼する
    3. 郵送で送ってもらう
    4. 金銭で調整する
    5. 処分をしてもらう
    6. 訴訟を提起する
  3. 別居中に荷物を取りに行く際の注意点
    1. 別居時に持ち出すべきでないものを把握しておく
    2. 荷物を勝手に処分された場合
    3. 「別居先を教えろ」と言われたときの対処法
  4. 【別居された側向け】配偶者の立ち入りを拒否できるのか
    1. 相手方の荷物を勝手に処分してもいいのか
  5. まとめ

別居中に荷物を取りに勝手に自宅に戻るとどうなるのか

別居中、家主の許可を得ず荷物を取りに自宅に戻ると法的にはどうなるのでしょうか。

実は離婚前提に別居すると家を出た側には住居権がなくなります。そのため、無断で家に入ると住居侵入罪(刑法130条)に問われる恐れがあります。

これは相手方が留守中に自宅の鍵を使って無断で立ち入った場合も同様です。

別居中に荷物を引き取る方法

自宅に置いてきた荷物を別居中に引き取る方法には以下のようなものがあります。

  • 自宅に立ち入る許可を得る
  • 弁護士に依頼する
  • 郵送で送ってもらう
  • 金銭で調整する
  • 処分をしてもらう
  • 訴訟を提起する

それぞれ、下記で解説します。

自宅に立ち入る許可を得る

別居後に自宅に立ち入る際は事前に相手方から承諾を得るのが基本です。このとき、荷物の引き取りに限定して協力を得られるように努めましょう。

争いとなっている問題があれば、できるだけ自宅に立ち入る前に解決しておくほうが良いでしょう。

離婚調停中であれば、調停委員を介して荷物を引き取りたい旨を相手方に伝えると良いでしょう。

いずれの場合もトラブルを回避するためにも事前に以下の点について合意しておくことが重要です。

  • 持ち出す荷物
  • 自宅へ立ち入る日時
  • 相手方の同席の有無
  • 立ち入りから搬出までの時間
  • 立ち合い人の有無 など

なお、持ち出す荷物は必要性が高いものに限定し、短時間で搬出しましょう。相手方が同席する際は相手方の仕事の状況を鑑みて夜間・休日に設定すると良いでしょう。

反対に鉢合わせを避ける場合は相手方が平日日中など、家を空けている時間帯に設定すると良いでしょう。

持ち出す荷物にについて争いがある場合は相手方も同席のうえ搬出を行うほうがトラブルを回避しやすくなります。

状況によって、一人で自宅に立ち入るとトラブルに発展する恐れがあります。親族や代理人などの立ち合いも検討すると良いでしょう。

状況によっては取り決めた内容を書面に残してから立ち入ることをおすすめします。

弁護士に依頼する

弁護士に依頼する

配偶者から承諾を得るのが難しい場合、弁護士を介して荷物を引き取ることも検討しましょう。具体的には以下の二つの方法があります。

  • 弁護士が自宅の立ち入りについて承諾してもらうようお願いする
  • 弁護士が自宅の立ち入りや荷物の引き取りに立ち会う

相手方にも弁護士がついている場合は弁護士同士で交渉したり、双方の弁護士が立ち会うという方法もあります。

弁護士に依頼すると承諾を得られる可能性は高くなりますが、確実とは言えないため、注意しましょう。

郵送で送ってもらう

自宅への立ち入りが難しい場合、持ち出したい荷物をリスト化し、着払いで郵送してもらう方法もあります。

一方、自宅への立ち入りを強く拒まれた場合、拒んだ側が送料を負担するケースもあります。

離婚に関わるお金と比べると送料は微々たるものです。送料をどちらが払うかで揉めるくらいなら自分が出すなど、できるだけ対立を生まないようにしましょう。

ただし、この場合も状況によっては相手方が郵送に応じない可能性があります。

金銭で調整する

共有財産を持ち出したいという場合は金銭の授受で解決する方法もあります。例えば、家財道具を持ちだす場合、その分離婚時の財産分与を調整する方法があります。

処分をしてもらう

荷物を自宅に残してきたものの、不要なものばかりと言う場合は処分してもらうのも一つの方法です。

不要品であれば、荷物の受け取りに時間をかけるより、離婚協議に時間を割いたほうが賢明です。

荷物の処分費用はどちらが負担すべきという決まりはありません。双方の話し合いで決まった側が支払えば良いでしょう。

しかし、粗大ごみなど処分費用が高額な場合は財産分与で調整するほうが良いでしょう。

訴訟を提起する

私物の引渡しについて相手方が応じない場合は訴訟を提起し、所有権に基づく引渡し請求を行う方法があります。

裁判で引渡しが認められれば、相手が引渡しに応じない場合であっても強制執行を行うことができます。

別居中に荷物を取りに行く際の注意点

別居中に荷物を取りに行く際の注意点

別居中に荷物を取りに行く際の以下の4点に注意しましょう。

  • 別居時に持ち出すべきでないものを把握しておく
  • 荷物を勝手に処分された場合
  • 別居前に持ち出す荷物を整理しておく
  • 「別居先を教えろ」と言われたときの対処法

それぞれ、下記で詳しく解説します。

別居時に持ち出すべきでないものを把握しておく

財産は何でも持ち出せるわけではありません。特に共有財産は夫婦が共同で所有する財産ですので、無断で持ち出すとトラブルに発展する恐れがあります。

また、所有者の争いがある荷物を持ち出した場合は窃盗罪(刑法235条)に問われる恐れがあります。

なお、夫婦間の窃盗については、「親族相盗例」により、刑事罰は受けないのが一般的です。

しかし、関係を悪化させる行為のため、相手方から損害賠償を請求されたり、離婚協議が長期化する恐れがあります。

荷物を勝手に処分された場合

自宅に残した荷物は安全な状態とは言えません。相手への恨みや「いらないものだと思った」などの理由で勝手に処分されてしまうこともあります。

私物を処分された場合は民事上の損害賠償請求が認められる可能性があります。

しかし、相手方が私物を勝手に処分したことや荷物の価値を処分されたあとに立証することは困難と言えます。

別居する際は入念に準備を行い、大切な荷物は家に残さないようにしましょう。どうしても持ち出せないものは写真に残しておき、処分された場合に備えておきましょう。

「別居先を教えろ」と言われたときの対処法

DVやモラハラ被害に遭っているなど、別居先を相手方に知らせないほうが良いケースがあります。

荷物の持ち出しに絡めて「郵送するから別居先を教えて」と相手方が要求してくることがありますが、単なる口実にすぎません。

DVやモラハラから逃げている場合、配偶者に別居先を知らせないようにしましょう。

【別居された側向け】配偶者の立ち入りを拒否できるのか

別居中に荷物を取りに行く際の注意点

別居された側としては「勝手に家を出たのに都合が良すぎるのではないか」などと考え、配偶者に自宅に戻ってほしくないと思うかもしれません。

しかし、後々の離婚をスムーズに進めるためにも、相手方の荷物の引き取りには応じたほうが賢明です。

相手方の別居中の生活環境や別居を開始した時期によっては、配偶者の立ち入りを拒否し続けることで、法定離婚事由である悪意の遺棄に該当すると判断され、離婚手続きで不利になる恐れがあります。

相手方の荷物を勝手に処分してもいいのか

相手方の私物を無断で処分した場合、器物損壊罪に問われたり、損害賠償を請求されたりする恐れがあります。勝手に処分することは避けましょう。

このような場合に備え、相手方が別居する前に以下の点について取り決めておき、合意書を取り交わしておきましょう。

  • 自宅の荷物の所有権を放棄してもらう
  • 処分しても意義申立てをしない

荷物について取り決めを行わずに相手方が家を出てしまった場合、対処法としては以下の方法が考えられます。

  • 相手方と荷物の処分について交渉する
  • 配達記録郵便で通知書を送付する
  • 撤去訴訟を提起する

なお、何もしていないのに「自分の荷物がなくなった。処分された」などとあらぬ疑いをかけられるケースもあります。

このような場合に備え、配偶者が家を出て行った直後の家のなかの状態を写真に残しておきましょう。

まとめ

別居後の荷物の問題は、別居した側だけでなく、別居された側も把握しておく必要があります。

自宅への立ち入りや荷物の引き取りでトラブルになれば、刑事罰や損害賠償請求に発展したり、離婚問題が拗れる恐れがあります。

入念に準備を行う、弁護士に依頼するなど、できるだけトラブルを回避しながら実行するようにしましょう。

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