離婚の調停調書の効力とは?公正証書との違いや確認すべきポイント

裁判・調停
離婚の調停調書の効力とは?公正証書との違いや確認すべきポイント

離婚の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

離婚調停は調停委員を介して当事者が話し合いを行い、合意を図る裁判所の手続きです。

調停で合意すると調停調書が作成されます。

調停調書には確定判決と同等の法的効力があるため、調停調書の中身はしっかりと確認する必要があります。

この記事を最後まで読むと以下のことがわかります。

・離婚における調停調書とはどのようなものか
・調停調書と公正証書、和解調書との違い
・調停調書の法的効力とは
・調停成立から離婚届提出までの流れ
・調停調書で確認すべき項目
・調停調書で知っておくべきポイント

目次
  1. 離婚における調停調書とは
    1. 公正証書との違い
    2. 和解調書との違い
  2. 調停調書の法的効力とは
    1. 離婚届の相手の署名が不要
    2. 裁判手続きを経ずに財産の差し押さえが可能
    3. 面会交流における履行勧告や間接強制が可能
    4. 単独で年金分割手続きができる
    5. 時効期間が有利
  3. 調停成立から離婚届提出までの流れ
    1. 離婚調停で内容を確認
    2. 調停調書の謄本を取り寄せる
    3. 離婚届を役所に提出する
  4. 調停調書で確認すべき項目
    1. 離婚成立の形態
    2. 離婚届の届出義務者
    3. 離婚条件
  5. 調停調書で知っておくべきポイント
    1. 調停調書の作成費用
    2. 調停調書の内容は変更できない
    3. 調停調書に住所を載せたくない場合
    4. 調停調書は再発行が可能
  6. 離婚調停・調停調書の内容に悩んだら弁護士へ
  7. まとめ

離婚における調停調書とは

調停調書とは調停が成立した際に裁判所で作成される書面を言います。

調停が成立すると、裁判官が裁判所書記官立ち合いのもと、当事者の前で調停のなかで合意した内容を読み上げます。

当事者の認識に齟齬がなければ、確定した内容が調停調書に記載されます。

調停調書は当事者の合意が前提で作成されるため、後になって不服を申し立てたり、内容を変更したりはできません。

また、調停調書は確定判決と同じ効力を持つため、記載内容には法的拘束力があります。

調停調書に記載された内容は必ず守らなければなりません。もし、記載された内容を反故にされた場合は強制執行が可能です。

公正証書との違い

調停調書とよく比較されるものに「公正証書」があります。

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公的文書です。離婚における公正証書は、協議離婚で合意した内容を記した書面になります。

公正証書と調停調書は作成場所や作成する人が異なります。

なお、公正証書で強制執行を行うためには強制執行認諾文言が付与されている必要があります。

また、調停調書は記載された内容すべてが強制執行の対象になりますが、公正証書では金銭債務のみが強制執行の対象になります。

和解調書との違い

公正証書のほか、調停調書と間違えやすいものに「和解調書」があります。

和解調書は調停不成立となり、審判や訴訟に移行した後、当事者が合意した場合に作成される書面です。

和解調書も調停調書と同じ効力あるため、記載されたすべてに内容に対して強制執行が可能です。

調停調書と公正証書、和解調書との違いは以下のとおりです。

  調停調書 公正証書 和解調書
いつ作成されるのか 離婚調停にて離婚が成立したとき 協議離婚で離婚が成立したとき 離婚裁判で
裁判上の和解が 成立したとき
作成場所 裁判所 公証役場 裁判所
作成者 裁判所書記官 公証人 裁判所書記官
強制執行認諾文言 不要 任意(記載がない場合は強制執行をするには訴訟手続きが必要) 不要
強制執行の範囲 面会交流などの
金銭債務以外も可能
金銭債務のみ
(養育費や財産分与、慰謝料など)
面会交流などの
金銭債務以外も可能

調停調書の法的効力とは

調停調書の法的効力とは

調停調書の法的効力として主なものは以下のとおりです。

  • 離婚届の相手の署名が不要
  • 裁判手続きを経ずに財産の差し押さえが可能
  • 面会交流における履行勧告や間接強制が可能
  • 自分ひとりで年金分割手続きができる
  • 時効期間が有利になる

それぞれについて下記で解説します。

離婚届の相手の署名が不要

協議離婚の場合、離婚届に当事者双方の署名が必要です。

しかし、調停離婚の場合、調停調書を提出すれば、離婚届への相手方の署名が不要になります。

裁判手続きを経ずに財産の差し押さえが可能

調停調書に記載された内容を反故にされた際、裁判手続きを経ることなく相手方の財産の差し押さえが可能です。

公正証書の場合、強制執行を行うためには強制執行認諾文言が付与されている必要があります。

面会交流における履行勧告や間接強制が可能

調停調書に面会交流の取り決めをした場合、相手方が約束を反故にした際に履行勧告や間接強制という手続きができます。

面会交流における履行勧告とは、親権者や監護者に勧告する手続きです。また、間接強制とは制裁金を課すことで面会交流を促す手続きです。

面会交流は金銭のやり取りではなく、子供との面会が対象となります。そのため、強制執行ではなく間接強制という手続きをとることになります。

公正証書の場合は金銭債務にしか法的効力がないため、面会交流に関する履行勧告や間接強制といった手続きができません。

しかし、調停調書は面会交流などの金銭債務以外にも法的効力がおよぶことになります。

単独で年金分割手続きができる

合意分割(夫婦が話し合いで合意する年金分割)の場合、必要書類を持参し、夫婦そろって年金事務所に行く必要があります。

しかし、調停で年金分割を決めた場合は調停調書の謄本または抄本を年金事務所に提出すれば、単独で手続きを行うことができます。

なお、年金分割については、下記記事も参考にしてください。

関連記事≫≫
離婚後の年金はどうなる?熟年離婚の夫婦が年金分割をする注意点

時効期間が有利

調停調書に記載された債務の時効は原則として10年と定められています(民法第169条 第1項)。

民法第169条 判決で確定した権利の消滅時効
1確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。

一方、公正証書の場合は請求権の種類によって時効期間が変わります。 具体的には以下のような違いがあります。

離婚調停調書 すべて10年
離婚協議公正証書 慰謝料3年、財産分与2年、養育費5年

調停調書のほうが債権の時効期間が長いため、請求権者にとって有利になると言えます。

例えば、財産分与の取り決めを公正証書で行った場合は離婚成立から2年が過ぎると請求できなくなります。

一方、調停調書の場合は10年が時効ですので、公正証書と比べて有利になると言えます。

調停成立から離婚届提出までの流れ

調停成立から離婚届提出までの流れ

調停成立から離婚届提出までの流れは以下のとおりです。

  1. 離婚調停で内容を確認
  2. 調停調書の謄本を取り寄せる
  3. 離婚届を役所に提出する

それぞれ順を追って解説します。

離婚調停で内容を確認

離婚調停が成立すると、裁判所書記官が調停調書を作成し、裁判官・当事者立ち合いのもとで合意内容を読み上げます。

調停調書の読み合わせの際は取り決めた内容が正しく反映されているかどうか確認しましょう。

また、調停調書の内容の理解が全員同じかどうかも確認しましょう。

調停調書の謄本を取り寄せる

調停離婚は調停が成立すれば離婚が成立します。ただし、それだけでは戸籍は変わらないため、離婚届を役所に提出する必要があります。

離婚届を提出する際は調停調書の謄本(写し)を添付しなければなりません。

離婚調停が成立すると自動的に調停調書が作成されます。しかし、調停証書の謄本は自動的に交付されるわけではありません。

そのため、家庭裁判所に対し、調停調書の謄本の交付申請を行います。

原本、謄本、正本、抄本の違い

前述の謄本(写し)とよく似た言葉に原本、正本、抄本があります。それぞれの違いは以下となります。

種類 解説
原本 元の文書
謄本 原本をすべて写した文書
正本 裁判所書記官や公証人などの権限を持った者が原本に基づいて作成・認証された謄本の一種。原本と同じ効力を有する文書
抄本 原本の一部のみを写した文書

調停調書の謄本を取り寄せる際は以下が必要になります。

  • 申請書
  • 手数料を支払うための収入印紙(1ページあたり150円)
  • 郵送のための切手と返信用封筒 ※返信封筒には自分の名前と住所を記載しておく

調停調書の謄本は調停が成立したその場で交付申請するというのが一般的です。

調停証書は調停が成立した当日に作成されることはほとんどありません。

通常、郵送の場合は交付申請から1週間程度、裁判所に直接受け取りに行く場合は2、3日程度になります。

裁判所で直接受け取る場合は、切手と封筒は必要ありません。

なお、離婚届の提出には原本の内容すべてを移した謄本ではなく、戸籍届出用として作成される省略謄本が交付されるのが一般的です。

省略謄本には離婚や親権のみが記載されており、財産分与や養育費といった戸籍と関係のない内容は記載されていません。

強制執行手続きを行う際は謄本ではなく、調停証書の正本を当事者双方が受け取っている必要があります。

そのため、財産分与や養育費、慰謝料などを取り決めた場合は正本の送達と正本の送達証明書を申請しておくと良いでしょう。

また、年金分割を行う場合は年金に関する内容だけを記載した抄本が必要です。

そのため、年金分割を取り決めた場合は抄本の交付申請をしておきましょう。

離婚届を役所に提出する

調停成立後、10日以内に離婚届を役所に提出します。

調停調書は交付申請から手元に届くまで1週間程度かかるため、調停成立後すみやかに申請する必要があります。

なお、離婚届の提出先は夫婦の本籍地を管轄する市区町村役所になります。

10日を過ぎたからといって離婚の事実がなくなるわけではありません。しかし、5万円以下の過料を課させる恐れがあります。

h3調停調書が届かない場合

交付申請から1週間経過しても調停調書が届かない場合は家庭裁判所に連絡をしましょう。

家庭裁判所の都合で謄本の発行が遅れた場合、その事実を役所に説明できれば、過料を支払わなくても済むようになる可能性があります。

調停調書で確認すべき項目

調停調書で確認すべき項目

離婚における調停調書では以下の点を確認しましょう。

  • 離婚成立の形態
  • 離婚届の届出義務者
  • 離婚条件

それぞれについて下記で解説します。

離婚成立の形態

調停離婚で離婚する場合以下の2つの形態があります。

  1. 調停離婚成立:調停成立と同時に離婚が成立するもの
  2. 離婚届提出:調停の場で離婚届を作成し、当事者のどちらか一方が責任を持って役所に離婚届を提出する約束をするもの

1の場合、調停調書には「申立人と相手方は、(相手方の申し出により)本日、調停離婚をする。」と記載されることになります。

調停成立後、離婚届に調停調書を添付して役所に提出することになります。

このとき、戸籍には「離婚の調停成立日」が記載されるため、調停離婚をしたことがわかるようになります。

2の場合、離婚届を提出し、受理された時点で離婚が成立します。

戸籍の記載は協議離婚と同じのため、調停離婚をしたかどうかは戸籍に残りません。

ただし、2の場合、離婚届を提出しなかったり、不受理申出がなされていたりした場合は離婚が成立しない恐れがあります。

離婚届の届出義務者

前述の離婚成立の形態で「2離婚届提出」を選択した場合、調停調書にどちらが離婚届を提出するか(離婚届出義務者になるか)を記載する必要があります。

一般的には婚姻によって氏を変更した側が離婚届義務者になるケースが多いです。

離婚条件

離婚調停で取り決めた内容がしっかりと記載されているか確認しましょう。

財産分与

財産分与について取り決めた場合は以下の内容が記載されているか確認しましょう。

  • 財産分与の金額や支払い方法
  • 不動産や自動車、保険関係、公共料金などの名義変更の方法 など

親権

子供を持つ夫婦がいる場合は親権者を決めなければ離婚できません。そのため、調停調書にも親権者が記載されることになります。

後から親権者を変更することは困難です。正しく記載されているかどうかしっかりと確認しましょう。

養育費

養育費について取り決めた場合は以下の項目が記載されているかどうかをしっかりと確認しましょう。

  • 毎月の支払額・支払日
  • 養育費の支払い方法
  • いつまで養育費を支払うのか など

面会交流

面会交流について取り決めた場合は以下の項目が記載されているかどうかをしっかりと確認しましょう。

  • 面会交流の方法
  • 面会交流の連絡方法
  • 面会交流の頻度・場所
  • 面会交流の日時・実施時間 など

慰謝料

慰謝料について取り決めた場合は慰謝料の金額や支払方法、支払期限などが記載されているか確認しましょう。

遅延損害金など支払いが遅れたときのペナルティを設けておくと、未払いを防ぐ効果があります。

調停調書で知っておくべきポイント

調停調書で知っておくべきポイント

離婚の調停調書について以下の点について知っておきましょう。

  • 調停調書の作成費用
  • 調停調書の内容は変更できない
  • 調停調書に住所を載せたくない場合
  • 調停調書は再発行が可能

それぞれについて下記で解説します。

調停調書の作成費用

前述のとおり、調停調書の交付申請を行う場合は手数料を支払うための収入印紙が必要です。

調停調書1ページあたり150円ですので、必要な費用は調停調書の枚数によって異なります。

調停調書が何枚になるかについては裁判所書記官に事前に確認し、その枚数分の費用を収入印紙で納めます。

調停調書の内容は変更できない

調停調書に記載された内容は原則として変更できません。

調停調書の内容は調停成立時に確認しているはずです。そのため、基本的には内容の変更はできません。

ただし、計算間違いや誤記やその他これらに類する明確な誤りがあるときに限り、家庭裁判所の更生決定によって変更してもらえます(家事事件手続法269条1項)。

調停調書に住所を載せたくない場合

調停調書は相手方が裁判所の許可を経ることなく請求することができます。

そのため、相手方に自分の住所を知られなくないという場合は調停を申し立てる際に「住所等の秘匿申出」を行いましょう。

また、裁判所に提出した書類は相手方が申請すれば閲覧・謄写が可能です(家事手続法254条第1項)。

そのため、相手方に住所を知られなくない場合は非開示希望申出を行うと良いでしょう。

非開示希望申出とは、相手方が裁判所に書類の閲覧や当初を求めても、申し出た部分の開示を希望しないことを申し出る手続きです。

ただし、相手方からの閲覧・謄写の請求を許可するかどうかについては、最終的には裁判所が判断することになります。

調停調書は再発行が可能

調停調書の謄本、正本、抄本の再発行は可能です。

調停調書の保管期間内であれば、調停を実施した裁判所に申請することで再発行してもらうことができます。

なお、法的な定めはありませんが、家庭裁判所での調停調書の保管期間は調停終了後30年間となっています。

離婚調停・調停調書の内容に悩んだら弁護士へ

離婚の調停調書には、離婚調停で取り決めた内容が記載されます。また、作成後の調停調書を修正することはできません。

そのため、離婚調停のなかで不利な内容で合意してしまえば、不利な内容が記載されてしまいます。

また、調停調書は確定判決と同じ効力があります。

そのため、記載された内容を反故にした場合、不利な内容に基づいて強制執行や間接執行がなされる可能性もあります。

このような事態に陥らないためにも、離婚調停に進んだ場合は弁護士に依頼することをおすすめします。

離婚調停を弁護士に依頼することで、離婚条件を決める際に法的な視点でアドバイスしてもらえます。

また、離婚調停の際も弁護士に同席してもらえば、自分の言い分を適切に伝えたり、相手方の主張に適切に反論したりしやすくなります。

答弁書や陳述書もポイントを押さえて作成してもらえるため、効果的に主張・反論が行えます。

調停調書は書記官や裁判官と読み合わせを行ったうえで作成されるため、合意した内容と相違がないかしっかりと確認しましょう。

自分だけで確認することに不安がある場合は弁護士に依頼し、同席してもらったうで確認すると良いでしょう。

まとめ

離婚における調停調書について解説しました。

調停調書は後から修正することができません。不利な内容で合意してしまわないよう、弁護士に依頼しておくことが重要です。

調停調書の確認の際も弁護士に同席してもらうと安心です。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚調停に精通した弁護士を多数掲載しています。是非お役立てください。

離婚コラム検索

離婚の裁判・調停のよく読まれているコラム

新着離婚コラム

離婚問題で悩んでいる方は、まず弁護士に相談!

離婚問題の慰謝料は弁護士に相談して適正な金額で解決!

離婚の慰謝料の話し合いには、様々な準備や証拠の収集が必要です。1人で悩まず、弁護士に相談して適正な慰謝料で解決しましょう。

離婚問題に関する悩み・疑問を弁護士が無料で回答!

離婚問題を抱えているが「弁護士に相談するべきかわからない」「弁護士に相談する前に確認したいことがある」そんな方へ、悩みは1人で溜め込まず気軽に専門家に質問してみましょう。

TOPへ