不倫裁判の判決までの流れ|適切な慰謝料請求が認められるための全知識
配偶者が不倫をして離婚や慰謝料請求をするとき、話し合いや調停が成立しない場合は訴訟を起こし、裁判を行います。
しかし、一般人は裁判を経験することが多くないため、どうすれば良いのかわからないこともあるでしょう。この記事では不倫裁判の慰謝料請求の判決までの流れや注意点について解説します。
不倫裁判で慰謝料を請求するメリット
不倫裁判の流れを説明する前に不倫の慰謝料請求を裁判で行うメリットについて説明します。
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不倫したかどうかをハッキリさせられる
不倫の慰謝料請求では相手方が不倫の事実を認めず、慰謝料請求に応じないケースもあります。
また、不倫相手に慰謝料請求する場合、「相手が既婚者だとは知らなかった」「夫婦関係はすでに破綻していると聞いていた」と言ってくることもあります。
裁判をして判決まで至れば不倫をしたかどうかをハッキリさせることができます。
適正な慰謝料金額を決めることができる
慰謝料請求は、請求された金額または提示された金額が妥当かどうかを争うケースも多いです。裁判であれば、裁判官から和解の提案があったり、判決が出されるため、慰謝料の金額が明確に決まります。
慰謝料が支払われなければ強制執行を行うことができる
慰謝料の支払いが確定しても相手方がきちんと支払ってくれるかわかりません。
裁判で慰謝料請求を行った場合は強制執行を行い、相手の給料や銀行口座を差し押さえることで強制的に慰謝料を支払わせることができます。つまり、裁判を行うことで慰謝料の取りこぼしがなくなる可能性が高くなります。
不倫裁判で慰謝料を請求するデメリット
次に、不倫裁判で慰謝料請求する際のデメリットについて解説します。
費用がかかる
裁判を行う場合、裁判所に訴訟費用(印紙代)を支払う必要があります。印紙代は請求する慰謝料金額によって以下のように変わります。
参考:裁判所「手数料額早見表」
このほか、文書を送付するための郵送代や弁護士をつける場合は弁護士費用が必要になります。
手間と時間がかかる
不倫裁判は訴状を提出してから第一回口頭弁論が開かれるまで一か月から一か月半程度かかります。その後、月一回のペースで弁論準備手続期日または弁論期日が指定されることになるため、判決まで一年以上かかることもあります。
なお、不倫裁判の詳しい流れについては後述します。
また、裁判を起こすとなると訴状を提出したり、裁判所へ出廷する必要があります。裁判は平日日中に行われるため、仕事をしている人は会社や業務の都合をつけて裁判所に行く必要が出てきます。
精神的な負担が大きい
当事者は裁判が終わるまでの間緊張が続きます。裁判は長期間におよぶことがあるため、精神的な負担も長期間続くことになります。
不倫裁判の判決までの流れ
ここからは判決までの不倫裁判の詳しい流れについて説明します。
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訴状提出
裁判の提起は、訴状を裁判所に提出して行います。訴状とは、慰謝料を請求する相手の情報や不倫の内容、相手方に求めるものなどを記載した書面です。
訴状を提出する際は記載した内容を裏付ける証拠なども併せて提出します。弁護士に依頼する場合は訴状を提出する前に依頼すると大幅に手間を省くことができます。
訴状の送達
訴状を提出すると、訴えを起こされた人(被告)に対して、裁判所が訴状や証拠を送付します。
被告が弁護士に依頼している場合、弁護士が委任状を裁判所に提出します。以降は被告が依頼した弁護士宛てに必要書類が送られることになります。
裁判所への出廷
第一回口頭弁論期日として指定された日時に裁判所へ出廷します。弁護士に依頼している場合は裁判所への出廷も弁護士に一任できます。
弁護士に依頼せず、自分で対応する場合は裁判のたびに準備書面を提出します。準備書面とは主張の追加や反論をするための書類になります。裁判官は提出された準備書面に基づいて判断し、判決をくだします。
裁判では、こちら側の主張に対して相手方が反論をしてきます。そのため、裁判は一回で終わることはほとんどなく、複数回繰り返されるケースが多いです。
和解の試み
当事者双方の主張や証拠が出そろったら、裁判所は和解による解決を提案してくることがほとんどです。和解案に当事者双方が同意すれば裁判が終了します。
なお、和解案は裁判官以外から提案されることもあります。
例えば、こちらが弁護士に依頼している場合は、依頼した弁護士から提案されることもあります。また、相手方が弁護士を雇っている場合は相手方の弁護士から和解を提案されることがあります。
和解は判決と同等の効力があります。したがって、相手方が和解した内容に従わず慰謝料の支払いを拒んだ場合は、和解内容に従い、財産を差し押さえることができます。
証人尋問・本人尋問
和解が成立せず、決着をつけたいという場合は本人尋問や証人尋問を行います。
書類だけでは裁判所が判断できないため、直接当事者双方や証人から話を聞くことになります。そのため、尋問手続では原告や被告、証人も裁判所に出廷する必要があります。
証人尋問・本人尋問後に再度裁判所から和解が提案されるケースもあります。
判決
尋問を行った結果、和解が成立しない場合は裁判官が判決を言い渡します。
和解の場合、柔軟に解決を図ることができます。しかし、判決で慰謝料の支払いが確定すれば、相手方は必ず慰謝料を支払わなければなりません。
一方、こちら側の訴えが退けられた場合は慰謝料請求が棄却されることになります。
判決にまで至れば、弁護士費用(慰謝料認容額の約1割)についても、支払わせることが可能です。
上訴
判決とはあくまで裁判所の判断ですので、当事者が不満を抱くこともあります。判決内容に不服がある場合は、上訴期間内に上級裁判所に申し立てを行うことができます。これを上訴と言います。
日本は三審制を採用しており、一審から二審に上訴することを控訴、二審から三審へ上訴することを上告と呼んでいます。上訴期間は控訴・上告とも判決の送達があった翌日から14日間となります。
不倫裁判での慰謝料請求を有利に進めるためには
不倫裁判での慰謝料請求を有利に進めるにはどうすれば良いのでしょうか。以下で詳しく見ていきます。
裁判で有効な証拠を集めておく
不倫で慰謝料請求する場合、裁判で認められる証拠を集める必要があります。
裁判で不倫が認められるためには不貞行為(配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと)があったことを立証しなければなりません。
例えば、配偶者と不倫相手が二人でラブホテルに出入りしている写真や一人暮らしの不倫相手の家に配偶者が入り浸っていることを証明できるものが有効となります。
どのようなものが不倫の慰謝料請求の際に証拠として有効かは弁護士に相談すると良いでしょう。
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慰謝料は配偶者と不倫相手の両方に請求する
不倫は配偶者と不倫相手の共同不法行為とみなされます。そのため、不倫慰謝料は配偶者だけでなく、不倫相手にも請求することができます。
なお、慰謝料の金額は一つの不法行為に対して一義的に決まります。例えば、慰謝料金額が300万円の場合、配偶者から300万円の慰謝料の支払いを受けた場合は不倫相手に慰謝料を請求することはできません。
不倫慰謝料の相場と増額事由について理解しておく
不倫の慰謝料相場は数10万円~300万円となります。金額に幅がありますが、実務的には以下のような増額事由を考慮して金額が決まります。
- 不倫の期間や頻度
- 婚姻期間の長さ
- 不倫発覚前の夫婦関係
- 不倫によって離婚したかどうか
- 配偶者の経済状況
- 子供の有無 など
相場からかけ離れた金額を請求しない
前述のとおり、不倫慰謝料には相場があります。できるだけ多く慰謝料を請求したいという気持ちはわかりますが、相場からかけ離れた金額を請求するのはNGです。
もちろん、慰謝料には増額事由がありますから、相場より高額な慰謝料を請求することはできます。しかし、裁判で不倫慰謝料を請求する場合、訴訟費用(印紙代)が必要になります。
印紙代は請求する慰謝料金額が高額になるほど高くなります。勝てる見込みがないのに高額な慰謝料を請求してしまうと印紙代が無駄になる可能性があります。
また、相場からかけ離れた慰謝料にこだわってしまうと相手方が和解に応じない可能性が高くなります。和解が成立しない場合、裁判所の判決によって慰謝料金額が決まります。
判決では相場の範囲内でしか慰謝料の金額を認めてもらえないため、こちらが負うべき訴訟費用の負担割合が高くなります。
早い段階で弁護士に依頼する
裁判は書類の準備や手続きが必要です。法的な知識がない場合、自分の主張を論理的にまとめることは難しく、精神的にも時間的にも負担が大きくなります。
裁判を起こす前に弁護士に依頼すれば、訴状など書類の準備から弁護士に任せることができます。また、裁判が始まると基本的に弁護士が裁判所へ出廷してくれるため、大幅に手間を省くことができます。
さらに、弁護士は法律の知識が豊富ですので依頼者が有利になるように裁判を進めてくれます。
なお、尋問では当事者の証言が求められるため、本人が出廷する必要があります。
不倫裁判で慰謝料請求ができないケース
配偶者が不倫をしたことが明らかだったとしても、不倫の慰謝料請求ができないケースがあります。以下で詳しく見ていきます。
時効を完成した場合
不倫の慰謝料請求権には次の二つの時効があります。時効が完成している場合は裁判を行う意味がなくなります。
- 消滅時効:不倫の事実と不倫相手を知った日から3年
- 除斥期間:不倫関係があった日から20年
不倫の慰謝料請求では、上記のうちいずれか短いほうで時効が完成すると定められています。消滅時効とは、一定期間権利を行使しない場合に権利が消滅するものです。
不倫に対して慰謝料請求する際は、不倫の事実と不倫相手の存在を知ってから3年が消滅時効になります。
また、不倫関係があった日から20年が経過した場合も慰謝料請求権が消滅します。これを除斥期間と言います。
不倫関係が3年以上経過したあとに不倫の事実を知ったとしても、不倫関係が始まってから20年以内であれば慰謝料請求が可能ということになります。
なお、消滅時効は時効の更新や完成猶予(旧民法の中断・停止)ができますが、除斥期間は完成猶予ができません。また、2020年4月の民法改正後、20年の除斥期間は消滅時効に変更となります。
消滅時効は時効の援用がなければ請求できる
慰謝料請求の消滅時効3年が経過した場合でもあきらめてはいけません。
実は消滅時効の場合、慰謝料を請求された側が「時効が完成したため慰謝料を支払わない」と主張しなければ慰謝料請求権は消滅しません。この主張のことを時効の援用と言います。
つまり、 3年の消滅時効が経過した場合であっても、時効の援用がなければ裁判を行い、慰謝料請求することが可能となります。
慰謝料請求が可能かどうかはケースバイケースになります。詳しくは弁護士にお問い合わせください。
すでに夫婦関係が破綻していた場合
不倫があった時点ですでに夫婦関係が破綻していたという場合は不倫慰謝料を請求することはできません。
まとめ
不倫裁判の流れについて説明しました。 不倫裁判で慰謝料請求を行う場合、書類の準備や出廷など多くの手続きが必要になります。
また、不倫裁判を有利に進めるためには法的な知識が必要です。不倫裁判で慰謝料請求をするなら、裁判を提起する前に弁護士に依頼することが重要です。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を多数掲載しています。不倫裁判をお考えの際はぜひお役立てください。
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