セックスレスで離婚をするには?弁護士に相談したい、離婚方法や慰謝料について
「もう何年もご無沙汰…」「女としての魅力がないの?」セックスを目的に結婚したわけではないとはいえ、セックスが夫婦の愛情表現の1つであることは確かです。
セックスは、性欲を満たしたり子供を作る目的で行うだけでなく、それによって「愛されている」「愛し合っている」と実感できる部分もあるからです。そのため、円満な夫婦関係を継続するにあたって、セックスレスは深刻な問題となります。
この記事では、セックスレスからどのような問題が起きる可能性があるか、セックスレスを理由に離婚できるのかについて説明していきます。
- 目次
セックスレスの定義とは?
そもそもセックスレスはどういった状態を指すのでしょうか。日本性科学会によると「病気であるなど特殊な事情が認められないにもかかわらず、1ヶ月以上性交渉がないカップル」と定義されています。
もちろん、互いに性交渉を望んでおらず、円満な夫婦関係を築けているのであれば問題にはなりません。しかし、一方がセックスを望んでいるにも関わらず配偶者に拒まれ続けているのであれば、深刻な問題といえます。
セックスレスは離婚理由になる?
セックスレスに悩み、離婚したいと思うこともあるでしょう。ではセックスレスを理由に離婚ができるのでしょうか。
法律的に離婚理由と認められる原因は?
原則として、夫婦が合意すればどのような理由であっても離婚できます。しかし、合意が得られない場合は民法で定められた離婚理由(法定離婚事由と呼ぶ)が必要になります。
法定離婚事由には以下の5つがあります。
- 民法第770条
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- 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
セックスレスは離婚原因として認められる
前述のとおり、セックスレスそのものは法定離婚事由として定められているわけではありません。しかし、状況によっては、セックスレスが「5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当すると判断されるケースもあります。
セックスレスで離婚できるケース・できないケース
セックスレスで離婚できるかどうかは「セックスレスが婚姻を継続し難い重大な事由に該当するかどうか」で判断されます。ではセックスレスを理由に離婚が認められるケースにはどのようなものがあるのでしょうか。
離婚できるケース
セックスに支障がないのにセックスレスの場合
例えば夫婦ともに健康な20代であるなど、年齢も若く、性交渉に支障がないケースです。
特に、夫婦の休日が同じで勤務時間帯や起床・就寝時間も同じであるにも関わらず、何の理由もなく配偶者がセックスを拒み続けければ不満を感じるのも不思議ではありません。さらに、この状況が続けば続くほど配偶者に対しての不満は大きくなります。
不貞がある場合
セックスレスカップルのなかには、性交渉を拒絶する側が不貞行為をしているケースもあります。この場合は、セックスレスが離婚理由に該当するかどうかよりも、不貞行為を理由に離婚請求が可能になります。
離婚できないケース
反対に、セックスレスを理由に離婚できないケースにはどのようなものがあるのでしょうか。
自然に性交渉がなくなった場合
性欲というのは年齢やホルモンバランスよって変化します。特に男性は思春期をピークに性欲が減退していくと言われています。そのため、夫婦ともに高齢になり、自然と性交渉がなくなったケースは離婚が認められにくいです。
お互いにセックスを望まない場合
日本は労働時間が長いと言われています。そのため、いくら夫婦が健康で年齢が若いからといっても、残業や日々の労働で疲れ切ってセックスどころではないこともあります。このような場合は、セックスレスを理由に離婚が認められるとは限りません。
もちろん、セックスレス状態が長期間におよぶことで夫婦関係に亀裂が入り、夫婦関係が破綻すれば離婚が認められる可能性もあります。
夫婦のどちらかが病気の場合
セックスには体力も必要です。夫婦のいずれかがなんらかの病気であり、性交渉することによって身体に負担がかかることで病気が悪化するという場合はセックスができないこともあります。
また夫が勃起不全(ED)で性交渉ができないということもあります。このような場合は「EDだから離婚!」とすぐに認められるわけではありません。
特に女性は勃起不全(ED)についての知識がないことも多いです。夫婦がお互いに知識を持ち、話し合うことも必要です。
セックスを拒否してしまう原因は?
配偶者がセックスを拒否する理由には一般的にどのようなものがあるのでしょうか。
妊娠や出産でセックスの機会が減少
セックスレスになる理由として最も多いのが「妻が妊娠・出産した」ことです。そもそも妊婦の身体はデリケートです。つわりがひどかったり、体調がすぐれない場合はいくら夫がセックスを求めても妻が拒むこともあります。
また、妊娠による妻の身体の変化を見て夫の性欲が減退することもあります。最近では立ち合い出産も増えていますが、出産時の妻の形相や叫び声がトラウマになる男性もいます。
一方、「妻が里帰り出産中に不倫」「妻が妊娠中に不倫」というニュースを聞くこともありますよね。妊娠中の妻では満たされない性欲を夫がほかで満たすことで妻に対する性欲が薄れ、セックスレスにいたることもあります。
出産後の妻が母親の顔になりセックスどころではなくなる
出産を終えたら、妻は「母親」の顔になります。出産後は、昼夜問わず数時間おきに授乳やおむつを替えなければならず、自分や夫にかまう余裕はありません。妻としては「セックスどころではない」のが本音でしょう。
このような状態が続けば夫も不満が溜まり、すれ違いが起きることもあるでしょう。
配偶者を異性として見られなくなった
ずっと一緒に暮らしていると、良い意味でも悪い意味でも緊張感がなくなります。その結果、結婚前のように身なりを整えなくなったり、清潔感がなくなってしまい、夫が妻を女性として見ることができなくなることもあるようです。
仕事や育児での疲れでタイミングが合わない
前述のように、出産直後、妻は授乳やおむつ替えなどで寝不足気味になることがあります。そんなときに夫が性交渉を求めても妻が応じてくれないこともあります。
男性はプライドの生き物とよくいいます。妻に断られてしまった夫はプライドが傷付き、どんどん誘いにくくなってしまいます。
また、夫も日々の業務で疲れが溜まり、妻からの誘いに応じることができないこともあります。
女性のなかには「女から誘うなんて恥ずかしい」と考えている人も少なくありません。勇気を出して誘ったにも関わらずに夫に拒まれてしまったら「恥ずかしくてもう誘えない」と考えてしまうこともあります。
こうなってしまうと、どんどんセックスする機会が減っていき、結果的に心まで離れてしまいます。
年齢を重ねて体力や性欲が減退してしまった
前述のように、性欲は年齢によって変化すると言われています。また、セックスには気力だけでなく体力も必要ですが、性別に関わらず年齢を重ねるごとに体力も落ちていきます。
若いときは夜遅く帰ってきたときも元気だった人が、年齢を重ねるうちに「セックスするくらいなら早く寝たい」と思うようになることもあります。
セックスレスが長期化すると発展してしまう問題は?
セックスレス状態が長期化すると、どのような問題があるのでしょうか。
浮気や不倫の可能性が上がる
配偶者以外の異性に関心が向くことによってセックスレスになることもありますが、いくら求めても配偶者が性交渉に応じてくれないことで不満が溜まり、不倫に走ることもあります。
夫婦間の信頼関係が崩壊する
冒頭で述べたとおり、セックスは愛情表現の1つです。セックスがなくても互いに納得しており、スキンシップが存在しているのであれば、あまり問題ありません。
しかし、セックスレスをきっかけに、キスなどの愛情表現やスキンシップがまったくないようでは「相手から愛されている」「愛し合っている」と実感できなくなります。結果的に相手を大切に思う気持ちも薄らいでいくことがあります。
子供が作れない問題
結婚したら子供がほしいという人も多いでしょう。しかし、セックスレス状態が長く続けば子供を授かることは見込めません。一方が子供を望んでいるのに相手が性交渉に応じない状態が続けば、夫婦関係の破綻につながる可能性もあります。
では「子供がほしいからセックスしてほしい」と言えば良いのでしょうか。
もし「子作りのためのセックス」という意識を配偶者が持ってしまうと、夫婦の愛情表現であるセックスが「義務」になってしまい、苦痛を感じるようになります。
もし「子作りのためのセックス」によって子供ができても、そこに夫婦の愛が存在しないのであれば、ふたたびセックスレスに戻る可能性があります。
その結果、「子育てが終わったので離婚したい」など、熟年離婚にいたるケースもあります。
セックスレスを証明する証拠となるもの
セックスレスを理由に離婚を考えるのであれば、セックスレスであることに加え、セックスレスが「拒絶する正当な理由がないこと」「どのような経緯で起こったか「「セックスレスでどのような損害があるのか」を証明する必要があります。
具体的にはお互いの生活状況などを日記やメモで示すことになります。
セックスレスになってからの生活状況を書いておく
まず、夫婦それぞれの起床時間や帰宅時間、就寝時間を継続的に記録します。これにより「性交渉ができるはずなのに応じてくれない」ということを示すことができます。
交渉の経過をメモ・録音しておく
もしセックスに誘ったときの会話や拒否されたときの言葉がメールや書面があれば残しておきましょう。こちらがいくら性交渉を誘っても相手が拒み続けていたことを証明しやすくなります。
日記
前述の生活状況や性交渉を誘ったときの会話、相手の対応を日記に残しておくのも有効です。また、日記をつけるなら毎日つけておくことが重要です。
性交渉を断られた日のことだけを日記に残しているようだと「作り話じゃないのか?」と疑われる可能性もあります。
セックスレスが原因の離婚で慰謝料請求をするには
セックスレスを理由に離婚する際、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。離婚問題では、有責配偶者(婚姻関係が破綻する原因を作った配偶者)に対して慰謝料を請求できるとされています。
セックスレスが原因で離婚する場合、夫婦のどちらが悪いということがわかりづらいケースが多いです。
しかし、「特別な理由もなく一方的に性交渉を拒み続けた」という場合は慰謝料請求ができる可能性があります。
セックスレスの慰謝料の相場は?
そもそも慰謝料とは精神的なダメージに対する損害賠償金です。したがって、「その行為によってどのくらい精神的・肉体的な苦痛を被ったか」によって金額が変わります。
セックスレスを理由に慰謝料請求する際も状況や期間で金額が変わります。一般的には100万円程度になることが多いです。
慰謝料の相場が高額になる可能性があるケース
前述のとおり、セックスレスの場合、慰謝料金額が高額になることはほとんどありません。ただし、以下のような要素がある場合は慰謝料金額が高額になるケースもあります。
- セックスレスである期間が年単位である
- 婚姻期間が長い
- 不貞行為が原因である
- 不倫相手とは性交渉がある
- 未成年の子供がいる
- 慰謝料を請求する相手の収入が多い
- 慰謝料を請求する相手の社会的な地位が高い
- セックスレスや夫婦関係の改善に非協力的である など
まとめ
セックスレスで離婚ができるのかを説明しました。セックスレスと一口に言ってもさまざまなケースがあり、離婚できるのか、慰謝料請求ができるのかの判断が難しいのが現実です。
セックスレスで離婚するには、「セックスレスが婚姻を継続し難い重大な事由に該当するかどうか」が鍵になります。
そのためには、「配偶者から正当な理由なく性交渉を拒否されていること」や「セックスレスにいたった経緯」などを具体的に証明する必要があります。
自分のケースで離婚できるのか、慰謝料請求できるのかはなかなか素人が判断できるものではありません。セックスレス問題は放っておくと問題が深刻になります。離婚を切り出す前に離婚に強い弁護士に相談することをおすすめします。
離婚に強い弁護士選びには当サイトのようなポータルサイトを利用すると便利です。ぜひご活用ください。
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