離婚後の相続権の有無|子供に受け継がせたくない場合についても解説
離婚するとお金の心配が出てきますよね。まして子供がいれば、将来のためになるべく残してあげたいのが親心です。離婚後、元配偶者が亡くなったら財産はもらえるの?自分が死んだ時は?
相続権は誰にあるのか、再婚した場合や、前の配偶者との子供に継がせたい・継がせたくない場合など、相続に関して説明していきます。
- 目次
離婚後の相続権の有無
離婚した後、元配偶者が亡くなったら、その遺産の相続権をもつ「相続人」に、元夫(妻)はなれるのでしょうか?子供は、孫は?ここでは、亡くなった人=被相続人からみた血縁関係により相続権の有無が異なるので、それぞれについて説明します。
そもそも相続人とは?
■配偶者は相続人
■配偶者以外で相続人になる順序
・第1順位:亡くなった人の子供
※第1順位の人が亡くなっていれば、その人の子供、孫など。子供も孫もいれば子供が優先
・第2順位:亡くなった人の父母、祖父母など。どちらもいれば父母が優先
・第3順位:亡くなった人の兄弟姉妹
※第1順位がいない場合→第2順位が相続人、第1順位も第2順位もいない場合→第3順位が相続人となります。
引用元:国税庁ホームページ
元配偶者
× 相続権なし
婚姻中の配偶者は相続人ですが、離婚で夫婦は他人になり、お互いに相続権は失われます。夫(妻)と離婚した元妻(夫)は、元配偶者で相続人ではないので、元夫(妻)が亡くなっても元妻(夫)は財産を相続できません。
元配偶者との子供
〇 相続権あり
離婚により夫婦関係がなくなって、元配偶者は相続人から外れます。けれども、元配偶者との間に生まれた子供は、離婚後も親子関係がなくなるわけではなく、相続権は失われません。離婚後に会わなかったとしても相続人のまま変わりありません。
元夫(妻)が再婚したり、再婚後の配偶者との間に子供が生まれたりしても、相続権はなくなりません。
元配偶者との孫
△ 相続権あり(代襲相続条件付き)
相続の際に元配偶者との子供が亡くなっていたケースでは、生きていれば持っていたはずの相続権は、代襲相続という制度で孫へ引き継がれます。
先に述べた第1順位の範囲のように、相続人になるはずだった子供が亡くなっていたら、その人の子供(財産を持つ被相続人からみると孫)へ相続権が引き継がれ、相続人となります。
例えば、亡くなった元夫(妻)が離婚後子供と疎遠でおり、孫が生まれたと知らなかった場合でも、子供、孫ならば元夫(妻)の相続人になる可能性があるのです。
※相続については、養子の場合、代襲相続の制度など、条件が複雑なため、相続に詳しい弁護士や税理士、税務署など専門家・専門機関に問い合わせや相談をしましょう。
再婚相手の連れ子
△ 相続権あり(養子縁組など条件あり)
例えば、女性が子連れの男性と再婚した場合、新しい夫は配偶者となり、お互いが相続人になります。
ところが、夫の連れ子については、自分と血がつながっておらず、再婚しただけでは相続人にはなれないため、自分が亡くなった時、夫の連れ子に財産の相続権はありません。
そこで、自分と夫の連れ子との間で、法律上の親子関係を作る養子縁組を行うと、連れ子を相続人にできます。自分に実子がいた場合でも、養子になった連れ子は実子と同じ法定相続分の権利を得られます。
同様に、女性が子連れで再婚し、子供に再婚相手である夫の遺産を継がせたい場合、新しい夫と自分の連れ子で養子縁組を行って法律上の親子関係を作れば、子供を夫の相続人にできます。
再婚相手との実子
〇 相続権あり
それでは、子連れの女性が再婚して、新しい夫との間に新たに子供が生まれた場合はというと、前夫との間に生まれた子供も、現在の夫との間に生まれた子供も、同じ自分(女性)の実子です。したがって、どちらも自分(女性)の相続人であり、相続の割合も同じです。
同様に、子連れの男性が再婚し、再婚相手との間に子供が生まれた場合、どちらも男性の実子なので、前妻との子も再婚相手との子も、男性の相続人で相続の割合も同じです。
前の配偶者との子供に相続させたくない場合
例えば、夫(妻)が亡くなって相続を行うことになり、夫(妻)の前妻(夫)との間に生まれた子供がいる場合、その子にも相続権があります。
たとえ会ったことがなくても夫(妻)の相続人に違いなく、遺産相続の権利も持ち、遺産分割の話し合いに協力してもらう必要があります。
こういったケースで、できれば自分の子供に多く財産を残してあげたい、前妻との子供に相続させたくない場合、相続させない・相続分を減らすことはできるのでしょうか。
遺留分とは
民法では、兄弟姉妹以外の相続人に遺産の最低限の取り分を認めており、これを遺留分といいます。
民法 第1028条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
1.直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
2.前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
1に該当するのは直系尊属、すなわち父母(父母が亡くなっていれば祖父母)で、2に該当するのは、妻(夫)や子です。妻(夫)と子供で相続する場合、合わせて財産の2分の1となります。
計算すると以下になります。
【妻(夫)と子供で相続する場合の遺留分の計算】
妻(夫) 財産の2分の1×法定相続分2分の1=遺留分は4分の1
子 財産の2分の1×法定相続分2分の1=遺留分は4分の1(これを子供の人数で割る)
子供が2人なら8分の1ずつとなります。前の配偶者との子供も、自分との子供も同じ割合です。
「生前、夫(妻)に、全部自分と、自分の子供に財産を残してくれるよう遺言を書いてもらえばよいのでは?」と思われるかもしれませんが、遺留分は、遺言があっても侵害されないものです。
もし遺言によってこの遺留分が侵害された場合、遺留分の権利を持っている人は、侵害している相手に自分の遺留分を返してもらうよう請求できます。これを遺留分滅殺請求といいます。
つまり、例えば前妻(夫)との子供に相続させたくないと遺言を作ったとしても、その子には遺留分の権利があるのです。
<前の配偶者との子供に相続させたくない場合>
- 相続に詳しい弁護士に相談する
- 相続人廃除の手続きをする
相続に詳しい弁護士に相談する
自分の子供の取り分を多くするには、前妻(夫)との子供にも遺留分があり、相続は非常に複雑なものなので、相続に詳しい弁護士に相談することがおすすめです。
<弁護士に相談するメリット>
- 人間関係のトラブルによる平行線を回避できる
- 前妻(夫)との子供にも遺留分の権利があるので、母(父)の違う子供同士で相続争いになる可能性が生まれます。当事者同士では平行線でも、弁護士に相談して間に入ってもらうと、解決への道を探れるでしょう。
- 法的な根拠をもって主張できる
- 当事者は「遺産争い」というくらいですから感情的になりがちですが、弁護士は法的な根拠を主張するので、話し合いをスムーズに進められます。
- 相続の手続きをサポートしてくれる
- 自分の子供の取り分を増やすためには、前妻(夫)との子供の遺留分を侵さない範囲で遺言を作る方法があります。遺言をはじめ相続は仕組みが複雑なので、弁護士に手続きをサポートしてもらえると安心です。
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相続人廃除の手続きをする
財産を持つ被相続人が亡くなる前、相続を受ける側の人を「推定相続人」といいます。相続させないためには、家庭裁判所へ、推定相続人の相続権喪失の申し立てをする「相続人廃除」という制度があります。
ただし、被相続人に対する虐待や、重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合とされるので、単に前妻(夫)の子へ遺産を渡したくないという理由で相続人廃除が認められるのは難しいといえるでしょう。
前の配偶者との子供が相続人にいる場合
例えば、前の夫(妻)が亡くなったとして、自分との間に生まれた子供には、離婚後どれだけ疎遠であったとしても相続権があります。
また、今の夫(妻)が亡くなったとして、その相手には前に婚姻歴があり、前の配偶者との間に子供がいたとしたら、その子供にも、自分と見ず知らずだったとしても相続権があります。
相続人のなかに前の配偶者との子供がいる場合について、説明していきます。
連絡が可能な場合
これまで述べてきたように、前の夫(妻)と自分との間に生まれた子供は、離婚後も前の夫(妻)の相続人から外れません。
ですので、前の夫(妻)が亡くなった場合、その親族と連絡が可能なら、子供は相続開始後に相続人全員で行う遺産分割協議に加わることになります。
結婚歴がある今の夫(妻)が亡くなり、前の配偶者との間に子供がいた場合、その子供と連絡が可能であれば、遺産分割協議に加わってもらうことになります。
子供が音信不通の場合
相続人全員で行う遺産分割協議は、相続人が1人でも欠けてしまった場合は無効となってしまいます。
それでは、例えば夫が亡くなり、夫の前妻との間には子供がいて、その子は相続人なので連絡を取りたい。けれども音信不通、行方不明で連絡が取れないというようなケースでは、どうしたらよいのでしょうか。
不在者財産管理人が遺産分割協議に参加する
前の配偶者との子供である相続人と連絡が取れない場合、家庭裁判所に申し立てて不在者財産管理人を選任してもらう制度があります。その不在者財産管理人が前の配偶者との子供の代わりに、遺産分割協議に参加するという仕組みです。
失踪宣告という制度を利用する
失踪宣告は、生死がわからない人に対し、法律のうえでは亡くなったとみなすことにする制度です。相続人が生死不明になって7年が過ぎた場合、家庭裁判所に申し立てをして失踪宣告が行われると、その相続人が亡くなったとみなされることになります。
相続については、相続人が亡くなっていた場合の代襲相続の制度などもあり複雑なため、詳しくは弁護士や税理士、税務署など専門家・専門機関に問い合わせや相談をしましょう。
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相続の割合
【法定相続分】
・配偶者:2分の1
・子供:2分の1を子供の数で等分
子供は人数で等分ということは、前の配偶者との間に生まれた子供と、現在の配偶者との子供についても、法定相続割合は同じです。例えば、自分(後妻)と夫の間に生まれた子供と、夫と前妻との間の子供がいる場合、どちらも夫の実子で、夫が亡くなった場合、子供2人の法定相続分は同じということになります。
- 再婚相手が亡くなった場合(例:子供2人:前の配偶者との実子が1人、自分との実子が1人)
- 配偶者:2分の1
- 子供:2人がそれぞれ4分の1ずつ
- 再婚相手が亡くなった場合(例:子供4人:自分の連れ子が2人、自分との実子が2人)
- 配偶者:2分の1
- 子供:4人がそれぞれ8分の1ずつ(連れ子と再婚相手が養子縁組していることが相続の条件)
- 前の配偶者が亡くなった場合(例:自分との実子が1人のみ)
- 元配偶者:なし
- 子供:100%
「死後離婚」が遺産相続に及ぼす影響
結婚すると、配偶者の両親やきょうだいと姻族の関係になります。配偶者亡き後も関係は基本的に続いていくものです。
しかし昨今、配偶者が亡くなった後、姻族との法律上の関係を絶つ人が増えているといわれます。
配偶者が亡くなったら婚姻関係は終わるので、死後に離婚するということは法律上ありませんが、姻族と「姻族関係終了届」の手続きをすると、法律上の関係を絶って縁を切ることになるので、いわゆる「死後離婚」といわれるようです。
姻族関係終了届を出して姻族でなくなったら、相続権はどうなるのでしょうか。実は、亡くなった相続の時点で配偶者であれば法定相続人であることには変わりなく、相続権はあります。また、相続した遺産の返還義務もありません。
まとめ
離婚後、相続権は誰にあるのか、再婚した場合や、前の配偶者との子供に継がせたい・継がせたくない場合など、相続に関して説明してきました。
相続人が誰になるのか、法定相続分や遺留分を踏まえた遺言の作り方など、相続は複雑な仕組みになっています。親族間のトラブルを避けるためにも、相続と離婚に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。
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