配偶者の「認知症」が理由で離婚はできるの?

その他離婚理由
弁護士監修
配偶者の「認知症」が理由で離婚はできるの?

厚生労働省の調査によると、2020年の65歳以上の認知症推定有病率は16.7%となっており、約6人に1人が認知症という結果でした(平成29年版高齢社会白書)。

さまざまな研究が進んでいますが、認知症は完全に防止できるものではなく、誰もが罹患する恐れのある病気です。

なかには配偶者が認知症になり、介護に疲れ、離婚を考えることもあるでしょう。

この記事では、配偶者が認知症という理由で離婚できるのかについて解説します。

配偶者が認知症という方だけでなく、年齢の若い方、独身の方もぜひ最後までお読みください。

目次
  1. 認知症の配偶者と離婚できるのか
  2. 認知症レベルで離婚の流れ・種類が変わる
    1. 会話が成立する場合
    2. 会話が成立しない場合
  3. 離婚が認められるケース
  4. 認知症の配偶者との離婚を考えたら弁護士へ
  5. まとめ

認知症の配偶者と離婚できるのか

夫婦の合意があればどのような理由でも離婚が可能です。そのため、配偶者の認知症が軽度であり、判断能力があるという場合は、当事者双方が合意すれば離婚ができます。

話し合いで合意できない場合は訴訟を起こし、裁判で離婚を認めてもらうことになります。

認知症レベルで離婚の流れ・種類が変わる

当事者同士の話し合いで合意できれば離婚が成立しますが、配偶者が認知症の場合、配偶者との会話そのものが成立しない可能性があります。

認知症のレベルによって離婚の種類はどう変わるのでしょうか。

会話が成立する場合

配偶者が認知症と診断された場合でも、症状が軽度であれば、離婚することでどのようなことが予想されるか想像できますし、離婚の意思表示もできるでしょう。

そのため、配偶者が認知症であっても会話が成立するのであれば、協議を行い、合意が得られれば協議離婚または調停離婚が成立します。

話し合いで合意が得られない場合は裁判を行い、裁判所に離婚を認めてもらうことになります。

会話が成立しない場合

会話が成立しない場合

認知症が進行しており、会話が成立しない場合は協議離婚や調停離婚はできません。そのため、必然的に裁判離婚の成立を目指すことになります。

しかし、認知症が進行している場合、配偶者が自分の意思を主張し、法的な手続きを行うことができません。そのため、成年後見人を選任する必要があります。

成年後見人とは、成年後見制度に基づき、認知症や知的障害など判断能力が十分でない人に代わって財産管理や身上監護などの法的権利を担う人のことです。

配偶者が認知症で会話が成立しない場合の離婚の手順は以下のとおりです。

  1. 配偶者について後見開始の審判を受け、成年後見人を選任してもらう
  2. 専任された成年後見人に対して離婚訴訟を提起する

なお、すでに自分が配偶者の成年後見人として選任されている場合は成年後見監督人(成年後見人が適切に職務を行っているかどうかを監督する人)を相手に訴えることになります。

離婚が認められるケース

裁判で離婚を認められるためには民法で定める法定離婚事由が必要です。なお、法定離婚事由は以下の5つとなります。

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上生死不明
  4. 回復の見込みのない強度の精神病
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由

認知症以外に不貞行為などの離婚理由があれば法定離婚事由に該当します。

認知症そのものは法定離婚事由にはありません。そのため、「④回復の見込みのない強度の精神病」あるいは「⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかどうかが問題になります。

なお、「認知症は強度の精神病には該当しない」と考えるのが一般的ですので、「⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかどうかが重要になります。

例えば、配偶者の認知症が進行し、会話やコミュニケーションが成立せず、夫婦で協力して生活していくことが難しくなったなどの場合は「⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断される可能性があります。

これについて、アルツハイマー型認知症に罹患した妻に対して夫が離婚を請求した事件において、裁判所が離婚を認めた判例があります。

これは認知症そのものを離婚原因としたわけではなく、妻が長期間夫婦の協力義務を果たしておらず、婚姻関係が破綻していると判断されたことで離婚が認められたものです。

つまり、配偶者が認知症になったというだけではなく、それによって婚姻生活を継続できない状態であるかどうかが離婚の判断基準になります。

認知症の配偶者との離婚を考えたら弁護士へ

認知症の配偶者との離婚を考えたら弁護士へ

離婚は財産分与や慰謝料など、決めなければならないことがたくさんあります。また、配偶者が認知症と判断された場合、認知症の程度によって手続きや流れが異なります。

離婚を考えた段階で弁護士に相談すれば、離婚成立の見通しはあるのか、どのような手続きを踏めばスムーズに離婚できるのかなど、法的なアドバイスをもらうことができます。

さらに、弁護士に依頼することで相手方との交渉や調停・裁判に進んだ際の手続きも代行してもらえます。

離婚手続き自体がストレスの多い作業です。 配偶者が認知症で介護をしているという場合、体力的にも精神的にも疲弊しているケースが多いです。

弁護士に依頼することで、負担を軽減しながらスムーズに離婚手続きを進めやすくなります。

まとめ

配偶者が認知症の場合の離婚について解説しました。

配偶者が認知症になり、日々の介護やコミュニケ―ションに疲れ、離婚を考えたらまず弁護士に相談しましょう。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

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