親権は離婚前に決まる!離婚で親権を勝ち取る方法を完全公開!
近年、少子化の進行が問題になっています。
そのため、離婚の際、父親と母親のどちらが子供の親権者になるかについて、祖父母も巻き込んだ熾烈な争いになるケースが増えています。
子供の親権で争った場合、どのようなことが判断のポイントとなるのでしょうか?
- 目次
親権に関する基礎知識
親権とは
「親権」とは、民法820条に、
親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う
と定められているものであり、未成年者に対する親の権利と義務のことです。
親権には、子供の身上に関する権利と義務である「身上監護権」と子供の財産に関する権利と義務である「財産管理権」が含まれます。
身上監護権とは、子供の住居を定め、子供の身の回りの世話や子供の教育、子供のために必要な契約をしたりする権利であり義務です。
財産管理権とは、子供名義の財産を管理する権利であり、かつ義務です。
子供を扶養するのも親の役目ですが、子供が贈与を受けた財産や相続した財産は、あくまでも子供のものです。親は適切に管理し、子供のために使用しなければならないのです。
親権者と監護権者
離婚を考えている人で、よく「親権も監護権も両方ほしいです」と言う人がいます。
上記で説明したとおり、監護権(身上監護権)は親権の一部です。親権を持つ人が監護権を持つことになります。
親権とは別に監護権が問題になるのは、主には夫婦が別居しているときです。離婚しない限り、父親と母親は子供の共同親権者です。
しかし、別居するということは、どちらかが子供と住むことになりますが、どちらもが子供と住みたいという場合、どちらが一方を監護権者に指定することになります。
一方、離婚のときに親権から監護権を取り出して、父親が親権を持ち、母親が監護権を持つというようなことは実務上ほとんどありません。
昔は、財産の管理は男が適していて、子供の身の回りの世話は女が適していると考えられていました。
そのため、父親が親権を持ち、母親が監護権を持つということは実益があると考えられていました。
その後、親権者の争いの激化により、一方に親権を与え、もう一方に監護権を与えることで解決を図るという考え方もあったとも聞きます。
しかし、現在では、親権者や監護権者を決めるにあたって、最も大切なことは「子の福祉」であるとされています。
親権と監護権を分離することは、「子の福祉」にかなう実益がありません。そのため、よほど特別な事情がなければ家庭裁判所も認めません。
つまり、離婚のときには「親権」を獲得することだけを考えればよいということになります。
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親権者を決める方法
協議離婚の場合
民法第819条第1項は、
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と決めなければならない
と定めています。そのため、協議離婚の場合には、子供の親権者を話し合いによって決めることになります。
離婚調停の場合
調停も話し合いです。基本的には離婚調停でも話し合いによって親権者を決めます。
離婚調停で、父と母のどちらが親権者になるかについて話し合いがつかない場合は、調査官による調査が行われることがあります。
家庭裁判所の調査官は、裁判官の指示に従って、子供の意見の聞き取りをしたり、保育園や学校の先生から子供の様子などの聞き取りなどの調査することができます。
そして、その調査をもとに調査官は意見を述べることができます。調停では、この調査結果や調査官の意見を参考にしながら話し合うことになります。
離婚訴訟の場合
民法第819条第2項は、
裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める
としていますので、親権者は家庭裁判所が決めます。なお、離婚訴訟でも調査官による調査が行われ、その結果が参考にされることもあります。
親権を決める際の判断ポイント
親権者を決めるための判断要素
親権者を決めるためにはいろいろな判断要素があります。家庭裁判所がこれらの要素を総合的に判断します。
母親優先の原則
親権者を決める際、以前は母親優先の原則が強い傾向がありました。
これは、「子供の身の回りの世話をこまめに行うのは母親の方が適している」という考え方によるものです。
現在は「母性優先」ではなく、「主たる監護者はどちらか」という点が重視されています。
もちろん、現在も子供の主たる監護者は母親であることが多いため、結果的に母親が親権獲得に有利になることがあります。
特に乳幼児期の子供の場合は母親が養育・監護を担うことが多いため、母親が親権を獲得する傾向があります。
監護の継続性
子供が、現在の環境で問題なく暮らしていれば、その監護の状況を継続するべきであるという考え方です。
そのため、夫婦が別居後、子供が一方の親と一緒に問題なく暮らしていれば、その親は「監護の継続性」の観点からかなり有利になります。
監護能力・監護実績
監護能力とは、子供の世話をするだけの能力・余裕があるかということです。
監護実績とは、子供が生まれてから現在まで、主に監護(身の回りの世話などの子育て)をしていたのはどちらかということです。
精神的・経済的家庭環境
精神的・経済的家庭環境とは、親が収入や資産を持ち、精神的に落ち着いた生活ができているかどうかということです。
なお、経済力では父親の方が母親より有利なことが多いのです。
しかし、母親が働いて得る収入と父親から受け取る養育費、行政から受け取る児童手当・母子手当などの収入を総合して、子供と問題なく生活をしていける状態であれば、父親より経済的家庭環境が劣るという判断はされません。
居住環境
例えば、周辺に子供の慣れ親しんだ友達がたくさんいるなど、家庭内の環境だけではない周辺の環境も判断要素となります。
監護補助者の有無
離婚して、一人で子供を育てていくということは、父親であれ母親であれ、今後は働いていくことになります。そのときに、実家の父母など子供を育てるために協力してくれる者がいるか否かは重要なことです。
子供の年齢・性別
子供が小さいと母親が養育・監護を担うことが多いため、母親が親権を獲得しやすくなります。
女の子なら女親の方がいいのではないかという判断もありますが、性別のみでは大きな判断要素になりません。
子供の意思
子供の意思を尊重すべきなのは、10歳くらいからとされた判例があります。小さい子供の意見は無視されるわけではありませんが、大きな比重を占めるわけでもありません。
子供の意思の尊重は、小学生、中学生と子供の年齢が上がっていくにつれ、大きくなっていきます。
子供の環境の変化の有無
転校しなければならなくなるなど、親権者の指定によって、子供の環境に変化が生じるかどうかということです。子供の環境には変化を生じない方がよいと考えられています。
兄弟姉妹の不分離
兄弟姉妹がいる場合は、なるべく一緒に育った方がよいという考え方です。
大きなポイントとなるのは?
上記の要素は、総合的に考慮されて、父親と母親のどちらが親権者にふさわしいのかという判断がされます。
そのなかでも、大きなポイントとなるのは、
です。
家事事件手続法第152条第2項には、家庭裁判所が子の監護者を決める審判を行うためには、15歳以上の子の意見を聞かなければいけないと定めています。
そのほかにも、家事事件手続法では、15歳以上を対象として、子の意見を聞くという規定があります。
そのため、15歳というのは一つの分かれ目となっており、15歳以上になると、子供の意見がもっとも重視されるようになります。
離婚原因は考慮されない
親権者の指定の際、原則として離婚の原因は考慮されません。
例えば、離婚の原因が母親の不貞行為であった場合にも、不貞行為は慰謝料の支払いで償うべきであり、親権者の指定の判断には影響しないものと扱われます。
ただし、離婚原因が暴力である場合は別です。子供にも暴力を振るっていたというような場合はもちろんのこと、子供には暴力を振るわない場合も該当します。
子供の前で配偶者に暴力を振るうことは「面前DV」と言われ、子供に対する虐待になります。そのため、暴力を振るう親は、「子の福祉」の観点から、親権者には不適格と判断されます。
有利に進める方法
「子の福祉」を意識する
親権者を決める際に、最も大切なことは「子の福祉」です。相手が気に入らないとか、自分がこうしたいというような「自分の感情」ではありません。
親権者になりたい場合には、「子の福祉」の観点から、「自分が親権者になることが子供にとっていいことだ!」ということをアピールしていく必要があります。
監護の継続性を重視する
子供が小さいころは、母親優先の原則が強く、子供が大きくなると子供の意見の比重が大きくなります。
それ以外で最も重要な要素は監護の継続性です。
いくら母親でも、子供を置いて別居してしまうと、その後父親によって監護の継続性が作られていきます。こうなると子供を取り戻すのは難しくなることがあります。
あからさまな子供の奪い合いや子供の連れ去りなどは、子供に悪影響ですので行うべきではありません。
しかし、「あとで取り戻せるだろう」と考えて、安易に子供を置いて別居してしまうと不利になってしまうこともあります。
子供の意見に依存しすぎない
子供の年齢が上がるにしたがって、子供の意見も重視されます。しかし、子供に「パパといたい」もしくは「ママといたい」と言ってもらえばいいと安易に考えるのもよくありません。
よほどひどい親でない限り、子供は両親のどちらも大切に思っていることが多いです。どちらかを選ばせるということは本来とても酷なことなのです。
自分がどちらかをはっきり選んでしまうと、もう片方を傷つけてしまうのではないか、嫌われてしまうのではないかと考えて、はっきり言えない子もいます。
子供に負担をかけすぎないように、子供の意見に頼らなくても自分が親権者に指定されるように、主張・立証の仕方を考えていく必要があります。
一方、子供に自分を親権者に選んでもらうために、父親が母親を悪く言う、もしくは母親が父親を悪く言うということは、子供にとって悪影響です。「子の福祉」に適っていません。
「子供に相手の悪口を吹き込む」ことはやめましょう。子供に対する調査官による聞き取りなどで明るみになると、非常に印象が悪くなります。
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まとめ
離婚紛争のときには感情的になりがちです。
しかし、親権者の指定に関しては、子の福祉を一番に考える必要があります。自分の感情に従った行動ばかりとっていると「子供のことを考えていない親」と判断されてしまいます。
自分はどの要素をアピールすることによって「親権者にふさわしい」ということを証明するかということを考えていきましょう。
一度、親権者が決まってしまうと、めったなことでは親権者の変更が認められません。親権者をめぐる紛争は早めに弁護士に相談しましょう。
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