面会交流権|離婚後も子供と面会するには?

親権・養育費
弁護士監修
面会交流権|離婚後も子供と面会するには?

離婚する際は必ず親権者を決めなければなりません。残念ながら親権を取ることはできなかった場合、子供に会いたいと思うのは当然ですよね。

では、離婚後に親権を取れなかった親は子供に会えるのでしょうか。民法では親権者でない親が子供と面会するための「面会交流権」を認めています。

この記事では、離婚の際に親権を持てなかった人が離婚後も継続して子供に会うための権利「面会交流権」について説明します。

目次
  1. 面会交流権とは?
    1. 面会交流権は誰のための権利か
    2. 面会交流権を決めるタイミングは?
  2. 面会交流権の内容は?
    1. 面会交流方法が決まる要素は?
    2. 面会交流方法の標準的な内容は?
    3. 面会交流が認められる期間は?
  3. 子供との面会交流を決める手続き
    1. 話し合い
    2. 面会交流調停や審判
    3. 面会交流が原因で訴訟になることは?
    4. 相手が面会交流させてくれない場合は?
  4. 面会交流を拒絶できるケースは?
    1. 子供の都合がつかない場合
    2. 虐待や母子がDVシェルターに入っている場合
    3. 子供が嫌がる場合は会わせない方が良いのか?
    4. 要注意!養育費との引き換えはできない
  5. 取り決めは離婚協議書にまとめることがおすすめ
    1. 面会交流権の書き方
  6. まとめ

☝面会交流についてこちらの動画でも解説しています

面会交流権とは?

面会交流権は、離婚時に親権を持てずに子供と離れて生活する親(以下、非監護親と呼ぶ)が離婚後に子供と会ったり、プレゼントを贈るなどさまざまな方法で交流する権利です。

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親権は離婚前に決まる?離婚で親権を勝ち取る方法を完全公開!

面会交流権は誰のための権利か

この面会交流権ですが、いったい誰のための権利なのでしょうか。親権を持てなかった親が離れて暮らす子供と面会する権利なので、非監護親のためと思えそうです。

しかし、離れて暮らす親と会いたいと思うのは子供も同じです。本来、子供の健全な成長のためには両親の愛情を受けながら育つことが好ましいとみなされます。

そのため、面会交流権は子供のための権利でもあるのです。

離婚は夫婦の問題であって、子供にとっては関係がないことです。それなのに親の都合で健全な成長のための権利を奪われてしまったわけです。

したがって、面会交流の条件を決める際は、子供の利益や気持ちを最優先に考える必要があります。

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親の離婚が子供に与える影響|親権や面会についても解説

面会交流権を決めるタイミングは?

基本的に面会交流の方法などを決めるのは離婚前でも離婚後でもどちらでも構いません。ただし、離婚前に決めておくことをおすすめします

離婚する前は非監護親に会いたいと強く思っていた子供も、離れて暮らすうちに気持ちが薄らいでいくこともあります。

また、「考えると辛くなるから敢えて考えないようにする」こともあります。また、場合によっては「捨てられた」と恨むこともあります。

親権者の方も新しい生活に慣れてきたところに元配偶者から連絡が来ると「もう関わらないでほしい」と拒否反応が出ることもあります。

子供もそのような親の状況を察知して「(非監護親と)会いたくない」と言うこともあります。

このように離婚後は面会交流を決めるのが難しいケースが多いのです。

一方、離婚前に決めておけば、離婚後もすんなりと面会交流ができます。面会交流を決めるなら離婚前にしっかりと決めておきましょう。

面会交流権の内容は?

面会交流を決める場合、具体的にどのような内容を決めておけば良いのでしょうか。面会交流では考慮すべき要素や判断基準があります。

面会交流方法が決まる要素は?

面会交流を決める際には以下の要素を考慮して判断します。いずれもポイントとなるのは親ではなく子供の利益になっているかどうかということになります

  • 子供と別居している非監護親との現在の関係性
  • 非監護親と同居していたころの子供との関わり方
  • 同居親(監護親)、非監護親双方の都合や状況・希望
  • 子供の現状や年齢 ・子供の希望や都合

面会交流方法の標準的な内容は?

面会交流では以下の項目を具体的に決めていきます。

面会の頻度

実際に面会交流する頻度を決めます。

月1回程度が一般的ですが事情によって変わってきます。例えば遠方に引っ越してしまった場合は頻度を2カ月に1回などに減らしても良いでしょう。

反対に子供の年齢や関係性によっては月に2回以上にすることもあります。

1回の面会の時間と時間帯

面会の頻度を決めたら面会する時間や時間帯も大切です。午前9時から午後4時までなど具体的な時間を決めます。

子供と非監護親の関係性が良好な場合は朝から晩まで面会しても良いでしょう。

面会時の受け渡し場所や面会場所

面会時にどこでどのように受け渡すのかも重要です。例えば、非監護者が自宅まで迎えに来てくれるのか、どこかで待ち合わせするのかなどを決めます。

受け渡し場所だけでなく面会する場所についても決めることがあります。非監護者の家に行くのか、飲食店で会うのかなどといったことになります。

子供の年齢に応じて、受け渡し場所だけを決めて面会場所は決めないケースもあります。

付添人の有無

面会交流では子供に付添を付けることがあります。特に父親が非監護者で子供が生まれて間もないという場合は授乳のために母親が付き添うことがあります。

また、子供が非監護者と会うことを不安に感じているような場合も同居親が付き添う場合があります。

このような場合、付添人が子供に付き添うのは最初の頃だけで、ある程度の時期が過ぎたら外れるほうが良いとされています。

電話やメールでのやり取りなどの連絡の方法

面会交流では日時や場所の変更など連絡を取る方法を決めておく必要があります。基本的には親同士電話番号やメールアドレスを交換して連絡手段を決めておきます。

学校行事への参加

子供の運動会や入学式、卒業式に参加するかどうかも決めておきます。これらの行事に非監護親が参加したいと思っていても、事前に知らされていなければ参加できません。

また、勝手に参加してしまうと子供や同居親との関係が悪くなることもあります。あらかじめしっかりと決めておきましょう。

長期休暇の過ごし方

夏休みや冬休みなど、子供の長期休暇中は非監護親と長期間過ごすことが可能になる場合もあります。

特に子供が遠方に住んでいるなど、面会の頻度が少なくなるケースでは長期休暇中に宿泊を伴う面会交流を認めることもあります。

しかし、非監護親の元に子供を長期期間預けるとなると同居親としては不安なこともあるでしょう。

ですから、あらかじめ長期休暇の過ごし方についてしっかりと決めておくことが大切です。

面会交流が認められる期間は?

面会交流権は子供の年齢が20歳になるまで認められています

同居親が非監護親と連絡を取ることも多いですが、子供の成長に応じて同居する親を介さず直接非監護親と子供でやり取りすることもあります。

20歳になるまで認められている面会交流権ですが、子供の年齢が18歳以上になってくると面会交流のためにわざわざ調停を申し立てるといったことはほとんどありません。

子供との面会交流を決める手続き

子供との面会交流を決める手続き

ここからは、離れて暮らす子供との面会交流を決めるためにどのような手続きを取るのかを説明していきます。

話し合い

面会交流はまずは当事者同士で話し合い、面会交流が可能かどうか、どのような方法で面会するかなど具体的に決めていきます。

このとき、まず「自分は具体的にどうしたいのか」を明確にしておくことが大切です。相手には「自分がどうしたいのか」を具体的かつ詳細に伝えます。

面会交流権は子供の福祉のための権利でもあります。必ず子供の気持ちや都合、相手の都合を考慮しながら希望を伝えていきましょう。

自分本位な希望を伝えるだけでは、相手に拒否されてしまう可能性があります。

また、面会交流は子供の気持ちや都合が最優先になります。

離婚してしまう前に子供との触れ合いを増やして信頼関係を築いておき、子供に「(離婚後も非監護親と)会いたい」と思ってもらうようにしておくことも大切です。

面会交流調停や審判

当事者同士で話し合っても面会交流について合意が得られないこともあります。このような場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てます

調停の際は調停委員が夫婦の間に入りますが、あくまで当事者同士での話し合いが基本です。

面会交流調停では以下で説明する「家庭裁判所調査官による調停」や「試行的面会交流」を行うケースがあります。

家庭裁判所調査官による調査とは

面会交流調停を行う際は、子供が面会交流のことをどう考えているのか、面会交流を行うことで子供や同居親にどのような影響があるかといった調査を行います。

この調査を行うのが家庭裁判所調査官です。

家庭裁判所調査官は子供の教育や心理学、法律の知識を持っていますので、専門知識に基づいて調査を行います。

家庭裁判所調査官が調査した内容は、調停委員が調停で当事者に意見をする際に参考にしたり、審判に進んだ際に裁判官が面会交流すべきかどうか、どのように面会すべきかの判断をくだす際に利用します。

試行的面会交流とは?

面会交流で子供が非監護親とどのように接するのか、また非監護親は子供とどのように接するのかを見るために試行的面会交流を行うことがあります。

試行的面会交流とは、その名のとおり「お試しで面会交流をやってみること」です。これにより、面会交流時の非監護親と子供の状況を見ることができます。

試行的面会交流は家庭裁判所のなかにある児童室と呼ばれる部屋で行います。

この部屋には絵本やおもちゃなど子供用の遊び道具があり、試行的面会交流専用の部屋となっています。基本的に児童室には非監護親と子供だけが入室します。

このとき、同居親はマジックミラー越しあるいはカメラで撮影したものを別室のモニターで見るといった方法で面会交流時の様子を観察することができます。

なお、試行的面会交流は家庭裁判所調査官が立ち会いのもとで行われます。

試行的面会交流で問題なく交流が行われれば「実際の面会交流でも大丈夫だろう」と考えらえるため、調停がスムーズに成立する可能性が高くなります。

一方、試行的面会交流がうまく進まなかった場合は実際の面会交流に対して否定的になることもあります。したがって、試行的面会交流を行うかどうかは慎重になる必要があります。

面会交流が原因で訴訟になることは?

面会交流権を決める際、調停や審判に進むことはありますが訴訟に進むことはほとんどありません。しかし、面会交流の条件などで争いになると、親権争いに発展する可能性があります

子供を持つ夫婦の離婚では必ず親権者を決める必要がありますから、親権争いによって離婚自体の成立が難しくなってしまうこともあります。

こうなると訴訟を起こし、離婚裁判に発展することもあるので注意しましょう。

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子供の親権を勝ち取るために離婚前にすべきこと|親権の相談は離婚弁護士へ

相手が面会交流させてくれない場合は?

せっかく面会交流調停や審判で面会交流権について決めたとしても、同居親が子供に会わせてくれないこともあります。このような場合は強制執行ができます。

しかし、子供の面会交流における強制執行は財産の差し押さえで解決するものではありません。

また、子供が面会交流を嫌がっているケースで無理に非監護親と会わせるのは子供の福祉にも反します。

したがって、このような場合は「制裁金として、同居親が非監護親に一定金額を支払う」という命令を裁判所が出す「間接強制」という形を取ります

ただし、この間接強制には面会交流への強制力がありません。また、間接強制を行う際は調停や審判でどのような取り決めがされているかということも重要になります。

このような場合に備えて、面会交流の話し合いでどのような取り決めをしておくべきかを弁護士に相談しておくと良いでしょう。

面会交流を拒絶できるケースは?

面会交流を拒絶できるケースは?

面会交流は民法で定められた権利です。ただし、以下のようなケースでは面会交流を拒絶することができます。

子供の都合がつかない場合

子供の都合がつかなかったり、面会当日に病気にかかった場合は面会交流を拒絶できます。

ただし、このような場合は面会交流を一切行わないのではなく、日程変更などで対応するのが良いでしょう

虐待や母子がDVシェルターに入っている場合

非監護親が子供を虐待する可能性があったり、非監護親が面会することで子供に悪影響をおよぼす可能性がある場合は面会交流を拒絶できます

ただし、非監護親が子供ではなく同居親(監護親)に対して暴力を振るっていた場合は、必ずしも子供との面会交流を拒絶できるわけではありません。

これは夫婦関係と親子関係は分けて考えるべきという考え方によるものです。

一方、子供を連れて同居親(監護親)がDVシェルターに入っている場合、実際問題として面会はできなくなります。

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子供が嫌がる場合は会わせない方が良いのか?

面会交流では子供が「(非監護親に)会いたくない」と言うことがあります。このケースは慎重に判断する必要があります。

子供というのは意外と同居親の気持ちを察知しているものです。

「パパ(ママ)に会いたいって言ったらママ(パパ)が悲しむかな」と考え、「パパ(ママ)とは会いたくない」と言うこともあります。

反対に、同居親が「パパ(ママ)に会いたくないって言いなさい!」と子供に強要するケースもあります。

一方で、「パパ(ママ)と会いたくない」と言っていた子供が非監護親と面会すると大はしゃぎしていた、という例もあります。

このように、子供が非監護親に会いたくないというのは本心と異なることがあるのです。裁判所もこの事実を理解しています。

そのため、特に子供が幼い場合は子供の発言を鵜呑みにすることはほとんどありません。子供から話を聞くなど調査を行い、面会交流をするかどうかを慎重に決める必要があります。

一方、子供の年齢が10歳以上になってくると子供の意思も尊重されるようになります。

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要注意!養育費との引き換えはできない

同居親が面会交流をさせない場合に出てくるのが養育費の問題です。

面会交流を拒絶され、「面会交流を拒絶するなら養育費を払わないぞ」と非監護親が言ってくることがあります。

反対に同居親が「養育費が支払われないなら子供との面会交流はさせない」と言うこともあります。

しかし、本来、養育費と面会交流権は別の問題です。引き換えにすることはできません。調停や審判で争う際も、面会交流と養育費は別途決めていく必要があります。

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取り決めは離婚協議書にまとめることがおすすめ

面会交流の条件についてまとまったら、離婚協議書で定めておきましょう。離婚協議書とは、離婚時に取り決めた内容を契約書の形で残しておくものです。

口約束だと、離婚後に「そんな約束はしていない」と相手から言われてしまえば、約束したことを実行させることが難しくなります

書面で残しておけば、このようなトラブルを防ぎやすくなります。

面会交流権の書き方

面会交流を離婚協議書で残す際の一般的な書き方を紹介します。

乙(母親)は甲(父親)に対し、甲が丙、丁と毎月第1土曜日、午後0時から午後6時まで面会交流を行うことを認める。ただし、いずれかの都合が悪い場合には甲乙間の協議により日時を変更することができる。なお、面会の際は事前に甲が乙に連絡を入れるものとする。

宿泊を認める場合

宿泊を伴う面会交流を認める場合は、上記の一般的な書き方に以下の文面を加えることがあります。

乙は甲に対し、甲が丙、丁と以下のとおり面会交流することを認める。

1 月1回、第1土曜

2 毎年丙と丁の夏休みと冬休みの間、2日以上の宿泊を伴う面会 具体的な面会日時、場所、受け渡し方法などについては、当事者が丙、丁の福祉を尊重しながら協議して定める。

電話やメールでの交流を認める場合

電話やメールでの交流を認める場合は、上記一般的な書き方に下記のような文面を加えることがあります。

乙は甲に対し、甲が丙、丁と、メールや電話などによって交流することを認める

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まとめ

面会交流権について説明しました。 面会交流権は民法で定められた権利です。また、面会交流は子供の福祉や利益を第一に考える必要があります。

「非監護親と面会交流させても大丈夫か」「どういう条件で面会交流するのが良いか」「同居親が面会交流に応じてくれない」など、面会交流にはわからないことやトラブルが発生することもあります。

このような場合は弁護士に相談することで面会交流に伴うトラブルを回避しやすくなります。

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