財産分与で税金がかかることがある?知らないと損する節税方法とは。

財産分与
財産分与で税金がかかることがある?知らないと損する節税方法とは。

夫婦が離婚するときに2人で築いた財産を2人で分けることを財産分与といいます。一般的に夫のほうが妻より収入が多く、また財産の名義を夫にしていることが多いです。そのため、財産分与ではほとんどの場合夫から妻に財産を渡します。

ただし、夫より妻の収入の方が多い場合は妻から夫に財産を渡します。

通常は財産分与で税金が課せられることはないのですが、「状況によって」課税されることもあります。ということは、「課税される状況」をつくらなければ節税できるということです。

ここでは夫が妻に財産を渡すケースを想定して解説します。ただし、妻に収入があり夫が主夫をしている場合や夫より妻の収入の方が多いという場合は妻が夫に財産を渡すことになります。

目次
  1. 財産分与をした際の課税対象には何があるのか
    1. 一般的には2分の1ずつ分けあう
    2. 「財産分与は贈与ではない」というのが原則
    3. 原則として財産分与で譲渡所得は生まれない
  2. 財産分与が贈与に該当したり譲渡所得が発生することもある
    1. 財産を渡す側(夫)にかかる税金
    2. 財産を受ける側(妻)にかかる税金
  3. 財産分与で節税する方法
  4. まとめ

財産分与をした際の課税対象には何があるのか

では、財産分与となるものにはどのようなものがあるのでしょうか。 財産分与の対象は、

  • 現金
  • 預貯金
  • 住宅や土地などの不動産
  • 株式などの有価証券
  • テーブルやソファなどの家財道具

などです。夫婦が結婚前に有していた財産は財産分与の対象になりません

一般的には2分の1ずつ分けあう

財産分与は夫婦で2分の1ずつ分けあうのが一般的です。ただし、夫婦が合意すれば、どちらかがより多く財産を持つことができます

例えば、「妻の収入が少ないので離婚後の生活の足しにするために妻に多くの財産を分与する」ことは可能です。

「財産分与は贈与ではない」というのが原則

個人が財産をもらうと(贈与を受けると)、原則として贈与税を支払わなければなりません。

しかし、妻が財産分与で財産を受け取る意義は夫から贈与を受けることではありません。夫婦の財産を清算することです。

よって、妻が夫から財産分与を受けることは贈与ではないので基本的に贈与税は発生しません

原則として財産分与で譲渡所得は生まれない

個人が土地や建物の不動産を売って(譲渡して)利益が出ると譲渡所得が発生したとみなされます。そして、譲渡所得には所得税と住民税が課せられます。

譲渡所得にかかる所得税と住民税を合わせて譲渡所得税と呼ぶことがあります。

しかし、夫が妻に不動産の半分を財産分与しても譲渡所得が発生するわけではないので、基本的に譲渡所得税は発生しません

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財産分与が贈与に該当したり譲渡所得が発生することもある

財産分与が贈与に該当したり譲渡所得が発生することもある

以上のように、原則として財産分与では贈与税も譲渡所得税も課せられません。ただし例外的に課税されることがあるのです。

財産を渡す側(夫)にかかる税金

財産分与で夫が妻に財産を渡したときに、例外的に財産を渡す側の夫に譲渡所得税が課せられることがあります

夫としては財産が減っているのに、なぜその夫が税金を支払わなければならないのでしょうか。

不動産などの時価が取得時価格を上回っているときは注意

そのケースとは、財産分与したときの不動産や株式などの価格が、その不動産や株式などを購入したときの価格を上回ったときです。

例えば、夫婦で築き上げたすべての財産の価値が2,000万円分だったとします。そしてすべての財産が夫名義だったとします。

このときの財産分与で夫婦が2分の1ずつ保有することにしたら、夫は妻に1,000万円渡さなければなりません。このとき夫が現金で1,000万円を妻に渡せば夫に譲渡所得税はかかりません。

このとき、夫が500万円分の価値がある不動産と500万円分の価値がある株式を妻に渡したとします。これでも財産分与としては問題ないのですが、税金が課せられる恐れがあるのです。

700万円で購入した財産で1,000万円分の財産分与をした場合

夫が500万円分の価値がある不動産を400万円で購入していて、500万円分の価値がある株式を300万円で購入していたと仮定します。

この場合、夫は国税庁から「実質合計700万円で購入した不動産と株式で、1,000万円分の財産分与をおこなった」とみなされるのです。

つまり夫は財産分与によって300万円(=1,000万円-700万円)分、得したことになります。不動産と株式を売って300万円の譲渡益を得たものとみなされるのです。

そのため、財産分与をした夫に対し、300万円の譲渡益に対し譲渡所得税(所得税+住民税)が課せられるのです。

財産を受ける側(妻)にかかる税金

妻が離婚するときに夫から財産分与として財産を受け取ったとしても、それは夫から贈与されたわけではありません。財産分与の対象となる財産の半分は妻がつくったようなものだからです。

この場合、妻として当然獲得すべき財産(自分の財産)を手に入れただけなので、原則として財産分与によって妻に贈与税が課せられることはありません。

2分の1をはるかに上回る財産分与は要注意

では例外的に妻が贈与税を課せられるのはどのようなケースがあるのでしょうか。それは、妻が受け取る財産分与の額が2分の1をはるかに上回るときです。

極端な例で説明すると夫がすべての財産を妻に「財産分与する」とします。しかし、一般常識としては夫婦の財産は夫婦が協力して築き上げたものなので、妻の取り分の上限は2分の1です。

それにも関わらず妻が夫婦の財産をすべて獲得したら、残りの2分の1は夫が妻に「贈与したとみなそう」と国税庁は考えるのです。ここは重要なので、もう少し詳しく解説します。

夫婦の財産が2,000万円あり、すべて夫名義だったとします。財産分与で妻が獲得できるのはその2分の1の1,000万円です。

この1,000万円は「離婚による財産分与であり」「贈与ではない」と国税庁は考えます。だからこの分の1,000万円には贈与税はかかりません。

しかし、妻がさらに残りの1,000万円も獲得し、計2,000万円を得たとします。夫も「それでよい」としたとします。

この後半の1,000万円は「離婚による財産分与ではなく贈与である」と国税庁は考えます。そのため「贈与なら贈与税を課す」と判断するのです。

不動産取得税・登録免許税・固定資産税もかかってくる

このケースで、妻が2,000万円分の「財産分与+贈与」をすべて不動産で受け取ったとします。すると妻には不動産取得税と登録免許税と固定資産税がかかってきます。

ただし、「財産分与の分としての1,000万円分の不動産」については不動産取得税はかかりません。

「2分の1をはるかに上回る」額はわざとあいまいにしている

さて、ここでひとつ疑問が残ると思います。それは「妻に贈与税が課せられるのは、妻が受け取る財産分与の額が2分の1(50%)をはるかに上回るとき」という表現です。

妻が夫婦の財産を全額(100%)受け取ったら高い確率で贈与税が課せられるでしょう。しかし妻が55%受け取ったらどうなのでしょうか。または70%ならどうなるのでしょうか。

2分の1をはるかに上回るときという表現は法律用語としてあいまいで違和感が残ります。しかし曖昧な表現にしているのにはわけがあるのです。

仮に、夫に多額の収入があり妻にまったく収入がなく、そのうえ妻が子供の親権を獲得したとします。

この夫婦が協議をして妻の財産分与の取り分を大幅に増やす結果を出したら、それは合理的な判断といえます。

夫婦間の「収入格差」については個別に判断するしかないため、あいまいな表現にしているのです

財産分与で節税する方法

財産分与で節税する1つ目の方法は現金で財産分与することです。

例えば夫婦の財産が2,000万円あり、その内訳が現金1,000万円、500万円分の不動産、500万円分の株式だったとします。すべて夫名義だったとします。

このとき妻に現金1,000万円を渡して、夫は500万円分の不動産と500万円分の株式を手元に持っておくのです。そうすればどこにも税金は課せられません。

もちろんこの方法は法律的にも倫理的にも問題ありません。

もし不動産で財産分与する場合でも、次の3条件をすべてクリアすれば大幅に節税できます。

  • 20年以上の婚姻関係がある
  • 居住用の不動産を渡す
  • 不動産の受け渡しは離婚成立前におこなう

この3条件をクリアできると夫婦間の贈与となるのです。3条件をクリアした夫婦間贈与では、贈与税の計算で基礎控除110万円に加えて2,000万円の配偶者控除を計上できるのです

すなわち、夫が妻に財産分与(この場合、正確には贈与)する不動産の価値が2,100万円以下であれば、2つの控除によって贈与所得は0円になるので贈与税は発生しません。

これが2つめの節税方法です。

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まとめ

財産分与の話し合いは離婚協議のなかでおこなわれるため、夫婦ともども嫌な気持ちになることでしょう。しかし夫婦が税の仕組みについてじっくり話し合えば、夫婦ともに節税することができます。

夫婦は「最後の共同作業」として協力して財産分与に臨んではいかがでしょうか。

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