2度目の離婚後は旧姓に戻せない?離婚後に姓と戸籍がどう変わるのか
離婚によって自分自身と子供に関係するのが苗字の問題です。
離婚はしたいけれど自分と子供の苗字がどうなるのかわからない、バツ2の場合はもっとよくわからない…という人も多いでしょう。
この記事では自分や子供の離婚後の戸籍や苗字の変化と、旧姓に戻す方法、2度目の離婚の場合はどうなるのかについて解説しています。
- 目次
離婚すると戸籍、苗字はどうなる?
離婚すると婚姻時の戸籍や苗字はどうなるのでしょうか。
離婚すると基本的に苗字は旧姓に戻る
婚姻時に苗字を配偶者のものに変更しなかった場合は離婚後も苗字は変わりません。
日本では民法により夫婦同氏と定められており、結婚後は夫婦の姓を統一することになっています。ほとんどの場合、妻側が夫側の苗字に変更します。
婚姻時に配偶者側の苗字に変更した場合は、離婚後苗字を旧姓に戻すか、旧姓に戻さずに婚姻時の苗字を名乗り続けるかを選択できます。
離婚時に後述する婚氏続称の手続きをしなければ婚姻前に名乗っていた旧姓に戻ります。
これは法律用語で「復氏(ふくうじ)」と呼ばれており、日本では離婚後、原則的には旧姓に戻ることになっているのです。
婚姻届を提出した夫婦のうち約95%は女性側が改姓
前述のとおり、日本の民法では、婚姻時に男性または女性どちらか一方が姓を変える必要があります。
令和3年の内閣府のデータによると、結婚によって姓を変えているのは女性がほとんどで、全体の95%(年間約48万人)を占めています。
参考:内閣府男女共同参画局「夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ(https://www.gender.go.jp/research/fufusei/index.html)」※1
離婚後すぐに旧姓に戻ることで生じるデメリット
離婚後は原則的に旧姓に戻りますが、すぐに旧姓に戻ることで以下のような不都合が生じる場合もあります。
離婚後は書類申請や変更などで非常に忙しく、結婚時よりも離婚時のほうが大変だと言われるほどです。そのようななか、名義変更の手続きが加わったりすることは避けたいものです。
しかも、子供の苗字が夫側のものだった場合、自分だけが旧姓に戻れば、「親権は自分にあるのに子供の苗字は夫のもの」という複雑な状況になってしまいます。
旧姓に戻さない場合は離婚と同時に届け出る
前述のようなデメリットを避けるため、離婚しても旧姓に戻さず婚姻時の苗字のまま生活することもできます。
離婚後、旧姓に戻さずに婚姻時の苗字を使い続けることを「婚氏続称(こんしぞくしょう)」と言います。
婚氏続称を希望する場合は離婚届を役所に提出する際、同時に申告することをおすすめします。
具体的には「離婚の際に称していた氏を称する届」に必要事項を記入して役所へ提出します。
「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出することに対し、元配偶者が反対することはできません。
婚氏続称の手続きは離婚後3ヶ月以内まで可能
離婚と同時に婚氏続称を申告する場合は、同時に戸籍謄本などを提出する必要がないため、手続きは簡単です。
なお、婚氏続称の手続きは離婚から3か月以内であれば、離婚後に行うことも可能です。離婚後に申請する場合は戸籍謄本などの身分証明を添付する必要があります。
「離婚の際に称していた氏を称する届」は全国共通ですので、最寄りの役所・役場で入手できます。
また、ウェブサイトからダウンロードできる自治体もあります。自治体のウェブサイトからダウンロードした場合は、必ずA4サイズの白紙に印刷して使用します。
参考:江東区「離婚の際に称していた氏を称する届(https://www.city.koto.lg.jp/060302/kurashi/jumin/koseki/documents/nananoni.pdf)」※2
「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出する際は届出人本籍地または住所地を管轄する市区町村役所・役場に提出します。
提出先が本籍地と異なる場合は戸籍謄本が必要です。
関連記事≫≫
離婚後に妻が離婚前の苗字を名乗ることは可能?
1度目の離婚で旧姓に戻していないと2度目の離婚後には旧姓に戻せない
以下のようなケースでは、2度目の離婚後(バツ2)、旧姓に戻れません。
- 「鈴木」が「佐藤」と結婚して「佐藤」に苗字が変わる
- 離婚して旧姓の「鈴木」に戻らず、「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出して「佐藤」のままでいる(婚氏続称)
- 「田中」と再婚して「佐藤」から「田中」に苗字が変わる
- 「田中」と離婚すると戻れるのは「鈴木」ではなく1人目の配偶の苗字である「佐藤」になる
「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出して婚姻時の苗字を使っていると、バツ2になった際には旧姓に戻ることができません。
なお、1度目の離婚で旧姓に戻しておけば2度目の離婚時にも旧姓に戻ることができます。
どうしても旧姓に戻したい時の対処法
2度の離婚を経験し、1度目の離婚で婚姻時の苗字を名乗っていた場合、2度目の離婚では旧姓に戻ることは難しいと言えます。
しかし、「やむを得ない事由」がある場合のみ、家庭裁判所に対して戸籍法107条1項による「氏の変更許可」審判の申立てを行うことによって旧姓に戻すことは可能です。
裁判所による「やむを得ない事由」の定義は「氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合」とされています。
「氏の変更許可」は簡単には認められません。しかし、最近は「離婚後に1度目の婚姻時の苗字のままだったけれど、2度目の離婚で旧姓(実家の苗字)に戻りたい」という事由の場合は、家庭裁判所に認められやすい傾向があります。
ただし、申立書の作成や2度の結婚・離婚を証明するためのすべての戸籍謄本を提出するなど非常に煩雑な手続きを要するため、後悔する前に1度目の離婚時に旧姓に戻しておくのが最も簡単な方法だといえます。
参考:裁判所「氏の変更許可(http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_19/)」※3
バツ2の子どもの苗字はどうなる?
連れ子の子どもの苗字は離婚時に選択できる
前述の例のように、旧姓が「鈴木」、1人目の配偶者と結婚して「佐藤」になり、2人目の配偶者と結婚して「田中」になった場合、佐藤との間にできた子供の苗字はどうなるのでしょうか。
再婚の段階で、子供と再婚相手(この場合田中)との間で養子縁組を行うことで子供の苗字は再婚相手の苗字に変わります。
再婚相手との離婚時には、子供の苗字は以下の3パターンから選ぶことができます。
- 2人目の配偶者(再婚相手)「田中」と養子縁組を解消して、1人目の配偶者の苗字である「佐藤」に戻す
- 養子縁組を解消せず、2人目の配偶者(再婚相手)「田中」を名乗り続ける
- 家庭裁判所に申し立てを行い、「氏の変更許可」の手続きを行って「鈴木」になる
前述したとおり、3.を選択する場合、手続きが煩雑であるのと同時に、親の意思で一度は婚氏続称を選択しているため、簡単には認められない可能性があります。
また、子供が学校に通学している場合には、在学中に苗字が変わることになるため子供からすれば恥ずかしい思いをすることもあるでしょう。
再婚相手の子どもを連れて2回目の離婚をする場合
最初の結婚時に「佐藤」との間に子供ができて(仮にA子とする)、再婚時にもうひとり「田中」との間に子供ができた場合(仮にB子とする)、A子については前述したように3パターンから選ぶことができます。
問題は2回目の再婚時に生まれたB子です。
両親が離婚したとき母親の戸籍が抜けることになります。しかし親が離婚しても子供の戸籍には関係がないので元の筆頭者のままになります。
つまり、田中夫婦が離婚したとしても、B子は何の手続きもしなければ「田中」の苗字のままなのです。
1回目の離婚で旧姓「鈴木」に戻していない場合、2度目の離婚後の親権者である親の姓は「佐藤」に戻ります。
B子が親と同じ「佐藤」を名乗るためには家庭裁判所にて「氏の変更許可」を申請する必要がありますが、「親権者と同じ苗字になるため」という理由は裁判所でも認められやすく、B子は比較的簡単に「佐藤」に戻ることができます。
ただし、B子にとっての生まれ持っての苗字は「田中」であり、1回目の再婚相手である「佐藤」とは面識がない場合がほとんどです。それなのに、縁もゆかりもない「佐藤」を名乗ることにB子は違和感を覚えるでしょう。
このため、離婚後の姓については再婚後にできる子供のことも考えて慎重に考える必要があります。
【1回目の結婚⇒離婚】
【2回目の結婚⇒出産】
【2回目の離婚後に婚氏続称手続きをしなかった場合】
A子・B子がそれぞれ別の苗字を名乗ることもできる
前述したように、B子にとって「佐藤」は知らない人の苗字ですから、感情的な問題で名乗りたくない場合もありますし、学校で友だちに知られたくないという事情もあるでしょう。
A子とB子は2人ともあなたの子供ではありますが、2人の子供を連れて2回目の離婚をする場合、2人の子供それぞれが別の苗字を名乗ることができます。
たとえば2回目の離婚後、あなたとA子が「佐藤」を名乗って同一の戸籍に入り、B子が別の戸籍に入って「田中」と名乗ることができます。
もしくはあなたとB子が「田中」の苗字で、A子だけが「佐藤」の苗字でいることも可能です。
まとめ
1度目の離婚後に婚氏続称を選んだ後、バツ2になってから「苗字が戻せない!」と困ることがあります。
もちろん、離婚後に婚氏続称するのは「子供が学校でどう思われるか…」など、子供のためを思っての行為であることが多いです。
しかも、1度目の再婚時には、まさか自分が2度も離婚することになると予想している人は少ないでしょう。
しかし、婚氏続称をすることによってバツ2になった後、旧姓には戻りにくくなるということを知っていれば、別の対応を選ぶ人もいるでしょう。
1度目の離婚時の際に苗字の変更については熟慮することをおすすめします。
離婚は戸籍や苗字以外にも決めておくべきことがあります。子供がいる、離婚歴があるとなるとなおさら複雑です。
離婚を考えたら弁護士に相談し、アドバイスをもらうことをおすすめします。当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚・男女問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 内閣府男女共同参画局「夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ」
※2 参考:江東区「離婚の際に称していた氏を称する届」
※3 参考:裁判所「氏の変更許可」
都道府県から弁護士を検索する
離婚コラム検索
離婚の基礎知識のよく読まれているコラム
-
1位基礎知識弁護士監修2020.10.28離婚したいけどお金がない人が離婚する方法と知っておくべき全知識専業主婦やパートタイマーなど、離婚後の生活やお金がないことが理由で「離婚したいけ...
-
2位基礎知識弁護士監修2019.02.05離婚を決意する瞬間は妻と夫では違う!決意後に考えなければいけないこと離婚したいけど踏みとどまっている人と離婚した人の最大の違いは決意したかどうかです...
-
3位基礎知識弁護士監修2018.09.072度目の離婚後は旧姓に戻せない?離婚後に姓と戸籍がどう変わるのか離婚によって自分自身と子供に関係するのが苗字の問題です。離婚はしたいけれど自分と...
-
4位基礎知識弁護士監修2020.01.17親が離婚した子供の離婚率|子供も離婚しやすくなる理由と解決策とは「親が離婚すると子供の離婚率が上がる」と言われることがあります。実際、「親の離婚...
-
5位基礎知識弁護士監修2019.10.04産後セックスを再開する目安はいつ?身体の変化と夫婦生活が減ったときの対処法妻の妊娠・出産を機にセックスがなくなったという夫婦も多いのでは?産後は子供のこと...
新着離婚コラム
-
裁判・調停2024.10.28家事手続案内とは?家庭裁判所で相談できること、できない時の相談先家庭裁判所は家事事件と少年事件を扱う裁判所です。家事事件について悩みがあるものの...
-
財産分与2024.10.18株式の財産分与|評価方法や基準時、注意点を解説離婚の際、婚姻中に夫婦が築き上げた財産を公平にわけることになります。これを財産分...
-
その他離婚理由弁護士監修2024.09.27障害児の子育てを理由に離婚できる?離婚する前に考えるべきこと一般家庭と比べて障害児のいる家庭の離婚率は高いと言われています。これについて正確...
-
親権・養育費2024.09.25養育費に連帯保証人をつけることはできる?注意点と未払いを防ぐ方法近年、養育費の未払いが社会問題化しています。政府統計ポータルサイトe-Statの...
-
基礎知識弁護士監修2024.08.23祖父母は面会交流できる?孫との関係を守るポイントと改正民法を解説離婚によって子供と離れて暮らす側の親には子供と面会する権利があります。面会交流は...
離婚問題で悩んでいる方は、まず弁護士に相談!
離婚問題の慰謝料は弁護士に相談して適正な金額で解決!
離婚の慰謝料の話し合いには、様々な準備や証拠の収集が必要です。1人で悩まず、弁護士に相談して適正な慰謝料で解決しましょう。
離婚問題に関する悩み・疑問を弁護士が無料で回答!
離婚問題を抱えているが「弁護士に相談するべきかわからない」「弁護士に相談する前に確認したいことがある」そんな方へ、悩みは1人で溜め込まず気軽に専門家に質問してみましょう。