実家依存症で離婚できる?実家を優先する夫(妻)の特徴と付き合い方。
実家依存症という言葉をご存じですか? 夫婦のどちらかが実家依存症になると家庭にさまざまな弊害が生じます。
実家依存症は比較的女性に多いと思われがちですが、男性も実家依存症に陥る可能性があります。
実家依存症の特徴は、頻繁に実家に出入りするというだけなく、家に帰らなくなる、家庭より実家の意見を優先するなどさまざまです。
この記事では、実家依存症がどういうものか、もし配偶者が実家依存症だとわかったらどうすれば良いかについて解説します。
「夫(妻)が実家依存症かも」とお悩みの方は最後までお読みください。
- 目次
実家依存症とは
実家依存症とは、結婚している夫婦のいずれかが、さまざまな面で実家に依存している状態を言います。
依存するパターンとしては、経済的なもの、精神的なものなど多岐にわたります。また、実家依存症の症状は夫と妻で違います。下記で詳しく見てきます。
実家依存症の夫の特徴
「友達親子」という言葉があるように、友達のような関係を築いている親子もいます。この現象は、特に母・娘で多く見られるため、実家依存症といえば妻側に多いイメージがあります。
しかし、夫も実家依存症に陥る可能性があります。以下で典型的なケースを紹介します。
なんでも実家に相談する
妻に関する相談事や子供の進学など、本来は家庭のなかで解決すべきことをなんでも実家に相談するケースです。
「子供は〇〇に通わせよう」と夫婦で決めたにも関わらず、「うちの子〇〇に通わせたいのだけど良いかな?」などと実家に相談し、指示を仰ぎます。
その結果、「母が子供を〇〇に通わせるのはやめたほうが良いと言っていたからやめよう」など、夫婦間の決定より実家の判断を優先します。
本来、子供の教育方針は夫婦で話し合うべきものです。実家の意見を優先されれば、信頼関係を築きにくくなります。
すぐに実家に帰りたがる
盆や正月だけならよくある話ですが、「子供を会わせるため」とか他愛もない相談などで頻繁に実家に帰るというケースもあります。
夫婦の関係性にもよりますが、家族との時間より実家に帰ることを優先されてしまうと、妻は疎外感を感じるでしょう。
実家のやり方を妻に強要しようとする
実家依存症の夫にとって、実家のやり方が生活の基準です。妻の家事のやり方が実家と違っていた場合、実家のやり方に合せるよう強要するケースもあります。
本来、結婚後の生活様式は夫婦で話し合いすり合わせていくものです。どちらか一方のやり方を強要しては夫婦関係に亀裂が入ってしまいます。
家族のイベントに実家の両親を誘いたがる
実家依存症の人は子供の運動会など家族の行事に実家の両親を誘いたがる傾向があります。このとき、妻の意見を聞くことなく誘うことが多いようです。
自分の意見を無視して物事を決められると妻は疎外感を感じますし、「大切にされていない」と考えてしまうのも無理はありません。
実家依存症の妻の特徴
友達親子ほどではなくても、里帰り出産などで女性は実家に帰る機会が男性より多くなります。 実家依存症の妻の特徴とはどのようなものでしょうか。
出産・育児の時期に必要以上に長期間滞在する
前述のとおり、里帰り出産など、女性は出産の時期に実家に滞在することがあります。しかし、必要以上に長く滞在し、なかなか帰ってこないという場合は実家依存症の可能性があります。
出産直後は自由に身体が動きません。両親のサポートを受けられるのは有難いことではありますが、ある程度動けるようになってもなかなか帰ってこないと、夫は疎外感を感じてしまいます。
実家に出入りする頻度が多い
年末年始やお盆など、年間行事にあわせて実家を訪れるのは自然なことです。しかし、親の身体が不自由なわけでもないのに買い物や家事などの日常的な行動まで一緒に行うようだと要注意です。
両親はかけがえのない存在ですが、家族との時間よりも両親との時間を優先されれば、夫は「結婚した意味がない」「独身時代と変わらない」と思うかもしれません。
まず相談するのが実家
なんでも相談できる間柄といえば微笑ましく聞こえます。しかし、本来家庭内で話し合うべきことでも「まず実家に相談する」というケースもあります。
例えば、夫婦ともども初婚であり、初産なら何もかもが初めての経験です。「子供が泣き止まない!どうすれば良い?」など、子育ての経験者でなければわからないこともあります。
そんなときに子育ての経験がある実家に相談するのは自然なことでしょう。
しかし、「子供はどこの学校に行かせるべきか」などの子供の教育方針は子供の性格などを考慮して夫婦で話し合って決めるものです。
教育方針などの深い部分まで実家に相談を求め、夫よりも実家の意見を優先するようだと、夫は「信頼されていない」と感じてしまいます。
実家と近いところに住みたがる
育児と仕事の両立が難しいときに子供を預かってもらったり、親が倒れたときの介護がしやすかったりなど、実家の近くに住むことは多くのメリットがあります。
民間のサービスを受けるよりも出費が抑えられますし、妻にとっては頼みやすいということもあるでしょう。
しかし、夫の希望や勤務地との距離、子供の教育環境もそっちのけで「とにかく実家の近くが良い」という場合、「家庭を大切にする気持ちがない」「自己中心的」と判断されてしまいます。
すぐに実家に生活支援や援助を求める
子供用品や学費など、ことあるごとに実家の両親に援助を求めるというケースもあります。
本来、家庭内の出費は夫婦で話し合ってやりくりするものです。
しかし、夫婦で話し合うのではなく、すぐに実家に頼ろうとすれば夫は「頼られていない」「信頼されていない」と感じてしまうでしょう。
実家依存症の問題点
ここまで実家依存症の特徴を説明しました。実家依存症の夫や妻と生活すると、どのような問題が起こるのでしょうか。
実家依存症が原因で離婚に繋がる
家事育児の分担について夫婦間で衝突がある場合、実家の協力が得られることは夫婦関係を良好に保つためにもメリットがあります。
しかし、家事や育児の主導権が実家に渡ってしまうのは大きな問題です。
例えば、妻が子供を連れて実家に入り浸ってしまい、父親である夫よりも祖父母である妻の両親に子供がなついてしまうこともあります。
こうなると夫は疎外感を感じますし、結婚している意味すら感じなくなるかもしれません。
子供が影響を受けてしまう
実家依存症の夫(妻)は、妻(夫)よりも自分の実家を優先します。
また、子供はそれを見て育つことになります。 結果的に、子供は母親(父親)よりも祖父母を優先的に考えるようになります。
さらに母親(父親)に対して感謝の気持ちや親の大切さを抱きにくくなることもあります。
どういう人が実家依存症になりやすいのか
ここまで実家依存症の問題点について触れてきました。 では、どういう人が実家依存症になりやすいのでしょうか。
新婚や子供が生まれたばかりの人
新婚や初産で子供を産んだばかりという人は慣れない家事や育児でストレスが増えます。
実家に帰れば実家の親が子供の世話を見てくれるうえにストレスからも解放されます。その居心地のよさに甘えてしまい、実家に入り浸ってしまうことがあります。
若い夫婦
一概に言えませんが、夫婦の年齢が低いということは世帯収入が少ない一方、子育てにお金がかかる時期でもあります。
つまり、若い夫婦は収入が少なく出費が多い傾向があるのです。
このとき、一時的に実家から経済的な援助をしてもらうこともあります。その結果、実家との繋がりが強くなりすぎることがあります。
夫(妻)が実家と必要以上に仲がいい
「友達親子」のように、母娘が友達のように仲が良い妻は実家依存症になりやすい傾向があります。
また、実家の親が夫(妻)を過保護気味に育ててきた場合、結婚後も実家の親が過干渉になる傾向があります。
実家依存症の夫(妻)とうまくやっていくために
夫(妻)が実家依存症の場合、どのようにすればうまくやっていけるのでしょうか。
一時的なものであれば温かく見守る
女性には出産という一大イベントがあります。
さまざまなサービスが充実している現代においても、里帰り出産を選択する人が大半です。里帰り出産には、出産を控えた妻にとって、以下のように大きなメリットがあります。
- 精神的に安心である
- 家事などを気兼ねなく手伝ってもらえる
特に出産を控えた妊婦は精神的に不安になることもあります。里帰り出産のように一時的に実家を頼るだけであれば、温かく見守ってみてはいかがでしょうか。
実家から離れた場所に住む
実家依存症の夫(妻)うまくやっていく方法のうち、手っ取り早く、かつ効果的な方法として「実家から離れた場所に住む」というのがあります。
実家が近ければどうしても簡単に実家に入り浸ってしまいます。実家に入り浸る時間が増えれば、実家に依存する機会も増えます。
また実家に入り浸る時間が増えると家族で過ごす時間はどうしても少なくなっていまいます。
実家から離れた場所に住めば入り浸る機会が減るため、実家に依存しにくくなります。
家族だけの時間をつくる
夫(妻)が実家に相談したり判断をゆだねたりするのは、家族や夫婦で話し合う時間がないからかもしれません。
家族だけで外出したり、家族だけで過ごしたりする時間を作りましょう。じっくりと話し合う時間ができれば、夫婦で相談しやすくなります。
実家依存症の夫(妻)と離婚できるのか
いろいろ対処してみたももの、夫婦関係が改善されない場合、離婚したいと考えることもあるでしょう。
では、実家依存症の夫(妻)と離婚することはできるのでしょうか。
法定離婚事由に該当すれば離婚できる
基本的に夫婦双方が離婚に合意すればどのような理由であっても離婚はできます。しかし、実家依存症の夫(妻)は自分が実家依存症である自覚がないため、離婚に合意しないことがほとんどです。
相手が話し合いに合意しない場合、調停、裁判へと進むことになります。裁判で離婚を認めてもらうためには、民法770条1項に定める5つの法定離婚事由に該当する必要があります。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
実家依存症が原因で離婚するには、法定離婚事由のうち「②配偶者から悪意で遺棄されたとき」あるいは「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するかが重要になります。
夫婦には同居し、互いに助け合う義務があります。悪意の遺棄は正当な理由なく夫婦の義務に反することを指します。
例えば、実家依存症の夫(妻)が実家に入り浸った結果、別居状態になってしまった、実家に入り浸って家事や育児をまったくしなくなったという場合は悪意の遺棄に該当する可能性があります。
また、婚姻を継続し難い重大な事由とは、婚姻関係が破綻し、修復することは不可能である状態を指します。例えば、DVやセックスレス、過度な宗教活動などが当てはまります。
配偶者の実家依存症によって長期間の別居やセックスレスという場合は婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
実家依存症で離婚する場合、慰謝料はもらえるのか
慰謝料は、精神的な損害に対して支払われるものです。離婚の際に慰謝料がもらえるのは下記のような場合に限られます。
- 不貞行為(不倫・浮気)
- 暴力(DV)やモラハラ
- 悪意の遺棄 など
実家依存症を理由に離婚する場合、「悪意の遺棄」に該当するかどうかがポイントになります。
ただし、家族の在り方に対する夫婦の価値観の違いなどは悪意の遺棄としては認められません。
実家依存症の慰謝料相場
「悪意の遺棄」が理由で離婚する場合、50万~300万円が慰謝料相場になります。実家依存症が「悪意の遺棄」に該当する場合はこのくらいの慰謝料相場と考えて良いでしょう。
離婚手続きの種類と流れ
実家依存症を理由に離婚する場合の流れについて、離婚手続きの種類に沿って説明します。
協議離婚
協議離婚とは、夫婦が話し合いで合意を図る離婚手続きです。合意ができたら、離婚届に必要事項を記入して役所に提出、受理されれば離婚が成立します。
日本ではほとんどの夫婦が協議離婚で離婚をしています。
話し合いで合意ができればどのような理由であっても離婚できます。しかし、実家依存症は本人に自覚がないケースも多いため、離婚に応じてもらえない可能性があります。
調停離婚
調停離婚は家庭裁判所に離婚調停の申立てを行い、調停委員を介して合意を図る離婚の手続きです。離婚調停で離婚が成立したら合意した内容が調停調書に記載されます。
後日、離婚届と調停調書を役所に提出すれば離婚が成立します。
配偶者が実家依存症の場合、本人に自覚がなく話し合いができなかったり、別居状態であったりするケースも多いため、離婚調停を申し立てることを検討すると良いでしょう。
審判離婚
離婚調停では、「ほとんどの条件で合意ができているが、些細なことが原因で調停が不成立」となる場合があります。
このとき、裁判所が「離婚を成立させるのが相当である」と判断した場合に、裁判官が職権で決定をくだし、成立させる離婚を審判離婚と言います。
ただし、審判内容に不服があると異議申し立てによって審判の効力が失われてしまうため、実際にはあまり利用されていません。
裁判離婚
裁判離婚とは家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、判決によって離婚を成立させる手続きです。
前述のとおり、裁判で離婚を認めてもらうためには、民法770条1項に定める法定離婚事由が必要になります。実家依存症は法定離婚事由ではないため、「悪意の遺棄」または「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するか問題になります。
法定離婚事由に該当するかどうかは、実家依存症だけでなく、その他の事情も含めて総合的に判断する必要があります。実家依存症を理由に離婚を考えたら弁護士に相談しましょう。
まとめ
実家依存症について説明しました。
実家依存症の夫(妻)とうまくやっていくためには、家族で過ごす時間を増やしたり、話し合ったりすることで互いに歩み寄ることが大切です。
それでも解決しない場合は離婚問題に強い弁護士に相談してみましょう。
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