法律的に離婚が認められる要因は?|離婚の進め方と決めておきたいこと

最近はライフスタイルの多様化により、事実婚や内縁などさまざまな婚姻の形態があります。では離婚はどうでしょうか。事実婚を解消した場合に「離婚した」という人もいます。
しかし、法律的な意味を持つ離婚とは、婚姻届けを提出し、同じ戸籍に入っている夫婦が婚姻関係を解消するもののみを指します。
したがって、事実婚関係を解消したり、婚約中の男女が婚姻の取消をおこなうことは離婚とは呼びません。
ここでは、配偶者に何らかの問題があり離婚を考えたとき、自分が不利にならないために知っておくべきことやスムーズに離婚を進める方法について説明します。
- 目次
離婚の種類
離婚と一口に言っても、手続き方法によって離婚は以下の4つの種類に分かれます。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判離婚
ただし、3つ目の審判離婚はほとんど利用されることがありません。したがって、離婚の種類は実質3種類と考えてかまいません。
離婚する際は上記4つの種類から手続き方法を選択するわけではありません。最初は協議離婚から進めていき、協議離婚で離婚が成立しなかった場合に調停離婚に進みます。
さらに調停離婚でも離婚が成立しなかった場合に審判離婚や裁判離婚という流れで進めていきます。
協議離婚
協議離婚とは、その名のとおり、離婚の当事者である夫婦が話し合い(協議)で離婚を決める方法です。日本では離婚する夫婦の約9割がこの協議離婚で離婚を成立させています。
協議離婚の場合、離婚理由に関わらず夫婦が合意すれば離婚できます。法律的な離婚理由は必要ありません。
協議離婚では、離婚にともなう財産分与や慰謝料、養育費についても夫婦が合意すれば自由に決められます。
調停離婚
夫婦が話し合いをおこなっても離婚が成立しなかったり、条件で折り合いがつかない場合、家庭裁判所に調停離婚を申し立てます。
調停離婚は調停委員と呼ばれる第三者が間に入りますが、あくまで当事者同士の話し合いで離婚を決める方法です。
調停離婚にて話し合いがまとまれば、調停証書を作成して離婚が成立します。
審判離婚
調停をおこなっても離婚が成立しない場合、通常は裁判離婚にて離婚問題を争うことになります。
ただし、「離婚には同意が得られているが、その条件についてのみ折り合いがついていない」という場合は裁判所の職権で離婚を認めることがあります。これが審判離婚です。
審判離婚では、審判が出されて2週間以内に夫婦いずれかから異議が出されると効力が失われてしまいます。
このように審判離婚の効力は弱く、限定された条件でおこなうものなので、ほとんど利用されることがありません。
裁判離婚
調停においても離婚が成立せず、夫婦のいずれかがどうしても離婚したい場合、訴訟を起こして裁判離婚に持ち込むことになります。
離婚は夫婦が合意すればどのような理由でも離婚が成立しますが、裁判離婚では裁判官が法律に基づいて離婚の可否を決定します。
裁判離婚で離婚が認められると、配偶者が拒んだとしても離婚が認められることになります。ただし、裁判で離婚を認めてもらうには、法律で認めた離婚理由が必要になります。
また、裁判を起こす際は離婚原因など記した訴状を家庭裁判所に提出する必要があります。
訴状作成には法律的な知識も必要です。裁判離婚に持ち込む場合は弁護士に依頼するほうがいいでしょう。
離婚手続きの注意点
自分に離婚原因がある場合は離婚を請求できない
離婚したいと思うのは配偶者に原因がある場合だけではありません。自分に原因がある場合もあります。
しかし、離婚にいたる原因が自分にある場合は基本的に離婚を請求することができません。
ただし、そのような場合であっても、以下のような場合は例外的に離婚請求が認められることがあります。
- 別居している期間が長い
- 子どもがいない
- 子どもが全員経済的に自立して生活している
- 離婚原因のない配偶者が離婚後に負担を負うことなく生活できる
法律的に認められている5つの離婚理由
前述のとおり、裁判離婚に持ち込む場合は法律で認めた離婚理由が必要になります。裁判で法律的に認められる離婚理由とは以下の5つになります。
- 5つの法定離婚事由
-
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病である
- その他婚姻を継続しがたい重大な理由
協議離婚や調停離婚の際はどのような理由でも離婚請求できますが、裁判離婚では上記の離婚事由が必要になります。
相手の不貞行為があった
協議離婚が成立せず、裁判まで進むことが多い離婚事由に不貞行為があります。不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係を持つことをいいます。
不倫や浮気という言葉をよく聞きますが、裁判では不貞行為によって婚姻関係が破たんしたのかどうかを判断します。
また、不貞行為を理由に離婚を請求するには不貞行為があったこと示す証拠が必要になります。しっかりと不貞行為の証拠を集めてから離婚を請求するようにしましょう。
相手から悪意の遺棄があった
「悪意の遺棄」は日常的に使われない言葉ですので細かく説明します。
離婚理由における「悪意」とは「婚姻関係を破綻させたい」または「婚姻関係が破たんしてもいい」という意思のことをいいます。
「遺棄」とは「同居・協力・扶助など民法上の夫婦の義務を正当な理由もなく怠ること」をいいます。
以上を踏まえると、例えば以下のようなものが悪意の遺棄に該当します。
<悪意の遺棄に該当する言動>
- 配偶者に生活費を渡さない
- 理由もなく別居する
- 健康な夫が働かない
配偶者の生死が3年以上不明
配偶者の生死が3年以上不明である場合は離婚が認められます。 「生死不明」と聞くと「行方不明とどう違うのか」と思いますよね。
「どこにいるかわからないけれど、生存していることはわかっている」という場合は「行方不明」であり「生死不明」ではありません。「生死不明」を理由に離婚請求する際は「捜索願を出すなどあらゆる手段を使ったけれど見つからなかった」という事実が必要になります。
ただし、「3年以上の生死不明」 を理由に離婚が認められたあと、配偶者が戻ってきたとしても離婚は取り消されることはありません。
配偶者が強度の精神病で回復の見込みがない
「配偶者が精神を病んでいることを理由に離婚請求する」とだけ聞くと、「病気の配偶者を見捨てる」という倫理的な問題がともないます。
したがって、「強度の精神病の発病に過失がなく、看病を要する状態の配偶者」 に対する離婚請求は認められないというのが一般的です。
しかし、以下のような場合は離婚請求が認められることがあります。
- あらゆる方策を取ってきたが、病気の回復の見込みがなく、病気の配偶者が離婚後に生活を営める見込みがあるとき
- 病気の回復見込みがあるが、離婚に値するほかの理由があるとき
婚姻の継続が困難な重大な自由がある
「このまま婚姻生活を続けても夫婦関係が修復されることはない」と認められる理由がある場合も離婚請求が認められます。
しかし、この離婚事由は夫婦によって異なります。同じ理由でも気にならない人もいれば、受け入れられない人がいるためです。
したがって、この離婚事由で離婚を判断するには、そのほかの事情も考慮し、総合的に判断されます。
【婚姻の継続が困難と認められやすい事由例】
- 配偶者が宗教活動をしている
- 暴力や暴言、虐待の事実がある
- アルコール依存症
- 薬物依存
- 配偶者の両親との不和
- 配偶者が刑事事件で服役中
- 借金や浪費癖
離婚の準備段階で決めておきたい5つのポイント
いざ離婚すると決めたからといって、いきなり配偶者に離婚を切り出すのはNGです。まずは離婚後の生活費や住居など生活がどのようになるのか、またどのようにしていくのか目途を立てておくことが大切です。 では離婚後の生活設計として具体的にどのようなことを決めておけばいいのでしょうか。
子どもに関すること
未成年の子どもを持つ夫婦が離婚する場合、子どもに関するさまざまなことを決めておく必要があります。
親権・監護権の問題
未成年の子どもがいる場合、離婚する夫婦のいずれかを親権者に決めなければなりません。
親権とは未成年の子どもを養育・監護し、財産を管理する権利・義務のことです。権利という呼び方をしますが、事実上、親の義務といえます。
具体的な親権の内容は以下のようになっています。
- 身上監護権:未成年の子どもの精神的・身体的な成長を図ることを目的に監護や教育をする権利
- 財産管理権:未成年の子どもの財産管理と財産に関する子どもの法律行為に同意する権利
身上監護権は監護権とも呼ばれます。監護権は親権に含まれた権利ですので、通常は親権者となる側が監護権を持つことになります。
しかし、子どもの年齢や親権者が監護できない状態であるなどの事情により親権者と監護権者を別にすることもあります。
子どもとの面会交渉権
未成年の子どもを持つ夫婦が離婚すると、基本的に親権者でない配偶者(非親権者)は子どもと離れて暮らすことになります。 親権者でない配偶者が離婚後に子どもと会う権利を面会交流権といいます。
面会交流を決める際は、場所や頻度など細かく決めていきます。 面会交流権は、親権者決定とは異なり、決めなければならないものではありません。
しかし、離婚後に子どもの面会交流について話し合うのは難しい場合が多いです。ですから、離婚時には親権者だけではなく、面会交流についても決めておくほうがいいでしょう。
養育費の問題
養育費とは、未成年の子どもを養育するための費用です。親権者は元配偶者に対して養育費を請求できます。 面会交流権と同様、離婚後に決めることは難しいため、離婚時に決めておくべきでしょう。養育費の算定方法は、裁判所のwebサイトにある「養育費・婚姻費用算定表」を見て、自分と相手の収入から算出できます。
このように養育費を決めても、養育費の支払いが滞ってしまうこともあります。このような場合に備えて、公正証書(強制執行認諾約款付公正証書)を作成しておくことが大切です。
公正証書にしておくと、養育費の不払いが起こった際、裁判を起こすことなく非親権者の財産の差し押さえ(強制執行)ができます。
子どもの精神的な面のフォロー
子どもを持つ夫婦が離婚する場合、考えなければならないことは子どもの心のケアです。離婚は夫婦の都合です。しかし、親の離婚による環境の変化が子どもに与える影響は計り知れません。
離婚をすると、親権者は働きながら子育てをすることになります。まして専業主婦だった親が母子家庭になってから生活費を稼ぐのは大変です。さらに働きながら一人で子育てをするということは子どもとのコミュニケーションも減ることになります。
子どもを持つ夫婦が離婚する際は、これらのことをどう乗り越えていくのか考えておく必要があります。
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慰謝料の請求について
慰謝料とは精神的な損害を賠償するものです。離婚では、離婚の原因を作った者が、それによって精神的な苦痛を受けた配偶者に対して慰謝料を支払います。 反対に、夫婦のいずれにも婚姻関係を破たんさせる原因が見つからない場合は慰謝料を請求できません。
また、夫婦いずれも離婚原因がある場合は、どちらがどれだけ悪いのかを考慮し、その割合に応じて慰謝料金額を決めます。 慰謝料請求は離婚に必要なことではありません。しかし、離婚原因を作ったのが配偶者であり、それによって精神的な苦痛を受けていたのであれば、離婚後の生活のためにも請求しておきましょう。
また、養育費と同様に、慰謝料の支払いが滞ったときのためにも公正証書を作成しておきましょう。
財産分与について
離婚する際、婚姻中に築いた共有財産を夫婦で分割することができます。これを財産分与といいます。財産分与は法律で認められた権利であり、夫婦のどちらに離婚原因があろうと、どのように離婚を決めようと、夫婦で公平に分けるのが基本です。
財産分与の対象となる共有財産は現金だけとは限りません。不動産や有価証券、ローンなど、分けることが簡単ではないものもあります。 したがって、対象となる財産をどのようにして分けるのかを具体的に決めておく必要があります。
住宅ローンや不動産など一括払いが難しい財産については、財産分与を受ける側に分割で支払うこともあります。このような場合は、支払いが滞ったときのために養育費と同様に公正証書を作成しておくことをおすすめします。
財産分与は離婚してからも請求できますが、財産分与の請求権は離婚してから2年で時効が消滅してしまいます。財産分与をする際は注意しましょう。
離婚後の名字について
日本では結婚すると夫婦が同一の姓を名乗ることになっています。結婚する際、姓を変更した妻(夫)は、離婚する際、特別な手続きを取らなければ結婚する前の姓に戻ります。これを復氏といいます。
しかし、ここで問題があります。 実は子どもの戸籍は親の離婚によって変わることがありません。つまり、親権者となる者が復氏した場合、親権者と子どもの名字が異なるという問題があるのです。親権者と子どもの名字が異なると、子どもが友達からいじられるなど、さまざまな問題があります。
復氏した親権者と子どもの名字を同じにするには以下の2つの方法があります。
- 裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる
- 離婚から3か月以内に役所で婚氏続称(婚姻中の氏を名乗る)の届け出をする
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まとめ
離婚には法律で決まっていることや方法が多くあります。離婚したいと思ったら、離婚に踏み切る前にまず弁護士など専門家に相談し、計画的に進めることが大切です。
特に離婚に強い弁護士なら離婚に関する法律の知識も豊富ですし、依頼者が不利にならないためにどのように進めれば良いのかアドバイスができます。
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