離婚後の戸籍はどうなるか|離婚による子供への影響や変更の方法
離婚すると婚姻中の戸籍が変わることになります。また、戸籍だけでなく名字(姓)が変わることもあります。
離婚は戸籍に関わる問題ですので、役所での手続きが発生します。特に子供がいる方は子供の戸籍や姓についても考える必要があります。
この記事では、離婚後の戸籍、子供の戸籍や姓がどうなるのか、離婚後の戸籍の変更手続きについて解説します。
- 目次
離婚後の戸籍の記載
離婚すると戸籍が変わります。
そのため、離婚後の戸籍にどのように記載されるか、また、戸籍を見ると離婚経験があるとわかるのか、離婚理由などは記載されるのかなど気になることもあるでしょう。
以下で離婚の際に戸籍にどのように記載されるのか詳しく解説します。
離婚すると戸籍にバツがつくのか
一度離婚を経験した人のことをバツイチと呼ぶことがあります。
以前は戸籍を紙で管理しており、離婚によって戸籍から外れる(除籍)と、除籍した人の欄に×印を付けていたことに由来します。
なお、現在の戸籍は電子化されているため、×印をつけることはなく、除籍と記載されます。
離婚後の戸籍の記載方法
戸籍では最初に名前が記載されている人を「戸籍の筆頭者」といいます。
例えば、婚姻時に夫側の姓を選択した場合は、夫が筆頭者、妻の姓を選択した場合は妻が筆頭者になります。
離婚すると、筆頭者でない人はその戸籍から除外され、戸籍がどこに移動したのか記載されます。そして、名前の前に「除籍」と記されます。
筆頭者だった人の欄には身分事項として離婚と追記され、離婚日と配偶者氏名が追記されます。
筆頭者の戸籍に追記されるもの 身分事項:離婚
【離婚日】〇〇年〇月〇日
【配偶者氏名】〇〇
除籍された配偶者について元の戸籍に記録されるもの
身分事項:除籍
【名】●●
【生年月日】●●年●月●日
【父】●●
【母】●●
【続柄】●
除籍された人の新しい戸籍の記載例(旧姓の場合)
身分事項:離婚
【離婚日】●●年●●月●●日
【配偶者氏名】▲▲▲
身分事項:氏の変更
【氏変更日】●年●●月●●日
【氏変更の事由】戸籍法77条の2の届出
【従前戸籍】●●●●(本籍地)▲▲▲(筆頭者)
離婚後の戸籍の扱い
婚姻時の戸籍を離れ、除籍された人の戸籍と姓については「名字は旧姓、元の戸籍に戻る」と「新しい戸籍を作る」という2つの選択肢から選ぶことができます。
それぞれどのような違いがあるのでしょうか。以下の項目で、除籍者の戸籍の扱いについて説明していきます。
名字は旧姓、元の戸籍に戻る
婚姻届を提出すると元の戸籍を抜けて夫婦2人の戸籍が作られます。そしてどちらか1人がその戸籍の筆頭者となります。
離婚届を提出すると自動的に除籍者は婚姻前の戸籍に戻ります(復籍)。また、自動的に姓も旧姓に戻ります(復氏)。
ただし、親が離婚や再婚したことで元の戸籍が移動している場合は転籍後の戸籍に入ります。
なお、同じ戸籍の人は同じ姓を名乗る必要があります。そのため、婚姻中の姓を名乗ったまま、元の戸籍に戻ることはできません。
婚姻中の姓を使い続けたいという場合、自分を筆頭者とした新しい戸籍を作る必要があります。
離婚後も婚姻中の姓を使い続けたいという場合
子供への影響や職場、社会的な理由などで婚姻中の姓を使い続けたいという場合、「婚氏続称制度」によって婚姻中の姓を名乗り続けることができます。
前述のとおり、婚氏族称の手続きを行う際は自分を筆頭者とした戸籍を新しく作る必要があります。
婚氏続称の手続きする場合、離婚後3ヶ月以内に市区町村役所・役場に「離婚の際に称していた氏を称する届」を記入して提出します(戸籍法77条の2)。
離婚後3ヶ月を過ぎると家庭裁判所に「氏の変更許可」を得る必要が生じます。
離婚後の姓については離婚前に十分に考え、離婚後も婚姻中の姓を使いたいという場合は3ヶ月以内に手続きを行うことをおすすめします。
新しい戸籍を作る
離婚後に戸籍を新しく作りたいという場合は「新戸籍編成」の申出を行う必要があります。
離婚届に「婚姻前の氏に戻る者の本籍」という欄があるため、「新しい戸籍をつくる」にチェックをします。チェックをしなければ自動的に元の戸籍に入ることになります。
新しく戸籍を作る際は本籍地についても新しく決める必要があります。申出を行う際は事前に本籍地を決めておきましょう。
なお、一般的には新居の住所地を本籍地とするケースが多いようです。
離婚後の子供の戸籍と姓について
離婚は夫婦だけではなく、子供にも影響をおよぼします。 ここからは、離婚時に子供の戸籍と姓がどのように扱われるのか解説します。
子供の戸籍と姓をそのままにしたい場合
原則として、両親が離婚しても子供の戸籍と姓は変わりません。
離婚後、子供が誰と住むか、誰が親権を持つのかに関係なく、しかるべき手続きを取らなければ子供の戸籍と姓は婚姻時のままとなります。
婚姻中の戸籍の筆頭者が離婚後も子供の親権を持つ場合は特に手続きは必要ありません。
しかし、婚姻中の戸籍から外れる人が親権を持つ場合は状況に合わせて手続きが必要になります。
なお、以下の手続きは、子供の年齢が15歳以上であれば子供本人が、15歳未満の場合は親権者が行います。
便宜上、離婚後に戸籍から外れる人を母親と想定して解説します。
子供の戸籍と姓を変えたい場合
戸籍は親子二世代までで構成されます(戸籍法6条)。離婚後、母親が婚姻前の親の戸籍に戻ると、子供は三世代目となるため、同じ戸籍に子供入れることはできません。
子供を母親(親権者)の戸籍に入れる場合、母親を筆頭者とした戸籍を新しく作る必要があります。
子供の戸籍と姓を変える手続き
離婚後に子供の戸籍と姓を変更する手続きについて解説します。
子供の姓を変える手続き
子供の姓が親権者と同じでなければ同じ戸籍に入ることはできません。
離婚後に母親が親権を獲得し、名字を旧姓に戻すと同時に子供を自分と同じ戸籍に入れたいという場合、子供の姓の変更手続きが必要になります。
子供の姓の変更と戸籍の手続きの流れは以下となります。
- 子供の姓を親権者の旧姓に変更
- 新たに親権者を筆頭者とした戸籍を作り、親権者の旧姓に名字を変更した子供を戸籍に入れる
子供の名字を親権者の旧姓に変更するためには、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可(民法791条)」を申し立てる必要があります。
子の氏の変更許可の申立ての際に必要な書類は以下となります。
- 子の氏の変更許可の申立書
- 子供の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 父母の戸籍謄本(全部事項証明書) ※離婚の記載があるもの
- 連絡用の郵便切手 ※申立てを行う家庭裁判所に確認
- 収入印紙800円分 ※子1人につき 申立の書類は、裁判所のホームページからダウンロードできます。
参考:裁判所「子の氏の変更許可(http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_07/)」※1
姓の変更が済んだ子供を親権者の戸籍に入れる手続き
子供の姓の変更が済んだら子供の戸籍を自分の戸籍に入れる手続きを行います。
- 入籍届
- 氏の変更許可の審判書の謄本
- 子の戸籍謄本※父母の離婚の記載があるもの
- 入籍する父(母)の戸籍謄本※離婚の記載のあるもの
なお、入籍手続きはお住まいの自治体の戸籍課で行います。自治体によって名称が異なるケースもあるため、確認しましょう。
子供と戸籍が違うことによるメリット
日本の場合、婚姻時の戸籍の筆頭者は夫というのが一般的です。一方、離婚後の子供の親権は母親が持つ場合が多いです。
この場合、母親は新たに独立した戸籍を持つ、もしくは婚姻前の親の戸籍へ戻りますが子供の戸籍は父親のままです。
つまり、離婚後に何も手続きを取らないでいると、母子は一緒に住んでいるにも関わらず別の戸籍となってしまいます。
一方、離婚して母親が親権を持つと父親が養育費を支払うことになります。しかし、なかには養育費を未払いのまま姿を消してしまう人もいます。
このような場合、子供の戸籍を父親側に残しておけば、子供の戸籍の附票を取ることで父親の所在を確認できるため、養育費を請求しやすくなります。
子供と戸籍が違うことによるデメリット
母親(親権者)と子供の戸籍が異なる場合のデメリットとしては以下のものが挙げられます。
- 戸籍謄本を取得する際に手間がかかる
- 不都合やわずらわしさを感じることがある
離婚後、元夫の住所と離れた場所に住んだ場合、子供の戸籍謄本を取りに行くのに手間がかかります。
また、戸籍謄本を郵送してもらう場合も日数や郵送費が必要です。だからといって、元夫に取得を頼むのは嫌だという人もいるでしょう。
一方、母親が旧姓に戻った場合、本当の親子であるにも関わらず姓が異なるため、周りから好奇の目で見られたり、親子であることを逐一説明しなければならなかったりするなど、煩わしさが生じることもあります。
まとめ
離婚後の戸籍や姓をどうするかについては、安易に判断すると後悔することもあります。特に子供がいる場合は子供の精神面や将来のことも踏まえ、事前にしっかりと考えておきましょう。
離婚後の生活や手続きで困ったことがあれば弁護士に相談することをおすすめします。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 参考:裁判所「子の氏の変更許可」
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