事実婚とは|メリット・デメリットや内縁とどう違うのか解説
結婚の際、入籍せず、事実婚を選択するカップルもいます。
最近では三代目JSBのELLYさんやはあちゅうさんなどの有名人も「事実婚」を選択したことを公表し、話題になっています。
この記事では事実婚とはどういうものかについて、事実婚のメリットとデメリットを踏まえて解説します。
- 目次
事実婚とは
事実婚とは、男女が夫婦同然の生活を送っているものの、婚姻届を提出していない状態を言います。
最近では、「籍を入れる必要性が感じられない」などの理由から事実婚を選択する夫婦も増えています。
もちろん、事実婚にはメリット・デメリットがあります。
そのため、法律婚との違いをしっかりと理解し、後悔することのないようにしておきましょう。
事実婚と内縁の違い
婚姻届を提出せずに、一緒に生活をしている男女のことを「内縁」と呼ぶこともあります。内縁も事実婚も基本的に同じ意味です。
以下、「事実婚」という名称で説明します。
事実婚と法律婚の違い
法律婚は、その名のとおり、婚姻届を市区町村役場に提出し、法律上の夫婦となった状態を言います。
一般的に「結婚」といえば、この法律婚を指すことが多く、届出婚と呼ぶこともあります。
事実婚と法律婚は、どちらも夫婦として生活していることに変わりはありませんが、法律上は以下のような違いがあります。
公的手続き
法律婚と違い、事実婚は婚姻届を提出しないため、公的な手続きをとる際、夫婦と認められないことがあります。
そのため、夫婦であることを前提とする公的制度を利用できないこともあります。
戸籍
法律婚の場合、夫か妻のどちらかの戸籍に入ることになります。
しかし、事実婚の場合は婚姻届を提出しないため、当然戸籍は別々になります。
子供
法律婚の夫婦に子供が生まれた場合、特別な手続きをしなくても、生まれた子供は夫婦の子供として扱われます。
一方、事実婚の夫婦に子供が生まれた場合、子供を産んだ女性は当然に法律上の母親になりますが、男性は法律上の父親とはなりません。
男性が子供と法律上の親子関係を形成するためには、その子供を認知する必要があります。
なお、事実婚の夫婦は戸籍が別々なため、生まれた子供は女性(母親)の戸籍に入ります。
相続
法律婚の場合、夫婦のどちらか一方が亡くなった際、配偶者は常に法定相続人となります。
しかし、事実婚の場合、配偶者としての相続権はありません。
どれだけ長期間別居していたとしても、法律婚であれば配偶者としての相続権が認められます。
しかし、事実婚の場合はどれだけ長い間夫婦同然の生活を送っていたとしても配偶者の遺産を相続する権利は認められません。
同棲していれば事実婚(内縁)とみなせるのか
婚姻届を提出せず、一緒に生活している状態を事実婚と呼ぶのであれば、ただ単に同棲している男女も事実婚に該当するのでしょうか。
事実婚として法律上のメリットを享受するためには、一定の要件を満たす必要があります。具体的には以下の要件です。
- 当事者双方に婚姻の意思があること
- 夫婦同然の共同生活を送っていること
- 社会的にも夫婦と認められていること
なお、上記の要件は、結婚式の有無や同居期間、賃貸借契約書の記載内容、親族や知人の認識などによって判断されます。
一概には言えませんが、事実婚であると判断される同居期間は3年程度が一つの目安となります。
また、客観的な実態も判断要素となるため、本人たちが「夫婦だ」と言っているだけでは事実婚とみなされません。
そのため、単に恋愛関係にある男女が同棲をしているというだけでは事実婚には該当しません。
事実婚(内縁)のメリット
法律婚と比較すると、事実婚には以下のようなメリットがあります。
姓が変わらない
現在の法律では、結婚に際し、夫婦どちらか一方が必ず姓を変更しなければなりません。
一方、事実婚であれば結婚に際して姓を変更する必要はありません。
女性の社会進出に伴い、姓を変更することによる社会的な不利益や不便さが指摘され、「法律婚でも夫婦別姓制度を導入すべき」との意見がありますが、いまだ法改正にはいたっていません。
関係を解消しても戸籍に婚姻履歴が記載されない
法律婚の夫婦が離婚すると、離婚したことが戸籍に記載されます。
一方、事実婚の場合、戸籍に婚姻の事実が記載されないため、当然離婚(関係の解消)の事実が記載されることもありません。
再婚にあたり、過去の婚姻履歴がネックになることもあるため、戸籍に婚姻履歴が記載されないことは事実婚のメリットと言えるでしょう。
対等な関係を維持しやすい
法律婚では、女性が男性側の姓を選び、女性が姓を変更する例が圧倒的に多いです。
これは、「結婚=女性が男性の家に入ること」という意識が残っているからと言えるでしょう。
事実婚の場合、戸籍は別々で姓も変更する必要がないため、お互いに対等な関係を維持しやすいと言えます。
相手方の親族のしがらみに影響されにくい
法律婚をすると配偶者の両親や親族とも姻族関係になるため、付き合いが必要になることもあります。
これに対し、事実婚は配偶者の両親や親族との面倒な付き合いから解放されるというメリットがあります。
夫婦関係を証明できれば法律婚とほぼ同等の権利が得られる可能性も
事実婚の場合、配偶者としての相続権は発生しませんが、それ以外の権利については、夫婦関係を証明できれば法律婚とほぼ同等の権利が得られる可能性があります。
法律婚の夫婦と同様に婚姻費用を請求することができますし、離婚にあたり、慰謝料や財産分与、養育費、年金分割などを請求することもできます。
これについては、「事実婚(内縁)解消時に慰謝料や財産分与などの請求ができるのか」にて後述します。
事実婚(内縁)のデメリット
法律婚の夫婦と比べ、事実婚には以下のようなデメリットもあります。
配偶者控除・配偶者特別控除などが受けられない
法律婚の場合、所得額など一定の条件を満たせば、配偶者控除や配偶者特別控除をでき、所得税の納付額を減らすことができます。
一方、事実婚の場合はこのような税法上のメリットを享受することができません。
相続権がない
前述のとおり、配偶者の相続権は法律上の夫婦だけに認められています。
そのため、事実婚の場合、配偶者が亡くなったとしても遺産を相続することができません。
事実婚の夫婦が相手に遺産を残したいという場合は、「相手に遺産を遺贈する」という内容の遺言書を残しておく必要があります。
ただし、事実婚の場合は配偶者控除などを利用できないため、遺言書を残していても法律婚より課税される相続税の金額が高くなります。
子供が生まれたときの手続きが複雑
事実婚の夫婦の間に子供が生まれたても、子供とその父親に法律上の親子関係は生じません。
男性が子供と法律上の親子関係を築くためには、認知という手続きをとらなければなりません。
男性が任意に認知をしてくれないときには、家庭裁判所に認知の調停の申立てや認知の裁判を提起しなければなりません。
父親が認知をしただけでは親権者は母親のままです。
もし、親権者を父親に変更したい場合は家庭裁判所に親権者変更の調停を申し立てなければなりません。
なお、事実婚の場合は共同親権は認められていません。
夫婦関係を証明しにくい
法律婚の夫婦は、戸籍謄本を提出することで夫婦関係を証明できます。
しかし、事実婚の夫婦は婚姻届を提出していないため、戸籍に夫婦の記載がありません。
そのため、夫婦関係を証明しにくいというデメリットがあります。
手術や医療行為の同意の代理ができない可能性がある
一般的に手術や医療行為を行う際は「同意書」にサインを求められます。
同意書にサインをするのは、手術や医療行為を受ける本人が原則です。
しかし、意識不明などの理由で本人がサインできない状況であれば、本人に代わって親族や配偶者がサインをすることになります。
事実婚の場合、法律上は他人とみなされるため、同意書へのサインができないことがあります。
事実婚(内縁)解消時に慰謝料や財産分与などの請求ができるのか
事実婚であってもさまざまな理由から夫婦関係を解消することがあります。
事実婚であっても、法律婚と同様、夫婦関係解消時に相手方に以下の項目を請求できるのが基本です。
慰謝料
事実婚であっても法律婚と同様、夫婦関係の解消にあたって有責性のある相手に対して慰謝料請求が可能です。
不貞行為やDVなどの事実が認められれば慰謝料請求が認められますし、単に「嫌いになった」など、正当な理由なく事実婚を解消された場合も慰謝料請求が可能です。
事実婚の慰謝料相場は法律婚と比べてほとんど差はありません。慰謝料を請求する理由によって、50~200万円程度が相場となるでしょう。
財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を離婚時に分ける制度のことを言います。
事実婚は婚姻に準ずる関係であると認められているため、事実婚の夫婦も法律婚の夫婦と同様に財産分与を求めることができます。
養育費
法律婚の夫婦の間に子供がいるときは、離婚時に養育費を請求することができます。
事実婚の場合、子供が生まれただけでは父親と子供との間に法律上の親子関係が生じません。
そのため、そのままの状態だと夫婦関係を解消する際に養育費を請求することができません。
養育費を請求するためには、男性が子供を認知している必要があります。
認知をしている場合、法律婚と同様に養育費を請求することができます。
婚姻費用
事実婚の夫婦についても民法760条が準用されるため、互いに婚姻費用を分担する義務があります。
そのため、事実婚であっても婚姻費用を請求することが可能です。
第760条
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
法律婚の場合、別居中も離婚が成立するまでの期間の婚姻費用を負担しなければなりません。
一方、事実婚は夫婦の共同生活の実態が夫婦関係の要件となります。
そのため、別居している場合は「そもそも事実婚の状態は解消されている」と言えるため、法律婚と同じような請求はできない可能性があります。
なお、事実婚の場合、同居中の婚姻費用の請求や一時的な別居中(入院、単身赴任など)の生活費の負担が主な請求内容となるでしょう。
年金分割
事実婚であっても、法律婚の夫婦と同様に年金分割を請求することが可能です。
ただし、事実婚の場合には、婚姻時期や年数を客観的に証明することが難しいため、「第3号被保険者であった期間」に限り年金分割の対象とすることになります。
なお、第3号被保険者とは、厚生年金保険の被保険者となっている人に扶養されている配偶者を言います。
事実婚(内縁)をうまく進めるためのポイント
事実婚を選択するときは、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
住民票の続柄を「妻(未届)」または「夫(未届)」とする
法律婚の場合、住民票の続柄(夫が世帯主の場合)は、男性の欄に「世帯主」、女性の欄に「妻」と記載されます。
事実婚の場合、夫婦を同一世帯とした、世帯主以外の続柄を「同居人」または「妻または夫(未届)」と記載することができます。
住民票の記載事項は社会保険の手続きなどで利用することがあるため、事実婚であることを証明する手段として「妻または夫(未届)」としておくと良いでしょう。
事実婚契約書を作成し公正証書にしておく
事実婚はその事実を証明する手段が乏しいため、事実婚契約書を作成し、公正証書にしておくのがおすすめです。
事実婚契約書を作成しておくことで、関係解消時、事実婚の関係にあったかどうかで揉めることもなくなります。
また、事実婚にあたっての権利関係(婚姻費用の分担、家事の分担など)を明確にしておくことで、円満な夫婦生活を送りやすくなります。
なお、公正証書は公証人が作成する公文書で信用性の高い文書になります。
そのため、住宅ローンを組むときや医療上の同意が求められる場面で手続きを進めやすくなります。
遺言書を作成する
事実婚の大きなデメリットは、相手が亡くなったときにその遺産を相続する権利がないということです。
長年一緒に生活をしていたのに相続にあたって何ももらうことができず、相続人から自宅を追い出されるということもあり得ます。
このような事態を回避するためにも、あらかじめ遺産を相手に渡す内容の遺言書を作成しておくと良いでしょう。
子供が生まれた場合は認知をする
事実婚の夫婦の場合、子供が生まれても男性と子供との間には当然には法律上の親子関係は生じません。
子供が生まれた際は、認知の手続きをしておくことで父親に扶養義務が生じるため、夫婦関係を解消したときの養育費のトラブルを減らすことが可能です。
事実婚(内縁)に伴うトラブルを回避するなら弁護士に相談
事実婚には、法律婚にはないメリットがあるため、事実婚を選択する男女もいるでしょう。
しかし、事実婚は法律婚とまったく同じ保障があるわけではないため、トラブルが生じることがあります。
また、事実婚を解消するときは法律婚と同様に慰謝料や財産分与などを請求することができますが、そのためには事実婚の状態であったことを証拠によって立証しなければなりません。
事実婚であることを立証する際は、法律上の専門的な判断が必要となるため、弁護士に相談することをおすすめします。
また、弁護士に事実婚解消について依頼すれば、パートナーとの交渉を一任することができますし、話し合いで解決できないときは、家庭裁判所の「内縁関係調整調停」を申し立ててもらうこともできます。
事実婚に関するトラブルは、弁護士に相談しながら進めることが大切です。
まとめ
事実婚についてはメリットやデメリットを踏まえて、慎重に判断する必要があります。
事実婚を選択し、トラブルになった場合やトラブルになりそうなときは、早めに弁護士に相談しましょう。
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