DVを受けたら弁護士に相談!調停離婚の手続きとかかる費用は?
DVとはドメスティックバイオレンスの略で、家庭内での配偶者による暴力のことを指します。
警視庁によるとDVによる平成29年の相談件数は8,421件で、平成28年より1,602件も増加していることがわかっています。
また、DVによる相談は女性からの相談が8割以上になります。
この記事では、夫による妻への暴力を想定し、DVで悩む方が安全に離婚するための進め方や離婚前にしておく準備などを説明します。ぜひ参考にしてDVから解放されましょう!
- 目次
DVを規制する法律を知ろう
DVを理由に離婚する方法を説明する前に、まずDVから自分の身を護るために知っておくべきことがあります。
配偶者暴力防止法
配偶者暴力防止法とは、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」の略称で、DV法とも呼ばれます。
配偶者による暴力に関する通報や相談、保護、自立支援などの体制を整え、配偶者による暴力を防止し、被害者を保護することを目的とした法律です。
なお、ここでいう配偶者とは事実婚を含みます。また、性別や離婚後の元配偶者による暴力も含めます。
参考:内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力被害者支援情報」
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/index2.html
ストーカー規制法
ストーカー規制法は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」の略称です。
ストーカー規制法は、ストーカー行為を処罰、規制し、ストーカー行為の被害者を保護することを目的としています。
参考:警視庁「ストーカー規制法」※2
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/dv/kiseho.html
DVを理由に離婚できるの?
離婚の手順は夫婦による話し合いから始まるのが一般的です。この話し合いで離婚が成立すると協議離婚となります。日本では離婚する夫婦のうち9割以上が協議離婚をしています。
しかし、DVが原因となると話は変わります。
もし、あなたがDVの被害に遭っていて、夫(DVの加害者)に離婚を切り出したとします。このときDV夫は暴れだし、あなたに暴力をふるう可能性が高いです。
こうなってしまうと、離婚の話し合いどころではありません。
では裁判を起こせば離婚が認められるのでしょうか。
DVを理由に離婚を認めてもらうためには、民法で定めた離婚理由(法定離婚事由)が必要です。
DVを理由に離婚する場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」が該当するかどうかが鍵となります。つまり、DVによって婚姻関係が破綻していると判断される必要があるのです。
DVで離婚が認められる場合
DVによって婚姻関係が破綻しているかどうかは、暴力の程度や頻度によって変わります。例えば以下のような場合はDVを理由に離婚が認められる可能性があります。
- 平手ではなく拳で殴る
- 被害者の顔や腹部、背部など命の危険をともなう場所に暴力を受けている
- DVによって被害者が骨折したり、アザや出血がある
- 週に数回の頻度でDV行為がある
- 一回のDVが数時間におよぶ など
DVで離婚が認められない場合
一方、DVが認められない場合はどのようなケースでしょうか。たとえば以下のようなケースではDVを理由にした離婚を認めてもらえない可能性があります。
- 平手で1回たたく
- DV行為が年に1回など頻度が少ない など
年に1回とはいえ、骨折やアザをともなうなど、ひどい暴力がある場合は離婚が認められることもあります。
自分だけで判断せずに弁護士などの専門家や配偶者暴力相談支援センターなどを利用して相談しましょう。
離婚する前に準備しておくべきこと
DV夫との離婚は、やり方を間違えると暴力がひどくなることもあります。身の安全を護り、かつスムーズに離婚するには事前に準備をする必要があります。
DVの証拠収集をする
DVを理由に離婚するためには、DVがあったことを証明できる証拠を集めなければいけません。たとえば以下のようなものはDVの証拠として有効になります。
- DVによるケガで受診した際の診断書
- 警察などへのDV被害の相談記録
- DVによるケガの写真や録音
- DVの様子を記録した日記 など
別居をする
前述のとおり、DV夫との離婚を考えるなら、話し合いではなく別居することを考えましょう。離婚に有利になるかどうかより、まず自分の身を護ることが大切です。
別居する際に重要なのはDV夫に住まいを知られないことです。もし、あなたが出て行けば、DV夫はあなたを探し出そうとするでしょう。
DV夫に行き先が推測されないためにも実家に戻ることは避けましょう。DV夫に別居先を知られないようにするには以下の2つの方法があります。
住民票を移す場合
もし別居の際に住民票を移すのであれば、住民票の閲覧制限をかけることが重要です。これにより住民票などをDV夫が閲覧できなくなります。
住民票の閲覧制限をかける手順は以下となります。
- 警察や配偶者暴力支援センターでDV被害に遭っていることを相談
- 「住民基本台帳事務における支援措置申出書」に「住民票の閲覧制限が必要」という内容を記載してもらい、市区町村役場・役所に提出
住民票を移さない場合
住民票を移さなければ、DV夫が別居先を知ることができません。別居が短期間ならこの方法も有効です。
この場合、子供がいる場合は通学先を変える必要が出てきます。別居した先の教育委員会に相談し、住民票を移さなくても転校させてもらえるように依頼しましょう。
保護命令の申し立てをする
保護命令とは、配偶者からの暴力を防止する目的で、DVや脅迫などをした加害者に対して、裁判所が被害者に近づかないように命じるものです。
保護命令には以下の5つがあります。
- 接近禁止命令:申立人の身辺のつきまといや住居・勤務先などの近くをうろつくことを6ヶ月間禁止すること
- 退去命令:申立人と相手方が同居していて、申立人が引っ越し準備をする際、相手方に対して家から2ヶ月間出ていくこと、またその期間中、家の近辺をうろつくことを禁止すること
- 子への接近禁止命令:申立人と同居する子供がいる場合は、その子供へのつきまとい、学校や住居などの近辺をうろつくことをも禁止すること
- 親族等への接近禁止命令:申立人の親族の身辺をつきまとったり住居や勤務先などの近辺をうろつくことを6ヶ月間禁止すること
- 電話等禁止命令:申立人への相手方からの面会要求や深夜の電話、メール、FAX送信といった迷惑行為を6ヶ月間禁止すること
保護命令は、申立書に必要事項を記入して管轄の裁判所に申し立てます。
保護命令申し立ての準備
申立書には警察や配偶者暴力支援センターに相談した内容を記載する必要があります。したがって、保護命令を裁判所に申し立てる際は、DVがあったことを警察などに相談した事実が必要です。
もし相談をしていない場合は、公証役場で公証人面前宣誓供述書を作成してもらう方法もあります。
管轄の裁判所に申し立てを行う
保護命令の申し立ては以下のいずれかの裁判所に申し立てを行います。
- DVがあった場所を管轄する地方裁判所
- 申立人の住所あるいは居住地を管轄する地方裁判所
- 相手方の住所地を管轄する地方裁判所 裁判所に申し立てる際は以下のものが必要です。
申し立てに必要な書類
- 申立書2部(正本と副本)
- 戸籍謄本と住民票(法律上または事実上の夫婦の場合)
- 相手方と生活の本拠をともにしている事実を証明する資料(法律上の夫婦ではない場合)
- 証拠書類2部(原本と写し):診断書など暴力を受けていることを証明する書類
警察などに相談せず申し立てる際は宣誓供述書(正本・副本)も必要になります。
申し立て費用
保護命令を申し立てる際は以下の費用が必要です。以下の金額は目安になります。詳しくは申し立てる裁判所に確認しましょう。
- 申し立て手数料(収入印紙):1,000円
- 予約郵便切手:2,500円
取り決めておきたい条件を固める
DVに関わらず、離婚する際は以下の条件を決めておく必要があります。
慰謝料
慰謝料は精神的な苦痛に対する損害賠償金です。DVが認められれば加害者に対して慰謝料請求ができます。
DVが理由の場合の慰謝料金額は、ケガの程度やDVがあった期間、婚姻期間によって変わりますが、100万円から300万円が相場となっています。
財産分与
財産分与とは、婚姻期間中の共有財産を夫婦で公平にわけることです。これは離婚原因によって変わることはありません。
親権
未成年の子供を持つ夫婦が離婚する場合、必ず親権者を決めなければいけません。
一般的に親権獲得には母親が有利とされていますが、子供を置いて別居をしていた場合などは親権獲得が難しくなる場合があります。
養育費
未成年の子供を持つ夫婦は、子供が成熟するまでの間に必要な費用を負担する義務があります。離婚は夫婦の問題ですので、親権を持たない親にも養育費の支払い義務があります。
DVによる調停離婚の手続き方法
日本では離婚する夫婦の9割が協議離婚をしています。一方、DVが原因で離婚する場合は協議離婚を避け、調停離婚から始めるほうが良いとされています。
では、なぜDVによる離婚では調停離婚が良いのでしょうか。
DV夫との協議離婚は難しい
協議離婚とは夫婦の話し合いで離婚することです。しかし、DV夫に離婚を切り出した場合、DV夫が感情的になり、暴力をふるうなど状況が悪化する可能性があります。
DV夫との話し合いによる解決は困難と考えておきましょう。
調停離婚の申し立ての流れ
調停離婚とは家庭裁判所で調停委員を介して夫婦が話し合い、離婚する方法です。調停離婚をするためには家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。
調停離婚の流れは以下となります。
- 離婚調停の申し立て:必要書類や費用を揃えて家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
- 第1回目の調停期日:夫婦が顔を合わせないように30分間調停室に交互に入り、家事審判官と調停委員と話し合います。これを2回ずつ繰り返します。
- 第2回目の調停期日:1回の調停期日で終了することはほとんどありません。
- 調停の終了:調停期日が繰り返され、調停成立・調停不成立・取下げのいずれかで調停が終了します。
離婚調停不成立の場合は離婚裁判に
離婚調停を行っても解決できないと判断された場合、調停不成立として調停が終了します。調停不成立となるのは以下のような場合です。
- 相手方が調停委員と裁判官に離婚調停の不成立を求めた場合
- 話し合いでは調停成立の見込みがないと調停委員と裁判官が判断した場合
- 正当な理由もなく相手方が離婚調停に出頭しない場合
- 相手方が離婚調停期間中に死亡した場合 など
DV被害に遭ったら弁護士に相談を
ここまで説明したように、DVの被害に遭ったらまず身を護ることが大切です。
しかし、直接離婚を切り出したり、何も考えずに家を出ると、状況が悪化して命の危険にさらされることもあります。このような事態を防ぐためにも、早いうちに弁護士に相談しましょう。
暴力をふるうのは夫ではなく加害者
大前提として、あなたに暴力をふるっているのは夫ではありません。加害者です。
「暴力をふるう以外は優しいのよ」「お酒を飲まないときは良い人なの」「あの人の良さをわかってあげられるのは私だけ」など、ひどい暴力をふるわれ続けても我慢してしまう人もいます。
しかし、暴力をふるう時点で、あなたの夫は「加害者」で、あなたは「被害者」なのです。あなた自身がこのことを理解しなければ状況は変わりません。
離婚に強い弁護士を利用するメリット
DVの被害にあったら弁護士に相談すべきと説明しました。相談する際は離婚問題に強い弁護士を選びましょう。離婚に強い弁護士に相談すると以下のようなメリットがあります。
精神的に安定する
DV被害者は日々暴力をふるわれることで身体的にも精神的にも疲弊していることがあります。また、DV被害に遭っていることを相談できず塞ぎ込んでしまうこともあるでしょう。
このような場合、離婚問題に強く、法律のプロである弁護士に相談すれば精神的な安定を得ることができます。
法的な手続きがスムーズに進む
DV夫との離婚は協議離婚ではなく、調停離婚をおすすめすると説明しました。しかし、調停を申し立てるとなると法的な手続きが発生します。
このような場合も弁護士であれば複雑な手続きを代行してくれます。DVは被害者と加害者が鉢合わせしないことが重要です。弁護士なら夫婦が顔を合わさないように取り計らってくれます。
弁護士が相手だとDV夫の態度が変わることも
DV夫は妻からの申し出には感情的になることがあっても、相手が弁護士であれば態度が変わることもあります。
また、弁護士に依頼すると、DV夫とのやり取りをすべて代行してくれるため被害者の負担も軽減します。
離婚に強い弁護士に依頼する際の費用
DV夫と離婚するには離婚に強い弁護士に相談・依頼することが重要だと説明しました。弁護士に依頼すると以下の費用がかかります。
相談料
相談料とは弁護士に依頼する前に行う法律相談の料金です。料金は法律事務所によって変わりますが、5,000円/30分というところが多いです。
着手金
着手金は実際に弁護士に依頼した際に発生する費用です。依頼する内容によって以下のように金額が変わります。
- 協議離婚:10万円~20万円 程度
- 離婚調停:20万円~30万円 程度
報酬金
離婚問題が解決したら報酬金が発生します。報酬金は30万円~50万円が相場ですが、依頼した内容によって金額が変わります。
相手方から慰謝料を獲得できた場合は、獲得金額の10%~15%の金額が報酬金に加算されます。
まずは気軽に無料相談
前述のように、弁護士に相談・依頼する場合はお金がかかります。
また、「どの弁護士に依頼すれば良いのかわからない」ということもあるでしょう。
最近では「相談料無料」という法律事務所も増えています。どの弁護士に依頼すれば良いか迷ったときは、このような事務所を利用して相談すると良いでしょう。
依頼するかどうかは相談してから決めることも可能です。
まとめ
DVを理由に離婚する方法について解説しました。
直接話し合ってもDV夫(加害者)と離婚することはできないと考えましょう。状況を悪化させないためにも、すぐに離婚に強い弁護士に相談することをおすすめします。
離婚に強い弁護士を探す際は当サイトのようなポータルサイトの利用が便利です。当サイトからの電話相談は無料となっています。ぜひご活用ください。
※1 内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力被害者支援情報」
※2 参考:警視庁「ストーカー規制法」
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