子供がいるから離婚できない?モラハラを見て育った子供への影響。

DV・モラハラ
弁護士監修
子供がいるから離婚できない?モラハラを見て育った子供への影響。

夫(または妻)からモラルハラスメント(以下、モラハラ)を受けているにも関わらず、本心では離婚したいのに「子供がいるから」という理由で離婚を切り出さないことがあります。

我慢して結婚生活を続ける理由、離婚を切り出せない理由は人それぞれだと思いますが、家庭内のモラハラ行為は子供にさまざまな影響をおよぼします。

この記事では、「子供がいるから」という理由で離婚をしない場合にモラハラを見て育つ子供への影響や子供を守るためにすべきことについて解説します。

子供がいるから離婚に踏み切れないという方、モラハラを受けている方は最後までお読みください。

目次
  1. モラハラは夫も妻も被害者になる
    1. 夫によるモラハラの特徴
    2. 妻によるモラハラの特徴
  2. 離婚できない理由とは
    1. 被害妻が「離婚できない」と考える理由
    2. 被害夫が「離婚できない」と考える理由
  3. モラハラが子供に与える悪影響とは
    1. 子どもはよくも悪くも親を真似る
    2. 子供がモラハラ言動を取る可能性も
  4. モラハラ配偶者と離婚して子供を守るためにすべきこと
    1. できるだけ早く子供を連れて別居する
    2. 警察や相談機関へ相談する
  5. 「それでも離婚できない」という人へ

モラハラは夫も妻も被害者になる

モラハラは「夫から妻へのもの」というイメージがありますが、夫も妻も被害者になり得ます。以下、それぞれの特徴について見ていきます。

夫によるモラハラの特徴

夫は妻よりも力が強く、経済的にも優位になりやすいため、モラハラの加害者になりやすい傾向があります。

また、夫が男尊女卑の考えを持っている場合は特にモラハラ加害者になりやすくなります。

モラハラ夫は妻を下に見ています。そのため、妻が「皿を割る」などのささいな失敗をしただけで「家事も満足もできないのか」と人間性まで否定します。

また、「その皿は誰の稼ぎで買ったと思っているんだ」などと妻を追い込みます。

一方、モラハラ夫はプライドが高いため、妻から間違いを指摘すると逆切れします。

例えば、夫の健康状態を心配した妻が「運動をして痩せたほうが良いよ」と言っただけで、モラハラ夫は「仕事で疲れて帰ってきた夫に対してさらに疲弊させようとするのか」と曲解します。

さらに、「お前のつくる食事がまずいから外食が多くなって体調を崩す。お前は俺を殺す気か」など、問題のすり替えや責任転嫁をしたり、攻撃をしかけたりすることもあります。

妻によるモラハラの特徴

日本のビジネス環境は改善されつつありますが、依然として男性より女性のほうが出世し難い傾向があります。

モラハラ妻は学歴も収入も夫より高い傾向があるため、理不尽な現代社会に不満を抱きがちです。しかし、不満を外でぶつけるわけにはいかないため、夫にぶつけるケースがあるのです。

働く女性だけでなく、専業主婦がモラハラに走ることもあります。例えば、家事・育児放棄、夫の両親への仕打ち、ヒステリー、自傷行為や自殺未遂といった行動です。

なお、モラハラには夫婦のどちらか一方が一家の財布を預かり、相手方にはごく少額の小遣いしか渡さないといった経済系DVもありますが、これは男女関係なく起こり得ます。

離婚できない理由とは

モラハラ夫(妻)に苦しんでいる人は「離婚したいけど子供がいるからできない」と考えることがあります。主な理由を紹介します。

被害妻が「離婚できない」と考える理由

専業主婦の場合、「離婚後に収入を確保する自信がない」という人も少なくありません。そのため、特に専業主婦は「子供がいるから離婚できない」と考えやすくなります。

しかも、毎日毎日夫から「バカ」「ただ飯食い」「容姿が悪い」などと言われることでマインドコントロールされたように「自分はバカだ」「使えない」と思い込むこともあります。

一方、モラハラ夫が高学歴・高収入の場合、妻は「子供にとって今の家庭環境は将来武器になる」と考えるかもしれません。

例えば、代々東大に入っていたり、医者になったりすれば、妻としても「私の子供もエリートになれる」と思うかもしれません。

そうなると「私さえ我慢すれば子供は幸せになれる」という心理に陥ってしまいます。

また、モラハラ夫の社会的地位が高く、頭が良い場合、巧みにモラハラの証拠を隠すことで離婚後に子供の親権を夫に奪われてしまう可能性もあります。

このような場合、「夫のモラハラに苦しめられて離婚までしたのに子供まで失うのは嫌だ」と離婚を思いとどまってしまうこともあります。

被害夫が「離婚できない」と考える理由

夫もモラハラ被害者になり得るという事実を知らない人も少なくありません。

また、「モラハラ被害を受けても夫は自分で稼ぐことができるのだからすぐに離婚すれば良い」と簡単に考えるかもしれません。

一般的に離婚後の親権獲得は妻が有利という実情があります。つまり、離婚によって夫は子供の親権を失う確率が高いのです。

モラハラ被害を受けたうえに子供と別れ離れになることは理不尽すぎます。被害夫が離婚に踏み切れない心理は十分理解できます。

モラハラが子供に与える悪影響とは

モラハラが子供に与える悪影響とは

モラハラ行動や言葉があからさまな場合、子供に深刻な悪影響を与えかねません。

一方、モラハラ夫(妻)が陰でこそこそと妻(夫)をいじめている場合も子供はその雰囲気を敏感に察知するものです。

いずれのケースにおいても、子供への精神的なダメージが心配されます。

子どもはよくも悪くも親を真似る

子供は良くも悪くも親を真似ます。モラハラ夫(妻)の悪影響で懸念されるのは、子供がモラハラ行為を受け継いでしまうことです。

モラハラ傾向や男尊女卑(女尊男卑)の考え方が医学生理学的に遺伝するかどうかは不明です。

しかし、モラハラが当たり前の環境に子供がいることでその子供がモラハラ傾向を示すことは十分にあり得ます。

たとえば、妻が夫の下着類を家族の洗濯物と別に洗濯すると、子供たちも「お父さんはなんとなく汚い存在」と思うようになります。

さらにモラハラ夫(妻)が子供を「洗脳」してしまうことも考えられます。

例えばモラハラ夫が子供の目の前で妻に罵詈雑言を浴びせたとします。

その後夫が、子供を別室に呼び、優しく、「パパも本当は、ママを叱りたくないんだよ。だけどママは悪い心を持っていて、パパはそれを正常にしてあげようとしているんだよ」と言ったらどうでしょうか。 さらにそこに夫の母が加勢したらどうでしょうか。

子供が大好きなおばあちゃんから「パパはいつも悪いママに困っているんだよ」と言われたら、信じてしまうでしょう。

子供がモラハラ言動を取る可能性も

日本福祉大の久世淳子教授(発達心理学)は以下のように述べています。

「子供に対して服従的な教育態度の親を持つ子供が、自己表現が積極的であったとしても、他人のことを考えず自己ばかりを表現する傾向がある」

これは「甘やかされて育った子供は自己中心的な性質を示すようになる」ということです。

さらに久世氏は「親が子供に対し、統制的な養育態度を取ると、その子供は他者からの働きかけに応答的な行動モデルを獲得できず、利己的な表現が強くなる」とも述べています。

こちらは「親が子供に常に威圧的な態度を取っていると、子供は他人とのコミュニケーションが取りづらくなり利己的になる」ということです。

いずれの場合も親が子供に対する接し方を誤ると子供は問題行動を起こす可能性があることがわかります。

親が社会的な成功者でありながら家のなかではモラハラをしているという場合、子供は、父親(母親)の外の顔と家の顔が矛盾していることに違和感を持たなくなる可能性があります。

さらに、「その姿こそ本当の大人」と理解したら、自分の親をモラハラだと認識することなく、積極的にモラハラ人間になろうとする恐れもあるということです。

参考:日本福祉大学「親の養育態度が性格形成に与える影響とは(https://www.n-fukushi.ac.jp/gakubu/kenko/2009/jn03.pdf)」※1

モラハラ配偶者と離婚して子供を守るためにすべきこと

夫(妻)からのモラハラは子供に大きな影響を与えることを解説しました。

モラハラ加害者は自分がモラハラをしているという自覚がないケースがほとんどです。

そのため、モラハラがなくなることを期待するのではなく、モラハラ加害者と離婚する方向で考えることが現実的です。

モラハラ配偶者と離婚して子供を守るためにすべきことは次の2つです。

できるだけ早く子供を連れて別居する 警察や専門機関に相談する 以下で詳しく見てきます。

できるだけ早く子供を連れて別居する

配偶者のモラハラから子供を守るためには、できるだけ早く配偶者から子供を引き離すことが重要です。そのため、子供を連れて別居することを考えましょう。

「生活費が心配で別居できない」という人もいますが、自分より相手方の収入が多ければ、相手方に生活費(婚姻費用)を請求できます。

なお、婚姻費用の請求は「請求した時点から」とするのが一般的です。そのため、婚姻費用はできるだけ早く請求することが重要です。

警察や相談機関へ相談する

モラハラ被害者は「自分がモラハラを受けているか判断できない」というケースも少なくありません。

また、モラハラを受け続けると精神的に疲弊してしまい、適切な対応ができなくなるリスクもあります。

モラハラを受けたら、1人で抱え込むのではなく、警察や専門機関に相談し、子供や自分を守るためにどうすべきかアドバイスをもらいましょう。

専門家による客観的な意見を聞き、自分の状況を把握できれば、自ずとどう行動すべきか見えてきます。

警察へ相談する際は、近隣の警察署に直接行くかあるいは警察相談専用電話「#9110」に連絡しましょう。

警察相談専用電話「#9110」は全国どこからでも、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの窓口へつながります。

なお、子供が配偶者からモラハラ被害を受けているケースは児童虐待(心理的虐待)に該当します。この場合は児童相談所へ相談することも検討しましょう。

自分だけでは別居や離婚ができないという場合は弁護士に相談し、アドバイスを受けながら行動することをおすすめします。

参考:政府広報オンライン「警察に対する相談は 警察相談専用電話 #9110へ(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/3.html)」※2
参考:厚生労働省「全国児童相談所一覧(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/zisouichiran.html)」※3

「それでも離婚できない」という人へ

親がモラハラを受け続けることで子供にどのような影響をおよぼすかを説明しました。

「それでも離婚できない」という方もいるかもしれませんが、少しでも良い方向に進むためには、弁護士や専門機関などに相談し、客観的な視点でアドバイスをもらうことが大切です。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚や子供の問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

※1 日本福祉大学「親の養育態度が性格形成に与える影響とは
※2 政府広報オンライン「警察に対する相談は警察相談専用電話 #9110へ
※3 厚生労働省「全国児童相談所一覧

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