夫(妻)の暴力から逃れたい! DVの証拠集めとうまく逃げる方法とは。

夫(妻)から暴力を振るわれるDV(ドメスティックバイオレンス)では、被害を受けている妻(夫)は次の2点が重要になります。
「確実に逃げ切ること」
「逃げた後の生活を立て直すこと」
この2つを実現するには、DVの証拠をしっかり集めなければなりません。しかし証拠を集めることは手間がかかります。
被害者が「私が苦しんでいること自体が有力な証拠ではないか、それ以上にどのような証拠が必要なのか」と主張したくなる気持ちはわかりますが、残念ながらそれだけでは有効な手立てを打てないことがあるのです。
ただ「証拠集め」といっても、基本さえ押さえておけば難しいことではありません。
DVとは
DVとは配偶者や恋人など親密な関係にある者から暴力を振るわれることです。都道府県などが設置する配偶者暴力相談支援センターに寄せられる相談件数は、2002年度は35,943件でしたが、2016年度には106,367件へと約3倍になっています。
ほとんどは夫が妻に暴力を振るうケースです。一般的に夫のほうが力が強く経済的に有利な立場にあるため、妻のDV被害は甚大になります。
そこでDV被害者を守る配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(通称、DV防止法)が施行されました。 ここでは夫婦間のDVについて検討していきます。
DVは、被害者と加害者が特別な関係にあるだけで、それ以外は単なる暴行事件です。
よって、一発でも殴られたり蹴られたりすれば、警察に被害届を出して加害者に刑事罰を加えることができます。
しかし、DV被害者のなかには、生活環境や精神状態によって骨折するくらいの甚大な被害を受けても「警察に行けない」「行きたくない」と思ってしまう人もいます。
そのような方でも実行可能な方法を紹介します。
証拠を確保する
なぜDVの証拠が重要なのでしょうか。
DVは親しい間柄と思われている夫婦間で発生するので、これだけDVが社会問題になっているにも関わらず、世間では「滅多に起きないもの」と考えられているからです。
さらにDVに縁のない生活を送っている人は、「恋人はもちろんのこと夫婦でも、暴力を振るわれたら逃げればいいだけでしょ」と思ってしまうのです。
そして残念ながら、行政の担当者や警察官でも「本当に深刻なDVは滅多に起きない」と考えている人がいて、それで初動が遅れることがあります。
つまりDV被害者がDVのない生活を送るための最初の壁はDV被害が本当に起きていることを信じてもらうことなのです。
そこで、DVが確実に発生していることを証明する証拠が重要になるのです。
傷やケガをスマホで撮影しておく
暴力を振るわれた際の、最も有力な証拠は傷やケガです。傷やケガを追ったら、加害者がいなくなった隙に素早くスマホや携帯、デジカメなどで撮影しておきましょう。
ただし、暴力夫(妻)は配偶者のスマホなどを厳しく管理している可能性があるので、傷の写真の保存方法は十分注意してください。
信頼できる友人に写真を送信して保管してもらい、自分のスマホの送信履歴を消去する方法は有効です。
信頼できる人がいなかったり他人にDVのことを知られたくない場合は、グーグルのGメールやヤフーのヤフーメールなどは無料でアカウントを取得できるので、DV証拠保存専用メールを確保しておく方法もあります。
メモや日記をつける
傷の写真を撮るだけでなく、メモ書きや日記の形式で記録を残しておいてください。記載する項目は次のとおりです。
これらを事細かに書いておいてください。「被害者が一方的に書いただけの記録が証拠になるのか」と疑問に感じる方もいると思いますが、十分証拠になります。
事細かに書かれた文章はリアルなため捜査関係者や裁判官たちも「信憑性がある」と判断してくれます。
ただメモ帳などがDV夫(妻)に発覚すると被害が大きくなるので、やはり保存方法は工夫してください。
診断書
行政や警察は、傷やケガの程度が大きいと迅速に動く傾向にあります。
1本のひっかき傷では対応してくれなかった行政担当者や警察官でも、捻挫や骨折まで被害が大きくなるとしっかり対応します。
警察に通報できない事情があっても病院には行くはずです。治療を受けたときに医師に診断書を書いてもらってください。
捻挫や骨折が治った後に勇気がわいてきて「警察に行こう」と決断できたとき、診断書がないと本当に捻挫や骨折があったのかわからないからです。
繰り返しになりますが、本来は捻挫や骨折といったDV被害を受けたら、もしくはその前段階から迷わず警察に行くべきです。診断書を入手する方法は、それができないときの対処法です。
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DVから逃げる
警察に行く
DVから逃げるなら、証拠を持って警察に行くことが最も確実です。警察に行って被害申告すればDV夫(妻)を処罰することが可能です。
もし暴力は受けているもののDV夫(妻)への気持ちが残っていて、「まだ刑事罰を加えるほどではない」と感じている段階でも、警察は相談に乗ってくれます。
もしくは、全国に279カ所ある配偶者暴力相談支援センターに相談する方法もあります。
連絡先の一覧表が以下に掲示されています。同センターではカウンセリングや自立へのアドバイスを受けたり新しい居住場所の相談にのってくれたりします。
シェルターに逃げる
シェルターとはDVの被害者が逃げ込む施設で、いわゆる「かくまってくれる場所」です。もちろん子どもと一緒に行くことができます。
シェルターではさらに自立するためのアドバイスを受けることもできます。
国内に約100カ所ありますが、その所在や連絡先は被害者保護の観点から公開されていません。
よってシェルターは配偶者暴力相談支援センターや警察を経由して利用することになります。
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DV加害者への刑事罰
DV夫(妻)が妻(夫)にケガを負わせると、警察はDV夫(妻)を傷害罪で逮捕します。傷害罪の罰は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
ケガを負わせなくても暴力を振るっただけで暴行罪が適用されます。その罰は2年以下の懲役または30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。
DV防止法による保護命令
DV夫(妻)には、刑事罰以外にもDV防止法による保護命令をくだすことができます。保護命令には以下のものがあります。この命令は裁判所がくだします。
まとめ
DV被害に遭ったら、なにはともあれ110番通報してください。DV被害は自分の命だけでなく子どもの将来にも暗い影を落とすことになります。
警察は民事(夫婦のこと)には介入しませんが、DVという暴力が存在すれば、夫婦の間に起きたことでも刑事案件になり、厳正に対処してくれるはずです。警察からケアの輪が広がることも期待できます。
そして証拠の確保は忘れないでください。DV夫(妻)に法律的かつ社会的な制裁を加えるのに証拠はとても重要です。さらに証拠があれば離婚もスムーズかつ有利に進めることができます。
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