多産DVの特徴とは?夫の支配から逃れる方法と相談先

DV・モラハラ
弁護士監修
多産DVの特徴とは?夫の支配から逃れる方法と相談先

多産DVという言葉をご存知ですか?

DVと聞くと、殴る・蹴るなどの身体への暴力を思い浮かべる人がほとんどでしょう。

多産DVは、女性に対して望まない妊娠や出産、中絶を強要したり、繰り返させたりする行為を言い、DVの一種です。

多産DV自体は暴力をふるわれるものではないため、多産DVに気づかないケースも少なくありません。また、周囲から見ても子供がたくさんいる家庭は円満だと思われ、幸せそうに見えるかもしれません。

しかし、それは夫婦が合意のうえであれば、ということになります。

多産DVを放置すると女性の心身に悪影響をおよぼす恐れがあります。

この記事では、

・多産DVとは何か
・多産DVを疑うべき特徴
・多産DVを放置するリスク
・多産DVの対処法

を解説します。

多産DVに悩んでいる方、知人が多産DVかもしれないと疑っている方、夫から性行為や妊娠・出産、中絶を強要されている方はぜひ最後までお読みください。

目次
  1. 多産DVとは
  2. 多産DV夫の心理
  3. 多産DVを疑うべき特徴
    1. 子供を4人以上出産している
    2. 出産から次の妊娠までの期間が短い
    3. 夫が避妊をしてくれない
    4. 中絶経験がある
  4. 多産DVを放置するリスク
    1. 離婚しにくくなる
    2. 時間的にも経済的にも余裕がなくなる
    3. 妻の心身への負担が大きい
  5. 多産DVの対処法
    1. 夫と話し合う
    2. 夫に気付かれないように避妊する
    3. 専門家に相談する
    4. 別居する
    5. 離婚する
  6. 多産DVの夫と離婚する際の注意点
    1. 証拠を確保する
    2. 直接の話し合いを避ける
    3. 慰謝料請求が認められる可能性がある
  7. 多産DVの相談先
    1. 産婦人科:多産DVかどうかわからない場合
    2. DV相談ナビ、DV相談+:電話で相談したい場合
    3. 配偶者暴力相談支援センター:保護を希望する場合
    4. 警察:暴力を受けている場合
    5. 弁護士:離婚を希望する場合
  8. まとめ

多産DVとは

多産DVとは、夫が妻に対して望まない妊娠・出産を繰り返させ、妻の妊娠・出産の意思決定権を侵害することを言います。

妻の意向を無視して性交渉を強要するため、性的DVの1つと考えられています。

多産DV夫の心理

妊娠・出産により、女性は体力的にも精神的にも負担が大きく、自由に使える時間が少なくなります。

多産DVをする夫は妻に妊娠と出産を繰り返させることで、妻の自由を奪い、自分の支配下に置きたい、服従させたいという考えがあります。これは意識的に行っている場合もあれば無意識に行う場合もあります。

多産DVを疑うべき特徴

大前提として、多産=DVではないということです。夫婦が子供をたくさん持つことを望んでおり、多産となっているのであれば多産DVに該当しません。

そのため、多産DVかどうかは家庭の状況や夫婦関係など踏まえ、慎重に判断する必要があります。

一般的に、多産DVを疑うべき特徴には以下のようなものがあります。

  • 子供を4人以上出産している
  • 出産から次の妊娠までの期間が短い
  • 夫が避妊をしてくれない
  • 中絶経験がある

下記で詳しく解説します。

子供を4人以上出産している

多産DVかどうか判断する目安の1つに「4人以上子供を出産している」というのがあります。

夫婦で話し合い、合意したうえで子沢山の家庭を築いていることもあるため、一概には言えませんが、1つの目安として子供の人数に注意すべきでしょう。

出産から次の妊娠までの期間が短い

出産から次の妊娠までの期間が短い

子供を出産し、その後の妊娠まで期間が短いケースも多産DVを疑うべきと言えます。具体的には出産から次の妊娠までの期間が一年未満というのが目安になります。

出産後の母体が元の状態に戻るまでの8週間程度を要します。この期間を産褥期と言います。

見た目ではわからなくても産褥期は性器内に傷があり、痛みを感じたり、傷跡に血がにじんだりする恐れがあります。

また、清潔に保てない場合はセックスをきっかけに傷口が化膿する恐れもあり、女性の身体にとって大きな負担となります。

産褥期と上手に付き合うためには無理をせず、身体を休ませることが重要です。

本来、夫婦が話し合い、次の子供の妊娠・出産を検討することで初めて妻側の意思が尊重されていると言えます。

出産から次の妊娠までの期間が短いとうことは出産後すぐに性行為を強要されている可能性があります。

夫が避妊をしてくれない

多産DVをする夫は妻が常に妊娠をしていることを望んでいます。

体力的・経済的な理由などにより、妻が「もう子供を作りたくない」と思っても、夫が避妊に協力してくれなければ妊娠してしまう可能性があります。そのため、夫が避妊に協力してくれない場合は多産DVの疑いがあります。

また、夫婦とはいえ性行為を強要したり、暴力や暴言によって避妊を拒否したりする場合は性暴力に該当する恐れがあります。

中絶経験がある

妊娠中絶は女性にとって精神的にも身体的にも負担が大きいものです。多産DVの被害女性のなかには中絶経験があるケースが少なくありません。

中絶を決断するということは女性の意思を無視した妊娠である可能性があります。また、妊娠に対する妻の意思を無視して夫が中絶を強要している場合、妻が夫に従わざるを得ない関係性があると考えられます。

多産DVを放置するリスク

多産DVを放置するリスク

多産DVを放置すると以下のようなリスクがあります。

  • 離婚しにくくなる
  • 生活に余裕がなくなる
  • 妻の心身に悪影響をおよぼす

それぞれ以下で解説します。

離婚しにくくなる

子供がいる場合、子供への影響を考えて離婚に踏み切りにくくなる傾向があります。そのため、子供の人数が多ければ多いほど離婚を決断するのが困難になると言えます。

「子供が高校を卒業したら離婚する」など、子供の自立を待って離婚するケースもありますが、子供が多ければ多いほど先延ばしになってしまいます。

また、その間も多産DVによって子供が増える可能性があります。

子供を連れて離婚する場合は経済的な問題も考える必要があります。子供の数が多ければ離婚後の生活が困窮する可能性が高く、ますます離婚に踏み切れなくなることがあります。

時間的にも経済的にも余裕がなくなる

女性は妊娠中だけでなく、出産後も身体が思うように動かなかったり、育児で自分の時間が取れなくなったりします。

毎年子供を産んでいる場合、育児に費やす時間が数年単位になりますし、子供の人数が多ければ多いほど長期間におよびます。

また、子供が多ければそれだけお金もかかります。

クレジットカード会社の三井住友カードが運営するメディア「LinkU」によると、1人の子供がすべて公立校に通った場合、大学卒業までに約2,700万円かかるとのことです。

単純計算すれば、子供4人で22歳までに1億円以上のお金がかかる計算になります。

参考:LikeU「子育てに必要な費用ってどのくらい?0歳~22歳までの合計金額とは(https://www.smbc-card.com/like_u/money/education_funding.jsp」」※1

妻の心身への負担が大きい

妻の心身への影響が大きい

子供を産むというのは命がけの行為です。近年、妊産婦の死亡率は大きく減少したものの、妊娠出産によって命を落とす女性がいるのは事実です。

ほかにも、以下のように妊娠出産に伴って発症するリスクのある病気もあります。

  • 血栓性肺塞栓症
  • 周産期心筋症
  • 産褥熱
  • 産後うつ
  • 膀胱炎 など

また、産後は育児疲れや夜泣きによる睡眠不足で体調不良に悩む方も少なくありません。妊娠・出産が続けば続くほど、病気や死亡リスクに長期間さらされ続けることになります。

参考:日本産婦人科医会「妊産婦死亡報告事業 2019(https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/11/e147d306dd675338de60013905478f3f.pdf)」※2
国立循環胃病研究センター「周産期心筋症(https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/peripartum-cardiomyopathy/)」※3
たわらクリニック「【妊娠に伴ううつ病とは?原因や対処法について】(https://www.tawara-clinic.com/blog/013/)」※4
小阪産病院「4.産後に起こりやすい病気(https://www.kosaka.or.jp/hellobaby/0202/0202-4.html)」※5

多産DVの対処法

多産DVの対象法は主に以下の5つです。

  • 夫と話し合う
  • 夫に気付かれないように避妊する
  • 第三者に相談する
  • 別居する
  • 離婚する

以下で詳しく解説します。

夫と話し合う

子供を持つことに対する自分の意思を夫に話したことがないのであれば、まず自分の気持ちを伝えてみましょう。妻が妊娠出産や避妊しない性行為を嫌がっていることに夫が気づいていない可能性があります。

夫が妻の気持ちに気づいていなかっただけであれば、話し合いによって改善する可能性もあります。

夫に気付かれないように避妊する

夫に気付かれないように避妊する

夫と話し合っても状況が改善されない、夫が避妊してくれないという場合は自分自身で避妊するというのも手段の1つです。

女性が自分で避妊する方法には以下のものがあります。

  • ピル(経口避妊薬・OC)
  • IUD(Intrauterine deviceの略。子宮内避妊用具)
  • IUS(Intrauterine System略。子宮内黄体ホルモン放出システム)
  • 不妊手術
  • 緊急避妊薬(アフターモーニングピル)

なお、それぞれの方法にはデメリットも多く、副作用が生じるものもあります。必ず医師と相談のうえ、自分の状況をよく考えて選択しましょう。

専門家に相談する

多産DVはDVの一種です。DVの被害者は「これが普通」「私が我慢すれば済む」などと考え、1人で抱え込んだり、我慢を続けてしまったりすることがあります。

我慢を続けると精神的に疲弊してしまい、正常な判断ができなくなります。1人で抱え込まず、専門家に相談することが重要です。

適切な相談先については「多産DVの相談先」にて後述します。

別居する

夫からの暴言や暴力がある場合、性行為の強要が激しい場合は身の安全を守るためにも別居を検討しましょう。

このとき、家族や親族など周りの人を頼りましょう。頼れる人がいない場合はシェルターで保護してもらうことも検討しましょう。

離婚する

夫と話し合っても状況が改善しない場合や話し合いが進まない場合、多産DVに耐えられないという場合は離婚も検討しましょう。

ただし、多産DVの場合は以下のことに留意しなければなりません。

  • たくさんの子供を1人で育てられるか
  • 子育てと仕事を両立できるか
  • 離婚後に頼れる人はいるか
  • 自分の健康状態 など

家事や育児に追われていても、自分の自由な時間が取れなくても、夫からの暴力や暴言、性行為の強要などがないのであれば、離婚しないほうが良いケースもあります。

子供が多い分、離婚によって生じる負担も多くなります。慎重に考えましょう。

多産DVの夫と離婚する際の注意点

多産DVの夫と離婚する際の注意点

多産DVの夫と離婚する際の注意点を解説します。

証拠を確保する

多産DV夫は離婚に応じないケースが多いです。

DVやモラハラを認めてもらうためには証拠が必要です。多産DVを理由に離婚する場合は証拠を集めておきましょう。具体的には以下のようなものを集めておきましょう。

  • 暴力や暴言の録画・録音
  • 医師の診断書
  • 性行為の強要や避妊を拒否する内容の音声やメール、LINE など

状況にもよりますが、一回分の証拠ではDVがあったと認められない可能性があります。日常的に被害を受けている場合は複数分の証拠を確保することをおすすめします。

直接の話し合いを避ける

夫に直接離婚を切り出すと何をするかわからないというケースもあります。また、女性にとっても多産DVの夫と直接話をするのは心理的にハードルが高いケースが多いです。

直接の話し合いが難しい場合、身の安全を確保したうえで、メールや手紙など間接的に離婚の話を進めましょう。話し合いを行う際は弁護士を間に入れて話し合いを行うことをおすすめします。

慰謝料請求が認められる可能性がある

慰謝料とは不法行為によって精神的苦痛を受けた際に支払われる損害賠償金です。そのため、DVを理由に離婚する場合は慰謝料請求が認められる可能性があります。

DVの場合の慰謝料相場は数十万円〜300万円程度となります。

慰謝料相場に幅がありますが、主に以下の要素で金額が決まります。

  • DVの回数・期間
  • DVによるケガの程度
  • 婚姻期間 など

多産DVの相談先

多産DVを疑った場合は専門家に相談しましょう。どのような相談をしたいかによって相談先が異なります。

  • 産婦人科:自分が多産DVかどうかわからない場合
  • DV相談ナビ、DV相談+:電話でDVの相談をしたい場合
  • 配偶者暴力相談支援センター:DVから逃れて保護を希望する場合
  • 警察:暴力を受けている場合
  • 弁護士:離婚・別居を希望する場合

産婦人科:多産DVかどうかわからない場合

産婦人科:多産DVかどうかわからない場合

自分の状況が多産DVかどうかわからないという場合、産婦人科に相談しましょう。

産婦人科医は妊娠出産や母体の健康に関する専門知識が豊富ですし、かかりつけ医であれば、あなたの体についても熟知しているはずです。

現在、産婦人科に通院している場合は診察の際に相談できます。

DV相談ナビ、DV相談+:電話で相談したい場合

DV相談ナビは、日本全国共通の電話番号(#8008)で、発信地から近い相談窓口に自動転送されるナビサービスです。

DV相談+は、24時間受付可の専門の相談員による電話相談です。 電話相談のほか、チャットやメールによる相談も受け付けています。

参考: DV相談ナビ:#8008(はれれば)https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/index.html ※6
DV相談+:0120-279-889(つなぐ はやく)https://soudanplus.jp/ ※7

配偶者暴力相談支援センター:保護を希望する場合

配偶者暴力支援センターは配偶者からの暴力の防止や被害者の保護を図るために各自治体に設置された相談窓口です。配偶者暴力支援センターの主な業務は以下となります。

  • 専門の担当者によるカウンセリング
  • 相談や相談機関の紹介
  • 被害者及び同伴者の安全確保・一時保護
  • 保護命令についての情報提供

参考:男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センター一覧(全国) https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/pdf/center.pdf」※8

警察:暴力を受けている場合

夫から暴力を受けており、身の危険を感じている場合は警察に相談しましょう。身の危険を感じるほどの暴力は立派な犯罪です。自分や子供の身を守ることを最優先に考えましょう。

DVについて、以前は「家庭内の問題」として見過ごされるケースが多くありましたが、最近は状況に応じて「事件」として扱ってくれるケースもあります。

弁護士:離婚を希望する場合

弁護士:離婚を希望する場合

多産DVを理由に離婚や別居を考えている場合は弁護士に相談しましょう。DVを受けている場合は慰謝料請求が可能なケースもあります。

多産DVを弁護士に依頼するメリットは以下です。

  • 保護命令やシェルターなど現状に応じたアドバイスがもらえる
  • 婚姻費用や養育費、慰謝料などの離婚条件や請求方法を教えてもらえる
  • 間に入って配偶者と交渉してもらえる
  • 離婚手続きえを代行してもらえる

まとめ

多産DVについて解説しました。

多産DVは女性の心を身体に大きな負担を与える行為です。一方、多産DVは自分では気づきにくく、誰かに相談しにくい問題でもあります。

多産DVを放置すると身体的負担が大きくなるだけでなく、離婚し難くなる、経済的・時間的な自由を失う、といったリスクがあります。

多産DVを疑ったら、自分や子供を守るためにも早めに専門家に相談しましょう。

離婚を選択する際は弁護士に間に入れることをおすすめします。 当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

※1 LikeU「子育てに必要な費用ってどのくらい?0歳~22歳までの合計金額とは」」
※2 日本産婦人科医会「妊産婦死亡報告事業 2019
※3 国立循環胃病研究センター「周産期心筋症
※4 たわらクリニック「【妊娠に伴ううつ病とは?原因や対処法について】
※5 小阪産病院「4.産後に起こりやすい病気
※6 DV相談ナビ:#8008(はれれば)https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/index.html
※7 DV相談+:0120-279-889(つなぐ はやく)https://soudanplus.jp/
※8 男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センター一覧(全国)

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