ガスライティングと離婚|モラハラの罠から抜け出す方法

配偶者の言動を受けて「私が悪いのかも」と感じたり、自分の記憶や感情が正しくないかもしれないと思ったりすることはありませんか?
もしかすると、それはガスライティングの被害に遭っているのかもしれません。
ガスライティングとは心理的虐待の一種で、誤った情報や些細な嫌がらせで相手を精神的に支配する行為のことをいいます。
ガスライティングの被害に遭い続けると正常な判断ができなくなるため、離婚や別居をしたくてもできない状態に陥ることがあります。
この記事では、ガスライティングの手口やガスライティングの被害から抜け出し、自分らしい人生を取り戻すための具体的な方法を解説します。
- 目次
ガスライティングとは
ガスライティングは心理的虐待のひとつです。
被害者にちょっとした嫌がらせ行為をしたり、わざと誤った情報を伝えたりして、被害者が自分の認識や記憶を疑うように仕向ける行為です。
ガスライティングの言葉の由来は1930年代の英国の戯曲「Gaslight(邦題「ガス燈」)」です。
主人公の女性の財産を狙う夫の策略により、女性が自分を信じられなくなっていくというものです。
女性はガス燈が暗くなっていることに気づきますが、それを夫は「気のせいだ」と否定するのが、手口のひとつとして描かれています。
この作品にちなみ、実際にあった出来事を「気のせいだ」と否定し続けることで、「正気を失った」と相手に思い込ませるようにマインドコントロールする言動をガスライティングと呼ぶようになりました。
一方、ガスライティングと似たような言葉にモラハラがあります。
モラハラは人格否定や暴言、無視といった言葉や態度による精神的な嫌がらせです。
広義ではガスライティングもモラハラの一種といえるでしょう。
しかし、ガスライティングは手口が巧妙なため、被害者が「自分が悪いのかも」と思い込まされています。
そのため、被害を自覚しにくいことや、客観的に見て被害がわかりにくいという違いがあります。
「おかしいのは私?」それ、ガスライティングの仕業です
ガスライティングの加害者は、あなたの現実認識を歪ませることにより精神的に支配しようとします。
その手口は非常に巧妙で、以下のような特徴があります。
- あなたの記憶を否定する
- あなたの感情を嘲笑・軽視する
- 侮辱や暴言を「冗談」とごまかす
- 周囲にあなたがおかしいと吹き込む
- 加害者に依存するように誘導する
それぞれについて下記で解説します。
あなたの記憶を否定する
実際に悪口や嘘を言ったにも関わらず、「そんなことは言ってない」「あなたの勘違いだ」と、あなたが覚えている事実や会話を完全に否定します。
これにより、あなたが被害妄想であるかのように思わせ、自分の記憶力や判断力に自信を失っていきます。
あなたの感情を嘲笑・軽視する
あなたにとって深刻な問題であり、悲しみや怒りを感じても、「大げさだ」「君はすぐ泣く」「これぐらい普通だ」「そんなことで怒るなんてどうかしている」などと馬鹿にしたり、大したことではないように思い込ませようとしたります。
また、あなたが大切に思っているものや価値観について、「くだらない」「気持ち悪い」などと否定したります。
これにより、あなたは自分が神経質で価値観がおかしいのだと思わせられ、自信を喪失させられます。
些細な嫌がらせを繰り返す
「自分では置いた記憶がないのに、なぜか冷蔵庫に鍵が入っている」
「触った記憶がないのに、鏡に傷がついている」
このように、物の置き場所が変わった、無くなった、壊れたといった、本人しか気づかないような迷惑行為を繰り返すのもガスライティングの手口です。
一つひとつの行為は些細なものですが、ちょっとした違和感やトラブルが続くことで、被害者はストレスや不安が増していきます。
その一方、あまりに些細な問題であることから、周りに相談できず、被害者がひとりで悩みを抱え込んでしまう傾向があります。
加害者に依存するように誘導する
被害者が加害者に依存するように誘導するのもガスライティングの手口のひとつです。
本人の些細な失敗を大袈裟に非難したうえで「俺がいないとお前はまともに生活できない」などといい、加害者に精神的に依存するように支配しようとするのです。
ガスライティングが離婚の決断を鈍らせる理由
ガスライティングの被害に遭っているものの、なかなか離婚に踏み切れないのには、下記のような心理的な要因が深く関わっています。
- 自己肯定感の低下
- 判断能力の低下
- 加害者への依存
- 「愛されている」という錯覚
- 世間体が気になる
それぞれについて下記で解説します。
自己肯定感の低下
ガスライティングにより、「自分はダメな人間だ」という暗示かかりることで、自己肯定感が著しく低下します。
このような相手とは離れたほうが精神的に開放されるはずです。
しかし、自己肯定感が著しく低下しているため、離婚後にひとりで生活を送ることなど想像できなくなってしまいます。
判断能力の低下
違和感を覚えていても、「おかしい」「勘違いだ」と言われ続けることで、何が正しいのか、何が間違っているのかわからなくなってしまうことがあります。
このような状態が長く続くことで、精神的に疲弊してしまい、重要な決断をすることが難しくなってしまいます。
加害者への依存
加害者に依存するように誘導され続けた結果、「この人がいなければ生きていけない」という錯覚に陥ることがあります。
その結果、離婚や別居という選択肢を考えることができなくなってしまいます。
「愛されている」という錯覚
加害者は常にあなたを否定したり、軽視したりするわけではありません。
たまに見せる加害者の優しさに、被害者は「愛されている」「私が変わればふたりの関係も良くなる」と期待し、関係を断ち切る機会を逃してしまうことがあります。
世間体が気になる
世間体が気になるから離婚の決断ができないというケースもあります。
離婚を「人生の失敗」のように感じてしまい、周囲からどう見られるかが気になってしまうのです。
特に子供がいるケースや近所づきあいが強いというケースにおいて世間体を気にする方が多いようです。
ガスライティングから抜け出すためのステップ
「これってガスライティング?」
「私はモラハラの被害者かもしれない」
そう気づけたときが新しい人生への第一歩です。ガスライティングから抜け出すために行動しましょう。
具体的な行動ステップは次のとおりです。
- 「おかしい」という直感を大切にする
- 自分を責めない
- 嫌がらせに反応しない
- 事実を記録し、証拠を集める
- 専門家に相談する
- 別居の準備をする
それぞれについて下記で解説します。
「おかしい」という直感を大切にする
あなたが「おかしい」と感じたその直感を信じることが最も重要です。 大丈夫、あなたの感覚は間違っていません。
どうしても自信が持てないのであれば、パートナー以外であなたのことを良く知る、信頼できる人に聞いてみても良いでしょう。
信頼できる人がいない、相談できる人がいないという場合は以下の項目を自分でチェックしてみましょう。
- いつも自分が間違っているように感じる
- 絶望感や焦燥感が続く
- 常に謝りたい衝動に駆られる
- 自分は何もできない存在だと思っている
- 「こうすればよかった」と自分を責めることが増えた
- 自分が神経質すぎるのではないかと感じる
- 何かわからないけれど何かがおかしいという感覚が続く
- 誰かに思考や意思を支配されているように感じる
当てはまる数が多ければ多いほど、ガスライティングの被害に遭っている可能性が高いと言えます
自分を責めない
ガスライティングは嫌がらせ行為です。
あなたが目にしている事実や加害者から受けている行為の原因は加害者側にあります。あなたに非があるわけではありません。
この事実をしっかりと心に刻んでください。
嫌がらせに反応しない
自分が被害者であることを自覚したら、配偶者から受ける被害を減らしましょう。
加害者はガスライティングによって被害者が動揺したり、苦しんだりしている様子を見ることが喜びであり、快感なのです。
そのような様子を見せれば、加害者は「もっと見たい」と考え、行動がエスカレートしたり、弱みにつけこんだりします。
反対に、嫌がらせに対して何の反応も示さなければ、加害者は手ごたえを覚えず、嫌がらせをやめるかもしれません。
事実を記録し、証拠を集める
嫌がらせに対して無反応を貫くと同時に嫌がらせの証拠を集めましょう。 証拠の例としては以下のようなものがあります。
- 加害者が嫌がらせを行っている様子を録画・録音したもの
- ガスライティングで言われたことや出来事をまとめたメモや日記
- 配偶者(加害者)から送られてきたメールやLINEのトーク履歴 など
専門家に相談する
ガスライティングの被害に遭っている間はいわば洗脳されている状態であり、正常な判断ができない場合があります。
前述のとおり、ガスライティングではまず「おかしい」という自分の直感を大切にし、自分を責めないことが大切です。
しかし、洗脳されていると「おかしい」と思えず、加害者の言い分が正しいと思い込み、そのとおりに行動してしまうことがあります。
客観的な意見をもらうためにも第三者である専門家に相談することが大切です。
- 医師(精神科・心療内科)
- カウンセラー
- 弁護士
- DV相談ナビ(#8008 はれれば)https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/dv_navi/index.html ※1
- DV相談プラス(0120-279 889 つなぐはやく)(https://soudanplus.jp/) ※2
- 配偶者暴力相談支援センター(https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/pdf/center.pdf) ※3
- 女性相談支援センター(#8778 はなそうなやみ)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40452.html) ※4
なお、ガスライティングの被害を長期間受け続けると、正常な判断ができなくなります。
少しでも「おかしい」と思ったらすぐに相談しましょう。証拠を集めるのはそのあとでも大丈夫です。
上記でご紹介した相談先や土日祝や夜間に相談できる窓口については下記の記事を参考にしてください。
参考≫≫
24時間対応も!土日祝や夜間に離婚の相談できる弁護士や無料相談窓口
カウンセラーの選び方については下記記事をご参考ください。
離婚カウンセラーとは|選び方やカウンセリングの流れ・注意点を解説!
別居の準備をする
加害者と同じ空間にいると、嫌がらせ行為がエスカレートし、被害が拡大する恐れがあります。
正常な判断をするためにも別居して加害者と距離をとることは非常に重要です。
ただし、通常、加害者は自分の非を認めないため、別居や離婚にも応じない可能性があります。
また、別居の準備をしていることや、別居先が加害者に発覚すれば、連れ戻されたり、嫌がらせ行為がエスカレートしたりする恐れがあります。
そのため、相手に気づかれないよう、別居の準備をすることが重要です。
準備をする際は別居後の生活や身の安全を確保するため、以下の点を押さえておきましょう。
押さえておくべきこと | 具体的な内容 |
---|---|
別居先が加害者に知られないようにする | 住民票や戸籍の閲覧を制限するよう支援措置を自治体に依頼する |
子供がいる場合は子供の生活に関する手続きを行う | 児童扶養手続きや学校・保育園・幼稚園に関わる手続き、戸籍や氏の変更 |
別居後の生活費の確保 | 一定程度の生活費を賄える程度のお金を貯める 別居後の生活費を稼げる仕事を探す |
加害者に別居準備を気づかれないようにすることはもちろん、仕事を探していることにも気づかれないようにしましょう。
仕事を探していることに気づかれると、「働いてみたいだけ」「お金がほしいだけ」と伝えても、加害者は「お前を雇ってくれるところなどない」「お前にできるわけがない」などといって、仕事探しを妨害してくる恐れがあります。
ガスライティングを理由に離婚する際は弁護士へ
ガスライティングを理由に離婚を進める際は、自分ひとりで手続きを進めるのではなく、法律の専門家である弁護士に相談し、依頼をしましょう。
ガスライティングによる離婚を弁護士に依頼するメリットには以下のようなものがあります。
- 相手と顔を合わせずに離婚手続きを進められる
- 不利益を回避しながら離婚手続きを進められる
- 精神的DVを理由とした慰謝料請求が認められやすくなる
それぞれについて下記で解説します。
相手と顔を合わせずに離婚手続きを進められる
離婚をするためには当事者同士の話し合いが必要です。しかし、ガスライティングの被害者は加害者から洗脳されている可能性があります。
そもそも、ガスライティングを行うような人物との交渉は難しいことが多いでしょう。
話し合いに応じたとしても、離婚が成立しない、あるいは成立したとしても不利な条件で離婚を成立させられる恐れがあります。
弁護士に依頼すれば、代理人として加害者と交渉するため、加害者と顔を合わすことなく、不利益を回避しながら離婚手続きを進めることができます。
また、協議離婚が成立しなかった場合は調停や裁判に進むことになります。
調停や裁判は裁判所を使った手続きのため、書類の作成や法的手続きなど複雑なプロセスがあります。
弁護士に依頼すれば、調停や裁判についても代行してもらえるため、時間的にも精神的にも負担を軽減できます。
不利益を回避しながら離婚手続きを進められる
離婚では財産分与や親権、養育費など様々な項目を取り決める必要があります。
例えば、財産分与であれば、相手方の財産を正確に把握する必要があります。
しかし、当事者同士の話し合いだと「そんな財産は持っていない」などと言いくるめられてしまう恐れがあります。
弁護士なら弁護士会照会や調査嘱託などを使って、相手方の財産を調査することができるため、不利益を回避しやすくなります。
住宅ローンが残っている不動産や車、有価証券など、現金以外の財産も適切に対応してもらえるため、安心です。
親権や養育費についても、法的な観点で交渉できるため、有利に話し合いを進めることができます。
精神的DVを理由とした慰謝料請求が認められやすくなる
ガスライティングによって、精神的な苦痛を負った場合は慰謝料請求が認められる可能性があります。
このとき、ガスライティングによって精神的苦痛を負ったことを立証する証拠が必要になります。
弁護士なら、法的な観点でどのような証拠を集めれば良いかアドバイスしてくれます。
有効な証拠を十分に集める意味でも、弁護士への相談はできるだけ早く、できれば離婚を切り出す前に行うことをおすすめします。
こうすることで、弁護士のアドバイスを受けながら証拠を集めることができるため、慰謝料請求を有利に進めやすくなります。
また、弁護士に依頼すれば慰謝料請求の交渉も任せられるため、精神的な負担の軽減にもつながります。
まとめ
ガスライティングの被害は自分では気づきにくい傾向があります。
少しでも「おかしい」と感じたらこの記事にご紹介した専門家に相談し、客観的なアドバイスをもらいましょう。
あなたがガスライティングによる苦しみから解放され、自分らしく輝くためにも、どうか一歩踏み出してください。
「加害者と距離をとりたい」「離婚したい」という場合はひとりで悩まず弁護士にご相談ください。
※1 DV相談ナビ (#8008 はれれば)
※2 DV相談プラス(0120-279 889 つなぐはやく)
※3 配偶者暴力相談支援センター
※4 女性相談支援センター (#8778 はなそうなやみ)
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