離婚調停の流れとは?スムーズに進めるために実際の流れを徹底解説!
協議離婚を目指して話し合いをした結果、お互いの合意に達しなかった場合には、家庭裁判所で離婚調停手続を行うことになります。
では、この離婚調停手続はどのように進行していくのでしょうか。
詳細な流れに沿って解説していきます。
- 目次
離婚調停の申立てでまずは押さえておくべきこと
話し合いで離婚が決まらなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることで、第三者である裁判所を挟んで、離婚条件を決めていくこととなります。
まずは、この離婚調停の申し立てで、覚えておくべき基礎知識について解説します。離婚は、いずれの夫婦に対しても与えられている権利ですが、その離婚理由や離婚条件は法律に準じていることが前提です。
適切に、スムーズに離婚を進めたい場合は、家庭裁判所へ離婚調停の申し立てを行いましょう。
離婚調停手続きとは
離婚調停手続きは、家庭裁判所に離婚の調停を申請する手続きです。夫婦間で話し合って離婚することを「協議離婚」と呼ぶのに対し、当事者同士が裁判所で離婚に向けて話し合いをすすめて離婚を成立させることを「調停離婚」と呼びます。
日本では、基本的に家庭の事件は、家庭内で解決することが原則となっています。これ「調停前置主義」と呼ばれ、離婚をしたい・離婚条件に納得がいかないという場合でも、いきなり裁判を起こすことはできないことになっています。
まずは話し合い、つまり調停を通して解決を図らなければならないのです。
この調停前置主義にのっとり、「当事者間の話し合いで決着がつかなかった場合に裁判所が話し合いをサポートすること」が離婚調停であり、裁判を考えていても離婚の成立には欠かせないステップとなっています。
必要な書類
家庭裁判所の調停手続きを行う場合は、家庭裁判所に提出する以下の書類を用意する必要があります。
- 申立書
- 3か月以内に発行された夫婦の戸籍謄本
- 事情説明書
- 子供に関する事情説明書(未成年の子供がいる場合)
- 年金分割のための情報通知書
申立書は、全国共通です。「各家庭裁判所でもらう」「裁判所のホームページでダウンロードする」いずれかの方法で入手しましょう。
申立書を作成する時は、裁判所への提出する原本の他に、相手に送るコピーも提出します。
事情説明書などの付属書類は、各家庭裁判所により書式が異なるため、提出する裁判所に行くか、ダウンロードを行うようにします。
年金分割のための情報通知書は、家庭裁判所ではなく、年金事務所に赴くか、日本年金機構のホームページからダウンロードしましょう。
調停費用
調停を申し立てる際は、以下の費用も用意する必要があります。
- 申立手数料として収入印紙1,200円分
- 連絡用の郵便切手
連絡用の郵便切手は、各家庭裁判所によって異なります。
金額の確認は、家庭裁判所の予納郵便切手一覧表から確認しておきましょう。
東京家庭裁判所の場合は966円(100円切手2枚・82円切手8枚・10円切手10枚・5円切手2枚)です。
さらに、調停の段階で弁護士に依頼する場合は、弁護士費用も必要です。弁護士へは、裁判の際に依頼するというイメージがありますが、正しい法的知識がある方が有利な離婚を行うことができます。
申立て
離婚調停の申し立ては、家庭裁判所へ持ち込むか郵便で送ることで行うことができます。
申立に関して不安がある場合は、裁判所で申立を行うのがおすすめです。裁判所の受付窓口では書記官に手続きに関する相談ができたり、指導を受けたりすることができます。
提出書類に関するアドバイスを受ければ、その場で追加したい修正したりすることも可能です。
第1回目の離婚調停の流れ
続いては、離婚調停の流れを詳しく解説していきます。第1回目の離婚調停は、初めてのことで緊張したり、不安に思うことも多いでしょう。
あらかじめ、離婚調停の流れを知っておくことで、落ち着いて裁判所での調停に出席することができます。
各段階における注意点も合わせてお伝えするので、離婚調停を考えている方・離婚調停を控えている方は参考にしてください。
調停期日の決定
申し立てを行うと、事件番号が付けられ、担当裁判官と調停委員が決められます。
調停委員は、調停出の話し合いにおいて夫婦の間に入って聞き取りを行ったり、相手への要望を伝える役割を持っています。男女1ずつ計2名が決められ、実質的な調停を行います。
調停委員は、不動産鑑定士や弁護士などの専門職の場合もあれば、弁護士の妻や専門職の妻など一般の有識者から選ばれています。
法律の専門職出ない場合もありますが、調停委員の研修もあるため、法律的知識も有している人達です。
その後、通常であれば申し立てから1カ月程度あとに第1回調停期日として決定されます。夏季・冬季休暇など裁判所の都合によっては、1カ月以上あとに第1回目が開かれる場合もあります。
裁判所によっては、申立人の予定を考慮して期日を決めてくれます。相手の予定は、通常考慮されずに期日が決定します。
期日通知書による通知
期日までが正式に決まると、申立人・相手方に事件番号と期日の日時が通知書によって通知されます。この通知書は、呼び出し状とも呼ばれ、申立書の提出から1~2週間後に普通郵便で送られてきます。
弁護士を代理人としている場合は、弁護士に裁判所から電話で連絡がいきます。
調停期日までに追加提出が必要な資料などがある場合に、通知書と一緒に連絡文が同封されていることがあります。指示に従って書類や資料を用意し、確実に提出しましょう。
期日に出席できない場合や指定の時間に遅れる場合は、分かり次第裁判所に電話で相談しましょう。
待合室で待機
調停期日の当日は、以下のような資料を準備して持参しましょう。
- 調停申込書や事情説明書など提出書類の写し
- 期日通知書
- 身分証明書
- 認印
調停申込書や事情説明書など提出書類に内容と、自分の主張に違いが出ないよう再度読み返して、詳しく説明できるようにしておきましょう。メモなども持ち込むことができるため、緊張して思った話ができないように、意見をまとめておくのがおすすめです。
裁判所での書類作成や提出では、印鑑が必要なものがほとんどなので、持参しておくとスムーズに手続きを進められます。
裁判所についたら、書記官室で事件番号・申立人/相手方であること・氏名を伝えて受付を済ましましょう。受付が終わると指示された待合室で調停が開始されるのを待ちましょう。
申立人と相手方の待合室は分けられていますが、受付では顔を合わせる可能性があります。
家庭内暴力など特別な事情で、相手方会いたくない場合は、あらかじめ裁判所に伝えて配慮してもらう必要があります。
待合室で待っていると、事件番号や受付時に渡される番号札の番号で呼ばれることが一般的です。
最近は、プライバシーの観点から氏名で呼ばない裁判所も多いため、どのように呼び出されるのかしっかりと受付で確認しておきましょう。
申立人から先に呼び出される
調停では、申立人と相手方が同時に呼び出されることはなく、最初に申立人から経緯や主張の聞き取りが行われます。
ただし、第1回目に限って、相手と会いたくない特別な理由がない限り申立人・相手方が同席し、裁判所による調停の手続きに関する説明を聞きます。
手続きの説明が終われば、相手方は退出し、申立人は調停委員との話し合いを行います。
申立人の主張についての話し合いは、調停委員2人と裁判官1人と、30分程度の話し合いが行われます。
この間に自分の主張をしっかりと伝えられるよう準備しておきましょう。
その次に相手方が呼び出される
申立人との話し合いが終われば、相手方からの聴取が行われます。申立人の話し合いと同様に、30分程度の間に調停委員2人と裁判官1人と話し合いが行われます。
相手方の主張の他、申立人から聞き取った主張を調停委員が相手方に伝え、それに対する反論についても話し合われます。
相手方の主張を聞き終わったら、相手方は待合室に返され、再度申立人が呼ばれ、相手方の主張や反論を伝えられ、それに対する意見を再度調停員と話し合います。
申立人の2回目の聴取が終われば、相手方が再度呼ばれます。このように調停では申立人・相手方の聴取がそれぞれ30分ずつ計2回行われます。
そのため、話し合いが行われる時間は申立人・相手方併せて最低でも2時間ということになります。
相手方の聴取が行われている間、申立人は、待合室で待機しています。相手方の聞き取りが終われば、調停員と裁判官が打ち合わせもあるため、控室での待ち時間は30分~1時間程度と考えておきましょう。
第1回の調停期日が終了
夫婦双方の主張や意見をまとめ終わったところで、夫婦が離婚や条件に同意すれば、離婚届けを提出し、離婚が成立します。
しかし、合意に至らない、若しくは時間が足らなくなった場合には、次回の調停期日に繰り越されます。次回以降の調停期日を決めるため、スケジュール調は持参しておきましょう。
第2回目の期日は、申立人・相手方はもちろん代理弁護士・調停委員・裁判官の都合はもちろん、裁判所の調停室が空いている日を考慮して、調整しながら決定されます。
次回の調停期日の決め方は、申立人・相手方の予定を別々に聞いて調整する裁判所もあれば、申立人・相手方が同席の元調整される場合もあります。
この場合も、特別な事情がある際はあらかじめ裁判所にどのように期日を決めるのか、相談しておくとよいでしょう。
第2回目の離婚調停の流れ
第1回目の調停で決められた第2回目の離婚調停の流れについて、解説していきます。
夫婦間で話し合いがつかなかった場合に、離婚調停が行われるため、1回の調停で離婚が成立しないことも珍しくありません。
第1回目に相手方が調停を欠席した場合でも、そのまま調停が不成立となることは少なく、再度調停期日が設けられるのが一般的です。
第1回目から第2回目までの期間
先述の通り、第2回目の調停は、各方面の予定をすり合わせる必要があることもあり、通常は月に1度のペースで調停が行われます。
児童虐待や親権問題など子供に関するトラブルが発生している場合は、家庭裁判所の調査官が、子供の気持ちや生活環境を調査するため、次回の調停が2カ月以上の期間が開く場合があります。
話し合いが平行線をたどる調停も多く、何度も話し合いを重ねる必要があるため、離婚の成立までは半年~1年を見ておきましょう。
場合によっては、1年以上かかる場合もあることにも留意しておかなければなりません。
長期間の調停は申立人・相手方双方の負担や、子供がいる場合には子供の精神的な負担が大きくなります。
激しく揉めることが予想される、早期に解決したい場合は、弁護士を立てておくようにしましょう。
スムーズに解決するために、訴訟を好む弁護士や打ち合わせをしっかり行ってくれない弁護士は避けるようにします。離婚調停に経験が豊富で、こちらの事情をしっかり考慮してくれる弁護士をしっかり選ぶことが大切です。
第2回目の流れ
第1回目の調停と2回目の調停は、大まかな流れは変わりません。裁判所についたら受付をして、待合室で待機、調停委員に呼びたされたら調停室に入ります。
第1回目にあった、調停手続きに関する説明がないため、2回目以降の調停の方が短時間で調停まで進みます。
第1回目と同様、申立人から呼ばれ聴取が行われ、続いて相手方の聴取が行われます。2回目以降もそれぞれ2回ずつ主張・反論が繰り返されることとなります。
第2回目でも、合意に至らなかった場合は、次回の調停日の調整に入ります。
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調停が成立した場合、しなかった場合
最後に、調停の成立・不成立の場合に、どのように手続きがなされるのか・何をすべきなのかについて紹介します。
- 調停が成立した場合
- 何度か調停を重ねた結果、申立人・相手方双方の合意が得られれば、調停が成立し、離婚するための準備に入ることとなります。
- お互いの合意が得られた期日には、家庭裁判の裁判官による、合意内容の読み上げ・確認が行われます。この合意内容に双方が改めて合意の意思を示すことで、調停調書が作成されます。
調停調書とは合意した内容の詳細を記した書類で、裁判の判例と同様に調書に記載された内容を守る義務を与えることができます。義務が履行されなかった場合には、強制執行の手続きも調整調書を使って行えるため、非常に通常良い効力を有しています。
そのため、裁判官も調書に記載する内容は慎重に、申立人・相手方に確認を行います。自分の主張と異なることが記載されないよう、しっかりと確認しましょう。
調停調書は、調停成立日から1週間程度で送付されます。離婚届と併せて調停調書の提出が必要となるため、離婚届けを正式に提出するまでは大切に保管してください。
調停離婚の場合は、調停が成立した日から10日以内に離婚届を提出しなければならないことが定められています。
調停調書が送られてきたら、すぐにでも離婚届が提出できるよう、離婚届をはじめとする離婚に必要な書類は早めに揃えておきましょう。
離婚届と調停調書を提出し、受理された時点で離婚が成立します。
- 調停が不成立だった場合
- 調停は、裁判と違って離婚や条件について争っているわけではなく、あくまでも話し合いによる解決を目指すものです。そのため、夫婦のどちらかが納得できない・合意できない内容がある場合には、不成立として調停手続きは終了します。
調停が不正立だった場合の離婚成立は、2通りあります。
1つは、家庭裁判所の「調停に代わる審判」で、当事者の合意なしに裁判所が離婚を認める制度です。
しかし、この審判は当事者が異議申し立てを行うことで効力を失うため、実際には審判の活用はなされません。
審判が下されたが、自分の主張が認められていない・不利な離婚条件が決まっていた場合は、2週間以内に異議を申し立てましょう。
もう1つの方法が、離婚裁判を提訴し、判決による離婚成立を目指す方法です。裁判ともなると弁護士の法的知識や経験値が勝訴への大きな要素となります。
相手が弁護士を立てている場合、こちらに法的知識がある専門家がいないと、勝てる裁判も負けてしまうリスクがあります。
弁護士の能力次第で、希望の条件で離婚できる可能性が高まるのです。
まとめ
今回は、離婚調停の流れについて、詳しく解説してきました。話し合いによる協議離婚が難しかった場合には、裁判所に仲介に入ってもらい、話し合いを重ねることで調停離婚の成立を目指すことができます。
弁護士がいなくても離婚調停は進めることはできます。しかし、弁護士に代理人を頼むことで、自分に有利な条件で調停を進めることができるだけでなく、調停期間を短くすることができます。
親権を取りたい・慰謝料を増額させたいなど強い希望がある場合にも、弁護士への依頼がおすすめです。
離婚に向けて相手と話し合っているが決着がつかないことで悩んでいる方は、家庭裁判への調停の申し立てを検討してみてはいかがでしょうか。
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