離婚裁判の費用はどちらが払う?相手に負担させることはできる?
夫(妻)に離婚を切り出したものの、話し合いがまとまらない…
離婚の話し合いがまとまらない場合、最終的に裁判に進むことになりますが、このときの裁判費用はどちらが払うものなのでしょうか。
この記事では、離婚裁判で必要な費用やどちらが費用を負担するのかについて解説します。離婚裁判をお考えの方、裁判費用が心配な方は最後までご覧ください。
- 目次
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裁判費用を負担するのは誰?
離婚裁判を起こすとなると、どちらが裁判費用を負担するのか気になるでしょう。
離婚裁判で発生する費用は以下に大別されます。
- 訴訟費用:裁判を起こす際に生じる費用。手数料など
- 弁護士費用・弁護士に依頼した場合に生じる費用
それぞれ、どちらが負担するのか見ていきます。
訴訟費用の負担は負けた側が重くなる
訴訟費用は裁判を起こす際に生じる費用です。離婚裁判の場合、手数料(収入印紙で納付)と郵便切手などが必要になります。
訴訟費用は、訴訟を起こす段階では原告(訴訟を起こした側)が負担しますが、判決が出た際、訴訟費用についても負担割合が決められ、通常は敗訴した側の負担が重くなります。
原告の全面勝訴の場合に限り、負けた側の被告(訴訟を起こされた側)に対して訴訟費用を全額請求できますが、和解が成立し、「訴訟費用は各自の負担とする」と命じられるケースもあり、状況によって負担割合は変わります。
弁護士費用は自己負担
離婚裁判で弁護士に依頼した場合の費用は、裁判の勝ち負けに関係なく、原則自己負担となります。詳細について次項で説明していきます。
裁判で弁護士費用を請求することはできる?
弁護士費用は自己負担が原則ですが、例外はあるのでしょうか。
弁護士費用は基本的に相手方には請求できない
前述のとおり、弁護士費用は、離婚裁判の判決結果が勝っても負けても、各自の負担となり、勝った側が負けた側へ請求できるわけではないというのが基本になります。
不法行為による損害賠償を請求する場合は請求可能なケースも
一方、「不貞行為によって相手方に慰謝料を求める」など、不法行為に基づく損害賠償請求を裁判で行う場合は、相手方に弁護士費用を請求できるケースがあります。
ただし、実際に弁護士に依頼してかかった費用全額を請求できるわけではなく、判決で認められた損害賠償額のおよそ10%程度となります。
離婚裁判にかかる費用は?
離婚訴訟にかかる費用の内訳や金額について見ていきます。
裁判所に支払う費用(訴訟費用)
離婚裁判で裁判所に支払う費用としては下記のようなものがあります。
離婚と同時に請求する内容、慰謝料の請求額などにより幅がありますが、20,000円~が目安になります。内訳を見ていきましょう。
手数料(収入印紙で納付)
離婚裁判で請求する内容により、手数料の金額が異なります。離婚のみなら13,000円ですが、財産分与や子供の養育費、慰謝料と、請求する項目数や請求額によって手数料も高くなります。
- 離婚のみ、または離婚と親権者の指定の場合:13,000円
- ①に加え、財産分与や子供の養育費を求める場合:財産分与請求1,200円、養育費請求子供1人につき1,200円を①に対して加算
- 慰謝料請求:金額により異なる(請求金額が160万円以内であれば13,000円)
- ①・②とあわせて慰謝料を求める場合:①または③のどちらか額の多いほうに、②の項目の各加算額を合算する。
例/離婚と財産分与、子供2人の養育費に加え、慰謝料を300万円請求した場合。①の離婚請求13,000円<③の慰謝料請求20,000円。これにより、額の多いほうの慰謝料請求20,000円+財産分与1,200円+子供の養育費1,200円×2人分=合計23,600円となります。
参考:裁判所「手数料額早見表(単位:円) 」https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file3/315004.pdf※1
郵便切手代(おおよそ6,000円分)
裁判所が書類を送る際などに使われます。裁判所により金額、切手の種類、枚数が異なるため、事前に問い合わせが必要です。
その他
離婚訴訟の申し立ての際、夫婦の婚姻関係を証明するために戸籍謄本を提出します。戸籍謄本は本籍地の市区町村で取得でき、1通450円になります。
また、鑑定人や証人に法廷へ来てもらう場合に発生する日当、旅費、交通費といった費用が必要な場合もあります。
弁護士費用
離婚裁判を弁護士に依頼すれば弁護士費用が発生します。
弁護士費用は弁護士により料金が異なること、慰謝料など請求する金銭の額や離婚裁判の争点がどれだけあるかなどによって幅があります。
60万円前後~がひとつの目安とされますが、100万円を超えることも珍しくありません。弁護士費用の内訳は下記となります。
相談料
正式に弁護士へ依頼する前に相談を行う際の費用です。
法律事務所によっては初回相談の1時間を無料にして、延長や2回目の相談が必要になったら有料としているところもあります。相場は30分~1時間当たり5,500円~11,000円程度です。
着手金
相談の結果、正式に弁護士へ依頼することになれば着手金を支払い、委任契約をします。
着手金とは事件を正式に依頼する際に支払うもので、相場は20万~40万円になります。離婚するかどうかのほかに、親権や経済的な争点がある場合は追加料金が発生する場合があります。
成功報酬
判決後(依頼が成功したとき)に発生する費用です。
相場は40万~60万円ほどとされていますが、法律事務所の料金体系や、裁判の判決内容で依頼者の希望がどれだけ通ったか成功の度合いによっても金額が異なります。
また、離婚によって得た経済的利益や、親権獲得に対して発生する成功報酬もあります。
一例) 慰謝料…経済的利益の10~20% 財産分与…経済的利益の10~20% 養育費…経済的利益の1年分の10% 親権…10万~20万円 など
日当・実費
弁護士が遠方の場合や、証拠収集や調査で長期出張が必要な場合などには、交通費に加えて日当が発生することがあります。
また、上記で述べた手数料などの「裁判所に支払う費用」を法律事務所が立て替えていた場合はあとで実費を請求されます。
弁護士費用は法律事務所によって異なる部分が大きく、また、裁判が長引くにつれ金額もかさんでいきます。
大切なお金のことですので、弁護士に相談する際、費用についても十分に説明を受け、契約を結ぶ前に委任契約書の内容をよく確認しておきましょう。
その他費用
家事事件では、訴訟を提起する前に調停手続きを経る必要があります。そのため、離婚裁判を起こすためには離婚調停の費用も必要と言えます。
負担割合が決まるタイミング
訴訟費用の負担割合は判決がくだされるタイミングで伝えられます。
どちらが何割という決まりがあるわけではなく、全額を相手方が負担するケースや折半するケースなど、裁判所から指示されたとおりに負担することになります。
弁護士費用を少しでも安く抑える方法
できるだけ弁護士費用を低く抑えたい人には、次のような方法があります。
低料金の弁護士を探す
法律事務所により料金設定は異なるため、弁護士費用が安価なところを探すのも1つの方法です。
ただし、料金の低さだけを重視するのは考えものです。
依頼しようとする弁護士が自分の気持ちに寄り添ってくれているか、きちんと進めてもらえるかといった肝心な部分をないがしろにしていると、納得がいかない結果となり、別の弁護士に依頼し直して二重にお金がかかることもあります。
法律相談を利用し、複数の法律事務所で話を聞くなど、弁護士選びは慎重に行いましょう。
裁判費用をすぐに払えない場合
離婚裁判の費用をすぐに準備できない場合の対処法を紹介します。
訴訟費用/訴訟救助制度を利用する
訴訟救助とは、裁判所に払う手数料などの訴訟費用の支払いを猶予(先送り)してもらう制度です(民事訴訟法82条)。
訴訟救助制度はお金に困っている人でも裁判を受ける権利を保障するためのものです。
そのため、申し立てを行う際、経済的に余裕がないことを収入や資産を証明する書類などで示す必要があります。
また、勝訴の見込みがないことが明らかな場合は対象として認められないこともあります。
訴訟救助の対象として認められると、訴訟費用の支払いは判決まで猶予(先送り)となります。
判決で原告が全面勝訴すれば敗訴した被告の支払いになり、一部勝訴などの結果では、判決で決められた負担割合に応じて支払うことになります。
弁護士費用/法テラスの立て替え制度を利用する
国が設立した法テラス(正式名称:日本司法支援センター)の民事法律扶助という制度があります。法テラスに弁護士費用を立て替えてもらい、利用者が毎月分割で返していく仕組みです。
弁護士費用の着手金、成功報酬などは何十万という額になるため、手元にまとまったお金がないため弁護士に依頼できないとお困りの方は検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、民事法律扶助制度の利用には、収入や資産、勝訴の見込みがないとはいえないことなどの条件があります。利用を考えた際は問い合わせてみましょう。
慰謝料の分割払いの注意点、その他注意点
離婚裁判で慰謝料を請求した場合、相手方が慰謝料の分割払いを申し出ることもあります。
慰謝料の支払いは一括払いが基本ですが、相手方が分割払いを希望した場合、請求された慰謝料の金額や相手方の資力によって、裁判所が分割払いを認めることもあります。
慰謝料請求を弁護士に依頼している場合、裁判が終わると成功報酬を弁護士に支払う必要があります。相手方が慰謝料を分割で支払うことになれば、成功報酬は持ち出しとなります。
また、相手方が慰謝料を分割で支払っている最中に行方をくらましたり、支払いが中断したりするリスクもあります。
自分に弁護士費用を払えるだけの資金があるのか、相手方は慰謝料の支払いを続けてくれそうかなど、しっかりと考えましょう。
一方、裁判で慰謝料の支払いが命じられた場合、相手方の支払いが滞ったら速やかに強制執行を行い、相手方の財産を差し押さえることができます。
協議離婚の場合は公正証書を作成しておき、未払いに備えておきましょう。
まとめ
離婚訴訟の費用や負担割合について説明しました。
裁判所に払う訴訟費用は全面勝訴すれば相手方が負担、判決内容で原告被告双方の負担割合が決まれば、それに従って支払うことになります。
一方、弁護士費用は基本自己負担ですが、不法行為に基づく損害賠償請求をした場合、判決により認められた損害賠償額のおよそ10%を相手方へ請求できるケースがあります。
弁護士費用が心配という人は、法テラスや法律事務所の無料相談を利用してみると良いでしょう。
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※1 参考:裁判所「手数料額早見表(単位:円) 」
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