離婚調停における陳述書の書き方と注意点

離婚調停では、裁判所に陳述書を提出することができます。
離婚調停は話し合いで合意を図る手続きです。調停の時間は限られているため、陳述書を提出することで話し合いをスムーズに進めることができ、時間短縮を図ることが期待できます。
この記事では、陳述書とはどういうものか、離婚調停における陳述書の書き方や注意点を解説します。
本記事を読めば、陳述書の効果的な書き方を理解でき、離婚調停を有利に進めやすくなります。
- 目次
陳述書とは?
陳述書とは自分の考えや離婚調停にいたった経緯、言い分などを簡潔にまとめた文書です。
離婚調停の申し立てにおいて、陳述書は必ず提出しなければならないものではありません。
しかし、陳述書を作成して事前に調停委員に読んでもらうことで、離婚調停の限られた時間を有効活用できます。
離婚調停で陳述書の重要性(メリット)
離婚調停は30分程度の話し合いを2回ずつ交互に行います。また、状況によっては調停委員が条件のすり合わせなどを提案してきます。
つまり、離婚調停にいたった経緯や自分の考えなどを話せる時間は限られているのです。
口頭で説明するだけのケースと比べ、事前に調停委員に陳述書を読んでもらえば、効率よくスムーズに話し合いを進めやすくなります。
また、事前に陳述書を読んでもらうことで、あなたの言い分や主張を調停委員が理解しやすくなります。
申立書にも離婚調停申立ての理由などを記載する欄がありますが、考えや主張を十分に書けるような仕様ではありません。
陳述書を提出することで、申立書には書ききれない想いや主張を調停委員に伝えることができます。
口頭で伝えることに不安がある方や緊張して言いたいことを言いそびれてしまったという方も陳述書を提出することで自分の主張をしっかりと伝えることができます。
離婚調停では調停委員を味方につけられるかどうかが鍵を握ります。調停委員に自分の気持ちや主張をしっかりと使え、理解してもらうことは、離婚調停を有利に進めるために重要です。
なお、離婚調停が不成立となった場合、訴訟を起こし、離婚裁判に進むことがあります。離婚調停で作成した陳述書は離婚裁判において再利用ができます。
揉めそうだと思ったら、離婚裁判も見据えて陳述書を作成すると良いでしょう。
離婚調停の陳述書で失敗しないための注意点
陳述書を作成する際の注意点について解説します。
客観的事実のみを具体的に書く
陳述書を書く際は感情的・抽象的な表現は避け、客観的な事実だけを具体的に書きましょう。
「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「なぜ」「どのように」を意識し、第三者がイメージできるように書くことがポイントです。
<DVの記載例>
夫(妻)は○年○月○日、自宅のリビングで、〇〇という発言がきっかけとなり、長女の目の前で、〇〇に対し、「~~」と言いながら顔を殴りました。当初、暴力は週1回程度だったため、我慢しようと思いましたが、段々エスカレートしていき、○年○月~○月にわたり、毎晩顔を殴ったり、倒れたところを足で蹴られたりするようになりました。結果的に○年○月○日、顔を殴られたことで「全治1か月の鼻骨骨折」と診断されました。
時系列に沿って記載する
時系列がバラバラな文章よりも時系列に沿って書かれた文章のほうが読みやすく、理解しやすいものです。
読み手(調停委員)の立場になり、記載する内容について時系列で簡潔に記載しましょう。
記載する日時が間違っていると、「嘘ではないか」と思われる可能性があります。日付は正しく記載しましょう。
長文になりすぎないように簡潔に書く
言いたいことは山ほどあるかもしれませんが、陳述書は項目ごとに整理してわかりやすく、長文になりすぎないよう簡潔に書きましょう。
文章が長すぎると、伝えたい内容がぼやけてしまい、却って伝わりにくくなるおそれがあります。読み手(調停委員)の立場に立って、わかりやすい文章を書くよう心がけましょう。
相手方への悪口や反論ばかりにならないようにする
離婚調停を申し立てているわけですから、相手方に対して不平不満を抱いているのは自然なことです。
しかし、陳述書に相手方の悪口ばかり書いてしまうと、調停委員に「感情的になりやすい人だ」「自己中心的」という印象を与え、心証を悪くするおそれがあります。
離婚調停では、相手方の主張が事実と異なる場合、反論し、話し合いを進めていくことになります。
しかしながら、陳述書には反論ばかり書くのではなく、客観的な事実を元に、自分はどうしていきたいのか、主張したい内容は何かを明確に記載しましょう。
口頭でも説明できるようにする
陳述書に書いた内容は口頭でも説明できるようにしておきましょう。
いくら陳述書を作りこんでも、調停の場において自分の口で説明できなければ、「本当にこの人の考えたことなのだろうか」と調停委員に疑われてしまうおそれがあります。
陳述書を読み込み、調停の場で質問されることを想定し、口頭で説明できるようしっかりと準備しておきましょう。
その他の注意点
陳述書の用紙はA4サイズ・縦置き・横書きが基本です。枚数は多くても5枚程度に収めましょう。
用紙の左端に3cm程度余白を空け、2ページ以上になるときはページ番号を付けましょう。
表題は「陳述書」、書き出しに宛名「○○家庭裁判所 御中」「○○家庭裁判所○○支部 御中」と明記してから内容を書き、作成年月日を記載し、署名・捺印(認印可。シャチハタ不可)をしましょう。
言葉遣いは「ですます調」、誤解を避けるためにも主語はできるだけ省略しないほうが良いでしょう。また、あなた自身の表記は「私」、相手方は「夫(妻)」が一般的です。
離婚調停における効果的な陳述書の書き方
陳述書には離婚調停にいたった経緯や言い分をまとめた内容を記載します。以下の項目を時系列でわかりやすく記載しましょう。
- 氏名・年齢(自分と相手方)
- 現住所(自分と相手方)
- 職業・勤務先(自分と相手方)
- (子供がいるときは)子供の名前・年齢・性別・学校
- 当初の生活状況
- 離婚調停にいたった経緯
- 現在の生活状況
- 最終的に自分がどうしたいか(離婚したい・親権者や慰謝料などの離婚条件) など
陳述書には決まった形式はありません。手書きでも可能ですが、修正などの手間を考えるとパソコンで作成することをおすすめします。
なお、子供に関する事項については、調停委員が知りたい内容が決まっていることが多いです。
子供に関する事項を記載する際は「子の監護に関する陳述書」の記載例を参考にすると良いでしょう。
参考:裁判所「人事訴訟事件の進行に応じて提出する書面の書式等(https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/zinzi_soshou/index.html)」※1
まとめ
陳述書を提出すれば、離婚調停という限られた時間を有効に使うことができ、調停委員に自分の考えや主張を伝えやすくなるため、離婚調停を有利に進めやすくなります。
ただし、陳述書の書き方によっては調停委員の心証を悪くしてしまうおそれがあります。
適切で効果的な陳述書を作成するためにも、弁護士に相談し、アドバイスを受けることをおすすめします。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 裁判所「人事訴訟事件の進行に応じて提出する書面の書式等」
都道府県から弁護士を検索する
離婚コラム検索
離婚の裁判・調停のよく読まれているコラム
-
1位裁判・調停2018.09.07離婚調停での不利な発言とは|やってはいけない行動と有利に進めるコツ夫婦の話し合いでは離婚が成立しない場合、離婚調停を申し立てることになります。誰も...
-
2位裁判・調停弁護士監修2019.11.19不倫裁判の判決までの流れ|適切な慰謝料請求が認められるための全知識配偶者が不倫をして離婚や慰謝料請求をするとき、話し合いや調停が成立しない場合は訴...
-
3位裁判・調停弁護士監修2020.07.09婚姻費用分担請求|調停の流れと別居中の生活費を請求する方法何らかの理由で別居している方や、これから別居しようと考えている方もいるでしょう。...
-
4位裁判・調停弁護士監修2019.01.22離婚裁判は弁護士なしで大丈夫?費用やメリット・デメリットを解説配偶者に離婚を切り出したものの同意が得られない場合、裁判で争うことになります。弁...
-
5位裁判・調停弁護士監修2019.02.28離婚裁判の費用はどちらが払う?相手に負担させることはできる?夫(妻)に離婚を切り出したものの、話し合いがまとまらない…離婚の話...
新着離婚コラム
-
親権・養育費2025.03.10自己破産時の養育費の扱いは?手続き前後の扱いと払えない時の対処法子供がいる夫婦が離婚すると、子供と離れて暮らす側の親は養育費支払い義務を負います...
-
不貞行為2025.03.07婚外恋愛と不倫の違いとは?婚外恋愛に走る理由とリスクを解説「婚外恋愛」という言葉を聞いたことがありますか? 婚外恋愛はその言葉どおり、「婚...
-
基礎知識弁護士監修2025.02.03戸籍から離婚歴を消す方法|注意点と離婚歴がどう表記されるかを解説離婚歴がある人のことを「バツあり」「バツ〇(〇は離婚回数)」などと呼ぶことがあり...
-
その他離婚理由弁護士監修2025.01.23親害とは?親から離婚を強要されても応じてはいけない理由と対処法親にとって、子供はいくつになっても子供です。しかし、子供のことが心配なあまり、結...
-
基礎知識弁護士監修2025.01.09離婚届不受理申出をすべきケースとは?手続き方法と注意点離婚は夫婦が離婚や離婚条件に合意をしたうえで離婚届を提出するのが前提です。基本的...
離婚問題で悩んでいる方は、まず弁護士に相談!
離婚問題の慰謝料は弁護士に相談して適正な金額で解決!
離婚の慰謝料の話し合いには、様々な準備や証拠の収集が必要です。1人で悩まず、弁護士に相談して適正な慰謝料で解決しましょう。
離婚問題に関する悩み・疑問を弁護士が無料で回答!
離婚問題を抱えているが「弁護士に相談するべきかわからない」「弁護士に相談する前に確認したいことがある」そんな方へ、悩みは1人で溜め込まず気軽に専門家に質問してみましょう。