アルコール依存症で離婚!夫(妻)の飲酒問題で離婚できる?

その他離婚理由
弁護士監修
アルコール依存症で離婚!夫(妻)の飲酒問題で離婚できる?

アルコール依存症は病気そのものだけでなく、お酒の飲み方や程度などさまざまな要素で夫婦関係に影響をおよぼします。また、子供がいる場合は子供の成長にも悪影響があります。

この記事では、アルコール依存症が家族や夫婦関係にどのように影響するのか、また配偶者のアルコール依存症を理由に離婚できるのかについて解説します。

目次
  1. アルコール依存症とは
    1. アルコール依存症の患者数
    2. アルコール依存症の診断基準
  2. アルコール依存症の家族への影響
    1. アルコール依存症患者による暴言や暴力
    2. アルコール依存症による子供への影響
  3. 夫(妻)がアルコール依存症かもと思ったら
    1. 保健所や精神保健福祉センターに相談する
    2. 病院に連絡する
    3. 配偶者暴力相談支援センターや警察に相談する
  4. アルコール依存症を治療して夫婦関係を修復する方法
    1. アルコール依存症であることを自覚させる
    2. アルコール依存症の治療を受けさせる
    3. 毅然とした態度で接する
  5. アルコール依存症を理由に離婚するには
    1. 協議離婚
    2. 調停離婚
    3. 裁判離婚
  6. まとめ

アルコール依存症とは

アルコール依存症とは、お酒を飲むことをやめられなかったり、飲酒量やお酒を飲む時間帯など飲酒の仕方を自分の力で制御できなかったりする状態をいいます。

アルコール依存症の患者数

2014年の厚生労働省の報告によると、アルコール依存症によって「治療が必要」と判断された人は全国で推計約109万人いるという結果になりました。

一方、アルコール依存症によって治療を受けていると答えた人は推計8万人程度に留まっており、アルコール依存症によって治療が必要と判断された人の多くが、治療が必要にも関わらず適切な治療を受けていないこともわかりました。

つまり、アルコール依存症であるにも関わらず、自分がアルコール依存症で治療が必要だという自覚がない、あるいはアルコール依存症であると自覚していても治療を受ける意志がない人が多いということになります

アルコール依存症の診断基準

アルコール依存症はWHO(世界保健機関)による以下の診断基準(ICD-10)があります。

【アルコール依存症のIDC-10診断ガイドライン】

過去1年間に次の6項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合

1. 飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感

2. 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難

3. 禁酒あるいは減酒したときの離脱症状

4. 耐性の証拠

5. 飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長

6. 明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒

また、厚生労働省では「純アルコール量で1日平均60gを超える飲酒」のことを多量飲酒と定義しています。これは、日本酒3合弱、ビール中瓶3本、25度の焼酎300mlに相当します

多量飲酒が続くとアルコール依存症のリスクも高くなるといわれています。夫や妻のお酒の飲み方が気になったら一度チェックしてみると良いでしょう。

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アルコール依存症の家族への影響

アルコール依存症は患者だけでなく、家族にも影響をおよぼします。

実際、アルコール依存症の相談は、患者本人ではなく配偶者などの家族から受けることも多いようです。アルコール依存症の相談先については後述します。

アルコール依存症患者による暴言や暴力

アルコール依存症患者は飲酒することで配偶者に暴言や暴力をふるうこともあります。

素面(シラフ)のときは大人しいのに、お酒を飲むと人が変わったように乱暴な言動をする人もいます。特にアルコール依存症と診断されるほど多量のお酒を飲んでいる場合は理性を失ってしまうこともあります。

アルコール依存症患者は何よりもお酒を飲むことを優先します。そのため、家族などから飲酒をやめるようにいわれると、激高して暴力や暴言に発展する場合もあります

じゃあ、「配偶者がシラフのときに話せば良いのでは?」と思うかもしれません。しかし、アルコール依存症の人は「常にお酒を飲んでいる」というケースが非常に多いです。

そのため、家族とまともなコミュニケーションをとることができず、家族としての絆や結びつきが壊れていってします。

また、アルコール依存症は家計も圧迫します。常にお酒を飲んでいるわけですから酒代がかさむのは容易に想像がつくでしょう。

さらに、アルコール依存症患者は常に飲酒をしている状態ですので、勤務態度や人間関係にも響き、降格や失職をするケースもあるのです。

アルコール依存症による子供への影響

親のアルコール依存症は子供にも多大な影響を与えます。

酔っぱらっている親を見せたくないので友だちを家に呼ぶこともできません。また、親の飲酒によって家計が圧迫されると、進学などの夢をあきらめざるをえないこともあります。

一方、アルコール依存症患者が配偶者に暴力をふるっている場面を子供が目撃すると、子供の精神面状態が不安定になる可能性が高くなります

実はアルコール依存症の親のいる家庭で育った子供は、将来アダルトチルドレンになる可能性が高いことがわかっています。

アダルトチルドレンとは、子供の頃、家庭環境などが原因で精神的に不安定な状態で育ち、成人になっても生き方に悩んでいる人のことをいいます。

元々、アダルトチルドレンとはアメリカでアルコール依存症の親のいる家庭で育った成人を指す言葉で、現在の使われ方は元々の意味が派生したものです。

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子どもがいるから離婚できない?モラハラを見て育った子どもへの影響。

夫(妻)がアルコール依存症かもと思ったら

夫(妻)がアルコール依存症かもと思ったら

「配偶者のお酒の飲み方が異常だ」「夫(妻)がアルコール依存症かもしれない」と思ったらどうすれば良いのでしょうか。対処法について詳しく見ていきます。

保健所や精神保健福祉センターに相談する

夫(妻)がアルコール依存症かもしれないが、状況が複雑すぎてどこに相談すれば良いかわからない…

このような場合はまず、お住まいの地域の保健所や精神保健福祉センターに相談すると良いでしょう

病院に連絡する

配偶者が本人がアルコール依存症の疑いがあることを認識しており、治療の意志がある場合は、配偶者が病院などの医療機関に連絡して依存症に対する治療を受けさせます

また、飲酒して倒れたり、意識障害や幻覚、幻聴の症状が出たりした場合もすぐに病院に連絡しましょう。

アルコール依存症の治療はアルコール依存症を扱っている精神科やアルコール依存症専門外来を設けている病院などのアルコール依存症を専門に扱う医療機関を受診するようにしてください。

内科などでも身体に現れる症状を治療することはできます。

しかし、これはアルコール依存症の治療ではありません。むしろ、内科を受診して身体の不調がなくなることで「再びお酒を飲むことができる」状態を作り出すリスクがあります。

配偶者暴力相談支援センターや警察に相談する

飲酒によって暴力をふるう場合は夫婦だけで対応するのは困難です。シラフのときに受診を勧めても、話の途中で飲酒を始めれば暴力をふるう可能性もあります。

したがって、配偶者が飲酒をして暴力をふるう場合は配偶者暴力相談支援センターなどの公的機関や警察に相談することが大切になります

アルコール依存症を治療して夫婦関係を修復する方法

配偶者がアルコール依存症かもしれないと思ったとき、「治療をして元の関係に戻りたい」と考える人もいるでしょう。お酒の問題で歪みが生じた夫婦関係を修復するにはどうすれば良いのでしょうか。

アルコール依存症であることを自覚させる

アルコール依存症では、まず本人がそれを自覚することが大切です。

アルコール依存症の治療は本人に意志がなければ始められません。しかし、アルコール依存症患者はアルコール依存症だと本人が自覚していない、もしくは自覚していたとしても認めようとしないことがあります

そのため、配偶者にアルコール依存症であると自覚させ、治療を行う意志があるかを確認する必要があります。

反対に、意志がなければ夫婦関係を修復するのは難しくなってしまいます。

アルコール依存症の治療を受けさせる

「アルコール依存症である」という自覚が本人にあると確認したら、治療を受けさせることになります。

アルコール依存症は専門の医療機関を受診し、ソーシャルワーカーや医師と一緒に治療方針を立てていきます。アルコール依存症では以下の4つを組み合わせて治療を行うのが基本です。

  • 患者の断酒
  • 身体症状への治療
  • 離脱症状への対応
  • 心理社会的治療

毅然とした態度で接する

アルコール依存症患者の配偶者は世話好きで面倒見が良い傾向があります。

しかし、アルコール依存症患者の世話を焼き、手助けをする行為は、かえって依存症からの回復を遅らせることにつながります。この行為をイネイブリングといいます。

アルコール依存症のイネイブリングには以下のようなものがあります。

  • 居酒屋のツケを肩代わりする
  • 飲酒によって起こった問題の後始末をする
  • 二日酔いで会社を休む際、本人の代わりに連絡をする
  • 酔いつぶれた患者を迎えに行く など

アルコール依存症患者の家族は上記のようなことをしないと肝に銘じておきましょう。家族が毅然とした態度をとらなければ治療もうまくいきません。

アルコール依存症からの回復には、患者本人の「飲酒するわけにいかない」という意識が大切です。そのため、患者本人の問題に患者自身が向き合って対応することが重要になります。

アルコール依存症を理由に離婚するには

アルコール依存症を理由に離婚するには

配偶者が治療を受けようとしない、話し合いに応じないなど、夫婦関係の修復が難しいと判断したら離婚を考えてしまうのも当然でしょう。

配偶者のアルコール依存症を理由に離婚するには以下の3つの方法があります。

協議離婚

夫婦の話し合いで成立する離婚を協議離婚といいます。

後述する裁判離婚は民法で定める法定離婚事由がなければ離婚を認めてもらうことは難しいですが、協議離婚は夫婦が合意すればどのような離婚理由でも離婚は可能です

しかし、配偶者のアルコール依存症を理由に離婚する場合はいくつか注意点があります。

離婚の話し合いはシラフのときに行う

前提として、離婚の話し合いはお酒を飲んでいないとき、つまりシラフのときに行いましょう。

飲酒した状態で離婚の話し合いを行っても、離婚に合意したことを忘れてしまったり、配偶者が激高して暴力をふるったりすることもあります。

暴言や暴力があるときは第三者を介す

すでに飲酒によって暴言や暴力がある場合は夫婦だけで話し合うのはやめましょう。事前に専門機関に相談し、安全を確保したうえで第三者を介して話し合うことが大切です。

離婚の話し合いでは法的な知識が必要なことが多いため、弁護士に依頼することをおすすめします。

協議がまとまらなければ別居期間を作る

離婚の話し合いがまとまらなければ、一定期間別居するのも良いでしょう。長期間の別居の事実が認められれば、後述する離婚調停や離婚裁判で「婚姻関係が破綻している」と認められやすくなります。

ただし、一方的に家を出るなど別居の仕方によってはあなたに原因があるとみなされることもあります。配偶者のアルコール依存症を理由に別居をする際は事前に弁護士に相談するようにしましょう。

調停離婚

アルコール依存症が原因で離婚する場合、協議をせず初めから離婚調停を行う方法もあります。

前述のようにアルコール依存症で飲酒時に暴力や暴言がある場合や、お酒を飲まない状態を作り出せない場合は、まともに話し合うことは不可能です

このようなときは、身の安全を確保したうえで家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。ただし、アルコール依存症を理由に離婚調停を行う際は以下のことに注意しましょう。

  • 離婚調停を申し立てる際は「配偶者がアルコール依存症であること」を担当の職員に伝え、呼び出し時間や調停室への動線、待合室を変更して会わないようにしてもらう
  • 離婚調停が始まったら、冒頭で「配偶者がアルコール依存症であること」を調停委員に伝える
  • 配偶者がアルコール依存症により、乱暴な言動やむちゃくちゃなことをいう可能性がある場合はその旨を伝えておく
  • 待ち伏せを防ぐため、配偶者より先に退庁させてもらうように調停委員に依頼する

なお、離婚調停は難航すると1年程度かかることもあります。一刻も早く解決したい場合は弁護士に相談すると良いでしょう。

裁判離婚

離婚調停は家庭裁判所で行うとはいえ、話し合いによって解決を目指す離婚方法です。調停でも離婚が成立しない場合は裁判所の判決で離婚を認めてもらうため、訴訟を起こして離婚裁判を行うことになります。

アルコール依存症だけが理由での離婚は難しい

裁判で離婚を認めてもらうには、民法で定める法定離婚事由が必要です。法定離婚事由には以下の5つがあります。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

法定離婚事由そのものにアルコール依存症という項目はないため、「夫(妻)がアルコール依存症」という理由だけで離婚を認めてもらえる可能性はほとんどありません

また、アルコール依存症と診断されたということは「配偶者は病人」です。夫婦には扶助義務や協力義務があるため、治療が必要な配偶者(病人)との離婚は認められにくいのが一般的です。

アルコール依存症で暴力がある場合は証拠が必要

アルコール依存症によって暴言や暴力がある場合、法定離婚事由である「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断されれば離婚が認められる可能性があります。

婚姻を継続しがたい重大な事由で離婚する場合は、お酒を飲んだ配偶者から暴言や暴力をふるわれている事実を証明する証拠が必要になります。

アルコール依存症によって働かなくなった場合

アルコール依存症患者のなかには仕事に行かず、家で一日中お酒を飲み続けている人もいます。

このように、アルコール依存症によって生活費を家に入れないという場合、法定離婚事由である「悪意の遺棄」に該当すると判断されれば離婚が認められることがあります。

悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに夫婦の義務を怠ることです。お酒を飲み続けて働かず、生活費を家に入れないことは夫婦の義務である扶助・協力義務に反します。

そのため、アルコール依存症によって生活費を家に入れないと、悪意の遺棄とみなされる場合があるのです。

アルコール依存症と診断される前に離婚する

アルコール依存症だけを理由に離婚するのは難しいのが現実です。また、夫婦には扶助や協力の義務があります。そのため、配偶者がアルコール依存症と診断されたあとに離婚を切り出すと「夫(妻)を見捨てた」とみなされることもあります。

夫のお酒の飲み方や飲酒時の言動に悩み、離婚を考えるなら、アルコール依存症と診断される前に離婚を切り出すのも一つの方法です。

ただし、診断前であっても、離婚理由として認められる理由や証拠を集めておく必要があります。離婚で認められやすい証拠の例、証拠集めの方法などは弁護士に相談すると良いでしょう。

まとめ

配偶者のアルコール依存症を理由に離婚できるのかについて説明しました。

アルコール依存症と診断されただけで離婚を認めてもらうのは難しいのが現実です。また、ほかの理由と比べて、アルコール依存症の配偶者と離婚するには注意すべき点がたくさんあります。

配偶者のアルコール依存症に悩んでいる場合は早い段階で医療機関に連絡し、修復が難しいと判断したら離婚問題に強い弁護士に相談すると良いでしょう

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