アスペルガーを理由に離婚できる?離婚する前に考えるべき事と手続き方法

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弁護士監修
アスペルガーを理由に離婚できる?離婚する前に考えるべき事と手続き方法

「アスペルガーの夫(妻)と離婚したい」 

アスペルガー症候群と診断された方のなかには対人関係でトラブルを抱える人も少なくありません。

結婚前は相手がアスペルガー症候群であると気づかなくても、一緒に暮らすようになってから「夫(妻)はアスペルガー症候群なのでは?」と気づくこともあるようです。

この記事では、アスペルガー症候群の夫(妻)と離婚できるのかについて解説します。

目次
  1. アスペルガー症候群とは
  2. アスペルガー症候群の特徴
    1. 対人関係・社会性の障害
    2. コミュニケーションの障害
    3. 想像力の障害
    4. 運動障害
    5. アスペルガー症候群とADHDの違い
  3. アスペルガー症候群の人は離婚率が高い
  4. アスペルガー症候群の夫(妻)との結婚生活における注意点
    1. 問題に気づきにくい
    2. 話し合いが難しいことがある
  5. アスペルガー症候群の夫(妻)を持つ人が抱えやすい悩み
    1. 自分の状況や体調などを理解してもらいにくい
    2. 怒りのポイントがわかりづらい
    3. 親族や周りの人との関係が築きにくい
    4. カサンドラ症候群になる可能性がある
  6. アスペルガー症候群の配偶者と離婚できるのか
    1. 話し合いができる場合は協議離婚
    2. 婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するかどうか
  7. アスペルガー症候群の夫(妻)との結婚生活を続けるためには
    1. できるだけ具体的に伝える
    2. 他人の気持ちや状況を理解するのが苦手だと心得る
    3. アスペルガー症候群も一つの個性と捉えて割り切る
  8. アスペルガー症候群の夫(妻)との離婚を相談するには
    1. 東京都発達障害者支援センター(TOSCA)
    2. 離婚カウンセラー・アドバイザー
    3. 弁護士
  9. まとめ

アスペルガー症候群とは

アスペルガー症候群は発達障害の一種で、自閉スペクトラム症とも呼ばれています。

アスペルガー症候群の原因はまだ特定されていませんが、遺伝的な要因によって生じる先天的な脳機能障害だと考えられています。

周産期や胎内環境などさまざまな要素が関係していると言われていますが、親の育て方が原因というわけではありません。

アスペルガー症候群の人は、以下に述べる特徴から周囲の人からは「変わり者」と評価されることがあります。

他方、知能や言語には問題はないため、アスペルガー症候群の人のなかには、記憶力や計算力に優れ、特定の分野で世に名を残した人も多いと言われています。

なお、アメリカ精神医学会では、2013年以降、自閉症や広汎性発達性障害、アスペルガー症候群などの呼び方を自閉スペクトラム症とまとめて表現しています。

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群の症状としては、主に以下のような特徴があります。

対人関係・社会性の障害

アスペルガー症候群の特徴として、「空気を読むことが苦手」ということが挙げられます。

相手の気持ちを理解したり、暗黙のルールを理解したりすることができず、周囲の人から非常識だと思われることもあります。

また、自分なりのルールにこだわってしまうので、周囲の人と足並みをそろえて物事を行うということが苦手です。

その結果、人間関係でトラブルが生じることもあります。

コミュニケーションの障害

アスペルガー症候群の人は知能や言語には問題はないため、会話自体は問題なく成立します。

しかし、相手の発言を文字通りに受け取ってしまうため、冗談や建前上の発言を理解できない傾向にあります。

また、本で覚えたような独特な言い回しを使うことが多かったり、自分の興味のあることばかり延々と話し続けてしまうということもあります。

その結果、周囲の人とコミュニケーションをうまくとることができず、孤立してしまうこともあります。

想像力の障害

アスペルガー症候群の人は自分なりの手順や興味ある事柄に強いこだわりがあるため、予想外の出来事への対応が苦手です。

予想外の出来事が起きてしまうと、何も考えることができなくなってしまい、パニックを起こすということもあります。

また、物事の細部にとらわれてしまい、全体を把握することができなかったり、最後まで物事を進めることができないということも特徴です。

結果的に人づきあいを避け、一人で行動することが多いのもアスペルガー症候群の人によく見られます。

運動障害

アスペルガー症候群の人は自分の身体がどう動くのかをイメージすることが苦手な場合があります。

そのため、相手の動きを真似したり、全身のバランスを取ることが難しかったりするケースがあります。

また、全身運動だけでなく、手先を細かく使ったりすることが苦手なケースもあります。

アスペルガー症候群とADHDの違い

アスペルガー症候群と似たような病気にADHDというものがあります。

ADHDとは注意欠如多動性障害の略称で、「不注意」「衝動性」「多動」といった特徴がみられる障害のことを言います。

アスペルガー症候群とADHDは、それぞれ別の病気ですが、共通する症状もあるため専門家でも判断が難しいときがあります。

たとえば、ミスが多いというのはADHDの代表的な症状ですが、こだわりが強く臨機応変な対応ができずにミスが目立つというのはアスペルガー症候群の症状です。

また、空気が読めないというのはアスペルガー症候群の代表的な症状ですが、人の発言に割り込んだり、一方的にしゃべるなどADHD特有の衝動性・多動性が原因となって空気が読めないと感じられる場合もあります。

このように、表面的な症状の比較だけではどちらの病気か判断することは難しいため、正確に見極めるためにも専門医に相談するようにしましょう。

アスペルガー症候群の人は離婚率が高い

一方がアスペルガー症候群という夫婦は、そうでない夫婦に比べて離婚率が高いと言われています。

これは、前述のアスペルガー症候群特有の症状に由来します。

空気を読むことができずに相手のことを傷つけたり、話がうまくかみ合わずコミュニケーションがとれなかったり、こだわりが強いため相手に合わせることができなかったりすることが原因と言われています。

夫婦生活では、このような些細なすれ違いや違和感が徐々に積み重なって、いつしか修復できない段階まで来てしまうことがあります。

アスペルガー症候群の人は人間関係の構築が難しいと言われています。

そのため、毎日顔を合わせる夫婦にとって夫婦関係の構築はより難しくなるのです。

アスペルガー症候群の夫(妻)との結婚生活における注意点

アスペルガー症候群の夫(妻)との結婚生活における注意点

アスペルガー症候群の夫(妻)と結婚生活を送る際に知っておくべきことがあります。

問題に気づきにくい

アスペルガー症候群は知的能力に問題がないため、本人が障害を持っていることに気づきにくい傾向があります。

また、アスペルガー症候群はまだ世のなかに広く知られている障害ではないため、周囲の人も気づきにくいということがあります。

その結果、アスペルガー症候群の症状は、単に「性格の問題」と捉えられてしまい、問題の本質に気づかない場合があります。

そのため、アスペルガー症候群の人と生活する人は、日々我慢を続けてしまい、精神的に疲弊してしまうことになります。

結婚生活を続けるためにも、アスペルガー症候群の疑いがある場合は早めに専門医に相談するようにしましょう。

夫婦がアスペルガー症候群のことを理解し、うまく障害と付き合うことができれば、結婚生活も送りやすくなるでしょう。

話し合いが難しいことがある

アスペルガー症候群の人はコミュニケーションに障害があることが多く、話し合いが難しいことがあります。

夫婦喧嘩をした場合、お互いに話し合い譲歩しながら関係を修復していくものですが、アスペルガー症候群がある場合はそれが難しくなります。

また、離婚する際も、離婚しようと思った理由や結婚生活の不満を伝えてもなかなか理解してもらえない場合もあります。

離婚はお互いに離婚条件などを話し合い、合意するという手続きですので、アスペルガー症候群の人との離婚は、通常の夫婦の離婚と比べて難しくなる傾向があります。

アスペルガー症候群の夫(妻)を持つ人が抱えやすい悩み

アスペルガー症候群の夫(妻)を持つ人はどのような悩みを抱えやすいのでしょうか。

アスペルガー症候群の障害があることで抱える代表的な悩みについて紹介します。

自分の状況や体調などを理解してもらいにくい

アスペルガー症候群の人は、言葉の裏の意味を理解することが難しいと言われています。

そのため、体調が悪いときに強がって「大丈夫」と言ってしまうと、文字通り受け取られてしまい、体調不良であることを理解したり、心配してもらうことができません。

また、アスペルガー症候群の人は相手の表情や雰囲気から状況を察することも苦手なので、「こんなにつらいのに全然わかってくれない」と悩んでしまうこともあるようです。

怒りのポイントがわかりづらい

アスペルガー症候群の人は自分なりの順序やルールがあり、強いこだわりを持っています。

そのため、自分のやり方を否定されたり、邪魔されたりすることで突然怒り出すこともあります。

こちらとしては善意で言っているにもかかわらず、突然怒り出してしまうため、どのように接して良いかわからなくなってしまいます。

その結果、夫婦の会話が減り、離婚という道に進む人もいるようです。

親族や周りの人との関係が築きにくい

アスペルガー症候群の人は、対人関係やコミュニケーションに障害を持っています。

視線が合いにくく、表情が乏しいことから、周囲の人に「一緒にいて楽しくないのかもしれない」と誤解されることもあります。

また、自分の感情を表現することや自分の発言が相手にどのような印象を持たれるかを想像することが苦手ですので、素直な表現がときに相手を傷つけてしまうこともあります。

このようなことから、親族や周りの人との関係が築きにくいということもアスペルガー症候群の夫(妻)を持つ人に多い悩みです。

カサンドラ症候群になる可能性がある

カサンドラ症候群とは、配偶者や家族など身近な人がアスペルガー症候群であることが原因となって、不安や抑うつといった心身に不調が生じる障害のことを言います。

カサンドラ症候群になるきっかけはさまざまですが、アスペルガー症候群の配偶者とのコミュニケーション障害によって夫婦関係が悪化したり、それに対する周囲の理解が得られないことで孤立することが大きな原因と言われています。

アスペルガー症候群の配偶者との生活に疲れを感じたら、できるだけ早めに専門家や友人、家族などに相談をするようにしましょう。

アスペルガー症候群の配偶者と離婚できるのか

アスペルガー症候群の配偶者と離婚できるのか

夫(妻)がアスペルガー症候群であることを理由に離婚をすることはできるのでしょうか。

話し合いができる場合は協議離婚

通常の離婚と同様に、アスペルガー症候群の配偶者がいる場合も、まずは相手と話し合いをして、合意が得られれば離婚できます。

しかし、アスペルガー症候群の人はコミュニケーションに障害があるため、円滑に話し合いが進まず、協議での離婚は困難になるケースがあります。

婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するかどうか

協議での離婚が難しい場合には、離婚調停、離婚裁判へと進んでいきます。裁判で離婚が認められるためには、民法に定める「法定離婚事由」が必要になります。

アスペルガー症候群の場合、民法770条1項4号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」に該当すれば、法定離婚事由を満たすことになります。

しかし、実際の裁判では、アスペルガー症候群であることだけで「強度の精神病」と認められることはほとんどありません。

アスペルガー症候群を理由に裁判で離婚を認めてもらうためには、民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するかどうかが重要です。

この場合もアスペルガー症候群というだけではなく、「アスペルガー症候群によって夫婦関係が冷め切り、婚姻関係が破綻しているとい言えるか」が重要です。

長期間別居をしていたり、夫婦間の接触がないようなケースでは比較的離婚は認められやすいと言えます。

アスペルガー症候群の夫(妻)との結婚生活を続けるためには

ここからは、アスペルガー症候群の夫(妻)と結婚生活を上手に続けていくためのポイントについて紹介します。

できるだけ具体的に伝える

アスペルガー症候群の人は空気を読むことが苦手です。そのため、普通なら全部言わなくてもわかるようなことであっても、最初から最後まできちんと伝えることが重要です。

また、比喩や皮肉を理解することも苦手ですので、そのような表現を避け、できるだけ具体的な表現を用いるということも重要です。

夫婦であれば「言わなくてもわかってくれる」という思いを抱きがちですが、アスペルガー症候群の人とうまく付き合うためには、そのような思いを捨て、きちんと言葉で伝えるようにしましょう。

他人の気持ちや状況を理解するのが苦手だと心得る

「アスペルガー症候群の人は他人の気持ちや状況を理解するのが苦手だ」ということを自分自信が受け入れることで気持ちが楽になる場合もあります。

自分の気持ちを理解してもらえずイライラするのではなく、「この人は気持ちを理解するのが苦手だから、具体的に説明しなければいけない」と考えることが重要です。

アスペルガー症候群の人は、空気を読むことが苦手なだけであって、きちんと説明をすれば気持ちや状況を理解することができます。

そうすることで、互いにすれ違いがなくなり、円満な夫婦関係を築けるかもしれません。

アスペルガー症候群も一つの個性と捉えて割り切る

アスペルガー症候群を病気ではなく個性と捉えて割り切ることも円満な結婚生活を続けるためのポイントです。

人であれば誰でも得意なことと苦手なことはあるものです。

アスペルガー症候群の人は、それが対人関係・社会性の障害やコミュニケーションの障害、想像力の障害に表れているにすぎません。

アスペルガー症候群にはどのような特徴があるのかを調べて理解することで、相手と気楽に付き合えるかもしれません。

アスペルガー症候群の夫(妻)との離婚を相談するには

アスペルガー症候群の夫(妻)との離婚を相談するには

アスペルガー症候群の夫(妻)との関係で悩んでいる場合は、一人で悩むのではなく以下の相談機関を利用してみましょう。

東京都発達障害者支援センター(TOSCA)

東京都発達障害者支援センターとは、自閉症などの発達障害がある人とその家族に対し、総合的な支援を行う拠点として、平成15年1月に東京に開設された相談機関です。

日常生活や人との関わり方などの情報提供や相談を行っており、相談は無料です。

東京都発達障害者支援センターは、東京都在住の方のみ利用できますが、都外の人についても居住地域の発達障害者センターを利用できる場合がありますので、調べてみると良いでしょう。

離婚カウンセラー・アドバイザー

離婚カウンセラーやアドバイザーは、離婚を決断している人だけでなく、離婚をすべきか悩んでいる人や関係を修復したい人など、さまざまな状況の人が相談することができます。

離婚カウンセラー・アドバイザーは、精神面のサポートもしてくれますので、一人で悩んで心身の不調をきたす前に相談してみると良いでしょう。

弁護士

アスペルガー症候群の夫(妻)と離婚する場合、自分自身でコミュニケーションの障害のある相手と話し合いをすることは難しい場合があります。

それだけでなく、離婚するとなれば、親権や養育費、慰謝料、財産分与、年金分割など決めなければならないことがたくさんあります。

弁護士に相談をすることで、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。

また、弁護士に依頼すれば、相手方との交渉などさまざまな負担から解放されるとともに、離婚が成立するまでの法的手続きをすべて一任することができます。

アスペルガー症候群の夫(妻)との離婚で悩んでいる場合は、弁護士に相談してみると良いでしょう。

まとめ

アスペルガー症候群の夫(妻)との離婚は、アスペルガー症候群特有の難しさがあります。

離婚したいという気持ちを理解してくれず、裁判までもつれるケースも少なくはありません。

話し合いの段階で離婚が難しいと感じた場合は弁護士に相談することをおすすめします。

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