整形が原因で離婚できる?整形を隠して結婚したら離婚理由になるのかを解説

芸能人が整形を告白するなど、以前より整形することへのハードルは下がってきているように感じます。
プチ整形であれば外科的施術を伴わないため、気軽に行うことができるというのも要因の一つかもしれません。
独身時代に整形をして、相手にそれを伝えないまま結婚することもあるでしょう。
この記事では、整形していたことが配偶者にバレてしまった場合、離婚理由になるのかについて解説します。
- 目次
整形を理由に離婚できるのか
整形していたことがバレた場合、配偶者はそのことを理由に離婚できるのでしょうか。
夫婦で合意できれば離婚できる
夫婦間で合意できれば、過去に整形していたことが理由であっても離婚することは可能です。
このように、夫婦の話し合いによって離婚することを協議離婚と言います。
協議離婚であれば、夫婦が離婚に合意をし、離婚届を市区町村役場に提出するだけで離婚が成立します。
協議離婚では、離婚理由の如何は問われることはないため、どのような理由でも離婚することができます。
整形は法的な離婚理由とは認められない
夫婦のどちらか一方が離婚に応じない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員を介して話し合いを進めることになります。
ただし、離婚調停はあくまでも話し合いによって解決を図る方法です。そのため、相手が離婚に同意しない場合は調停での離婚は成立しません。
この場合、最終的に離婚訴訟を提起して、裁判所に離婚の可否を判断してもらうことになります。
裁判所が離婚の可否を判断する際に考慮するのが、民法所定の離婚理由が存在しているかどうかということです。
民法では、以下の理由を法定離婚事由として規定しています(民法770条1項)。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
離婚裁判において、上記の離婚事由が存在しない場合、裁判所が離婚を認めることはありません。
そのため、過去に整形をしていたことが法定離婚事由に該当するかどうかが問題となります。
過去に整形をしていたという事情は、上記の離婚事由のうち①から④には該当しません。
また、単に過去に整形をしていたという事情だけでは、原則として婚姻を継続し難い重大な事由があるとは認められないため、⑤にも該当しません。
そのため、相手方が離婚を拒否している場合は「過去に整形をしていた」という事情だけで離婚することは難しいでしょう。
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相手が拒んでも離婚できる?裁判離婚に必要な5つの法定離婚事由とは。
夫婦(婚姻)関係の破綻とは|法的な定義と離婚を成立させるポイント
整形によって問題が起きた場合は離婚が認められる可能性がある
「整形をしていた」という事情だけで離婚することは難しいですが、そのほかの事情も併せて「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と評価できる場合は離婚が認められる可能性があります。
たとえば、婚姻後も配偶者に内緒で整形を繰り返し、生活が困難になるほど整形にお金を費やしていた場合は、浪費という事情も離婚理由に加わります。
離婚協議中に別居することになり、離婚裁判時には別居期間が長期間におよんでいる場合もあります。
長期間別居しているという事情は、婚姻関係の破綻を補強する事情となるため、別居期間の長さも考慮したうえで、離婚事由の有無が判断されることになります。
このように、「単に整形していた」という事情だけでなく、整形に要した費用や別居期間など、整形によって正常な婚姻生活を送ることが困難になったと言える事情を総合的に考慮することで、「法定離婚事由に該当する」と判断されることがあります。
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浪費癖のある妻(夫)と離婚したい!離婚する方法と注意点
整形を隠して結婚したことを理由に慰謝料を請求されるのか
過去に整形したことを隠して結婚した場合、相手方としては「騙された」と感じることもあります。
整形を隠していたことを理由に慰謝料を請求されることはあるのでしょうか。
整形だけが理由で慰謝料請求は認められない
慰謝料とは、民法709条の不法行為を根拠として請求することになります。
不法行為とは、相手方の故意または過失による違法な行為によって損害が生じた場合にその賠償を求めるものであり、慰謝料は不法行為によって精神的苦痛を受けた際の損害賠償金です。
整形すること自体は個人の自由に属する事項ですので、法的には何ら違法な行為ではありません。
また、整形することによって、第三者の法的な利益を侵害するということもありません。
そのため、不法行為の要件である違法な行為という要件を満たさないと言えます。
「過去に整形していないこと」を条件に結婚したという場合でない限り、整形したことを隠して結婚しても、そのことを理由に慰謝料を請求することは認められにくいでしょう。
整形がきっかけで問題が起きれば慰謝料請求が認められる可能性も
整形を隠していたことを理由に慰謝料請求をすることはできません。
しかし、整形がきっかけでほかにも問題が生じている場合は、慰謝料請求が認められる可能性もあります。
先ほど説明した法定離婚事由と同様に、婚姻後も整形を繰り返すことで浪費し、家計を圧迫していたなどの理由がある場合は、婚姻関係の破綻を招いた原因と判断されることがあります。
このような場合、婚姻関係の破綻を招いた責任として離婚慰謝料の請求が認められる可能性があります。
整形を隠して結婚したことは詐欺罪に問われるのか
整形を隠して結婚することは相手を騙して結婚しているようにも思えます。
では、過去に整形していたことを隠して結婚したことで刑法上の詐欺罪(刑法246条1項)に問われることはあるのでしょうか。
詐欺罪が成立するためには、人を騙して、その人の錯誤に基づき財産上の利益を得ることが必要となります。
典型的なケースとして、結婚詐欺では「結婚する意思がないにもかかわらず、『結婚したい』などと嘘をつき、被害者からお金を騙し取る」といったことが行われます。
このケースでは、積極的な欺罔行為(=だますこと)もあり、現実に財産が移転しているため、詐欺罪にあたります。
しかし、整形を隠し結婚したケースでは、結婚詐欺の事案とは異なり、「結婚したい」という意思は本心であったと言えます。
実際に結婚しているのであれば、その点について欺罔行為はありません。
整形を隠していたということも、単に「話にくい」とか「後ろめたい」などの気持ちから積極的に申し出ることができなかっただけであり、配偶者から財産を奪うことを目的としているわけではないでしょう。
そのため、整形を隠して結婚したとしても刑法上の詐欺罪に問われることはないと言えます。
整形がバレた!離婚したくないときの対処法
「過去に整形したことがバレて離婚請求されたが離婚したくない」という場合の対処法を紹介します。
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配偶者から切り出された離婚を拒否したい!離婚したくない場合の対処法は?
整形した理由を正直に伝える
整形した本人からすると、「整形なんて誰でもやっていることだから大したことではない」と感じるかもしれません。
しかし、整形していたことを隠して結婚した場合、配偶者としては「騙された」「何で言ってくれないのか」など相手に対して不信感を抱くことがあります。
相手の不信感を払しょくするには、「なぜ整形をしたのか」「なぜ結婚時に話すことができなかったのか」といったことを正直に話すことが重要です。
整形した理由を正直に話すことで、相手方の理解が得られ、元の円満な関係に戻ることができる可能性があります。
健康上の理由がある
整形は美容上の問題だけでなく健康上の理由で行う場合もあります。
たとえば、顎変形症の場合、上あごや下あごの形や大きさに異常があることで咬み合わせや発音に不具合が生じます。
これは見た目の問題だけではなく、口を閉じにくくなることや睡眠時無呼吸症候群の原因になるなど、健康上の問題が生じることがあります。
このような場合、形成外科手術をすることで症状が改善され、顔貌も改善されることになります。
また、交通事故などで顔面骨折を負った場合も形成外科手術が必要になることがあります。
手術の結果、元の顔の印象が変わることもありますが、健康上、必要に迫られて行ったことです。
きちんと説明することで理解を得られやすい事情と言えるでしょう。
コンプレックスを抱えていた
美容整形手術を行う方の多くは、外見に対するコンプレックスを抱えて整形することを決断しています。
自分のコンプレックスを他人に話すのは辛いことですが、大切な人との離婚を回避するためにも正直に伝えることが重要です。
「外見についていじめを受けていた」「外見がコンプレックスで自分に自信が持てずにいたが、整形したことで性格も明るくなり社交的になれた」など整形することで多くのメリットを得ているはずです。
配偶者としても見た目だけでなく性格も含めて結婚したいと考えたはずです。
整形を隠していた理由を正直に話すことで理解を得られるかもしれません。
嘘だけはつかないように
整形したことを隠していたことで、相手としては「嘘をつかれていた」と感じ、不信感を抱いているかもしれません。
整形した理由を話す際は、くれぐれも嘘だけはつかないようにしましょう。
嘘に嘘を重ねた場合、そのことがバレたときに取り返しのつかない事態になる可能性もあります。正直に、誠意を持って話しましょう。
別居は避けたほうが良い
相手から離婚の申し出を受けた際、「しばらく別居して今後のことを冷静に考えたい」と提案されるかもしれません。
しかし、あなたに離婚する意思がないのであれば、別居することは避けたほうが良いでしょう。
整形したこと自体は法定離婚事由ではありませんが、別居期間が長期間におよぶと婚姻関係の破綻が認定され、裁判で離婚が認められるリスクが高くなります。
また、別居してしまうと関係修復に向けた話し合いも容易に行うことができず、時間の経過とともに溝が深まる可能性もあります。
「婚姻関係を継続していきたい」と考えるのであれば、別居するのではなく、一緒にいる状態で話し合いをしていくようにしましょう。
整形を理由に離婚を拒否する方法
整形を理由に離婚を回避するにはどうすれば良いのでしょうか。
離婚届を勝手に提出されないようにしておく
離婚届は互いの合意がなければ提出することはできません。
しかし、提出された離婚届が互いの真意に基づくものかどうかを市区町村役場がチェックすることはありません。
そのため、相手方に勝手に離婚届を提出されてしまうと、戸籍上は「離婚が成立した」という扱いになってしまいます。
もちろん、勝手に離婚届を提出された場合、調停や裁判で離婚の無効を争うことができますが、時間も労力も必要になります。
相手方が勝手に離婚届を提出するおそれがある場合は、あらかじめ市区町村役場に「離婚届の不受理申出」をしておくと良いでしょう。
離婚届の不受理申出をしておくことで、仮に相手方から離婚届が提出されたとしても、離婚届が受理されるのを防ぐことができます。
弁護士に相談する
「整形した」ということだけでは、基本的に離婚が認められることはありません。
そのため、「離婚を拒否したい」という場合は、離婚に応じたくないことを相手方に伝えれば十分です。
しかし、「本当に離婚を拒否するだけで大丈夫なのか」などと不安に感じることもあるかもしれません。
また、配偶者から「詐欺だ」「慰謝料を支払え」などと要求された場合、どのように対応して良いのかわからないこともあるでしょう。
このような場合、弁護士に相談して具体的なアドバイスをもらうことで適切な対処法を知ることができます。
また、相手方と直接交渉するのが不安な場合は、弁護士に依頼することで、配偶者と交渉してもらうこともできます。
当事者同士の話し合いは思わぬ不利益を被ることがあります。まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
整形が理由で離婚に応じる場合
過去に整形したことが理由で離婚に応じる際も、不利益を回避するためには弁護士に相談することが大切です。
離婚する際、親権者や養育費、慰謝料、財産分与、年金分割などさまざまな離婚条件を決めなければなりません。
整形を理由に離婚に応じる場合、整形した側としては負い目があるため、相手の主張する条件について十分に検討することなく応じてしまうことがあります。
しかし、整形したこと自体は法定離婚事由ではありません。また、整形したことを理由に慰謝料を請求することもできません。
つまり、整形したからといって離婚条件で不利な扱いを受けることは基本的にはないということです。
どのような離婚条件が適切かは、具体的な事実関係によって異なります。
相手から要求されている離婚条件が適切かどうかを判断するためにも、まずは弁護士に相談をしてみると良いでしょう。
まとめ
美容整形のハードルが低くなり、気軽に整形を行えるようになりました。
しかし、整形に対してネガティブなイメージを持っている人も少なくないため、整形したことを理由に離婚を要求されることもあるかもしれません。
もし、整形を理由に不当な請求をされることがあれば、弁護士に相談することをおすすめします。
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