「養育費はいらない」と言って離婚してしまった!後から請求できる?
養育費は子供の養育監護に必要な費用です。
何らかの理由で養育費の取り決めをせずに離婚するケースもありますが、「離婚後に相手と関わりたくない」「とにかく早く離婚したい」などの理由で「養育費はいらない」と言って離婚が成立したケースもあります。
「養育費はいらない」と言ったものの、後になって「養育費を請求したい」と思うこともあるでしょう。
この記事では、「養育費はいらない」と言って離婚したものの、後になって養育費が必要になった場合に請求できるのかについて解説します。
お子様を連れて離婚をお考えの方、「養育費はいらない」と言って離婚された方は最後までお読みください。
- 目次
そもそも養育費の取り決めをしていない場合
養育費は子供の養育監護に必要な費用です。
離婚しても子供の扶養義務(民法877条1項)はなくならないため、子供が未成熟である間、離れて暮らす親は子供に対して養育費の支払い義務を負います。
そのため、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合であっても、養育費を請求することができます。
なお、養育費は請求した時点からの分について支払いを求めることができます。請求時以前に遡って養育費の支払いを求めることはできないのが原則です。
ただし、例外的に遡って養育費を請求できるケースもありますので、まずは弁護士にご相談ください。
令和2年の厚生労働省の資料では、ひとり親家庭の貧困率(旧基準)は48.1%と、半数近くが貧困という結果でした。
養育費の請求は離婚後でも可能ではありますが、子供のためにも、離婚時にしっかりと取り決めておくことが大切です。
参考:厚生労働省「ひとり親家庭の現状と支援施策について~その1~(https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000705274.pdf)」※1
「養育費はいらない」と言って離婚した場合
養育費の取り決めを行うと、離婚後も元配偶者とのやり取りが発生します。
離婚後に元配偶者との関わりを持ちたくないなどの理由で「養育費はいらない」と言って離婚するケースもあります。この場合、状況によって養育費を請求できるかどうかが変わります。
養育費不請求の合意が成立していない可能性がある
養育費について当事者間同士で合意がなされておらず、一方が「養育費はいらない」と言っただけでは、養育費不請求の合意が成立していない可能性が高いです。
口約束の場合は、合意自体は成立しますが、後で相手方に養育費を請求された際に、不請求の合意について証明することが難しいケースもあります。
また、不請求の合意について、個別的事情によっては無効となる場合もあります。例えば、離婚協議の際に、他の条件と引き換えに無理やり合意させられた、といったケースです。
養育費不請求の合意が成立している場合
養育費不請求について合意している場合、後から養育費を請求することはできないのが原則です。
しかし、民法では子供自身の扶養を受ける権利は放棄できないと定めています(民法第881条)。裁判所も親側の都合だけで子供に不利益が生じるようなことを認めていません。
民法第881条(扶養請求権の処分の禁止)
扶養を受ける権利は、処分することができない。
養育費不請求の合意が有効であっても、その合意が子供の利益を著しく損なう事情がある場合など特段の事情がある場合、養育費の請求を認める可能性があります(民法766条3項)。
民法第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
3項 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前ニ項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
また、離婚当初は仕事をしていたが、病気やケガなどによって職を失い収入が得られなくなったなど、離婚時には予見できない事情がある場合も事情の変更を理由に養育費の合意の変更を求めることができます。
具体的には、以下の事情がある場合、養育費不請求の合意が成立した場合であっても裁判所が養育費の請求を認める可能性があります。
- 子供の生活費や教育費が、養育費不請求合意当時の想定以上に増額した
- 養育費不請求合意当時は養育費支払い義務者が無職だったが、その後就職した
- 養育費の権利者の収入が養育費不請求合意当時の想定以上に減額した
- 病気やケガなどにより養育費権利者が稼働できなくなった
- 子供が経済的に困窮している
- 養育費支払い義務者の収入が養育費不請求合意当時の想定以上に増額した など
養育費不請求の合意が成立しても扶養料を請求できる場合がある
前述のとおり、未成熟子の親は子供に対する扶養義務を負うため、子供は親に対して扶養料を請求する権利(扶養請求権)を持ちます。
養育費不請求の取り決めは夫婦間での合意です。子供の扶養請求権は親からの請求権とは異なるため、夫婦間の同意に影響されません。
前述のとおり、民法では、子供の扶養を受ける権利は放棄できないとされています(民法第881条)。もし、父母間で子供の扶養請求権を放棄する合意がなされていたとしても無効となります。
子供からの扶養請求が認められるためには
扶養請求の権利者は子供自身です。しかし、親権者は子供の法定代理人でもあります。そのため、子供の扶養請求は親権者が代行して行うというのが現実です。
「お金はいらないから離婚して」と言われたから離婚に合意したものの、すぐさま「子供の扶養請求は別だから支払って」と扶養料を請求されても、なかなか受け入れられるものではありません。
養育費請求と扶養請求は別物ですが、実質的には同一の権利と言えなくもありません。そのため、裁判所が扶養請求を認めるかに際して、養育費不請求の合意が無効になるかどうかと同様に考えます。
具体的には以下のような点を総合的に鑑みて判断することになります。
- 養育費不請求に合意した当時に前提としていた事情に変更が生じたかどうか
- 養育費不請求合意当時の状況と現在の状況がどう変わったか
- 養育費支払い義務者が子供に生活費を支払う必要があるかどうか など
扶養料の請求方法
扶養料の請求は、まず当事者同士で話し合い合意を図るところから始めます。合意ができない場合は家庭裁判所の審判へと移ります(民法879条)。
民法第879条(扶養の程度又は方法)
扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。
前述のとおり、扶養請求権は子供の権利ですが、親権者が代理人として申立を行うことができます。
審判ではなく、調停を申し立てることも可能です。調停が不成立となれば自動的に審判に移ります。
まとめ
養育費不請求の合意が成立しているかどうかについては弁護士でないと判断が難しいと言えます。 また、養育費には時効があり、遡って請求できることは難しいため、早めに動くことが大切です。当サイト「離婚弁護士相談リンク」は親権や養育費問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 厚生労働省「ひとり親家庭の現状と支援施策について~その1~」
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