離婚の財産分与に税金はかかるのか|課税されるケースと節税方法

財産分与
弁護士監修
離婚の財産分与に税金はかかるのか課税されるケースと節税方法

離婚をする際、婚姻中に築いた財産を夫婦でわけることになります。これを財産分与と言います。

贈与や相続をして収入を得た場合、一定条件を満たすことで課税されることがあります。

では、離婚で財産分与を行った際は税金がかかるのでしょうか。この記事では離婚の財産分与で税金がかかるのかについて解説します。

目次
  1. 財産分与とは
  2. 財産を分与される側には税金がかからないのが基本
    1. 税金がかかるケース - 贈与税 -
    2. 税金がかかるケース - 不動産取得税 -
  3. 財産を分与する側に税金がかかる場合がある
    1. 譲渡所得税とは
    2. 譲渡益が3,000万円以下なら譲渡所得税はかからない
  4. 財産分与時の税金を減らす方法
    1. 金銭で譲渡を行う
    2. 配偶者控除を利用する
    3. 離婚後に譲渡する
  5. 離婚時に財産分与を行う際は離婚協議書を作成する
    1. 離婚協議書は公正証書にしておく
  6. 離婚時の財産分与は弁護士に相談
  7. まとめ

財産分与とは

財産分与とは、夫婦が離婚をしたときに、夫婦の一方が他方に対して財産の分与を求める制度のことを言います(民法768条1項)。

例えば、夫がサラリーマンで妻が専業主婦の場合、婚姻中はおもに夫の収入で資産形成がなされることが多いでしょう。

このような場合、離婚に際し、夫が「俺が稼いだお金だからお前には渡さない」などということがあるかもしれません。

しかし、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産はすべて共有財産として財産分与の対象になります。

そのため、財産分与を求められれば拒否することはできません。

財産分与を求められた場合、基本的には2分の1の割合で共有財産を分けることになります。

財産分与の対象となる代表的な財産としては、以下のようなものがあります。

  • 現金、預貯金
  • 株式や投資信託などの有価証券
  • 不動産
  • 生命保険の解約返戻金相当額
  • 退職金 など

一方、財産分与は、あくまでも婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を分与する制度です。

そのため、婚姻前に築いた財産や夫婦の協力とは無関係に築いた財産は、財産分与の対象になりません。

財産分与の対象とならないものには以下のようなものがあります。

  • 婚姻前の現金、預貯金
  • 親などから相続した財産
  • マイホーム購入時に親から受けた援助金
  • 別居後に新たに取得した財産 など

財産を分与される側には税金がかからないのが基本

財産分与をすると、現金や預貯金、不動産などが夫婦の一方に移転することになります。

形式的に見ると財産の贈与や譲渡に当たるように思えますが、財産分与で財産を分与される側には原則として税金は課税されません。

これは、財産分与が夫婦の財産関係の清算をするためや離婚後の生活保障のための給付であるためです。

しかし、以下のような場合は例外的に贈与税や不動産取得税が課税される可能性があるため注意が必要です。

税金がかかるケース - 贈与税 -

贈与税が課税されるケースとしては、①財産分与の額が多すぎる場合と②偽装離婚をしたような場合があります。

財産分与の額が多すぎる場合

財産分与は夫婦の財産関係の清算を目的としています。そして、財産分与の割合は、一般的には2分の1とされています。

そのため、一般的な財産分与の割合を超えて財産の分与がなされた場合、超過する部分は財産分与の範囲外となるため、超過する部分に対して贈与税が課税される可能性があります。

なお、一般的な財産分与の割合は2分の1ですが、財産分与の割合は夫婦の財産形成に対する貢献度によって決めるものです。

そのため、個別の事案によっては、財産分与の割合を修正すべきケースもあります。

2分の1を超えて財産分与をしたからといって直ちに贈与税が課税されるというわけではありませんが、例外的な扱いをする場合には注意が必要です。

偽装離婚をしたような場合

夫婦が離婚して財産分与をしたとしても、その離婚が、贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合(=偽装離婚)、贈与税が課税されることがあります。

偽装離婚をした場合、「財産分与の額が多すぎる場合」と異なり、財産分与として妥当な割合を超えた部分ではなく、離婚によってもらった財産すべてに対して贈与税が課税されます。

税金がかかるケース - 不動産取得税 -

財産分与の対象が不動産であった場合も、原則として課税されません。

不動産も夫婦の共有財産として実質的に双方が持ち分を有しており、財産分与によって新たに不動産を取得するわけではないためです。

ただし、以下の2つの要件を満たさない場合には、不動産取得税が課税される可能性があります(東京地判昭和45年9月22日、大阪高判昭和51年1月27日)。

  • 財産分与が実質的に夫婦の共有財産の分割と認められるものであること
  • 財産分与が婚姻中の財産関係を清算する趣旨のものであること

具体的には、財産分与としてもらった金額が多すぎる場合や、慰謝料的、扶養的な意味合いで財産分与がなされた場合などが挙げられます。

不動産を分与されたときにかかるその他の税金

不動産を分与された場合には、上記のほか、登録免許税や固定資産税が課税されます。

登録免許税は不動産の名義を変更する移転登記の際に課税されます。

一方、固定資産税は財産分与により不動産を取得し、所有することになった場合に課税されます。

これらの税金は正当な財産分与をした場合にも課税される税金です。

財産を分与する側に税金がかかる場合がある

財産を分与する側に税金がかかる場合がある

財産分与で財産を分与される側には、原則として税金は課税されませんが、財産を分与する側はどうなるのでしょうか。

実は財産を分与する側の場合、分与する財産が現金や預貯金以外のケースにおいて譲渡所得税が課税される可能性があるのです。

譲渡所得税とは

譲渡所得税とは、資産を譲渡した際に得た利益(譲渡所得)に対して課税される税金です。

現金や預貯金は取得時の金額と譲渡時の時価は同じであるため、譲渡にあたって利益が生じることはありません。

しかし、不動産や有価証券などは、購入時の金額と譲渡時の時価に変動が生じることがあり、譲渡時の時価が購入時の金額を上回った場合、譲渡にあたって利益が出ることがあります。

その場合に課税されるのが譲渡所得税です。譲渡所得税が課税される主な対象財産は、以下のものになります。

  • 土地や建物などの不動産
  • 株式や債券などの有価証券
  • 高額な美術品や骨とう品
  • ゴルフ会員権

譲渡所得税の税率

土地や建物といった不動産を財産分与の対象とした場合、財産分与時の不動産の時価が不動産の購入代金を上回れば譲渡所得税が課税されます。

建物については、減価償却によって価値が減少するため、建物の購入価額と財産分与時の時価が同じであっても譲渡所得が発生する場合があります。

不動産の譲渡所得税の税率は所有期間に応じて以下のようになります。

長期譲渡所得

財産分与をした年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超える場合には長期譲渡所得になります。

その場合の税率は、所得税15%住民税5%の合計20%です。

短期譲渡所得

財産分与をした年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年以下の場合には短期譲渡所得になります。

その場合の税率は、所得税30%住民税9%の合計39%です。

なお、上記に加え、それぞれ2.1%の復興所所得税が別途課税されます。

譲渡益が3,000万円以下なら譲渡所得税はかからない

不動産を財産分与の対象とした場合には、上記のとおり譲渡所得税が課税される可能性がありますが、マイホームを財産分与の対象とする場合には、特例が適用され税金がかからない場合が多いです。

税法上、マイホーム(居住用不動産)を財産分与の対象とした場合には、所有期間の長短にかかわらず、譲渡所得から最大3,000万円を控除することができる特例(=特別控除)があります。

そのため、購入時より不動産の価値が高騰したような例外的な場合を除き、一般的な夫婦の財産分与では、この特例を使うことで譲渡所得税の課税を免れることができるといえます。

ただし、この特例は「譲渡の当事者が親子や夫婦など特別な関係にないこと」が要件とされています。

そのため、この特例を使うには離婚が成立したあとに財産分与を行う必要があります。

財産分与時の税金を減らす方法

財産分与時の税金を減らす方法

財産分与では原則として税金は発生しませんが、上記のように税金を支払わなければならないケースも存在します。

財産分与の際に支払う税金を軽減する方法には以下のようなものがあります。

金銭で譲渡を行う

財産分与を現金や預貯金などの金銭以外の方法で行った場合、譲渡所得税や不動産取得税、登録免許税、固定資産税が課税される可能性があります。

しかし、財産分与を金銭で行った場合、これらの税金が課税されることはありません。

そのため、財産分与時の税金を軽減したいと考えるなら金銭で財産分与を行うと良いでしょう。

配偶者控除を利用する

婚姻期間が20年以上経過している夫婦は、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」の特例を受けることができます。

この特例は、婚姻期間が20年以上ある夫婦間で居住用不動産の贈与がなされた場合に2,000万円の控除を受けることができるというものです。

基礎控除110万円と併せると、合計で2,110万円分が控除されることになります。

この場合、2,110万円までは贈与税が課税されることはありません。

離婚後に譲渡する

離婚後に居住用不動産を譲渡する場合には、前記のとおり3,000万円控除の特例を使うことができます。

離婚前に2,000万円の配偶者控除を利用して贈与を行い、離婚後に3,000万円の譲渡所得の控除を利用するなど、特例を組み合わせることによって節税効果が高まります。

利用できる場合は検討してみると良いでしょう。

離婚時に財産分与を行う際は離婚協議書を作成する

離婚時に財産分与の取り決めをした場合、離婚協議書を作成し、その内容を書面に残しておくようにしましょう。

離婚協議書とは、離婚の際に夫婦で取り決めた離婚条件(親権者や養育費、慰謝料、財産分与、面会交流、年金分割など)を記載した書面になります。

離婚自体は離婚届を書いて市区町村役場に提出するだけで成立するため、離婚協議書の作成は離婚の要件ではありません。

しかし、離婚時の諸条件を口頭で取り決めただけだと取り決めた内容に従って金銭の請求をした際に、言った言わないの水掛け論になる可能性があります。

離婚協議書を残しておくことで、離婚後の無用な争いを回避することができますし、仮に調停や裁判になったとしても証拠として役に立ちます。

離婚協議書によって財産分与として財産が移転したということを残しておくことは、後日、税務署から問い合わせがあったときにも証拠として役立ちますので必ず作成しておきましょう。

離婚協議書は公正証書にしておく

離婚協議書を作成する際は強制執行認諾文言を付与した公正証書にしておくことをおすすめします。

離婚協議書を公正証書にするメリットは、取り決めた条件で金銭が支払われないときに強制執行を容易に行うことができる点です。

単なる離婚協議書の場合、財産の差し押さえをするために裁判を起こし、勝訴判決を得る必要があるため、すぐに強制執行をすることができません。

強制執行を行うまでに時間と費用がかかるため、手続き自体を躊躇してしまうことも多くあります。

しかし、公正証書であれば裁判所の判決と同様の効果があるため、相手から金銭の支払いが滞った場合に裁判をすることなく直ちに強制執行をすることができます。

離婚時の財産分与は弁護士に相談

財産分与の際は財産の調査や評価、分与の方法を決めなければなりません。

財産に関する十分な調査や適切な評価をしなければ、離婚時にもらえる財産が少なくなる可能性があります。

そのため、財産分与を適切に行うためには法律の知識と経験が不可欠です。

また、財産分与を行う際は税金が課税される可能性があるということにも配慮する必要があります。

離婚の財産分与として過剰に財産をもらってしまうと、後々、贈与税などが課税される可能性もあり、結果として手元に残せる財産が少なくなることもあります。

このようなトラブルを回避するためにも、離婚時の財産分与を行う際は法律の専門家である弁護士に相談をすると良いでしょう。

弁護士であれば財産分与だけでなく、相手方との交渉や調停・裁判手続きなど離婚に関するすべてを一任することができます。

まとめ

財産分与は、財産の評価や分与の方法だけでなく、税金についても十分な配慮が必要です。

安易に取り決めをして多額の税金が課税されてしまうことは避けたいものです。

思わぬトラブルを被らないためにも、財産分与を含め、離婚に関してお悩みの際は弁護士に相談することをおすすめします。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚や財産分与に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。

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