夫の風俗店通いを理由に離婚できる?浮気のボーダーラインと慰謝料請求方法。

不貞行為
弁護士監修

田中 今日太

記事監修

田中 今日太弁護士弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ 難波オフィス

夫の風俗店通いを理由に離婚できる?浮気との違いと慰謝料請求方法。

夫の風俗店通いは妻を傷つけます。夫には深い意味がなくても、風俗通いをされたことで妻は「浮気された」と思うからです。ここには風俗店に対する男女の認識の違いがあるようです。

民法では不貞行為があれば離婚が認められることになっています。そもそも風俗店通いは不貞行為に該当するのでしょうか。

さらに、風俗店と一口に言ってもさまざまな種類があります。離婚や慰謝料請求で問題になるのはどのような種類の店なのでしょうか。

この記事では夫が風俗店に通うことで悩む女性がこの問題に対してどのように考え、どう対応すればいいのかを見ていきます。

目次
  1. 風俗店にあたる店とは
    1. ボディタッチもなしの第1レベルの風俗店
    2. オーガズムをいざなうが本番行為はしない第2レベルの風俗店
    3. 性交をする第3レベルの風俗店(主にソープランド)
  2. 夫が風俗店に通う理由
    1. そもそも風俗は浮気ではない
    2. 妻とセックスができないことなどによる性欲を満たすため
    3. 飲み会などで風俗店に行くことが習慣になっている
  3. 夫の風俗店通いをやめさせるには
  4. 夫が風俗店に通うことを原因で離婚できるのか
    1. 夫婦が合意すれば離婚はできる
    2. 裁判で離婚を認めてもらうには法定離婚事由に該当するかがカギ
  5. 夫が風俗店に通うことを理由に慰謝料請求はできる?
    1. 風俗店で不貞行為があったか
    2. 婚姻関係が破綻した原因が風俗店通いであると言えるか
  6. 風俗店通いで離婚する場合の慰謝料相場とは
    1. 夫が風俗店に通うことを理由に離婚や慰謝料請求をするなら弁護士に相談!
  7. まとめ

風俗店にあたる店とは

風俗店の定義は「風営法の規制を受ける営業をしている店」とあるだけです。風営法とは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の略称です。

実際に風俗店が提供するサービスには、性的要素の強さによって以下の3つのレベルがあります。

ボディタッチもなしの第1レベルの風俗店

最も性的要素の薄い第1レベルは、女性(男性)店員が男性(女性)客の横に座って1対1または複数の店員対1人の客の形態で接客することです。

店員は客の性欲をあおる服装をしていますが、胸や性器などへの濃厚なボディタッチや射精、オーガズムなどの性的サービスはおこないません

ただ、太ももや肩、腕などへの軽いボディタッチや頬へのキスは許容されることがあります。第1レベルの風俗店は、キャバクラやホストクラブなどが該当します。

オーガズムをいざなうが本番行為はしない第2レベルの風俗店

第2レベルは、女性(男性)店員が自分の体を男性(女性)客に触らせたり、店員が客の性器を刺激したり、客のオーガズムをいざなったりする店です

そのような行為を性的類似行為と呼び、性交(いわゆる本番行為)と区別しています。

男性向けのセクシーパブやファッションヘルス、ピンクサロンのほか、女性向けの性感マッサージなどが第2レベルの風俗店になります。

性交をする第3レベルの風俗店(主にソープランド)

最も性的要素が強い第3レベルの店では、女性(男性)店員が男性(女性)客と性交をしますソープランドがこれに該当します。

性交とは勃起した男性器を女性の膣内に挿入する行為のことで、本番行為とも呼ばれます。一方、男性器を男性または女性の肛門に挿入する行為は性的類似行為になります。

実は、不特定の相手と性交し金銭の授受があった場合、売春が成立するため犯罪行為に該当します。

しかしソープランドでは性交と金銭授受が日常的におこなわれているにも関わらず「正常営業」をしている範囲では警察は取り締まりをしません。

正常営業ではない異常営業とは以下のようなケースです。

  • 未成年者を使う
  • 深夜営業をする
  • 法外な料金を徴収する
  • 無理やり働かせる

このような場合は警察が積極的に摘発します。風俗営業許可を取って正常営業をしているソープランドでの性交は、社会常識的に「黙認された状態」といえます。

夫が風俗店に通う理由

そもそも風俗は浮気ではない

多くの女性は「私という存在がありながら、どうしてお金を払ってまでほかの女と肉体関係を持つのか」と思うかもしれません。

女性にはなかなか理解しづらいことかもしれませんが、「男性は恋愛感情がなくても女性と性行為ができる生き物」なのです

風俗は「妻を愛せなくなった」とか「ほかの女性を好きになった」ということではありません。男性が性欲処理をするものなのです。

妻とセックスができないことなどによる性欲を満たすため

夫が風俗店に通うきっかけとして妻が妊娠中などでセックスができないということがあります。また、いわゆる「体の相性が悪い」ということもあります。

確かにそれらがきっかけで不貞行為に走ることはあります。とはいえ、夫が風俗店に行くのは性欲を満たす目的以外にありません

妻であるあなたに対する愛情が無くなったということではないのです。

飲み会などで風俗店に行くことが習慣になっている

既婚・未婚に関わらず、男性の多い職場や男同士の集まりなどでは飲み会の延長で風俗店に行くことが習慣になっている場合もあります。

夫の風俗店通いをやめさせるには

風俗店に通う夫の考え方について説明しました。しかし、いくら「風俗は浮気と違う」と言われても妻の気持ちが傷つくことには変わりありません。

風俗店通いが浮気ではないとはいえ、このままでは夫婦関係に支障をきたしかねません。では、夫が風俗店に通うのをやめさせるにはどうすればいいのでしょうか。

このときポイントになるのは「夫婦がお互いの気持ちに歩み寄ること」です。決して感情的になって相手を責め続けてはいけません。

そのためには話し合う前に冷静になることです。冷静でなければ相手と話しているうちにどうしても感情的になってしまいます。

冷静になったら、下記のようなことなどを話し合います。

  • 夫婦生活に不満があるのかどうか
  • この先どうしていきたいか

ひょっとしたら、あなたが考える以上に夫の性欲が強く、「それを妻に言い出せなかった」というだけかもしれませんよ。

夫が風俗店に通うことを原因で離婚できるのか

夫が風俗店に通うことを原因で離婚できるのか

夫婦が合意すれば離婚はできる

風俗店通いに限らず、基本的に夫婦が合意すればどのような理由でも離婚はできます。これを協議離婚といいます。

2人だけの話し合いで解決しない場合は離婚調停を申し立てます。離婚調停では調停委員が間に入りますが、基本は夫婦の話し合いで解決を図ります。

裁判で離婚を認めてもらうには法定離婚事由に該当するかがカギ

離婚調停でも解決しない場合は、訴訟を起こして裁判所に離婚を認めてもらうことになります。裁判で離婚を認めてもらうためには、民法で定める以下の法定離婚事由が必要です。

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 生死が三年以上不明である
  4. 配偶者が回復の見込みがない精神病である
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由

法定離婚事由があれば、配偶者が離婚に合意しない場合であっても離婚が認められます。

夫が風俗店に通うことを理由に離婚を認めてもらう場合、「①不貞行為」「②悪意の遺棄」「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題になります

不貞行為に該当する場合とは

不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係持つことを指します。つまり、夫が風俗店に通うことで異性と肉体関係を持ったことが証明する必要があります。

前述のように風俗店にはさまざまな業態があります。キャバクラなど性的要素の薄い店に通っていることを証明しても不貞行為があったとはみなされません。

一方、ソープランドなど性行為を目的とした風俗店であれば不貞行為とみなされる場合があります。

キャバクラで不貞行為に該当するかどうかのボーダーラインは

キャバクラなどの性的要素が薄い風俗店通いは不貞行為と認められない場合がほとんどです。では、どれだけキャバクラに通っても不貞行為に該当しないのでしょうか。

これについては正確な数値があるわけではなく、ケースバイケースで判断することになります。

例えば週1回以上のペースで長期間キャバクラに通ったなどの場合は不貞行為とみなされる可能性もあります。

一方、通う頻度が少なかったり、店員や店が毎回異なるなどの場合は不貞行為に該当しない可能性もあります。

悪意の遺棄に該当する場合とは

「悪意の遺棄」とは「悪意」を持って配偶者を「見捨てる」ことです。

例えば、風俗店に通うために生活費を渡さなかったり、家に帰ってこなくなる場合は、悪意の遺棄に該当することがあります。

婚姻関係を継続し難い重大な事由に該当する場合とは

「婚姻関係を継続し難い重大な事由」とは、ある事情によって婚姻関係が破綻してしまい、修復が不可能な場合に認められる離婚理由です。

裁判所が「夫婦関係が破綻しているかどうか」を判断する際、まず「別居しているかどうか」を考慮します。

夫が風俗店に通い続けたことで夫婦関係が冷え切ってしまい、別居している場合などで認められるケースがあります。

夫が風俗店に通うことを理由に慰謝料請求はできる?

夫が風俗店に通っていることを知れば妻は精神的に傷つきます。では、夫が風俗店に通うことを理由に慰謝料請求はできるのでしょうか。

風俗店で不貞行為があったか

夫が風俗店に通い、不貞行為があったことを証明すれば慰謝料請求できる場合があります。

慰謝料請求するなら風俗店に行ったという証拠が必要

夫が風俗店に通うなかで不貞行為があったことを証明するには証拠が必要です。そのためにはソープランドのような性交渉を目的とした風俗店に通ったという証拠が必要です。

どのような証拠が慰謝料請求に有効かなどは弁護士に相談すると良いでしょう

併せて読むと役立つ記事
ボーダーラインはどこ?離婚で認められる不貞行為の証拠と慰謝料相場
不貞行為
ボーダーラインはどこ?離婚で認められる不貞行為の証拠と慰謝料相場

芸能人や政治家などの有名人の不倫のニュースが尽きることなく流れていますが、そもそも、どのようなことをすれば、「不貞」と…


婚姻関係が破綻した原因が風俗店通いであると言えるか

夫が風俗店に通うことで婚姻関係が破綻したと言えれば慰謝料請求ができる場合があります。このとき、風俗店に通い出す前は婚姻関係が破綻していなかったことが重要です

元々婚姻関係が破綻しているのに、夫が風俗店に通ったことを理由に慰謝料請求することはできません。

1回行った程度では婚姻関係が破綻したとはいえない

風俗店に通ったことを理由に慰謝料請求する際、どのくらい通ったら婚姻関係の破綻が認められるのでしょうか。

これも「何回通ったら」という基準はありません

ただ、風俗店通いは男性の性欲処理を目的としたものですので、1、2回通っただけでは婚姻関係が破綻しているとは認めてもらえない可能性もあります。

風俗店通いで離婚する場合の慰謝料相場とは

夫が風俗店通いのなかで不貞行為におよんでいた場合、妻は慰謝料請求ができます。不貞行為に対する慰謝料相場は以下のとおりです。

  • 不貞行為のみ(離婚、別居なし):数10万~100万円
  • 不貞行為+別居:100万~200万円
  • 不貞行為+離婚:200万~300万円

ただし、上記の金額はあくまで目安になります。実際はこの金額より安くなることや高くなることもあります。

夫が風俗店に通うことを理由に離婚や慰謝料請求をするなら弁護士に相談!

夫が風俗店に通うことを理由に離婚や慰謝料請求をする場合、お店の種類や通う頻度などによって認められないことがあります。

まずは離婚や慰謝料請求ができるのかなどを弁護士に相談してみましょう。弁護士であれば法的な立場で離婚や慰謝料請求が認められるかなどをアドバイスしてくれます

さらに、不貞行為などで慰謝料請求をする場合には証拠も必要です。どのような証拠が慰謝料請求などで認められるのかなども弁護士に相談すると良いでしょう。

併せて読むと役立つ記事
離婚に強い弁護士の選び方って?弁護士選びで失敗しないポイント。
基礎知識
離婚に強い弁護士の選び方って?弁護士選びで失敗しないポイント。

離婚を弁護士に依頼するとなると、費用もかかります。そのため躊躇される方も多いと思います。弁護士に頼んでも…

まとめ

風俗店に関する考え方は男性と女性で異なります。まずは冷静になって夫婦で話し合い、歩み寄ることが大切です。

夫婦で話し合いをしても「離婚したい!」という場合は、離婚問題に強い弁護士に相談すると良いでしょう。

記事監修の弁護士

田中 今日太

田中 今日太弁護士

弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ 難波オフィス

大阪府大阪市浪速区難波中1-13-17 ナンバ辻本ビル4階

離婚コラム検索

離婚の不貞行為のよく読まれているコラム

新着離婚コラム

離婚問題で悩んでいる方は、まず弁護士に相談!

離婚問題の慰謝料は弁護士に相談して適正な金額で解決!

離婚の慰謝料の話し合いには、様々な準備や証拠の収集が必要です。1人で悩まず、弁護士に相談して適正な慰謝料で解決しましょう。

離婚問題に関する悩み・疑問を弁護士が無料で回答!

離婚問題を抱えているが「弁護士に相談するべきかわからない」「弁護士に相談する前に確認したいことがある」そんな方へ、悩みは1人で溜め込まず気軽に専門家に質問してみましょう。

TOPへ