不倫で脅迫された!「浮気をばらす」と言われたときの対処法
不倫は多くの代償を伴います。
慰謝料請求はもちろんですが、いざ不倫相手と別れようとしたとき、不倫相手から「家族にばらしてやる!」と脅迫されることもあります。
また、不倫相手の配偶者に自分のことがばれると、「不倫のことを職場にばらす」と脅されることもあります。
この記事では不倫相手や不倫相手の配偶者から脅迫されたときの対処法を解説します。
- 目次
不倫で脅迫される典型的なケース
不倫によって脅迫される典型的なケースには以下の2つがあります。
不倫相手から脅迫されるケース
不倫で脅迫されるケースの1つに「不倫相手から脅迫されるケース」があります。
不倫を継続しているときは互いに気持ちが盛り上がっているため、問題になることはありません。
しかし、不倫相手に別れを切り出した際、逆上した相手から脅迫をされる可能性があります。
別れを切り出された相手は「自分だけがつらい思いをするのは許せない」「遊ばれた」などの気持ちが生じ、感情的になり、自分と別れたあとも平然と暮らしている相手に対して仕返ししたり、「復讐したい」と考えたりする可能性があります。
その結果、不倫相手から「不倫をあなたの家族にばらす」といった脅迫がなされることがあります。
不倫相手の配偶者から脅迫されるケース
不倫で脅迫されるもう1つのケースは「不倫相手の配偶者から脅迫されるケース」です。
不倫相手の配偶者に不倫がばれてしまった場合、不倫相手の配偶者から慰謝料請求されることがあります。
その際、慰謝料金額を吊り上げる目的で「慰謝料を支払わなければ家族に不倫をばらす」などと脅迫されることがあります。
また、社内不倫の場合、不倫相手の配偶者は「不倫関係にあった2人がそのまま一緒の職場に居続けるとまた不倫を繰り返すかもしれない」と考えることがあります。
これにより、「不倫を職場にばらす」などと脅迫し、退職を要求することもあります。
不倫相手の配偶者は、不倫によって「自分の配偶者を奪われた」と思っていることが多く、感情的になり過激な行動に出ることがあるのです。
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精神的な苦痛には慰謝料で賠償するのが原則
不倫は婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為です。
不倫によって権利を侵害された人は、不倫によって被った精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。
このように、不倫による精神的苦痛は、法律上、慰謝料という金銭によって賠償することが原則です。
不倫をすることは法的にも道義的にも許されることではありません。
しかし、不倫をしたからといって、職場や家族にばらされて当然ということにはなりません。
不倫によって権利を侵害された人からすると、「お金を支払って終了」ということでは気持ちがおさまらず、職場や家族に対して不倫をばらそうすることがあります。
しかし、それは名誉毀損罪や脅迫罪に該当する可能性がある行為であり、最悪の場合、刑事処分を受ける可能性もあります。
不倫が事実であったとしても、刑事処分を免れるわけではありません。
また、社内不倫の場合、「職場に不倫の事実が知られると懲戒解雇されるのではないか」と心配する人もいるかもしれません。
しかし、社員を懲戒解雇するためには、客観的に合理的な理由が存在し、懲戒解雇が社会通念上相当であると認められなければできません(労働契約法15条)。
「不倫をした」という事情だけでは懲戒解雇という重い処分を選択するにあたり相当性は認められず、「社内不倫が企業運営に具体的な影響を与えた」と言えなければなりません。
「社内不倫が企業運営に具体的な影響を与えた」とは、たとえば、「職場内で性行為を行っていた」など社内風紀に大きな影響与えた場合や「上司という地位を利用して不倫を強要していた」などの事情があるケースです。
これらのような事情がない限り、プライベートな事柄である不倫だけを理由に懲戒解雇が認められるということは考え難いです。
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不倫関係解消を理由に慰謝料を請求することはできない
不倫相手に不倫関係の解消を求めた際、不倫相手から手切れ金名目で慰謝料を請求されることがあります。
しかし、慰謝料とは、権利や利益を侵害され、精神的苦痛を被った場合に請求できるものです。
不倫関係にある人は、相手が既婚者であるということを承知のうえで肉体関係を持っています。
そのため、不倫によって侵害される権利や利益は存在しません。
不倫によって「婚期が遅れた」などの事情があったとしても、慰謝料の支払い義務が生じることはありません。
既婚者であることを隠して不倫関係にいたったケース
前述のとおり、原則として不倫相手が慰謝料を請求することはできませんが、例外的に不倫相手から慰謝料を請求されることがあります。
それは、自分が既婚者であることを隠して不倫関係にいたったケースです。
このケースでは、不倫相手にとって、誰と性的関係を持つかを自由に決定する権利である貞操権が侵害されることになるため、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求される可能性があります。
交際相手に対して既婚者であることを隠しているという人は、配偶者から不倫の慰謝料を請求されるだけでなく、不倫相手からも貞操権侵害の慰謝料を請求されるリスクがあるのです。
不倫で脅迫された場合の対処法
不倫相手または不倫相手の配偶者から不倫を理由に脅迫された場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。
以下、不倫で脅迫された場合の対処法について説明します。
冷静に話し合う
不倫を理由に脅迫された場合、まずは冷静に話し合うことが重要です。
相手は感情的になっているため、一時的に脅迫的な言動に出ている可能性もあります。
お互いに感情的になってしまうとまとまる話であってもまとめることができなくなってしまいます。
相手がどのような要求をしているのかを冷静に聞き出して、それに対する今後の対応を検討しましょう。
一方、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、その場で相手の請求に応じてはいけません。
金額の妥当性などを検討するために、時間をおいて再度話し合いの場を設けると良いでしょう。
弁護士に交渉してもらう
不倫を理由に脅迫されると精神的に追い込まれてしまうため、自分で適切に対応することが難しいことがあります。
このような場合、弁護士に依頼し、脅迫している相手と交渉してもらうと良いでしょう。
弁護士に依頼することにより、交渉窓口はすべて弁護士になります。そのため、電話やメールなどによる相手からの脅迫行為から逃れることができ、精神的負担が軽減します。
脅迫的な言動をしている相手も、交渉相手が不倫相手本人ではなく弁護士であれば、冷静に話し合いに応じてくれる可能性が高まります。
また、弁護士から「脅迫行為を継続することで刑事事件となるだけでなく、反対に慰謝料を請求されるリスクがある」と説明することで、相手方も自分のしている行為の危険性に気付くことができ、家族や職場にばらされるリスクを抑えることにつながります。
書面に残しておく
直接話し合いをして解決した場合であっても、弁護士に交渉を依頼した場合であっても、相手方と話し合い、合意した内容については書面の形で残しておきましょう。
合意したつもりでいても、後になって「言った・言わない」の水掛け論に発展する可能性もあります。
書面で残しておけば、「話し合いの内容に合意した」という証拠になりますし、相手方を牽制し、トラブルの抑止力にもなります。
法外な慰謝料請求や脅迫行為がエスカレートした場合
不倫相手や不倫相手の配偶者は感情的になっているため、過激な行動に出ることがあります。
不倫相手や不倫相手の配偶者から法外な慰謝料請求や脅迫行為を受けた場合、どのように対処したら良いのでしょうか。
警察に被害届を出す
不倫相手や不倫相手の配偶者による慰謝料請求や脅迫行為がエスカレートした場合、下記のような犯罪に該当する可能性があります。
これらの行為があった場合、警察に被害届を提出して刑事事件にしてもらうことも検討すると良いでしょう。
警察が被害届を受理して捜査が開始されると、脅迫行為などをしている相手に任意で事情聴取をすることがあります。
感情的になって報復目的の行動に出ていた人も、警察から事情を聞かれれば自らの行為のリスクを自覚してそれ以上の行為に出ないことが期待できます。
あまりに悪質な行為が繰り返されるようであれば早めに警察相談をすることが大切です。
脅迫罪
不倫関係を解消されたことに逆上した相手から「不倫していたことを家族にばらす」「家族を痛い目にあわせてやる」などと脅されることがあります。
このような行為は脅迫罪に該当する可能性があります(刑法222条1項、2項)。
なお、脅迫罪の法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金と規定されています。
恐喝罪
不倫相手の配偶者は不倫をした当事者に対して慰謝料を請求する正当な権利を有しています。
しかし、慰謝料金額を吊り上げる目的で「慰謝料○○万円を支払わないのであれば家族に不倫をばらす」などと告げてお金を支払わせた場合、たとえ正当な権利があったとしても恐喝罪が成立します(刑法249条1項)。
もしお金の支払いがなかったとしても、そのような事実を告げただけで恐喝未遂罪が成立します。
なお、恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役と規定されています。
強要罪
不倫で逆上した相手から「土下座をしないと殴る」などと言われ、義務のないことを強いられることがありますが、このような行為は強要罪に該当する可能性があります(刑法223条1項)。
なお、強要罪の法定刑は3年以下の懲役と規定されています。
名誉毀損罪
不倫をした事実を職場にばらしたり、SNSなどに書き込んだりした場合、不倫をした人の社会的評価が低下することになります。
たとえ不倫をしたことが事実であっても、私人同士の不倫を公表するということは許されず、名誉毀損罪が成立する可能性があります(刑法230条1項)。
なお、名誉毀損罪の法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金と規定されています。
ストーカー規制法違反
不倫相手に不倫関係の解消を告げたとしても、不倫相手が納得せず、つきまとい行為をすることがあります。
自宅や職場で待ち伏せをしたり、頻繁にメールやLINEなどを送ったりするなどの行為を繰り返すことはストーカー規制法が禁止するストーカー行為に該当する可能性があります。
ストーカー行為をした場合の法定刑は1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金と規定されています。
また、警察からの禁止命令に違反し、さらにストーカー行為を行った場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金と規定されています。
被害届を出すときの注意点
犯罪事実に該当する行為があり、警察に被害届を提出したからといって、必ずしも逮捕されたり、事件化したりするわけではありません。
警察が逮捕するためには法律上の要件を満たす必要があり、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあることが必要になります。
また、嫌がらせ行為があったとしてもそれを立証するための証拠がなければ刑事事件として立件されるのも難しくなります。
なお、被害届を提出した場合、被害届を提出した本人も被害者として警察からの事情聴取を受けることになります。
警察の事情聴取は平日に警察署で行うため、仕事をしている場合は事情聴取のために複数回仕事を休まなければなりません。
被害届の提出は、不倫相手や不倫相手の配偶者の過激な行動の抑止力になることが期待できます。
しかし、なかには、警察に被害届を出したことで逆上してさらに行動がエスカレートする人もいます。
警察に被害届を出すときは、相手がどのような人物であるかを見極めながら慎重に対応することが大切です。
会社や家族にばれずに対処する方法
不倫をしたことを会社や家族にばれずに対処する方法はあるのでしょうか。
結論から言うと、不倫をしたことを会社や家族にばれないようにする確実な方法というものは存在しません。
警察に被害届を出したり、弁護士に依頼したりすることは、不倫の事実をばらされないようにするための抑止効果がありますが、「確実に不倫の事実がばらされない」というものではありません。
不倫相手や不倫相手の配偶者は感情的になり冷静な判断力を失っているため、犯罪の可能性のある行動に出てしまう可能性もあります。
不倫相手や不倫相手の配偶者から連絡があった際、こちらが感情的な対応や不誠実な対応をしてしまうと、逆上した相手が不倫をばらすなどの行動に出ることもあります。
会社や家族に不倫の事実をばらされるリスクを減らすためにも、こちら側ができる限り冷静になり、相手方に誠意ある対応を心がけることが重要です。
まとめ
不倫をした場合、それによって権利や利益を侵害された人から慰謝料を請求されるだけでなく、不倫相手や不倫相手の配偶者から脅迫行為などを受けることがあります。
脅迫行為を受けた場合、自分だけで対応するのは困難なことが多いです。できる限り冷静に対応し、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
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