不倫はどこからが法律違反?浮気で慰謝料請求できる境界線は?
男女ともに離婚原因として挙がるものに不倫があります。しかし、不倫かどうかの境界線は明確ではなく、離婚の際もそこで揉めることが多いようです。
この記事では、配偶者の不倫を理由に離婚を考えている方に向けて、不倫について法的な定義や慰謝料請求についての情報をまとめましたので、不倫による離婚をお考えの方はぜひ参考にしてください。
- 目次
法律上の不倫「不貞行為」の定義
一般的に、既婚者が配偶者以外の異性と性的な関係にあるとき、「不倫」という言葉を使いますよね。ただし、不倫というのは法律用語ではありません。
離婚や慰謝料請求時に法的に問題となるのは「不貞行為」です。ここで知っておきたいのが、「不貞行為は法的にどこまでを指すのか」ということです。
不貞行為とは、「配偶者のあるものが、自由意志で配偶者以外の異性と肉体関係をもつこと」と定義されています。この定義を詳しく見ていきましょう。
「配偶者のあるもの」とは?
配偶者とは、一般的には婚姻関係のある異性を指す言葉だと思われています。
ところが、実際には必ずしも法律上の夫婦に限定されるわけではなく、さまざまな関係に適用される言葉なのです。
では、一体どのあたりまでがその範疇として認められているのでしょうか。
法律上の夫婦
法的にも婚姻関係のある夫婦で、一般的に配偶者というとこの関係のことを指します。
内縁の夫婦
婚姻届を出しておらず、法的にはその関係が証明されてはいないものの、事実としてともに夫婦としての意思を持っているという関係です。
内縁関係の成立には婚姻意思が必要と解されていますし、これも「配偶者のあるもの」の範疇に含まれると判断されます。
婚約関係
婚姻の前段階となる婚約関係は、将来的に婚姻関係を結ぶ予約のようなもので、本人同士の意思と客観的な情報で判断されます。
実際にはまだ夫婦としての実績はありませんが、その性質上「配偶者のあるもの」として認められるものです。
よって、婚約関係において不貞行為が発覚すれば、婚約者から損害賠償請求を起こされる可能性があります。
婚姻関係が破綻している夫婦
婚姻関係があったとしても、何年も別居している場合など客観的に見ても夫婦関係が破綻しているとみなされる場合は「配偶者のあるもの」としては該当しません。
離婚届を提出するまでは法律上夫婦ということになりますが、事実関係が伴わないということで、判例においても「夫婦関係の破綻後に行われた関係は不貞行為にならない」とされています。
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「配偶者以外の異性」とは?
次に「配偶者以外の異性」という定義ですが、これはそのまま配偶者以外の「異性」に限定されています。
現在の法律では相手が同性の場合においては、法律上の不倫には該当しません。
ただし、相手が同性であっても、民法上の離婚理由である「婚姻を継続しがたい重大な事由」には該当しますので、離婚原因として認められると考えられます。
また、同性愛であれば不倫に該当しないといっても、それによって慰謝料請求される可能性は否定できません。
「自由意志」とは?
自由意思というのは、「自らの考えで行動を起こすこと」ですから、そうでない場合は不貞行為には該当しません。
自由意志でないケースとしては、例えば肉体関係を持つように脅迫された場合や強姦といったケースが考えられます。
脅迫を受けていたケースであれば、自分で行動はしているものの、そこに本人の自由意思はありません。
強姦されたという場合も同様で、本人の意思とは無関係に肉体関係を結ばされたわけですから、それは浮気などに該当するものではないことは明白です。
逆に、脅迫や強姦をして異性と肉体関係を持った場合は自由意思でそれを行うわけですから、不貞行為が成立します。
また、風俗店などに行った場合は、状況によって不貞行為として認められることもありますが、相手の風俗嬢に対して慰謝料請求をすることは難しいでしょう。
風俗嬢による行為は風俗店の業務として店の指示で行っているものであり、そこに自由意思はありません。
そのため、原則として風俗嬢に対して慰謝料請求はできないと考えておきましょう。
「肉体関係を持つこと」
法律が定める不貞行為において一番のポイントとなるのが「肉体関係の有無」です。
法律が定める肉体関係というのは「性交渉をすること」であり、いくら疑わしい行動をしていたとしても肉体関係がなければ法律上は不貞行為と認められることはほとんどありません。
では、どの辺りからが肉体関係の範疇となるか、一般的な肉体関係と法律の定める肉体関係の違いについて確認してみましょう。
肉体関係に該当しない行為
法律上肉体関係に該当しないとされる行為は次のようなものです。
- LINE、メール、電話
- 2人で会う、食事やデート
- キスやハグをした
まず、LINEやメール、電話といったもので他の女性とコミュニケーションを取った場合ですが、これはもちろん該当しません。肉体関係が存在しないため当然ですね。
次に、配偶者以外の女性と2人で会う、食事やデートをするというものですが、これも肉体関係には該当しません。
人によってはこの辺りから「浮気」や「不倫」と認識するかもしれませんが、法的にはなんら問題のない行為となっています。
キスやハグをしたという場合、不倫だと思う方もいるかもしれません。しかし、これも法的には肉体関係に該当しません。
肉体関係があったものと判断される行為
肉体関係を持ったと判断されるケースには次のようなものがあります。
- 配偶者以外の異性とラブホテルへ入り、長時間出てこない
- 一人暮らしの異性の自宅に長時間滞在した
- 配偶者以外の異性と泊りがけの旅行に行き、同じ部屋に宿泊した
これらのケースはいくら当事者が否定したとしても、「客観的に鑑みて肉体関係があった」と判断される可能性が高いでしょう。
肉体関係は基本的に密室で持たれるものですので、その現場を押さえることは無理でしょう。
自分の自宅などで行為が行われていたというのであれば可能性はあるかもしれませんが、ラブホテルなどを利用していたならほぼ不可能です。
上記のケースでは「肉体関係を持った」と想定できるため、本人が否定した場合であっても肉体関係があったと認められるわけです。
肉体関係は1回だけでも不貞行為になる
不貞行為は肉体関係が1度でもあれば成立してしまうものです。だからといって1度の不貞行為によってすぐに離婚が成立するわけでもありません。
不貞行為を理由に離婚を裁判所に認めてもらうには、継続的に肉体関係があったという証拠が必要となります。
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不倫(不貞行為)はなぜ法律違反になる?
そもそも、不貞行為がなぜ法律違反になるのでしょうか。これには婚姻関係にある夫婦に発生する義務が関係しています。
夫婦になると、同居・相互扶助義務や婚姻費用分担義務といったさまざまな義務が発生します。
そのなかの1つに夫婦の貞操義務というものがあります。不貞行為はこの貞操義務を一方的に破る行為となるのです。
この貞操義務違反は明文化されているものではありませんし、貞操義務違反による直接的な罰則などもありません。
しかしながら、民法770条1項1号において「離婚事由に該当する」と定めていることから、これを夫婦の義務としていることは明確です。
そのため、不貞行為は民法で定める貞操義務違反に該当するのです。
不貞行為は法律違反ですから、これを理由に離婚裁判を起こしたり、不貞行為に対する慰謝料を請求することが可能となっています。
不倫による慰謝料請求の流れ
次に不倫をした配偶者に対する慰謝料請求手順を紹介します。慰謝料請求を有利に進めるためには、やみくもに訴えるのではなくさまざまな準備と正しい手順を踏むことが大切です。
慰謝料請求は大きく4つの工程に分かれていますので、それぞれ詳しく解説してみましょう。
不貞の証拠を集める
最初にするべきことは「配偶者が不貞行為をしている」という証拠集めです。当たり前ですが、証拠がなければいくら訴えた所で勝つことはできません。
現場を押さえることができれば確実なのですが、前述の通り、現場を押さえるのはほぼ不可能です。
また、あなたが不倫を疑っていることを配偶者に気付かれてしまうと、関係が悪化したり、用心深くなって証拠隠しを行う可能性もあります。証拠集めは慎重に行う必要があります。
不貞の証拠として認められるもの
不貞の証拠として認められるものにはどのようなものがあるのでしょうか。証拠を集めるなら、証拠能力の高いものを集めたいですよね。一般的に証拠として認められるのは、次の4つです。
- メールやチャットアプリの履歴
- 決定的な場面の写真やビデオ
- 音声データ
- 探偵社や調査会社による報告書 など
1つ目のメールやチャットの履歴については、これ単体では決定的な証拠とは言えません。しかし、ほかの証拠と組み合わせたり、本人に自白を促せることができる可能性もあります。
2つ目の決定的な場面の写真やビデオですが、ラブホテルや異性の部屋に出入りしていたり、2人で宿泊を伴う旅行などの写真や映像は証拠能力が高いとされています。
3つ目の音声データですが、これは夫婦が不貞行為について話し合った音声データです。このなかで配偶者が不貞行為を認める内容の発言があれば、それが証拠となります。
4つ目の探偵社や調査会社の報告書ですが、探偵や調査会社は調査対象の行動の一部始終を写真などを添えて報告書を作るため、証拠能力が高いとされています。
証拠集めが難しい場合は専門家へ相談を
証拠集めは素人が行うには負担が大きく、とても難しいものです。自分で証拠を集めるのが難しい場合は専門家に頼ることをおすすめします。
こういった場合に力になってくれるのが、弁護士や探偵・調査会社です。
弁護士なら、裁判に発展することも考慮して、どのような証拠をどのように集めれば裁判所に認められるかなど具体的にアドバイスしてくれます。
アドバイスされたものを証拠として集めておけば、裁判に進んだ際も役立ちます。
探偵などに依頼すれば、素人では集められないような証拠も集めることができます。
前述の通り、探偵や調査会社の調査報告書は高い証拠能力がありますので、離婚や慰謝料請求を有利に進めることができます。
不貞をした配偶者に慰謝料請求
不貞行為の証拠を集めたら、配偶者に証拠を提示して慰謝料請求をします。
離婚をせず慰謝料だけを請求することも可能ではあります。ただし、夫婦では同じ家計ですから、離婚しないのであれば慰謝料を請求してもほとんど意味はありません。
また、請求できる金額自体も離婚するときと比べて少なくなります。
証拠集めに掛かった費用を考えればマイナスになることすらあります。配偶者に対して慰謝料請求をするなら離婚することを前提に行うほうが良いでしょう。
慰謝料金額は高額になるケースもありますので一括ではなく分割払いにすることも可能です。
もし分割払いにする場合は後々もめないように離婚協議書を作成し、公正証書にしておくと良いでしょう。
離婚調停
話し合いによって慰謝料の支払いや離婚がまとまれば良いのですが、必ずしもそうなるとは限りません。
話し合いで慰謝料の支払いに応じてくれない場合は離婚調停を申し立てることになります。
離婚調停は、申し立てに必要な書類や費用などを揃え、申し立て先の家庭裁判所がどこかを確認してから申し立てを行いましょう。
離婚調停とは、家庭裁判所で調停委員を介して話し合いを続けることです。
調停でもお互いが納得しない場合は離婚裁判になりますが、離婚裁判を起こす前は必ず離婚調停を行うことになります。
離婚裁判
離婚調停をしても話がまとまらなければ離婚裁判へ移ります。離婚裁判では、裁判官の客観的な判断によって判決がくだされることになります。
離婚裁判で離婚が認められれば、相手がいくら離婚を拒否していたとしても、強制的に離婚することが可能です。
ただし、離婚裁判は時間的にも金銭的にも負担が大きい方法です。場合によって年単位で争うことになります。また、離婚裁判を行う際は以下の費用が必要になります。
- 裁判所に納める収入印紙:13,000円 ※慰謝料請求をする場合は手数料が変わります
- 予納郵便切手:6,000円前後 ※裁判所により異なる
上記に加え、弁護士を雇った場合は弁護士費用も掛かります。長期化すればその負担は大きくなるため、時間的にも経済的にも余裕を持って望む必要があります。
不倫による慰謝料の相場は?
不倫による慰謝料の金額は状況に応じて変わります。一般的には100~300万円が相場と言われていますが、これに満たないケースも多々あります。
300万円の慰謝料が認められるケースとしては、例えば婚姻期間が10年といった長期間であり、かつ配偶者の不貞により円満な夫婦関係が破綻したといった場合です。
婚姻期間が1~2年程度であれば慰謝料金額が数十万円ということもありますし、慰謝料請求自体が認められないこともあります。
一般的に、不貞行為に対する慰謝料の金額は「離婚するかどうか」「婚姻期間」「支払う側の収入」「不貞を行った期間」といったものが考慮されます。
慰謝料金額は考慮する内容によって増額だけでなく減額することもありますので、一概にどのくらいの金額が提示されるかはケースバイケースになります。
不倫による慰謝料請求には時効がある
浮気や不倫の慰謝料請求には時効があり、その期間をすぎると請求権が消滅してしまいます。
民法第724条では、次の2つのうち、どちらか「短い方」で時効が消滅すると定められています。
- 不倫関係が開始されて20年間経過
- 不倫の事実を知ってから3年経過
時効が成立してからの慰謝料請求は難しくなりますので、慰謝料請求するのであれば早急に動くことが望ましいでしょう。
その際、前述の時効の条件も考慮し、どこまで争うべきか、勝てる要素はあるかなど、しっかり考えて行動を起こす必要があります。
まとめ
不倫が離婚理由として認められる条件や慰謝料請求のポイントについて説明しました。
不倫を理由に離婚や慰謝料請求を考えるなら証拠集めがカギになります。また、慰謝料請求には時効があるため、効率的に動くことが大切です。
このような場合は早めに弁護士などの専門家に相談し、証拠の集め方や慰謝料請求の手順についてアドバイスをもらうと効率的に進めることができます。
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