配偶者から切り出された離婚を拒否したい!離婚したくない場合の対処法は?

基礎知識
弁護士監修
配偶者から切り出された離婚を拒否したい!離婚したくない場合の対処法は?

「何の前触れもなくいきなり配偶者から離婚を切り出されてしまった。でも離婚したくない」そんなとき、どうすれば良いのでしょうか。

ショックのあまり売り言葉に買い言葉で対応すると取り返しがつかない結果になることもあります。まずは冷静になりましょう。

この記事では突然配偶者から離婚を切り出されたけれど離婚したくないという場合の対処法や、離婚を拒否するときのポイントを説明します。

目次
  1. 離婚は拒否することはできる?
  2. 法定離婚事由がある場合には離婚拒否は難しい
    1. 配偶者に不貞行為がある場合
    2. 配偶者からの悪意の遺棄をされた場合
    3. 配偶者が3年以上生死不明な場合
    4. 配偶者が強度の精神病で回復の見込みがない場合
    5. その他の婚姻を継続し難い重大な事由がある場合
  3. 離婚を拒否するためにするべきこと
    1. まずは冷静になって考える
    2. 離婚届には何があってもサインをしない
    3. 離婚届の不受理申出制度を利用する
    4. もしも詐欺や脅迫によって離婚届が提出されても追認しない
    5. 離婚したがる真の理由を調査する
    6. 相手が有責配偶者だとわかった場合
    7. 自分が有責配偶者だった場合
  4. 離婚を拒否するために注意したいポイント
    1. 家庭内別居の段階で関係修復を図る
    2. 別居されてしまった場合
    3. 調停や裁判に呼び出しされた場合
  5. 離婚を拒否したい場合の相談先は?
    1. 自身の親や友人
    2. 離婚カウンセラー
    3. 弁護士
  6. まとめ

離婚は拒否することはできる?

民法では夫婦が協議離婚できることを定めています。

第763条 

夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

これは夫婦が協議し、合意すれば離婚できるということです。 反対に一方が離婚を拒否しているなど、合意が得られない場合は離婚できないということになります。

つまり、協議離婚の段階であれば、一方が離婚を拒否し続けていれば離婚は成立しません。

法定離婚事由がある場合には離婚拒否は難しい

協議離婚では一方が離婚を拒否し続ければ離婚はできません。しかし、いくら拒否し続けても離婚が成立してしまうこともあります。

夫婦になると、さまざまな義務や責任が発生します。結婚するということはこれらの義務や責任を果たす契約をしたことになるのです。

夫婦の義務を一方が破った場合は合意がなくても離婚理由として法的に認められます。これを法定離婚事由といいます。

民法770条1項では以下の5つの理由(法定離婚事由)があれば法的に離婚が認められます。

第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

それぞれについて以下で詳しく見ていきます。

配偶者に不貞行為がある場合

民法では「配偶者に不貞行為があった場合は離婚できる」としています。これは夫婦の貞操義務を破ったことによるものです。

貞操義務に関しての規定はありませんが、民法で不貞行為を離婚理由としているため、必然的に夫婦には貞操義務があるとみなされます。

つまり、一方が貞操義務を破った(不貞行為を行った)場合、配偶者から離婚を請求されたら拒否することができないということになります。

配偶者からの悪意の遺棄をされた場合

夫婦には同居・協力・扶助の義務があります。

第752条

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

悪意の遺棄とは、正当な理由もなく、同居・協力・扶助の義務を果たさないことを指します。具体的には以下のようなケースが該当します。

  • 特別な理由もなく別居している
  • 生活費を渡さない
  • 配偶者を家から追い出す
  • 理由もなく働かない など

例えば、あなたが特別な理由もなく別居したり、配偶者に生活費を渡さないような場合は、配偶者から離婚を請求されても拒否できないことになります。

配偶者が3年以上生死不明な場合

配偶者が3年以上行方不明かつ生死もわからない状態であれば、相手の合意なく離婚できます。離婚請求を拒否することはできません。

配偶者が強度の精神病で回復の見込みがない場合

配偶者が賢明に看護・介護をしても一向に回復の見込みがなく、婚姻関係を継続できない程度の強度の精神病になってしまった場合も配偶者から離婚請求されたら拒否できません。

これは夫婦の義務である「同居・協力・扶助」が果たせないことによるものです。

その他の婚姻を継続し難い重大な事由がある場合

これまで説明したケース以外にも「夫婦関係を継続できない」と判断された場合、相手方から離婚請求されると有責配偶者は拒否できません。

「夫婦関係を継続できない」と判断されるケースには以下のようなものがあります。

  • DV
  • モラハラ
  • ギャンブル癖などの過度な浪費
  • 犯罪行為による服役
  • アルコールや薬物中毒
  • 性嗜好の不一致
  • 自分の親族による配偶者への虐待を見て見ぬふりしている、もしくは助長している

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離婚を拒否するためにするべきこと

協議離婚の段階であれば離婚請求されても拒否することができます。では、離婚を拒否するにはどうすれば良いのでしょうか。

まずは冷静になって考える

突然離婚を切り出されれば動揺するのは当然なことです。また、離婚を切り出した側も感情的になっていて、冷静さを欠いている可能性もあります。

適切に対応すればうまく解決できたかもしれないケースであっても、感情的にぶつかり合うことで、関係修復どころか、ますます夫婦関係の破綻へと進んでしまう恐れがあります。

まずは冷静になり、相手の言い分を聞きましょう。そのうえで、夫婦関係や家庭の状況などを振り返り、なぜ相手が離婚を切り出すのかについて情報を集めましょう。

配偶者と腰を据えて離婚の話し合いをするのは、そのあとでも十分間に合います。

離婚届には何があってもサインをしない

原則として離婚届は夫婦双方のサインが必要です。一方のサインだけでは離婚届が受理されることはありません。

離婚したくないのであれば何があっても離婚届にサインをしないことが重要です。

また、まったく離婚する気がないのであれば、「いつかサインする」「離婚する気はある」といった内容の言葉を電話やメールなどに残さないことも大切です。

このような発言はあとになって不利になることがあります。

離婚届の不受理申出制度を利用する

あなたが離婚届にサインをしなかったとしても、離婚届に配偶者があなたのサインをして提出することもできてしまいます。

離婚を拒否したいなら、離婚届が提出される前に役所の戸籍課に不受理申出書を提出しておくのが良いでしょう。

不受理申出書制度は、離婚届をはじめ、届出によって効力が発生するものの届出を受理しないようにする制度です。

離婚届の不受理申出制度は、「離婚届が提出される前に不受理申出書を役所に出すこと」で効果が得られるものになります。

もしも詐欺や脅迫によって離婚届が提出されても追認しない

脅迫や詐欺によって離婚に合意させられ、離婚届が提出されてしまったらどうすれば良いのでしょうか。

民法 第747条
詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2  前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3か月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。

詐欺や脅迫によって離婚届が提出された場合、民法747条の準用により家庭裁判所に離婚の取り消しを請求できます。

ただし、役所に離婚届が受理されあと、追認(過去に遡ってその事実を認めること)すると、離婚の取り消しを請求できなくなるため、追認してはいけません。

離婚したがる真の理由を調査する

配偶者から離婚を切り出されたら、なぜ離婚したいのか本当の理由を聞き、話し合うことが大切です。

コミュニケーションが取れているつもりでいたのは自分だけということもあります。仕事が忙しくすれ違いが続き、相手はコミュニケーション不足を感じて離婚を考えたということもあります。

また、配偶者が口に出している離婚理由は本当の理由ではないこともあります。

もめごとを避けるためや自分が浮気をしていて「不利になるのを避けて有利に進めたい」といった場合、本当の理由を言わずに別の理由を言うこともあります。

いずれにしても、離婚請求されたからといってすぐに結論を出さずに、配偶者が離婚したがる本当の理由は何なのかをじっくり話し合うことが大切です。

相手が有責配偶者だとわかった場合

前述のように、離婚請求をした配偶者が有責配偶者だったということもあります。有責配偶者からの離婚請求は拒否できる可能性が高いです。

ただし、配偶者が有責配偶者であることを理由に離婚を拒否する場合は、配偶者が有責配偶者であるという証拠が必要です。

例えば配偶者が不倫をしている場合、以下のようなものが証拠として有効になります。

  • 配偶者の日記
  • 配偶者の発言や不倫相手との電話の録音
  • メールやSNSの記録
  • ラブホテルや一人暮らしの不倫相手の自宅への出入りの写真 など

自分が有責配偶者だった場合

あなたが有責配偶者であった場合、基本的には相手からの離婚請求を拒否することはできません。

ただし、配偶者に対して真摯な態度で反省し、謝罪、話し合うことで関係修復を図ることは可能です。

離婚を拒否するために注意したいポイント

離婚を拒否するために注意したいポイント

離婚を拒否するためには、離婚を切り出した配偶者と関係を修復する必要があります。このときどのようなことに注意すべきでしょうか。

家庭内別居の段階で関係修復を図る

離婚を拒否するためには、配偶者に別居されないことが重要です。

別居されてしまうと関係を修復したり、裁判で離婚を争う際に不利になります。そのため、なるべく「家庭内別居状態」の段階で関係修復を図りましょう。

家庭内別居ということは、一緒に暮らしているにも関わらず会話やコミュニケーョンが取れない状態であると言えます。この状態から無理やりコミュニケーションを取ろうとしても反発されるだけです。

無理せず、顔を合わせるタイミングで、必要最低限の連絡から始めるのが良いでしょう。

別居されてしまった場合

すでに別居されてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。

別居するということは離婚の意思が固いということです。この場合も連絡を取り、離婚を回避するために話し合う必要があります。

ただし、別居するくらいですから、あなたが連絡しただけで嫌悪感を抱かれることもあります。このような場合は相手の気持ちを鑑みて、慎重に対応することが重要です。

配偶者と連絡が取れたら、「離婚したくない」というだけでなく、具体的にどうやって関係を修復するのかを説明することも大切です。

離婚回避のための別居という策もある

結婚とは不思議なもので、適度に距離があるほうがうまくいく場合があります。常に顔を合わせていると些細なことで喧嘩になってしまうということもあるでしょう。

また配偶者の親と同居している場合は、義両親との関係性により夫婦仲が悪くなることもあります。

このような場合は一旦距離を置き、頭をクールダウンすることで関係修復につながることもあります。

調停や裁判に呼び出しされた場合

夫婦の話し合いで折り合いがつかず離婚調停や離婚裁判に進んだらどうすれば良いのでしょうか。

離婚調停の呼び出しを拒否すると調停は不成立になります。そのため、申立人は離婚裁判を提起することができます。

離婚裁判に進み、離婚請求された側が裁判に来なかった場合は、訴えた側の主張が認められ、離婚請求された側が敗訴することになります。つまり離婚が認められてしまうということです。

配偶者が有責配偶者であれば法的には離婚を拒否できますが、この場合も裁判所に出頭し、その旨を主張しなければ離婚が認められてしまいます。

裁判で「相手が有責配偶者である」「婚姻関係が破綻していない」などの主張をするには証拠が必要になります。どのような証拠が裁判で有効なのかは弁護士に相談すると良いでしょう。

離婚を拒否したい場合の相談先は?

「配偶者から離婚を切り出されたが拒否したい」「関係を修復したい」という場合、どのような相手に相談するのが良いでしょうか。

自身の親や友人

何でも気軽に相談しやすいのは自分の親や友人ではないでしょうか。リラックスして本音を話すことができるので離婚を切り出されたばかりの段階なら一番相談しやすいでしょう。

特に自分の両親は結婚生活が長いため、自分1人だと気付かないことや実体験に基づいたアドバイスがもらえます。

離婚カウンセラー

離婚カウンセラーは民間の離婚相談所です。法的な相談はできませんが、離婚だけでなく夫婦関係修復も含めて幅広い離婚問題の相談ができます。

また離婚カウンセラーは相談実績も豊富ですので、多くの経験に基づいたアドバイスがもらえます。

弁護士

「離婚を拒否したいが調停や裁判に進んでしまった」「離婚が決定的になりそう」 このような場合は弁護士に相談するのが良いでしょう。

調停や裁判に進むと法的な知識が必要になります。また離婚では財産分与や親権など多くのことを決める必要があります。

自分にとって有利に離婚を進めるためにも弁護士に相談すると良いでしょう。

弁護士に依頼すると費用がかかりますが、最近は無料相談ができる法律事務所も増えていますので、そういったところを利用してみるのも良いでしょう。

まとめ

配偶者から離婚を切り出されてしまったときに離婚を拒否する方法について説明しました。

むやみに離婚を拒否したり関係修復をせまっても、配偶者に嫌悪感を抱かれてしまい不利になることもあります。

離婚を拒否する際は弁護士などの専門家に相談し、アドバイスに沿った対応をすることが大切です。

当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚に強い弁護士を多く掲載しています。ぜひご活用ください。

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