離婚に必要な条件とは?離婚にあたって相手に交渉すべき条件は?

基礎知識
弁護士監修
離婚に必要な条件とは?離婚にあたって相手に交渉すべき条件は?

浮気・不倫などの不貞行為やDV・モラハラなど配偶者に「非」がある場合、こちらから離婚を申し出て、それを拒否されても諦める必要はありません。相応の条件が整えば離婚の成立は可能です。

また証拠があれば、しっかり交渉することで「親権、慰謝料、財産、養育費」などを獲得できます。

今回は有利に離婚するための条件や、離婚後の生活で困らないように交渉しておくべき条件を解説します。

目次
  1. 法律上離婚が認められる5つの条件とは?
    1. 法定離婚事由
    2. 有責配偶者からの離婚請求は認められない
  2. 離婚成立する前に決めておくべき条件
    1. 慰謝料
    2. 親権・監護権
    3. 面会交流
    4. 養育費
    5. 財産分与
    6. 年金分割
  3. 不利な条件を提示された場合は?
    1. 調停離婚の申立
    2. 裁判離婚へ
  4. 離婚時に取り決めた条件は公正証書の離婚協議書へ
    1. 公正証書とは?
    2. 公正証書にするメリット
    3. 公正証書に必要な費用
  5. 離婚に向けて別居している場合の条件「婚姻費用分担請求」
    1. 婚姻費用分担請求とは?
    2. 婚姻費用の相場は?
  6. より良い条件で離婚をするためには弁護士へ相談を
    1. 弁護士に依頼をするメリット
  7. まとめ

法律上離婚が認められる5つの条件とは?

離婚は夫婦で話し合って(協議して)合意すれば成立します。これを協議離婚といいます。
協議離婚に至らなかった場合、次に紹介する「5つの条件」のうち1つでも当てはまれば、裁判を起こせば離婚を成立させることができます。

法定離婚事由

次の5つの条件のうち、1つでも該当すれば、裁判所は離婚を認めます。この5条件のことを法定離婚事由といい、民法第770条で規定されています。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

不貞行為

不倫は肉体関係があれば不貞行為に含まれます。配偶者の不倫について肉体関係を証明できれば、裁判所が離婚を認める可能性は高いです。

したがって配偶者の不貞行為を理由に離婚しようとする場合は、弁護士などに相談し、肉体関係を証明できる証拠を集めておく必要があるでしょう。

悪意の遺棄

「悪意の遺棄」のうち、悪意とは「意図的に」という意味で、遺棄は「放置など」を意味します。例えば、生活費を入れない、健康な夫が働かない、実家に帰ったままで長らく戻らない、頻繁に家出をする、といった行為は悪意の遺棄に該当する可能性があります。

民法753条で、夫婦間には同居義務、協力義務、婚姻関係分担義務の3つの義務があると定められています。生活費を入れないことや健康な夫が働かないことは、婚姻関係分担義務に違反する可能性があります。

悪意の遺棄の有無を裁判で争う場合、その「程度」が重要になります。こちらも弁護士事務所の無料相談などを利用して、自分の配偶者の行動が悪意の遺棄に該当するのかどうか、事前に確認しておくことをおすすめします。

配偶者の生死が3年以上不明

「配偶者の生死が3年以上不明」の条件が認められるには、その期間、連絡が途絶えていることが必要です。

居場所は不明であってもメールやLINEや電話などで連絡が取れている場合は、生死不明に該当せず、法定離婚事由に当たりません。

配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない

この「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」という条件のポイントは「精神病」と「強度」と「回復見込みなし」です。「精神病」の認定には医学的な見地が必要なので、医師による診断書によって病名と回復見込みがないことの鑑定が必要になるでしょう。

さらに「強度」と「回復見込みなし」については、生活面での支障も重要なポイントになります。

法定離婚事由に該当する精神病についても、先述した夫婦間の3つの義務(同居義務、協力義務、婚姻関係分担義務)が果たせない状態である必要があります。

その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

その他の婚姻を継続し難い重大な事由には、「暴力・暴言、長期の別居、精神的・経済的・性的な虐待、義理の親との決定的な不仲」などがあります。こちらも対象の物事の程度が問題になります。

有責配偶者からの離婚請求は認められない

不貞などの法的離婚事由の原因をつくった配偶者のことを有責配偶者といい、最高裁判所は、有責配偶者から離婚請求をすることはできないとの見解を示しています。それを認めると信義誠実の原則に反するからです。

つまり不倫している夫または妻は、自分の配偶者が離婚に同意しない限り離婚することはできない、ということですが、ただこれには例外があります。

最高裁判所は、次の3つの状態である場合は、有責配偶者からの離婚請求を例外的に認めるものとしています。

・離婚後に配偶者(非がないほうの配偶者)が精神的・社会的・経済的に困窮しないこと
・別居期間が長い
・未成熟の子供がいないこと(未成熟の子供とは、未成年者や障害児などを想定)

ここで注目したいのは、「経済的な困窮をしないこと」という条件です。具体的には、非のない配偶者に有利になる形で財産分与を行うことや、慰謝料や養育費を十分支払うことなどが想定されます。

すなわち非のない配偶者が離婚を決意せず、有責配偶者が離婚請求を希望した場合、財産分与や慰謝料や養育費の額が重要なポイントになる、ということです。非のない配偶者はこの点について、弁護士にしっかり相談すべきでしょう。

離婚成立する前に決めておくべき条件

離婚成立する前に決めておくべき条件

離婚を決意する前に「条件」をしっかり決めておきましょう。その条件は離婚後の生活に大きく影響するからです。

夫婦間で協議すべき条件は少なくとも、慰謝料、親権と監護権、面会交流、養育費、財産分与、年金分割の6項目あります。

慰謝料

慰謝料とは、精神的被害に対する損害賠償のことです。有責配偶者の不貞行為・DVなどの行動は、非のない配偶者に精神的苦痛を与えているのです。

慰謝料は、養育費や財産分与とは別に請求することができます。ちなみに夫婦の双方に非がない場合の離婚協議では、ほとんどの場合、慰謝料は請求できません。

親権・監護権

親権とは未成年の子供を監護・養育して子供の代理人として法律行為をする権利と義務のことを指します。監護権は親権の一部で、子供の近くで世話や教育などをする親の権利と義務のことです。監護権のことを身上監護権と呼ぶこともあります。

離婚をするには、父か母のどちらが親権者になるか決めなければなりません。親権者を決めないと、裁判所はそもそも離婚請求を受理しません。

親権と監護権は同じ親が持ったほうがいいのですが、やむを得ない場合は父母でわけることもできます。例えば父親が親権を獲得したものの、仕事の出張が多く子供の世話をすることができないので監護権は母親が保有する、といったことも可能です。

面会交流

子どもとの面会交流は、親権者にならなかった親が求めるものです。

夫婦間の協議のなかでは、子供と非親権者がどのように会うかを決めます。会う頻度、時間、子供の受け渡し方法、親どうしの連絡手段などを詳細に決めておいたほうがいいでしょう。

養育費

養育費は未成年者、学生、障害児などの未成熟子のためのお金です。

養育費の額は養育費を支払う親の生活水準によって変わります。未成熟子の生活水準が、養育費を支払う親の生活水準と同レベルになるような金額でなければなりません。

したがって夫婦の収入、未成熟子の人数と年齢を勘案することになります。親権者になる配偶者の収入が少ない場合、養育費の額はとても重要になるので、弁護士のアドバイスを受けながら相手側と交渉したほうがいいでしょう。

養育費には増減が認められる

離婚前に決めた養育費の額は、離婚後の状況次第で増減させることができます。例えば、子供が病気になって多額の治療費が必要になった場合は、親権者は養育費を支払っている相手に増額を要請することができます。

非親権者が養育費の増額に応じない場合、親権者は裁判所に調停を依頼することができます。調停になれば審判が下され、増額するか、しないかが決まります。

財産分与

財産分与は、慰謝料や養育費などその他の金銭的な事項とは別に行われます。結婚してから獲得した不動産や預貯金は夫婦の共同財産である、との考えから、夫婦で夫婦の財産を分けるのです。

不動産や家計の預貯金は夫名義になっていることが多いと思いますが、それらも結婚後に生まれた財産であれば、財産分与の対象になります。

財産分与の対象になるもの

夫婦が結婚前に所有していた財産については、離婚時の財産分与の対象になりません。それ以外は名義に関係なく財産分与の対象になります。

現金、不動産、株式などの有価証券、家具、家電、自動車など、すべてが対象となります。また会社員の夫と専業主婦の離婚の場合、夫の退職金も財産分与の対象となります。

住宅や土地などの不動産についてローンがまだ残っている場合は、不動産価格からローン残高を差し引いた金額が財産分与の対象になります。

離婚を希望する配偶者は、「財産分与の対象を決めることは簡単ではない」ことに注意してください。例えば株式投資には特定口座が必要ですが、相手がその口座の存在を明かしていない可能性もあります。

夫婦間の協議で「財産分与の対象金額が少ない(もっとあるはずだ)」と感じたら、裁判所に対して調査嘱託の申立てをすることもできます。

年金分割

離婚協議では、年金分割についても話し合い、手続きするようにしてください。年金分割の対象となるのは厚生年金や旧共済年金です。国民年金は対象外となります。

夫が会社員で妻が専業主婦の場合、将来の年金額は夫のほうが有利(多額)になります。そこで離婚に際し、年金保険料を納めた記録(年金記録)を夫婦で分割し、有利不利が起きないようにするのが年金分割です。

年金分割をするには年金事務所などで手続きしますが、そのとき「合意分割」にするのか「3号分割」にするのか決めておく必要があります。

合意分割は夫婦双方の合意が必要です。3号分割は、厚生年金加入者(このケースでは夫)に扶養されている配偶者(このケースでは妻)が単独で手続きすることができます。

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不利な条件を提示された場合は?

離婚について夫婦間で話し合っているとき(協議しているとき)に、不利な条件を提示されたり、自分が出した条件を相手が承諾しなければ、調停や裁判を申し立てます。

離婚の方法には次の3つがあります。

  • 夫婦間の話し合いで離婚する協議離婚
  • 家庭裁判所の調停を利用する調停離婚
  • 家庭裁判所に訴えを起こす裁判離婚

協議離婚が成立しなかった場合は調停離婚裁判離婚に移ります。つぎに、その2つの離婚方法について解説します。

調停離婚の申立

話し合いで離婚が成立しなかった場合、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員が夫婦の間にはいって解決の道を探ります。調停では夫婦が顔を合わせないようにすることができるので、落ち着いて話を進めることができます。

調停委員が夫婦双方から見解を聞き、調停案を提示します。

夫婦双方が調停案に納得すれば、合意内容を調停調書に記載し、調停離婚が成立します。夫婦の双方または片方が調停案に納得できなければ、裁判離婚を目指します。

裁判離婚へ

調停離婚が成立しなかった場合、家庭裁判所に離婚の訴えを起こして、離婚成立や慰謝料などの諸条件を裁判で決めます。調停離婚では調停案しか提示されませんが、裁判離婚では判決が下ります。

裁判離婚に持ち込むには、訴える側が法定離婚事由(相手側の不貞行為など)を主張する必要があります。

離婚や諸条件を争う裁判は審議がより深くなり、一度下された判決を覆すことは困難です。その為、調停から裁判離婚に移行する前に弁護士をつけておくことが理想です。

離婚時に取り決めた条件は公正証書の離婚協議書へ

離婚することが決まったら、離婚協議書という書面を作成することをおすすめします。

慰謝料や財産分与、親権、養育費などについて取り決めた条件を離婚協議書として作成することで口約束ではなく書面で証拠を残せます。

さらに離婚協議書を公証役場に持っていき公証人に公正証書にしてもらいましょう。公正証書は高い証明力をもちます。仮に、決めた通りの慰謝料、養育費が支払われない場合は、裁判所の判決を待たずに回収するための手続きをとることができます。

公正証書とは?

離婚協議書も契約書の一種ではありますが、公正証書にすることで、証拠としてより価値が高くなります。公正証書は公証役場で公証人に作成してもらう「公的な文書」です。書かれている内容が守られなかった場合、裁判所を通じて強制執行を取ることができます。

例えば、慰謝料や養育費の支払いが滞った場合は強制的に給料や預金を差し押さえることができます。

公正証書にするメリット

公正証書(離婚協議書)には次の事項などを記載します。

  • 離婚に合意したこと
  • 親権者・監護権者が確定したこと
  • 養育費、慰謝料、財産分与などの金額と支払い方法
  • 非親権者と子供の面会交流の内容
  • 年金分割の内容

公正証書にすると、こうした重要案件が確実に履行されるメリットがあります。

公正証書に必要な費用

公正証書を作成するには手数料が必要で、その額は慰謝料や養育費などの「目的の価額」によって異なり、以下のとおりです。

離婚に向けて別居している場合の条件「婚姻費用分担請求」

離婚に向けて別居している場合の条件「婚姻費用分担請求」

離婚に向けて準備しているときに忘れがちなのは、別居中の生活費の取り決めです。例えば会社員の夫が不倫をし、専業主婦が離婚に向けて別居したとき、妻は夫に対し生活費を請求することができます。

婚姻費用分担請求とは?

夫婦と未成熟子の生活に必要な費用(生活費)のことを婚姻費用といい、その額は夫婦双方の収入状況や子供の数や子供の年齢によって変わってきます。
同じ家族構成でも、収入が多いほど婚姻費用は高くなります。

夫婦ともに婚姻費用を負う義務があり、民法ではこれを婚姻関係分担義務と表記しています。
例えば夫婦の間で、夫が会社員として働き、妻が専業主婦として家事をすることで合意すると、婚姻費用を負う義務は夫が負います。

このケースで夫が不倫をして、妻が別居を選んだとき、夫には別居中の妻の「婚姻費用(生活費)」を負担する義務があります。まだ離婚していないので、婚姻費用の負担義務が継続しているのです。
したがって別居中の妻は夫に生活費を請求できるのです。

婚姻費用の相場は?

東京と大阪の裁判官が共同で、婚姻費用の額の「算定表」を作成しました。算定表はこちらから「養育費・婚姻費用算定表」 閲覧できます。

この算定表によると、例えば、会社員の夫(婚姻費用を支払う側)の年収が1,000万円で、パートの妻(支払いをうける側)の年収が100万円で、妻が0~14歳の子供1人を引き取る場合の婚姻費用は月額16~18万円と算定されます(養育費・婚姻費用算定表、表11)。

つまりこの夫婦が別居し、妻が子供を引き取ったら、「夫が妻に婚姻費用として16~18万円を支払う」ことを軸に、夫婦で協議していくことになります。

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より良い条件で離婚をするためには弁護士へ相談を

もし配偶者の非を原因として離婚を検討している場合は早めに弁護士に相談したほうがメリットが大きいでしょう。

弁護士に依頼をするメリット

弁護士に依頼するメリットとして、まず的確なアドバイスを受けられることです。以上でみてきたとおり、離婚調停や裁判を有利に進めるには、多数のチェックポイントをクリアする必要があります。

専門的な知識も必要となり「離婚に関する法律とルール」を知らないと、そのチェックポイントを把握することすら難しいです。

またチェックポイントを知っていても、相手に非があることを証明する「証拠」がなければ調停や裁判を有利に進めることはできません。

さらに、その証拠をもとに自分に有利な条件で離婚成立をさせるには巧みな交渉力が必要です。個人で話し合いをしていると、つい感情的になってしまい見落としや洩れがでてしまいます。

弁護士に依頼しておくと、調停や裁判で有利に働く証拠や、その集め方のアドバイスを受けられます。交渉についても専門家なので安心して任せることができます。

以上のことから、知らなかったで後悔する前に離婚と法律のプロである弁護士に依頼することは大きなメリットがあると言えます。

まとめ

離婚を進めることも簡単ではありませんが、有利な形で離婚を決着させることはさらに難しいです。

専門家のアドバイスは必ず必要ですので、まずは法律事務所の無料相談などを利用してみてください。

離婚の協議では付き合いのある弁護士に相談するのが安心感もあり良いかもしれません。

知り合いに弁護士がいない場合、「離婚弁護士相談リンク」にも離婚問題に強い弁護士を多数掲載しています。

1人で悩まず、まずは相談という第一歩を踏み込んでみてください。

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