弁護士を解任する方法・手続きと解任で支払う費用について
離婚問題を依頼している弁護士とうまくいかない……。
離婚すること自体ストレスがかかるのに、味方であるはずの弁護士とのやりとりが進まないと困ってしまいます。
ここでは、弁護士の解任方法や必要な手続き、払った着手金の返還など解任に伴うお金の問題、そして新しく弁護士を依頼する際の選定方法について説明します。
- 目次
弁護士の解任の方法と手続き
弁護士の解任方法や必要な手続きについて、下記の流れで説明していきます。
- 弁護士へ解任の意思を伝える
- 離婚裁判の相手方と裁判所へ通知する
解任はいつでもできる?
そもそも、弁護士の解任はいつでもできるのでしょうか。 委任の解除について、民法に定められています。
- 民法第651条
- 1.委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
- 2.前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
- 一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
- 二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
委任契約の解除は依頼者・弁護士双方から、いつでもできます。したがって、解任するのに弁護士の同意は必要なく、依頼者が一方的に弁護士を解任できます。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
第651条2項にあるように、依頼者が相手方である弁護士に不利な時期に委任の解除をしたときは、相手方の損害を賠償しなければなりません。
ただしやむを得ない事由があったときは損害賠償責任を負わなくてもよいと言われ、 一般的には次のようなケースとされています。
- 弁護士と連絡が取れない
- 打ち合わせのキャンセル
- 出廷の遅刻
- 裁判所に来ない
- 処理が遅い
弁護士へ解任の意思を伝える
弁護士の解任を決めたら、まず、弁護士へ委任契約を解消する意思を電話やメール、書面などで伝えます。
解任通知書の書き方
弁護士に解任したい旨を伝えようとしても連絡が取れないなどの場合、解任通知書を作り、メール、FAX、内容証明郵便で送る方法もあります。
なお、内容証明郵便とは、「いつ・どんな内容の文書を・誰から誰あてに差し出されたのか」を、差出人が作った謄本により日本郵便が証明する制度です。
解任通知書に決まった書式はないので、委任契約解除通知書などの雛形を利用して作成するとよいでしょう。
離婚裁判の相手方と裁判所へ通知する
解任が決まったら、解任する弁護士から辞任通知を取得します。
弁護士の解任は、離婚裁判の相手方への通知(民事訴訟法59条が準用する36条1項)と裁判所への通知(民事訴訟規則23条3項)が必要です。
- 民事訴訟法
- (法定代理権の消滅の通知)第36条 法定代理権の消滅は、本人又は代理人から相手方に通知しなければ、その効力を生じない。
- (法定代理の規定の準用)第59条 第34条第1項及び第2項並びに第36条第1項の規定は、訴訟代理について準用する。
- 民事訴訟規則
- (第4節 訴訟代理人)第23条 3.訴訟代理人の権限の消滅の通知をした者は、その旨を裁判所に書面で届け出なければならない。
具体的な通知手順は以下のとおりです。
- 離婚裁判の相手方に、弁護士の解任通知を送ります。
- 裁判所に、離婚裁判の相手方へ弁護士解任の通知をした旨を、書面で届け出ます。
裁判所への詳しい通知手続きについては家庭裁判所へお問い合わせください。
新たに後任の弁護士が決まった場合、解任する弁護士から辞任通知を取得し、前任弁護士が解任となったあと、後任の弁護士が裁判所へ委任状を提出、離婚裁判の相手方へ受任通知をすることで、交替となります。
弁護士の解任にかかる費用と着手金の返還
弁護士を解任する際、解任自体に費用はかかりませんが、着手金の返還を求めることができない場合や、解任までの活動費用の精算が発生する場合があります。
解任時には契約内容を確認する
解任したいと思ったら、弁護士へ依頼した際に結んだ、委任契約書の契約内容を確認しましょう。そこには、委任契約が途中で終わった場合の精算方法についても記載されているはずです。
解任した場合、ここで定められた内容に沿って費用の精算が行われるので、トラブルにならないよう解任前に内容をしっかり把握する必要があります。
- 着手金
- 成功報酬
- 経費
以下、この3点について見ていきます。
着手金
着手金は、弁護士と委任契約を結び、事件に着手する際に支払いが発生するものです。成功報酬とは異なり、成功の如何に関わらず、たとえ途中で解任することになっても原則として返還されません。
また、委任契約書に、理由の如何を問わず着手金は返還しない、一方的な理由での解任に対しては費用の返還を受けられない、などの定めがある場合は、返還されません。
ただし、下記のようなケースでは着手金が返還される可能性があります。
- 委任後すぐで着手していない
- 弁護士に落ち度があったことで、依頼者側が不利益を被った
成功報酬
弁護士を解任する際、成功報酬やそれまでにかかった経費を精算することになります。また、業務の進行具合によって対価が着手金を上回ると考えられる場合、精算の必要が生じます。
成功報酬についても、委任契約書の内容が問われます。
いくらいつでも解任できるといっても、成功・業務終了直前の段階で急に解任されたら、弁護士は得るはずの成功報酬を手にできません。
先にも述べましたが、第651条2項にあるように、依頼者が相手方である弁護士に不利な時期に委任の解除をしたときは、相手方の損害を賠償しなければなりません。
ここでいう損害とは、弁護士が得るはずだった成功報酬となります。
- 成功報酬を全額または近い額を支払う可能性のあるケース
- 成功の見込みがあり、弁護士に落ち度がない
- 委任契約書に、弁護士に落ち度がなくても解任した場合、成功報酬を全額支払う規定がある。みなし成功報酬特約とも呼ばれる
- 支払い額を依頼者と弁護士が協議するケース
- 委任契約書に「業務の進行具合や割合に応じて成功報酬を請求できる」と定めてある
経費
印紙代や交通費、郵便代など、弁護士の事務処理費用は依頼者が支払う必要があります。
後任の弁護士を探し、依頼する方法
弁護士を替えたいと思ったら、解任する前に、まず現在の担当弁護士に不満な点、疑問点などを伝えて、よく話し合ってみましょう。話し合いで対応が改善される場合もあります。
弁護士を変えるとなると一からやり直しになります。
新しい弁護士へ資料を渡し、説明して理解してもらうこと、これまでの検証、裁判の相手について対策を練ることなど、時間も手間、労力もかかります。
それでも弁護士を変えたいと思ったら、他の弁護士へセカンドオピニオンを求めてみてはいかがでしょうか。
セカンドオピニオン
他の弁護士に、現在の弁護士と重複して委任・依頼をするのではなく、「相談するだけ」であれば問題が生じることはありません。
なお、セカンドオピニオンを求める際は、どの弁護士にも同じ情報を持って行きましょう。
弁護士によって違う情報を伝えると、弁護士が把握できる内容や事実がバラバラになります。
さらに、それに基づく各弁護士の判断や意見も異なってきます。 結果的に、現在の弁護士と他の弁護士の比較ができなくなります。
セカンドオピニオンでの情報開示NG行動
セカンドオピニオンの情報開示の際のNG行動は主に下記の3つです。
- 相談者が自分に都合のよい情報や主張だけを話して、大事なことを伝えない
- 相談者の言うこと、言い方がコロコロ変わる
- 資料を見せない など
「セカンドオピニオンの相談を受け付けている」とホームページに明記している法律事務所もあります。
離婚でお悩みなら、離婚問題に強い弁護士を探し、自分の希望を伝え、現状の情報開示を十分行って相談しましょう。
セカンドオピニオンで納得し、弁護士の交替を決めたら、前の弁護士の解任、後任の弁護士との委任契約など、交替の手続きへ進みます。
信頼できる弁護士の選定方法
離婚は、これからの人生を決める一大事だけに、弁護士との信頼関係が大切です。
後任の弁護士を選ぶ際は、前任の弁護士とのやり取りのなかで「こうしてほしい」と感じたことを踏まえつつ、以下の点を重視するとよいでしょう。
- 弁護士の経歴や実績
- 弁護士は、それぞれ経験豊富な分野、得意なジャンルが異なります。弁護士としての経歴が長くても、離婚問題を扱った経歴が短く、実績の少ない可能性もあります。離婚問題の取り扱い実績が多ければ、慣れているので安心して相談できるでしょう。自分に似たケースがあるかもしれないので、解決事例も参考にしましょう。
- 対応の早さ
- 前任の弁護士は、有名だったけれど、忙し過ぎるのか連絡がなかなか来ず、離婚話が進まなくて困った……。次はそんなことのないように、電話やメール、問い合わせへの返信、対応のスピードをみてみましょう。 担当弁護士自身がどこまで携わるのか、弁護士は一人or複数のチームか、連絡を主に行う人など、体制についても確認しましょう。
- 費用の額が適正か
- ホームページなどで弁護士費用について、料金体系を明確に提示している、他の法律事務所と比べて極端に高いまたは安いといったことがない、相談や委任契約の際、聞きづらいお金の問題だからこそ、料金や契約内容の説明を丁寧にしてくれる、などがポイントになります。
- 弁護士の人柄と相性の良さ
- 弁護士は依頼者の気持ちに寄り添い、共に離婚問題を乗り越え、前へ進んでいく存在です。無料相談を利用して、丁寧に相談者の話を聞き、法律の素人でもわかるように専門用語ばかりを使わず、理解しやすい言葉で説明してくれるかどうか、話し方や対応が自分に合うか、人柄や相性をみましょう。 また、弁護士の人柄はいいけれど、結局直接やり取りする事務所スタッフの対応がひどいようでは、依頼者は困ってしまいます。
また、弁護士の人柄はいいけれど、結局直接やり取りする事務所スタッフの対応がひどいようでは、依頼者は困ってしまいます。
無料相談の際は、担当する弁護士がどの範囲まで携わってくれるか、弁護士は一人または複数のチームで担当するのか、連絡を主に行う人は誰になるのかなど、依頼者と実際にやり取りをする体制についても確認しましょう。
こんな弁護士には注意が必要
依頼した弁護士を解任して後任を探すとなると、時間も手間がかかります。注意すべき弁護士の特徴を知っておけば依頼後のトラブルを速やかに回避しやすくなります。
あくまで一例ではありますが、依頼者から不満を抱かれることの多い法律事務所には以下のような傾向があります。
- 広告や宣伝が派手でお金をかけている
- 依頼後、弁護士と連絡がとりにくい
弁護士も人間です。最終的には実際に相談してみて「信頼できる」と思ったら依頼するというのが良いでしょう。
依頼後も進捗報告を受けたり、素直な気持ちを伝えてみたりするなど、こまめにコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくことも大切です。
まとめ
現在依頼している弁護士の対応に不満や疑問を感じたら、まず、その旨を伝えて話し合ってみましょう。
話し合えなかったり、改善が見られなかったりするようならば、セカンドオピニオンを利用して、他の弁護士を探しましょう。
解任を決めたら、委任契約書に基づいて着手金や成功報酬などの精算を行い、関係各所へ届出をします。
労力も時間も、場合によってはお金もかかってしまいますが、納得できる弁護士と共に離婚問題解決へ進むことができるよう、法律事務所が行っている無料相談を活用してはいかがでしょうか。
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