離婚のその後の人生|別れる前に決めておくべき事項とは
日本では夫婦の1/3が離婚しているといいますが、離婚した人はその後幸せな人生を送れているのでしょうか。
離婚後に後悔しないためにも、離婚する前にしっかりと考えておくべきことがあります。
この記事では離婚すれば幸せになれるのか、また、離婚して後悔しないために何を考えておくべきかを解説します。
- 目次
離婚後の人生を決めるのは「事前の取り決め」
離婚後の人生を決めるのは「離婚前の取り決めがすべて」といっても過言ではありません。
離婚したら何が変わると思いますか?
例えば、生活費のほとんどを夫の収入に頼っていたという人は生活の基盤となる収入を失うことになります。
今住んでいる家も出ていかなければならないかもしれません。また、子供がいる人は子供と離れ離れになるかもしれません。
このように、何も考えずに離婚を切り出してしまうと、失うもののほうが多くなることもあります。
そのため、離婚後のことを想定し、事前にしっかりと考えておくことが大切なのです。
離婚する前に決めておかなければならない項目
離婚する前に決めておかなければならない項目には主に次の4つがあります。
- 財産分与
- 住環境
- 親権
- 養育費
それぞれについて以下で詳しく見ていきます。
財産分与
離婚する際、婚姻中に築いた共有財産を夫婦で公平にわけることになります。これを財産分与といいます。財産分与に含まれるものは現金だけではなく、以下のようなものになります。
- 現金
- 不動産
- 有価証券
- 家具や家電
- 年金
- 退職金
財産分与の割合は原則として2分の1になります。これは共働きの場合だけでなく、一方が専業主婦(夫)の場合も同様です。
一方、財産分与では上記のようなプラスの財産以外に借金などのマイナスの財産も財産分与を行うことがあります。例えば以下のようなものは財産分与の対象となります。
- 夫婦の共同生活に必要な借金
- 住宅ローン など
なお、以下のものは財産分与の対象にはなりません。
- 結婚前の預貯金
- 親から相続した財産
- 結婚前に実家から持ち込んだ家具・家財 など
住環境
離婚後に今住んでいる家から出る場合、希望条件に合った物件がすぐには見つからないこともあります。
そのような場合は実家を頼ったり、ウィークリーマンションなどを利用するというのも1つの方法です。
一方、今住んでいる家に離婚後も住み続ける場合はいくつか注意点があります。離婚後、住宅ローン完済済みの家に住み続ける場合は住居が財産分与の対象になります。
この場合、その家に住み続ける側が家の価額の半分を配偶者に支払うことになります。ただし、家の名義が配偶者であった場合は、不動産の名義変更が必要になります。
しかし、離婚時点で住宅ローンを返済中である場合は複雑になります。住宅ローンを返済中の家に離婚後住み続ける場合、以下の2点を確認する必要があります。
- 住宅ローンと所有者の名義の確認
- 連帯債務者・連帯保証人の確認
住宅ローンと所有者の名義の確認
住宅ローンが残っている住まいには住宅ローンの名義人と所有名義人が存在します。住宅ローンの名義人とはローンを契約した人のことで、債務者でもあります。
収入の多い側(夫であることが多い)がローン名義人であるケースや共働きの場合は夫婦がともに連帯債務者であるケースもあります。
所有名義人とは登記簿に記載がある名義人のことです。
住宅ローンの名義人は「対象物件に住んでいること」が条件であることが多いため、一般的には所有名義人と住宅ローンの名義人は同じケースが多いですが、必ずしも同じというわけではないため必ず確認しておきましょう。
住宅ローンの名義人である夫が家を出て、妻がその家に住み続ける場合には以下の2つのケースがあります。
家を出た夫が住宅ローンを払い続けるケース
住宅ローンの名義人の条件が「その物件に住んでいること」である場合、家を出た夫が住宅ローンを払うことは契約違反になるため、ローンの一括返済が求められることがあります。
住宅ローンの名義を夫から妻に変更するケース
住宅ローンの名義を夫から妻に変更して住み続けるケースでは妻の返済能力が鍵になります。
住宅ローンが夫の名義ということは妻よりも夫のほうが支払い能力が高いというケースが多いでしょう。
そのため、夫と同等以上の支払い能力が妻になければ名義変更が難しくなります。
連帯債務者・連帯保証人の確認
夫婦ともに連帯債務者の場合、夫と妻は同等の返済義務が生じます。
一方、連帯保証人とは、住宅ローンの名義人の返済が滞った場合に金融機関から返済を求められる人のことです。
つまり、住宅ローンの名義人とまったく同じ責任を負うことになります。
夫が住宅ローンの名義人であった場合、妻が連帯保証人であるケースも少なくありません。
さらに、家を出た夫が住宅ローンを払い続ける場合、経済的な負担が大きくなるため返済が滞ることもあります。
このとき、妻が連帯保証人の場合は金融機関が妻に支払いを求めてくることがあります。
親権
未成年の子供を持つ夫婦が離婚する場合、いずれか一方を親権者に決めなければなりません。
親権者指定は「どちらの親と暮らしたほうが子供にとって幸せか」を基準に考えるのが原則です。
協議離婚であれば夫婦の話し合いで親権が決まりますが、話し合いがまとまらない場合は裁判所に調停を申し立てることになります。
調停でも親権者が決まらない場合は審判または裁判で親権者を決めることになります。
裁判では以下のような点を踏まえて、どちらの親と暮らしたほうが子供が幸せに暮らせるか総合的に判断していくことになります。
- 子供への愛情の大きさ
- 経済力
- 監護能力
- 親権者の代わりに子供の面倒をみてくれる人がいるか
- 離婚後の生活環境
- 子供の意思 など
養育費
離婚しても親子の関係は変わりません。したがって、離婚後に親権を持たない側にも養育費分担義務があります。
養育費の金額は話し合いで決まればいくらでもかまいません。
しかし、一般的には養育費・婚姻費用算定表を目安にして決めることが多いようです。話し合いがまとまらず、裁判に進んだ場合もこの算定表を用いることになります。
一般的に、養育費の支払いは子供が成人するまでとされています。
令和4年4月から成人年齢が18歳に変更となりましたが、社会状況が変化したわけではないので、養育費の終期は従前どおり、満20歳という考えを維持されると予想されます。
なお、厳密には養育費は「監護」が必要な子供に対する費用のため、子供が高校卒業後に就職した場合は高校卒業まで、成人を過ぎても大学に通っている場合は大学卒業まで支払うというケースもあります。
参考:裁判所「養育費・婚姻費用算定表(https://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/index.html)」※1
離婚する前に考えておくこと
離婚する前に決めておくべきことについて説明しました。ほかにも、離婚する前に考えておかなければならないことがあります。離婚前に考えておくべきことは大きく以下の2つです。
- 人間関係
- 精神的負担
それぞれについて詳しく見ていきます。
人間関係
職場結婚(社内結婚)の場合や共通の友人がいる場合、配偶者の知人と仲良くなった場合などは、離婚後に人間関係が変わることがあります。
また、離婚後は親族との付き合い方も変わります。
DVやモラハラなどの被害に遭っていたという場合は親族もあなたの味方になってくれることが多いでしょう。
しかし、親族が世間体を気にするタイプの場合、離婚に対して否定的なイメージを持っている人も少なくありません。
このような場合は離婚後に嫌味をいわれることも多く、接し方が変わることもあります。
子供を連れて離婚する場合は子供の環境が変わることも考えなければなりません。特に子供が学校や幼稚園に通っていた場合、離婚によって転校や転園が必要になることもあります。
両親が離婚することだけでも子供にとってはストレスが大きいものです。それなのに転校などで友達や人間関係に変化があると子供に大きな負担を与えることになります。
精神的負担
一般的に円満に離婚するために必要な期間は半年から1年といわれています。もし話し合いがまとまらず裁判に進んだ場合はより長期化することもあります。
円満に離婚するためにも焦らずしっかりと話し合いを行い、話し合いを行いながら離婚後の生活基盤を固めておくことが大切です。
円満に終わるといっても離婚の話し合いは長期間におよぶため、大きなストレスになります。
また、話し合いがまとまらず裁判に進んだ場合は複雑な手続きも加わるため、負担はますます大きくなります。
しかし、裁判は冷静を保つことが大切です。決して感情的になってはいけません。
離婚裁判はいわば駆け引きのようなもの。相手も裁判に勝ちたいという気持ちは同じです。もしかするとあなたにとって不利になるようなことをいってくるかもしれません。
しかし、そんなときこそ冷静になる必要があります。「これは証明できるものではないし、私にとって不利になることもない」と論理的に考えることが大切です。
離婚による精神的な負担は夫婦だけが負うものではありません。離婚前の険悪な状況や離婚の話し合いなどは子供にとってストレスになります。
離婚はあくまで夫婦の問題です。離婚の話し合いは子供に見せないようにするなど、子供への負担は極力減らすように努めましょう。
【ケース別】離婚のその後
離婚前に決めておくべきことや考えるべきことについて説明しました。
どれだけ事前に準備をしても、離婚後は予期せぬトラブルが起こることもあります。
離婚原因や離婚の背景によって離婚後にどのような問題が起こる可能性があるのか、またどのようなことに注意すべきかをケース別に見ていきます。
実家依存症の離婚のその後
実家依存症という言葉をご存知ですか? 実家依存症とは「何かあるごとに実家に頼り、家庭内の決めごとも実家を基準に考える状態」をいいます。
実家依存症は特に妻とその母親の間で見られることが多く、以下のような特徴があります。
- 実家への出入りが多い
- 育児や家庭内のことも最初に実家に相談する
- 悩みごとはまず母親に相談する
- 実家の近くに住みたがる
- 夫より実家の意見を優先する など
実家依存症を理由に離婚した事例
配偶者が実家依存症で離婚するケースもめずらしくありません。実家依存症が原因で離婚した事例を紹介します。
大恋愛のすえA子とB男は結婚することになります。
A子は結婚前から自分の母親と友達のように仲が良い女性でしたが、B男は「親と仲が良いのは良いことだ」と考え、気に留めることもありませんでした。
しかし、結婚後「子供の面倒をみてもらいやすいから」という理由で妻の実家近くに住むことを提案されたのです。
妻の実家の近くはB男にとって通勤の負担が増えますが、A子に圧される形で渋々承諾することになります。
これを機にA子の行動はどんどんエスカレートし、挙句の果てには子供の進学先や家庭のことまでも親の意見を優先して決めるようになったのです。
B男はだんだん「自分は頼られていない」と思うようになり、A子に離婚を切り出しました。
しかし、親が絡む子供の離婚問題は非常に難航する傾向があります。このケースも当事者同士の話し合いでは決着せず、離婚調停にもつれこむことになってしまいました。
介護離婚のその後
介護離婚とは、夫(妻)の親の介護が嫌になって離婚することをいいます。
一般的には、夫(妻)の親との仲が悪い、あるいは夫が親の介護を妻に丸投げし、妻は嫌気がさして離婚を切り出すことが多いようです。
介護離婚にいたるケースでは自分自身もある程度年齢を重ねていることが多いです。
特に、これまで専業主婦だったという人は離婚後に新たに仕事を見つけることができず、経済的に困窮することもあります。
また、近い将来、自分に介護が必要になったときに頼れる人がおらず、離婚後の生活に不安を抱えることが多いようです。
DV離婚のその後
最近は配偶者によるDVを理由に離婚するケースも増えています。DVを理由に離婚した事例を2つ紹介します。
夫からのDVを理由に離婚した事例
C子は婚活パーティをきっかけにD男と出会い、とんとん拍子で結婚にいたります。
結婚前は優しかったD男ですが、結婚後、ちょっとしたことでC子に暴力を振るったことをきっかけに日常的に暴力を振るわれるようになります。
耐えきれなくなったC子は決死の覚悟で荷物をまとめ、家を出て実家に戻ることになります。
その後、親や弁護士に間に入ってもらい、なんとか離婚が成立することになりました。離婚後、C子は精神的にも肉体的にも晴れやかな毎日を送っています。
妻からのDVを理由に離婚した事例
DVは夫から妻へという印象がありますが、実は妻から夫への暴力も少なくありません。しかし、裁判所や調停委員によっては「暴力は男性が女性に振るうもの」と思いこんでいることもあります。
この場合は診断書など「DV被害に遭った」という客観的な証拠がないと妻からのDVを理由に離婚することは難しくなります。
E男は妻のDVに悩んだ結果、別居することに。しかし、「DVを受けた」という証拠がないため、離婚調停でも妻のDVを認めてもらうことはできず、結局、婚姻関係が破綻したことなどを理由に離婚することになりました。
しかし、子供の親権は妻に渡ってしまったため、離婚後もE男は子供のことが心配で精神的に不安定になり、精神科に通院しています。
浮気離婚のその後
浮気というと男性がするものという印象があるかもしれませんが、最近は妻の浮気や不倫を理由に離婚することも少なくありません。
一般的に「親権は母親が有利」といわれますが、子供の養育を疎かにしたり、夫が子供を連れて出ていった場合などは夫が親権を持つこともあります。
こうなると、離婚後の妻は月に数回子供と会うしかできなくなり、慰謝料と養育費の支払いだけが残ることになります。
離婚原因もその後の人生を左右する
離婚して幸せになるはずなのに、離婚原因によっては離婚したことを後悔し続け、その後の人生に影響をおぼすこともあります。
離婚後に後悔したり、その後の人生に影響を与えるケースには以下のようなものがあります。
自分の浮気で離婚したことの後悔
夫には何の不満もないが女性として見られなくなってきた…そんなとき、声をかけてきた男性と浮気をしてしまった。
このように、自分の浮気が原因で離婚した場合、状況によっては親権が配偶者に渡り、子供と自由に会うことができなくなることがあります。
また、親族や友人関係など同時に多くのものを失ってしまいます。
DVや浮気されたトラウマ
DVや浮気をされた妻は離婚後、トラウマを抱えてしまうことが多いです。
離婚して新しい出会いがあったとしても「また裏切られるのではないか」「暴力を振るわれるのではないか」と男性不信に陥ることがあります。
新しいパートナーに愛情を感じづらくなる
離婚後、新しいパートナーができることもあるでしょう。
しかし、「『愛している』といってるけど、どうせ口だけよ」など、パートナーからの愛情を受け止めたり、信用できなくなることがあります。
まとめ
離婚する前に決めておくべきこと、考えておくことについて説明しました。
離婚後に幸せな人生を送るためにも、離婚を切り出す前に決めておくことや考えておくことがあります。困ったことがあれば弁護士などの専門家のアドバイスを仰ぐことも大切です。
当サイト「離婚弁護士相談リンク」は離婚問題に強い弁護士を厳選して掲載しています。ぜひお役立てください。
※1 裁判所「養育費・婚姻費用算定表」
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